EP89 いざ、バビロニアへ
~【無】~
龍牙が拠点する空間、彼は此処に帰還し自分の部屋で次の特異点へ向かう準備をしていた。
「さて……第6特異点は藤丸君達が攻略した様だし、残るはバビロニアか。久しぶりに帰れるか。
ただ神代だけあってマナが濃いか。俺は別として現代の人間には毒だな……取り敢えず用意だけはしておこう。
バビロニアはかなり不安定だな。神が数柱いる? そりゃ不安定にもなるか、俺も力を使うなら連れていけるのは……って翁は抑止力に呼ばれて先に行ってるのか。なら連れて行けるのは最大2人か」
色々な情報を頭に叩き込む龍牙。
「はぁ……神か。どんな神が召喚されてるかは知らんが、出来ればアレは使いたくないなぁ。でも神が相手となると使わない訳にはいかないかぁ」
龍牙は机の引き出しに仕舞っていた何かを取り出した。どうやらそれはアルバムの様だ。アルバムを開くと懐かしそうにそれを見ていた。
「失礼します、マスター」
「ん? ジャンヌとオルタ、スカサハか。何の用だ?」
「次の特異点についてよ……って何見てるの?」
「あぁ、昔の写真をな」
ジャンヌ達はそれを聞いて興味を持ったのか、アルバムを覗く。龍牙は見たいならどうぞとそれを譲った。
「へぇ、小さいマスターちゃんか……」
「ほぉ……これが写真とやらか。誰でも扱えるのだったな」
「あぁ、俺のいた時代では此処まで小さくなってるし、写真だけでなく離れた人と会話も出来るし、調べものも出来る様になったよ」
龍牙はそう言いながらスマートフォンを机の上に置いた。スカサハはスマートフォンを手に取り興味深そうに見ていた。
「成程のぉ……こんな便利な物が出来るなら魔術や奇跡が廃れるのも頷ける」
「まぁね……文明を発展させる毎に、自然への感謝や大切な事を忘れていったのは言うまでもない。だから俺の世界では神が攻めて来た。本来であれば仕方ないことではあるけど、あっちの神々はあまりに傲慢だったから俺が戦った訳さ」
龍牙はそう言いながら椅子に深く座る。
「マスターは……後悔はないの?」
「後悔?」
「最後には裏切られたんでしょ?」
ジャンヌ・オルタはそう聞いた。
「後悔はないかな……家族が無事に過ごせるならそれで良かったんでな」
「そう……これは?」
ジャンヌ・オルタは少し悲しそうな顔をしていたので、それ以上は聞かず、アルバムに目を落とすと小さい頃の龍牙と同じくらいの年頃の男児が写っていた。
「ねぇ、マスター、これは誰?」
「ん? ……これは」
龍牙は頭に手を当てて誰なのかを思い出している様だ。
「ぁあ……小さい頃から一緒だった奴だ。小さい頃から色々遊んでた」
龍牙はそう言う、しかし家族の話をしている時とは違いその声には感情は籠ってなかった。
「仲良かったの?」
「あぁ……」
「そう……」
3人は龍牙の態度に不思議に思ったが、また嬉しそうに家族の話をし始めたので気にしないことにした。
龍牙は準備を整えるとサーヴァント達を呼び出した。
「と言う訳で向こうの状況次第で呼ぶので準備していてほしい」
「ウム……何時でも呼ぶがいい」
「分かりました」
「承知!」
龍牙の言葉にそれぞれ返答する。すると彼の身体が光に包まれ始めた。
「おっとそろそろ時間か……じゃあ、また」
その言葉を最後に龍牙は旅立った。