俺なりのARC-V 〜Reconstructed Yu-Gi-Oh! ARC-V Story〜 作:エクシ
-ユートとリンの家のリビング-
セレナはテーブルに出された水を一気に飲み干した。
セレナ「じゃあお前はシンクロ次元のユーリで、リンは本物のユーリが攫って行ったってことだな!」
ユーゴ「そんなオレを偽物みたいに言うなよ…。」
セレナ「それより茶はないのか?客人に水はないだろう。」
ユーゴ「客人ってなんだ!お前もリンを攫いに来たんだろうが!」
セレナ「私は攫うことが出来なかった!ユーリにまんまと唆されたのだ!」
ユーゴ「わーってるよ!つーか自分でまんまと唆されたって言うか?」
ガミガミ言い合う二人の間に落ち着いた口調で遊勝が入り込む。
遊勝「つまり仲間を巻き込むような作戦でエクシーズ次元の残党狩りをしたユーリは零王によって懲罰房に入れられていた。そんなユーリはリン誘拐の任務を言い渡されたセレナを騙し、先にこのシンクロ次元に向かいリン誘拐の任務を奪ったと。」
セレナ「そうだ!おまけに私のデュエルディスクに細工し、ディメンション・ムーバーが1度しか起動しないようになっていたのだ!」
ユーゴ「ディメンション・ムーバー?」
遊勝「次元転送装置のことだ。前にも言っただろう、この世界には4つの次元があると。」
ユーゴ「あれ本当だったのかよ。ん?てことはリン…じゃなくてセレナは融合次元に帰れなくなったってことか?」
腕組みをしてふてくされた表情をするセレナは「そうだ」と言いたげであるが、悔しさからか黙っていた。
遊勝「ユーリは自分のカードを取り戻すためにリンを攫ったと言っていたね。リンは零王にとって重要な存在なのだ。それを出しにして自分のカードを取り返すつもりだろうな。」
セレナ「くそ!騙された!!自由になったのはいいが融合次元に帰れないのではアカデミアのために働けん!」
セレナは悔しそうに拳を固めた。
ユーゴ「遊勝のおっさんから聞いたぜ、アカデミアってのはハートランドって街を滅ぼしたんだろ?なんでそんなところに協力するんだよ。」
セレナ「フン、ハートランドはアカデミアに歯向かって武力による攻撃を仕掛けてきたのだ。殲滅されて当然だ!」
遊勝「ハートランド側は武力による攻撃なんてしてないよ。」
遊勝は先ほどと変わらず落ち着いた口調で、しかしどこか力を込めて言った。
セレナ「なんだと?プロフェッサーはそんなことを言っていなかった。奴らを倒すことでエクシーズ次元もアカデミアの元、安定し平和な世界になると聞いている!」
遊勝「ハートランドは武力なんて持っていない。リアルソリッドビジョンを持っていたのは融合次元からエクシーズ次元へ行った私とその生徒たちだけだ。」
セレナ「ではアカデミアは武力を持たない人々を攻め滅ぼしたというのか…?」
遊勝は無言で頷く。空気を読んだのかユーゴも黙ったままだ。
セレナ「そんな…そんなのは私の信じるアカデミアではない!」
遊勝「そうだろう。私もかつて零王に協力していたからね。3年前、零王がリバイバル・ゼロという計画のために人々をカードにすると言い始めて私は彼への協力を辞めた。逆らう技術者たちはドクトルという男によって洗脳されていった。私は洗脳される手前でスタンダード次元からエクシーズ次元へ行った。いつか攻めてくる零王たちへの対策をするためにね。」
セレナ「プロフェッサーの協力者…まさかお前、榊遊勝か!」
遊勝「私の名を呼んでくれるのは嬉しいことだな。君も私の子供の一人によく似てる。性格は全然違うけれどね。」
そう言って遊勝はニッコリと笑った。セレナは事実に驚きを隠せず、しばらく一人でいると言い、リンの部屋に入った。
-融合次元 アカデミア本部 謁見の間-
零王の部屋に黄色い隊服を纏ったアカデミア生が報告に来た。
アカデミア生「プロフェッサー!至急報告があります!ユーリ様が戻られました!プロフェッサーと謁見したいとおっしゃっています。」
零王「なんだと…。ここに通せ。」
アカデミア生「はい…って…え!」
アカデミア生は横からの攻撃に吹き飛ばされ、倒れた。足音のする方向を見るとそこには捕食植物ドラゴスタペリアを従えたユーリが近づいてきた。
ユーリ「コイツ、遅いんでもう来ちゃいましたよ。フフフ。」
零王「ユーリ…貴様!」
ユーリ「檻から出ちゃってすいませんね。でももっとちゃんと造りにした方がいいかも。」
