龍牙は目を開くと、そこには一面の木々が広がっていた。
「森か……どこの森だ?」
周囲を見回すがあるのは木、木、木、ばかり、龍牙がバビロニアに土地勘があっても、これでは分かるものも分からない。
「取り敢えず森を抜けないとな……歩いては時間掛かりそうだし、飛ぶ方が早いな」
そう言うと
「すぅ……はぁ……懐かしい空気だな」
グルっと見渡すが、森と荒地しか見えない。
「ん、あれは?」
龍牙は空から何か落ちてくるのが見えた。
「もう少しレイシフトの人間の事を考えて欲しいね」
【創造龍:
龍牙は創造龍の鎧を纏うと、落ちてくる何かに向かい加速する。
「うおぉぉぉぉ!」
「マスター! 手を!」
立香はマシュと彼女に引っ付くフォウはこの第7特異点にレイシフトしたのだが、その先は地上から遥か高い空だった。
「フォォォォウ!」
立香とマシュは互いに手を伸ばすが、掴めずにいた。
「流石にこのまま落ちたら死ぬよ、君等」
「「えっ」」
立香とマシュが振り返るとそこには龍牙が楽しそうに此方を見ていた。
「「龍牙さん!?」」
「助けはいる?」
「「はい!」」
「
「了解」
龍牙は2人にそう答えると、2人の手を掴む。すると彼等の落下速度が遅くなり始めた。そしてゆっくりと地上へと降り立った。
2人の手を離して鎧を解除した。
「さて……取り敢えず怪我はない?」
「えっ……はい」
「大丈夫です」
「ならっ良かった」
立香とマシュはまだ龍牙を警戒している様だ。少し距離をとっている。
「さて……俺には君達に対する敵意はないよ。邪魔をするなら話は別だけど」
「龍牙さん、まずはありがとうございます……貴方は一体何が目的なんですか?」
立香は龍牙に問う。
『それは僕達も聞きたいな』
通信機から声が聞こえてくる。どうやらロマニ達の様だ。
「目的は世界を救い、人類を見定める事さ」
『見定める?』
「取り敢えず歩きながら話そうか、さっき飛んだ時、都市の方向は粗方分かったんでな」
龍牙は歩き出すと彼等も後に着いていく。
『さっきの見定めるとはどういう意味だい?』
「次はダ・ヴィンチちゃんか……そのままの意味さ。
人類が存続するに値するかどうか……人の、正確には星の支配する種族を裁定する事が、俺の役割だからね」
「もし人類が存続するに値しなければ……」
「勿論滅ぼす。そして次に星を支配する種族が生まれるのを待つだけだ」
『ちょっと待ちなさいよ! 貴方にどんな権利があってそんな事をするつもり!?』
「次は所長か……どんな権利と言われてもな。
母より生まれた時から、俺はその権利を持ってるからね。だからこそ母は創造と破壊の力を与え……ぁあ、そう言えばそっち方面はあまり話してなかったか」
龍牙はバレても問題ないので、以前の世界の事を省いて、自身の事を話した。
『えっとつまり根源は意思を持っていて、君は根源から生まれた?』
「そう……まぁ、お前達の言う【根源】って言うのは
『そして君は生まれながら星の生命を裁定する存在』
「その通り。幾つもの世界を裁定してきた……必要があれば破壊し、次の種族に機会を与える」
『つまりは滅ぼす?』
「そうだ……破壊なくして新たな創造はない。必要なら宇宙新生から始めるだけさ。
安心していいよ、この世界はまだ滅ぼす必要ないからね。だからこうして世界を救おうとしてる」
『……【まだ】ねぇ』
「まださ。俺はこの世界の人類に絶望してはないさ、だって目の前にボロボロになっても未来の為に頑張ってる人間もいる訳だしね」
龍牙はそう言うと、立香とマシュを見る。その言葉の意味に気付いた2人は顔を赤くする。
「取り敢えず……出てきたらどう?」
龍牙がそう言うと、木の影から白い服を来た男とフードを被った少女が出てくる。
「おやおや気付いてたのかい?」
「うわぁ……花を纏った大男とか怪しい」
「本当だ!」
「怪しいです!」
それぞれ警戒態勢を取る。
「あれぇ? こんな優しそうなお兄さん居ないよ?」
「気持ち悪い事を言わないで下さい」
男は少女にそう言われる。
「冗談はさておき……花の魔術師マーリンだな。それでそっちは……少し神性を感じる」
「おや、私の事を知ってるのかい? こっちはアナ、私達はギルガメッシュ王に召喚されたサーヴァントさ」
『マーリンだって!? あのマーリンなのか?!』
「ドクターうるさい……それともう1つ気配があるんだけど」
龍牙はそう言うと、後ろの方の木を見る。
「やぁ、始めまして。カルデアのマスター達、安心して欲しい。僕に敵意はないよ」
木の影から出てきたのは緑の髪の男にも、女にも見える人物だった。
「なっ!?」
龍牙はその人物が誰なのか直ぐに理解出来た。何故ならこの時代で生きていた時に、共に生活していた者なのだから。
「エルキドゥ」
「エルキドゥ?」
「おや僕の事を知って……っ!」
エルキドゥと呼ばれた人物は龍牙を見ると急に頭を押さえる。
「エルキドゥだが……何だ、この違和感は……お前は一体誰だ?」
「何を言ってるんだい、僕は「エルキドゥならまず一発ぶん殴ってくるか、飛び付いてくる筈なんでね」」
龍牙は己の知るエルキドゥと目の前のエルキドゥの違い気付き指摘した。
「……記憶にあった、君は龍牙か」
「(記憶?)そうだよ、お前は……」
「まだ時期じゃなかったみたいだね」
エルキドゥにそっくりな人物はそれだけ言うとその場から消えた。
(外見、声、魔力、動作はエルキドゥそのものだ。それに記憶とは……一体何があった、ギル? エルキドゥ?)
彼は自身がいない間に何があったのか分からなかったが、異常が起きているのは確かだった。
~王宮~
玉座に座る女帝は粘土板を見ながら笑みを浮かべた。
「帰ってきたか……遅い」
「王、如何なさいましたか?」
女帝の側に控えていた女性が声をかける。
「奴が帰ってきた、序でに星見の者共も一緒の様だ」
「まことですか!? それは大変です! 急いでお出迎えの用意を致しませんと!」
「せんでいい、他の者達には伝えるな」
「承知しました」
「後、分厚い粘土板を用意しておけ」
「はい……何に使われるのですか?」
「勝手に出ていって、帰るのも遅い奴は一発叩いてやらねば気がすまん」
「フフフ、そうですか……」
女王と女性は待ち人が帰って来たことに歓喜していた。