俺なりのARC-V 〜Reconstructed Yu-Gi-Oh! ARC-V Story〜 作:エクシ
第49話「遊矢と零児の半年」
-遊矢の回想-
レイ(ユート、ユーゴ、ユーリ。あなたたちは今肉体を失っている。でも必ず体を取り戻して、そしてまた私に会いに来て。”母さん”はあなたたちの幸せをあなたたちの近くで」
柚子・セレナ・リン・瑠璃「「「「祈っているから。」」」」
4人に分かれかけたレイは地面に落下する前に輝きを増していく。遊矢が目を瞑る前のその瞬間、4人に分裂するレイと共に5枚のカードが飛び出す。その内の2枚のカードが自分の中に入っていくような感覚を感じる。残りの3枚はどこかへ飛んでいく。これはいったい何だったのか…。
-エクシーズ次元 廃材放棄地-
そんなことを考えながら遊矢はDホイールを走らせていた。いや正確には遊矢の体に憑依したユーゴが運転し、遊矢は精神空間の椅子につきながらレイの分裂の時のことを思い出していたのだ。そんな中デュエルディスクにレジスタンスの女性から通信が入る。
レジスタンスの女性「ユートさん…たすけて!クローバーズが…!」
ユーゴ「んあ!おっしゃ、すぐ戻るぜ!」
ユーゴはDホイールの向きを変えると進んでいた方向と逆向きに走り始めた。
-エクシーズ次元 ハートランドシティの一角-
レジスタンスの女性から連絡のあったハートランドシティに辿りついた。ハートランドシティはエクシーズ次元にある街の1つである。かつてユートや黒咲隼、瑠璃たちが住んでいた街でもある。美しくエンターテインメントに溢れた街であったが、アカデミア軍の襲撃によって今は瓦礫の山しかない。そういった状況から治安も悪くなり、今回の件のように品のない男たちによってレジスタンスの女性と子供たちが囲まれることなどざらであった。
ユーゴ「あの男たち…クローバーズか!」
エクシーズ次元のハートランドシティにはアカデミアが襲来するまでデュエルスクールが4つ存在していた。女性のみで構成されたハート校、英才教育で有名なダイヤ校、ユートや黒咲が所属していたスペード校、そして今レジスタンスの女性を囲んでいる決闘者のような乱暴者の多いクローバー校。そのクローバー校の生徒たちを中心に構成されたレジスタンスの派生組織の1つがクローバーズである。
クローバーズの男「おい、女!お前アカデミアから貰った救援物資なんてもらってんじゃねえ!」
レジスタンスの女性「アカデミアは次元戦争の行いを反省して今はハートランドシティの復興に協力しているわ!」
クローバーズの男「ハートランドシティを壊しておいてずいぶん都合がいい話じゃねえか!」
クローバーズたちが女性と子供たちにに襲い掛かろうとした時、ユーゴからユートに代わり、彼らを蹴飛ばした。
クローバーズの男1「ぐあ!なんだ!てめえは!」
クローバーズの男2「こいつ、スペード校にいたユートだ!」
クローバーズの男3「いやちげえ、アカデミアにいた野郎だぜ!」
ユート「どちらでもいい。だが私の仲間に手を出すな!」
クローバーズの男1「け、恰好つけやがって!潰してやる!」
ユート「お前たち、逃げろ!」
ユートはレジスタンスの女性たちに言うとデュエルディスクを起動させた。
ユート・クローバーズの男たち「「「「デュエル!」」」」
-エクシーズ次元 ギャラクシータウン クローバーズのアジト-
クローバーズの男「はいよ………なんだと?」
??「どうした?」
クローバーズの男「カイトさん、ハートランドシティにいる仲間たちがスペード校のユートにやられたらしい!」
カイトと呼ばれた男は黄色に藍色の指し色が入った髪をかきむしりながら立ち上がった。
カイト「ならば狩りに行くか、裏切り者の魂を!」
-ハートランドシティの一角-
ユートは倒したクローバーズの男の1人を捕まえ、胸倉をつかみながら尋問をする。
ユート「お前、この男たちを見たことはあるか?」
そういうと遊勝のデュエルのチラシやアカデミア兵の前に出る零王、満面の笑みではないが微笑む零羅、遊矢と肩を組みながら笑顔でいるデニスの写真を見せる。
クローバーズの男1「し…知らねえ!」
ユート「ならばいい…!」
ユートは手を離し、ハートランドシティとは反対の方向に歩き始めた。とその時、倒れたフリをしていたクローバーズの男たちが一斉にユートを鉄パイプで殴りかかった。
クローバーズの男2「こうすりゃよかったんだ!!ケヘヘ!」
クローバーズの男3「終わりだ!」
ユート「MODE CHANGE…ARC!」
ユートの体から黒のオーラが流れ出る。そのオーラに恐怖を感じたということだけがクローバーズの男たちが気絶する前の最後の記憶だったという。
-遊矢の精神空間-
Dホイールごと精神空間に転送されて来たユーゴは精神空間の中でDホイールを走らせていた。
ユーゴ「いや~、どこまで行っても終わりが見えねえ~~~!気持ちいぜ!」
スピードは毎時120kmを越している。遊矢たちがいる円卓はとうに見えない距離に達しており、辺りは一面真っ白な空間だ。
ユーゴ「そろそろ戻っかな。ん??」
ユーゴが目を凝らした先に何かがある。白い空間が広がっているのは確かであるが地平線に出っ張りが見えるのだ。
ユーゴ「お、これはなんか発見したか!行くぜ!」
ユーゴは再びDホイールのレバーを回してその場所へ向かった。
-スタンダード次元 レオコーポレーション研究室-
ゴオンゴオンと機械音が鳴り響き、研究者たちは黙々とモニターに向かっている。そこへ零児が入ってくると全員が作業を取りやめ、立ち上がって頭を下げる。
研究者たち「お疲れ様です、社長。」
零児「ご苦労。そのままで大丈夫だ。」
その言葉を聞くと何事もなかったかのように研究者たちは席に着き作業を続ける。
中島「現在次元転送装置をゲート化させ、次元回廊としてそれぞれの次元を繋げています。半年以内には一般市民にも開放出来るでしょう。」
零児「次元回廊がつながればエクシーズ次元に救援物資を送ることも容易になる。迅速に進めろ。」
中島「はい。それと会長…日美香様のことなんですが。」
零児「零王…父様の秤の魔術師の力で強化されたパラサイト・フュージョナーの解除か?」
中島「はい。デュエルで何度負けてもパラサイト・フュージョナーが解除されないのです。」
零児「…あのリバイバル・ゼロへの執着がパラサイト・フュージョナーによるものだったのは私としても安堵したが、それが解除できないのではどうしようもないな。」
中島「研究者たちの仮説としては秤の魔術師の力を操っていたヴィエイと同じぐらいのアークの力を日美香様にぶつければ解除できるのではないかと。」
零児はしばらく考え込む。なるべく考えないようにしていたことをまた考えなくてはならなくてはならない。父と弟は行方不明、母は精神を病んでいる。そんな現状から目をそらすために次元回廊の開発に尽力していた。だがもうそんなことは言っていられない。現実逃避も次元回廊の実現化によって終わりだ。
零児「強いアークか……遊矢を探せ、すぐにだ。」
-遊矢の精神空間-
ユーゴは地平線の突起部までたどり着いた。そこはベッドのような台になっていた。
ユーゴ「おいおい…マジかよ…。」
ユーゴの瞳には横たわるズァークの姿が映っていた。その表情は穏やかな表情でまるで永遠の眠りについているようにも見えた。