零王「わざわざ脱獄しておいてなぜ戻ってきた?」
ユーリはデュエルディスクの電源を落とし、ドラゴスタペリアを消す。するとドラゴスタペリアに乗っていた気絶しているリンをキャッチした。
零王「それはリン!」
ユーリ「僕の器は戦いの中でしか満たされない。アカデミアはその恰好の場ってわけですよ。それにスターヴ・ヴェノム・フュージョン・ドラゴンを返してもらわなきゃね。」
零王「あれがあればお前は圧倒的な強さでまた他のアカデミア生を巻き込み…」
ユーリ「じゃあいいんだ~!このリンって子をカード化して破いちゃっても~~!」
そう言いリンを床におろして、デュエルディスクにあるカード化のスイッチを押そうとする。
零王「よせ!」
ユーリ「じゃあ僕のカード出してよ。はーやーく!はーやーく!」
零王「今ここにはない!スタンダード次元のアカデミアの者が使っていたのだ!」
ユーリ「僕のカード勝手に又貸し~?ま、ろくに扱えなかったでしょ。彼はじゃじゃ馬だからさ。」
零王「あぁ、だから赤馬スタンダード次元総司令官に返されていたと聞いている。」
ユーリ「じゃあ総司令官に返してって言えばいいね。」
零王「彼女はもうカードとなっている…。」
俯く零王と笑うユーリ。
ユーリ「あ~あのおばさん負けちゃったんだ~!ま、スタンダード次元の誰かが持っているってことね。骨が折れそうだけど探すしかないかなあ。」
零王「情報は渡した。リンをよこせ。」
ユーリ「はいはい、こんなセレナそっくりの女の子、いらないよ。」
そう言うと床にリンを置いて立ち去ろうとする。そこで零王が呼び止めた。
零王「スタンダード次元に行くついでに任務を言い渡す。柊柚子という少女を攫って来るのだ。」
-シンクロ次元 コモンズ居住地域路上-
遊勝に連れられてユーゴは食品の買い物に駆り出されていた。
ユーゴ「おっさん!オレはこんなことしてる場合じゃねえんだ!すぐリンを取り戻しに行かなきゃ…。」
遊勝「だからこんだけ食べ物を買っているんだ。」
ユーゴ「はぁ?」
遊勝「リンを助けに行くんだろ。融合次元に行くためには長い旅路になる。保存食を持っていこう。」
ユーゴ「おぉ!そういうことか!おっさん話が分かるぜ!」
遊勝「しかし融合次元は強い決闘者がいっぱいだ。君に融合次元の決闘者への対策を…」
遊勝に手の平を見せ、発言を止めさせるユーゴ。
ユーゴ「あー、オレはあんたには習わねえぜ。オレの先生は1人って言ったろ?」
遊勝「ほう、その人の話を聞きたいな。」
ユーゴ「しょうがねえなぁ、家に着くまでだぜ?」
-ユーゴの回想-
3年前はシティにて例年通り行われていたフレンドシップカップが初めて中止になった年であった。前年にロジェによってリアルソリッドビジョンシステムが持ち込まれ、悪用者たちによって治安は最悪になっていたからだ。治安維持局の発足、デュエルチェイサーたちの登用によって改善はされてきたものの、とてもフレンドシップカップは開催できる状態ではなかった。その代わりに恒例の出場者の中でも特にデュエルが強かった3人、 "キング" ジャック・アトラス、鉄砲玉のクロウ、そしてのちにユーゴの先生となる人物はロジェにデュエルチェイサーたちの隊長を任せられることとなる。
ロジェ「貴方たち3人にはフレンドシップカップの代わりに、治安維持のため働いて頂きたいのです。低所得者及びデュエル弱者であるコモンズを大量に取り締まることをね。」
クロウ「なんだと!?そんなこと許されるはずがないだろう!」
ロジェ「貴方の腕ならトップスになれます。でも逆らえば貴方が開いた流派…えーっと砲丸流でしたっけ?それは取り潰し確定ですね。確か貧しい子供たちを多く抱える流派でしたよね。『1人では鉄砲玉が限界でもみんなが集まれば砲丸より大きくなれる』でしたっけ?街の子供たちが言ってましたよ、フフフ。」
クロウ「く…!」
こうしてクロウはデュエルチェイサーの部隊長の1人となった。
ロジェ「貴方はどうします?”キング”?」
ジャック「…トップスとコモンズの認定は決まったことなのだな?」
ロジェ「えぇ、すでに評議員にも通しています。だからデュエルチェイサーに…」
ジャック「俺は組織に属し、雑魚を率いるなどはしない!」
ロジェ「ほう…まぁ貴方は流派を作っておらず門下生もいないようですしね。予想はしていましたが。」
