平凡な男と白髪の少女   作:ふれあすたー

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もうそろそろ終わりそうな予感


男と少女は目指す

香霖堂に着いたはいいが…

「気配が全く感じ取れない…」

さっきの音といい、こっちに向かったのは間違ってないはずなのだが。

…1回最初の場所に戻ってみるか…?

「まぁこのまま見つからないと面倒事になるのは俺だからな…食われる前に探さねぇと…」

あんな事を言った手前、中村に何かあったら…

「急ご」

早足で元来た道を戻った。

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「…遠くねぇか…」

太陽がいい感じに隠れている森を歩きながら一言。

「そうかしら…と言ってもあんたは普通の人間だものね…しかも外の世界の。こんな環境にいきなり慣れろって言っても無理な話か…」

「適応力は何気にある方だと思ってたんだがな…こりゃ流石にきつい…」

「まぁゆっくりでいいわよ」

霊夢の優しさを痛感したところで何かの音がした。

「…何の音だ?」

「…あんたも聞こえた?」

こりゃ相当厄介ね、と霊夢は続ける。

もし、これが妖怪の場合、俺は非常にまずい。

なにせ聞こえたのがすぐ近くの草むらだから。

「今すぐそこから離れることをおすすめするわ」

「ふむ、そりゃ無理な話だ。だって、向こうも警戒してるから」

「ふぅん…感覚は鋭いのね…」

「死にかけた事が何回かあったからな」

しかもこれはやばそうだ。あの時と同じ、殺気を感じる。

「………」

「………」

俺はゆっくりと一歩を踏み出し遠ざかろうとする。

「………」

と、その時に

ガサガサ!!

と音がした。

流石に俺も驚いた。が、しかし。

「…行ったか?」

「そう、みたいね」

このタイミングで見逃してもらえるとはなんて幸運。

改めて命の危機が迫っていたことを思い返し心臓の鼓動が止まらない。

「はぁぁっ…」

「ほんと、運がいいわね」

もしあれが頭の悪い妖怪なら腕は確実に持ってかれていたわよ…

霊夢さんはとても怖いことを言ってきた。

怖いよやめてよまだビビってたんだから。

「取り敢えず行こう…早く帰りたい…」

こんな所に来た理由は鏡のせいだというのに当の本人は全く覚えていない。

「分かってるわよ、もうあいつの家もすぐそこよ。絶対に問いただしてやるんだから」

なるほど、それは良かった。

俺は心の中で安堵して再び空を飛ぶ霊夢に付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

(…?そういえば…)

 

俺は何かが引っかかった。

何がだ。何が引っかかった。思い出せ。少しずつ思い出すんだ。

何だ。何が足りない。俺には何を理解せずに忘れた。それを。思い出すんだ。

『…それはただの『スキマ』…』

『…紫さんもいないじゃないか…』

『…『事件』みたいなもんだ』

『…ふぅん、感覚は鋭いのね…』

 

 

 

 

 

 

『…紫『も』いなくなった。これは異変以外の何者でもねぇ…』

 

 

 

 

 

 

 

 

『…もしあれが『頭の悪い』妖怪なら腕は確実に持ってかれたわよ…』

 

 

 

 

 

『…度の過ぎた『ドッキリ』過ぎるわ…』

 

 

 

 

 

 

「…なるほど、そういう事か…!!」

理解した。俺の脳内がそう叫んだ。

これは計画されたものだったんだな…!!

しかもそれは即興…

 

 

 

 

 

「…楽しくなったぞ、お前ら」

 

俺は吐くようにその言葉を残した。

 




すいり

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