俺のFateな話   作:始まりの0

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EP85 決戦開始

 言峰綺礼の一件を解決して数時間後、龍牙はセイバー陣営、アーチャー陣営、ライダー陣営を大聖杯のある大空洞に呼び出していた。

 

「さて良く集まってくれた。呼び出たのは言うまでもない、聖杯に関してだ……まぁ見ての通りの状況だけど」

 

 

「これは一体……」

 

 彼等の前に広がっていたのは、大空洞を埋め尽くすどす黒い泥だった。泥は大聖杯から溢れだしており、光の壁に阻まれ、大空洞からは漏れだしていないが凄まじい量だ。

 

「サーヴァントは勿論、人間もそれには触れない方がいい。今は結界で封じ込めてるけど、何か取り込んだらしく泥だけが溢れてきた」

 

 

「これがこの世全ての悪(アンリ・マユ)……何ておぞましい」

 

 目の前の泥を見て、その異様さを身で感じたマスター達。

 

「これを機に、問題を一気に終わらせよう」

 

 龍牙はそう言うと自身の横の空間から何かを取り出した。

 

「「あっアハト翁!?」」

 

 取り出したのは、現アインツベルンの当主、ユーブスタクハイト・フォン・アインツベルンだった。

 

「さてと……奥さん、ちょっと此方に」

 

 

「私?」

 

 龍牙が呼んだのはアイリスフィールだった。彼女は何をするのか分からなかったが、取り敢えずそれに応え龍牙の横に来る。すると龍牙はアイリスフィールの胸に腕を突き刺した。

 

「!?」

 

 

「アイリ!? 妻に何を!?」

 

 それを見て切嗣とセイバーか動こうとするが、ジャンヌがそれを制する。

 

「大丈夫です、マスターを信じて下さい」

 

 

「取り敢えず、その体を普通の人間にする」

 

 そう言って龍牙はアイリスフィールの心臓を抜き取る。そして反対の手を上げると光が集まり黄金の果実が出現する。

 

「心臓を1から創る」

 

 黄金の果実から光が溢れ、アイリスフィールの身体を包み込んだ。

 

「これでよし……」

 

 

「あれ……なんともない?」

 

 

「そりゃそうだ、アンタを殺すつもりはないからね。アンタの聖杯の機能と引き換えに心臓を創っただけだ。ついでに人間並みの命を与えた」

 

 目の前で起きた事が理解出来ていない一同。

 

「命与え……心臓を創る……」

 

 

「……」

 

 魔法……いやそれを越えるであろう奇跡を目の当たりして呆然としているマスター達。

 

「さて……取り敢えずこれを、フンッ!」

 

 龍牙はアイリスフィールから抜き出した心臓をアハト翁の身体に入れる。

 

「ぐっ!?」

 

 

「聖杯が欲しかったんだろ? だったらお前が聖杯になってしまえばいい……それじゃ、逝ってらっしゃい」

 

 アハト翁を持ち上げると、大空洞に向かって投げた。

 

「「えっ……ちょっ」」

 

 周りの者達が止める間もなくアハト翁は結界を砕き、泥に落ちた。

 

 この世、全ての悪(アンリ・マユ)はアハト翁を逃がすまいと、泥を無数の触手の様に動かし、アハト翁を飲み込んだ。

 

「今のアレには器がない……だから与えてやったまでのこと。そうじゃなければアレは形を定めないからな。

 

 ほらっ、本命が出てくるぞ」

 

 龍牙はそう言うと、歩を進め大空洞に入る。

 

 

 

 大空洞に広がった泥が全て、一ヵ所に集まり、ゆっくりと人の形になっていく。

 

「なんだ……あれは?」

 

 

「人? ……いや、まさか」

 

 

『ふぅ……やっとまともな形でこの世に出れたか』

 

 現れたそれは死人の様な白い肌、黒いドレス。その姿はアイリスフィールと全く同じだった。

 

「あれは私……いや違う。もしかしてユスティーツァ様」

 

 それはアイリスフィールの元となった人物、かつて根源へと至る為に聖杯へとなった冬の聖女ユスティーツァ・リズライヒ・フォン・アインツベルンだった。

 

『ほぉ……我の後継か』

 

 

「どうして貴女様がそんなお姿に!?」

 

 

『さてな……何故、我の人格を再現されたかは分からぬが……言える事はただ1つ。

 

 早く我を滅ぼすがいい』

 

 

「へぇ……象っただけでなく、人格も……しかも正気を保っているとは」

 

 

『そなたは……そうか、そなたが異なる時間より来た者か』

 

 ユスティーツァは龍牙は見てそう呟く。

 

 どうやら、ユスティーツァの姿だけでなくその人格も再現した様だ。そして彼女はその意思でこの世、全ての悪(アンリ・マユ)を抑え込んでいる様だ。

 

「俺の事を……まぁいい。さて冬の聖女よ。

 

 俺はその後ろの大聖杯ごと、アンタを破壊する。問題は?」

 

 

『ない……今は我が抑えているが、直にこの世、全ての悪(アンリ・マユ)はこの街を、世界を飲み込むだろう』

 

 

「だろうな。さっさと終わらせて……」

 

 龍牙の言葉の途中で、ユスティーツァの足元から泥が溢れだし、そこから無数の何かが現れる。

 

「Aaaaaaaaa!」

 

 

「「「キシャシャシャ!」」」

 

 それは雁夜のサーヴァントであったバーサーカー、綺礼のサーヴァントであったアサシン達、そして無数な虫だった。

 

「おいおい……蟲爺とバーサーカーはともかくアサシンまで取り込んで居たのか、成る程、だから神父との契約が切れてたのか。

 

 言っても仕方ないか。アンタ等は此処から奴等を出すな、俺が力を解放するまで時間を稼いでくれ。

 

 ギル、お前は慢心で取り込まれない様に」

 

 

「慢心せずに何が王か! ……と言いたい所であるが、お前の言う通りにしよう」

 

 

「お前が素直に聞くなんて……」

 

 

「おかしいと言うのか?」

 

 

「うん……お前が素直に言うこと聞くなんてシドゥリやシャムハトに怒られてちょっとの間だけでしょ?」

 

 

「我とて成長しておるわ!」

 

 

「おふざけは此処まで……さて始めるか!」

 

 この特異点最後の戦いが今始まる。

 

 

 




・ユスティーツァ

アイリスフィールやイリヤの原型となった人物。此度は何の悪戯か、姿と共に人格が再現され顕現。生前の意思を失っていなかった為に、己の意思で少しの間、アンリ・マユを抑えていた。


・アサシン(ハサン)

何時の間にかアンリ・マユに取り込まれていた。


・蟲爺

不老不死を目指した間桐の当主、バーサーカー共にアンリ・マユに取り込まれた。意識は消え去り、身体を形成していた蟲だけが残った。

・バーサーカー(ランスロット)

蟲爺と共に取り込まれ、アンリ・マユの手先となった。

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