ジャック「俺の腕ならばトップスだけでは物足りん。俺をトップスの中のトップスにしろ!ならば邪魔者を俺のパワーデッキで粉砕してくれる!」
ジャックはデュエルチェイサーには属さないものの、治安維持局の依頼によって動く”処刑人”のような立ち位置となった。
ロジェ「さぁ残りは貴方ですね。」
ユーゴの先生「俺は罪のない人を裁くなんて出来ない。間違ったことに手を出すのは不動流の考えに反している!」
ロジェ「『カードは動くも心は動かず』不動流の考えでしたね。カードは果敢に動かすも、己の信条を動かさない”不動”を貫く意味を込めたものだとか。」
ユーゴの先生「…。」
ロジェ「覚悟は出来ていますね?」
こうしてユーゴの先生率いる不動流は治安維持局から狙われることとなった。その場からユーゴの先生が逃げる際、彼はクロウに耳打ちをした。
ユーゴの先生「俺のことはいい、俺の弟子たちを頼む。」
-不動流道場-
ユーゴはデュエルチェイサーたちによる総攻撃の情報を得て、先生に報告した。
ユーゴ「大変だ、先生!デュエルチェイサーの部隊が3つも攻めてくるって!逃げよう!」
ユーゴの先生「いや、俺はここで食い止める。」
ユーゴ「はぁ?何言ってんだよ!逃げないと殺されちまう!」
ユーゴは先生の袖を引っ張るも動こうとしない。
ユーゴの先生「生きろ、ユーゴ。そして不動流の精神を忘れるな。」
そこに先発のデュエルチェイサーたちが道場を打ち壊しつつ攻めてくる。次発のデュエルチェイサーたちは道場の後ろを囲うが、攻めようという意思は伝わってこない。
ユーゴの先生(あれはまさか…。)
後方のデュエルチェイサー隊の隊長をよく見るとそれはクロウ・ホーガンであった。クロウは涙しながらも逃がすまいとデュエルチェイサーたちで満遍なく道場を囲んでいる。ユーゴの先生はクロウに目線を送る。
ユーゴの先生(任せたぞ。)
彼とクロウはフレンドシップカップで何度も戦ってきた。ライディングデュエルをした者同士は分かり合える。クロウは目線だけでもあの時の言葉を言いたいのだとわかった。ユーゴは戦いのさなか、クロウによって救出され、一命をとりとめた。クロウを一時期攻めた時期もあったが、ユーゴの先生から託された思いをクロウから聞くことで、ユーゴは前に進んでいたのだ。
-ユーゴとリンの家-
話の終わりと共に家に到着し、玄関の戸を開くとそこにはセレナが立っていた。
セレナ「行くぞ!」
ユーゴ「は?」
セレナ「アカデミアにだ!アカデミアは間違ったことをしてきた!それは私の信条に反することだ!私がデュエルでプロフェッサーを叩きなおしてやる!!」
ユーゴ(こいつさっきまで落ち込んでたのにすぐ立ち直ってやがる。…でもこいつも持っているんだな、不動の精神を。)
ユーゴは微笑を浮かべるとすぐに食品をDホイールに積むため、ガレージへ向かった。積め終わるとすぐにDホイールに跨ってモーメントを起動させる。
ユーゴ「行くぜ、遊勝のおっさんとセレナ!融合次元へ!!」
遊勝「…。」
セレナ「…。」
ユーゴ「…方角どっち??」
遊勝とセレナはため息をつく。
セレナ「バカの相手は疲れるな。」
ユーゴ「お前に言われるのだけは勘弁だな!」
セレナ「お前が私の何を知っている!シンクロ次元のユーリめ!」
ユーゴ「はぁぁ??」
遊勝「しっ!静かに!」
2人の喧嘩が始まりそうな展開であったが、それを遊勝は神妙な顔つきで止めた。
ユーゴ「んだよおっさん!」
遊勝「聞こえないのか?モーメントの音が近づいてくる…、それもかなり多くだ。」
ユーゴ「…!まさか!!」
ガレージの扉を勢いよく開けると、そのタイミングでデュエルチェイサーたちがガレージに到着した。
ユーゴ「なにぃ!?オレなんもしてねえぞ!!」
デュエルチェイサーの隊長「貴様はアカデミアから脱獄したユーリだな!」
ユーゴ「オレはユーリじゃねえ!ユーゴだ!」
デュエルチェイサーの隊長「すでに面は割れている!そこのリンも捕獲対象だ!」
セレナ「私はリンではない!」
デュエルチェイサーの隊長「問答無用!デュエルで奴らを捕らえろ!」
デュエルチェイサーたちが翼型のデュエルディスクを起動させて次々とゴヨウモンスターたちを召喚していく。とても3人では逃げられない…と思われた時、遠くからモーメントの走行音が近づいてくるのが聞こえた。
