『!!!!!!花恋君っ!!危ない!』
私は大きな声で叫ぶ。と同時に駆け出した。
花恋君は急いで立つが足がもつれてしまいこけてしまう。
『くっそ…!!』
急いで立ち上がるが間に合わない。
だけど、まだ方法はある。
『花恋君!手を掴んで!!』
走りだから思いっきり手を伸ばす。
『くっ…!!』
花恋君も思いっきり手を伸ばす。
『…届いた!』
手が届き、掴む。
そしてこちら側に引っ張った。
『はぁっ…はぁっ…』
花恋君が息をあげている。
『ごめん、助かった…』
『気にしないで…ここ、崖だから…』
今あのまま、花恋君があそこにいたら確実に崩れていただろう。
『反応がよかっただけ』
声が掻き消える。
風の音がうるさい。
体が痛い。
風がびゅうびゅうと耳に入ってくる。
叫ぶことすらままならない。
体をすべて身に任せる。
そして、落ちる。
ドスッと鈍い音と共に。
みんなが上にいる。
だけどなんにも聞こえない。
『私、死んじゃうんだ…』
そう呟いて、意識を闇に落とした。
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「…ここまでが私の過去…」
重々しく、支那美は語ってくれた。
「…すまねぇ、思い出させたくないこと思い出させて」
「気にしないで。隼人にはいつか教えなきゃいけなかったから…」
彼女は隠し事ができる質ではない。
彼女の嘘はとても下手だ。だからこそ色々俺に話してくれる。
…俺が支えてやらなきゃいけないんだ。
「それにしても…そいつらはその後、どうなったんだ?」
何気ない一言。
だが、支那美はビクッとすると、顔が俯く。
「あ…」
や、やっちまったか…?
「…そうだよね、すべて話さなきゃね…」
続けるよと、彼女は話を続けた。
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その後、私は病院に運ばれた。
流血もしていたらしいけどそれ以上に驚かれたのが『大きな傷』が無かったこと。
医師の人達にも何度も聞かれた。
『君は何をしていたの?』
『どうやって助かったの?』
そんなことを聞かれても私は分からない。
体を思いっきり地面に打ち付けて大きな傷が見当たらなかったと聞いた時、1番驚いたのは私自身だったのだから。
だけど、みんな私の話なんて見向きもせず自分達の質問をぶつけてきた。
『わ、私から聞いても宜しいでしょうか…?』
『いやいや、そんなことよりな…』
皆こうして話を遮る。私だって聞きたいことがあるのに…
不満に思っているとあの3人が病室に入ってきた。
『あ…皆…』
私は皆が入ってきたのを見ると嬉しいと同時に少し不安になった。
何故みんな、こんなに暗いのだろう。
そう思っていると、花恋君が話す。
『支那美、もう絶対、僕達に寄り付くな』
『…え?』