デュエルチェイサーたち「なんだ?」「応援か?」
その正体は黒いDホイールに乗った仮面をつけ、フードを被った謎の人物。その人物はDホイールにつけられたディスク部にモンスターを召喚した。
??「行け、驟雨のライキリ!!」
ライキリと呼ばれたモンスターもマントを纏って相貌ははっきりしない。だがそのモンスターの登場によって怯んだデュエルチェイサーたちをかいくぐってユーゴはDホイールのアクセルを回す。
ユーゴ「乗れ!」
ユーゴの言葉にすぐ反応しセレナはユーゴの後ろに飛び乗る。
セレナ「しかし遊勝は…」
遊勝「私のことなら心配無用!」
自分のデュエルディスクでEMスカイ・マジシャンを呼び、それに捕まると謎のDホイーラーが去っていった方向へ飛んでいく。ユーゴもそれに続いて走っていった。
-シティ郊外-
デュエルチェイサーたちを巻いたユーゴたちは暗い雰囲気が蔓延している路地に集まった。
ユーゴ「助けてくれてありがとよ、でもアンタ一体?」
??「久しぶりだな。」
謎のDホイーラーは仮面を取り、その顔をあらわにした。
クロウ「俺だよ。」
ユーゴ「クロウ!」
遊勝「クロウ…さっき言っていた砲丸流の男か!だが君はデュエルチェイサーではなかったのか?」
クロウ「治安維持局にはばれないようこうやってコモンズの人たちを救ってるんだ。そんなことよりしばらくシティから離れてろ。ロジェがユーリって少年を探し回ってる。そのユーリがお前とそっくりなんだ。」
セレナ「そういうわけにはいかんな。むしろ私たちは治安維持局に行かねばならない。」
セレナは腕組みをしながらクロウの提案を拒否する。
クロウ「捕まってもいいのか?」
セレナ「私たちは融合次元のアカデミアに行かなくてはならない。融合次元へ行くには次元移動をしなくてはならないのだ。」
クロウ「…こいつ何言ってんだ?」
遊勝「すまない、流してくれ。セレナ、次元移動のためになぜ治安維持局に行かねばならないのかい?」
セレナ「それは治安維持局がアカデミアシンクロ次元支部だからだ。治安維持局に次元転送装置があるからな。」
遊勝「なるほど、厄介なところにあるものだ。」
遊勝は苦笑に近い笑みをこぼす。
クロウ「よくわかんねーが、治安維持局に行くっていうんだな。」
ユーゴ「協力してくれるのか?」
クロウ「アイツにお前のこと頼まれたからな。まったく面倒な事しようとしやがって!」
ニヤリとするクロウは自分の弟子たちにデュエルチェイサーの隊服を持ってこさせる。その服をユーゴたちは着用し、クロウのデュエルチェイサー隊に紛れ込むことで侵入する作戦をとることになった。
-治安維持局内-
ゲートをくぐると門番がいた。クロウは顔色一つ変えずに門番に話しかける。
クロウ「第2部隊、帰還だ。」
門番「第2部隊だと?今日の任務はなかったはずだが?」
クロウは 「さっきのユーリ出現の通信がこっちにも入ってて行ったんだ。さぁ入れてくれ。」
門番「…わかった。」
ヘルメットとサングラスをかけたユーゴ、セレナ、遊勝はクロウの後ろに続く。
門番「鍵を閉めろ。」
その合図とともに扉が閉まり、ロックが掛かる。
クロウ「どういうつもりだ!?」
門番「そいつはロジェ様から捕まえるよう言われているユーリだろう!捕まえろ!」
門番の合図とともにデュエルチェイサーたちが追いかけてきた。
クロウ「お前ら逃げろ!!」
クロウの言葉通り、ユーゴ、セレナ、遊勝の3人は走って奥まで行く。
セレナ「次元転送装置はロジェの部屋の先にある!さぁ行くぞ!」
ユーゴ「クロウ、大丈夫かな?」
遊勝「彼が体を張って守ってくれているんだ、それに報いるしかない。」
3人は暗い廊下を奥へ奥へと駆けていくのだった。
短編 お手本にするべきエクシーズ
-LDS校舎内-
零児「零羅、まずはエクシーズ召喚をお前にマスターしてもらう。そのために昨日1日黒咲を観察する課題をやったな?」
零羅「うん。」
零児「ではそれを参考にしつつこのモンスターエクシーズを召喚してみなさい。」
零羅「そんなカードなどいらん!」
零児「!?」
零羅「瑠璃ィィ!」
零児「…。」
零羅「俺はレベル3のCCC隻眼のパスト・アイ2体でオーバーレイッッ!!!」
零児「口調から入ったか。。」
零羅「ランク3ッッッ!!!」
零児「もういいわかった、私が悪かった。今度ユートにきちんと教えてもらおう。きちんとな。」
終わり