~???~
何処か分からないが、3つの人影確かにそこに在った。3つの影は並々ならぬ存在感を放っている。
「それで東に突然現れた【奴】についてだが」
3つの内、一番巨大な影がそう言った。
「俺も見てきたが、【奴】は異質な存在……下手すれば一万年前に現れた
光りを放つ影がそう言う。
「馬鹿な……
「視線だけで神を消滅させられる様な存在が厄介でないと?」
光を放つ影の言葉に巨大な影ともう1つの影が驚いているのだろう、影が歪んで見えた。
「視線だけで…消滅だと…」
「あぁ、肉体も魂も消滅した。何とか隙をついて俺が無理矢理に【奴】が出て来た【穴】に押し込んだが……正直、生きた心地がしなかった」
光を放つ影の言葉に何も言えなくなった2つの影。
「【奴】は始めは俺達にも気もつかず何かを探している様だった」
「何かを探す……何をだ?」
「さぁな……でも、ウルクの方向を向いていた。俺から言えるのは【奴】は
「……【奴】の目的は分からないが、もしウルクに来るような事があれば」
「確実に終わりだな」
光を放つ影ともう1つ影が話を進める中で、巨大な影は沈黙していた。
「シャマシュ…マルドゥク」
巨大な影は2つの影をそう呼んだ。
光を放つ影、シャマシュ……真実と正義、冥界、占いを司る神であり、太陽神でもある。
もう1つの影、マルドゥク……エア神を父に持ち、世界と人間の創造主とも言われる神だ。
「「アヌ神」」
2人の神が巨大な影に向かいそう言う。
アヌ神……天空、星の神、神々の王であり、エア・エンリルと三柱神の1人である。
「此度の事……恐らく一万年前よりも最悪な事になるだろう」
アヌの言葉によりシャマシュとマルドゥクは驚きの顔をしている。神々の王でさえ、今回の事を重く見ているのだ。
「だが退く訳にはいかん、我が退けば人も、この星も終わる……何としても止めなくては」
~???~
龍牙はボロボロな廃墟となった街で目を覚ました。
「あぁ……またこの夢……って事は」
空は灰色の雲で染まっている。空を見ると、雲の間から一筋の光が龍牙に降り注いだ。
「普段は眠ってるのに何の用だ?」
【奴が来る……もう直ぐ我が片割れがこの世界に来るだろう。どうか、奴を止めて下さい……奴は嘆いている、哀しんでいる、求めている】
「そっか……あぁ、分かったよ。でもさぁ、もう少しこの風景なんとかなんない?」
廃墟となった街を見ながら龍牙は空に向かってそう言う。
【無理だ、此処は貴方の心象。どうにもならない】
~深夜 龍牙の部屋~
「なんでだよ?!俺の心象ってあんなのなの?!」
夢から覚めた龍牙はそう叫んだ。
「………はぁ、ん?」
龍牙は身を起こそうとしたが、右手が重く身を起こせなかった。
「くぅー……すぅ」
横を見てみると、美しい金色が目に入った。
「此奴……また人の腕を枕代わりに………」
何故か龍牙の腕を枕にして眠っているギル。龍牙にしては3~4日に1回は寝惚けて龍牙の所に来る、ギル。どうしてこうなったかのかと言うと、陽気の良い日に昼寝していた龍牙、ギルはそれを見つけ、自分も陽気に負け寝てしまったのだ。その時、偶々龍牙の腕を枕にしたのが始まりだ。
それをルガルバンダに見られて、何とも言えない恐怖を味わったとか。
「しかしまぁ……こうして黙ってりゃ可愛いんだけどなぁ……これが成長したら慢心の塊になるなんて……考えたくないなぁ……」
寝ているギルを見て、成長した彼女の事を考えてみた。慢心の塊となったギルに使い回されて、ボロボロになっている自分の姿しか思い浮かばない。
「はぁ……それよりもアイツの言葉……奴が来るのか……仕方ないか、どうにかして止めないとな」
夢の中で聞いた言葉を思い出しながら、ギルを起こさない様に器用に腕を抜き身を起こした。
「でも話を聞く限り、暴走状態……俺の事も真面に認識するかどうか……取り敢えず素手より武器が必要だよな」
「ふぅん……武器が要るの?」
「おわぁっ!!!いってぇ~!……何時から起きてたの!?」
突然声を掛けられた事で、寝台から落っこちた。頭を打ったのか大きなタンコブが出来ていた。
「『はぁ……それよりもアイツの言葉』がって辺りからかな」
「………それで何が来るの?」
「お前には関係ない……」
「君の話から察すると、それなりの相手が此処に来る。此処はボクの国でもあるんだよ、関係なくないよね」
「…………確かにそれもs……っ?!がぁぁぁぁぁっぁぁ!!」
何かを言おうとした時、龍牙は突然目を押さえて悶え苦しんでいる。ギルも突然の事で慌てている。
「もう直……ぐ……って…早過ぎでしょ……あんにゃろ……」
そう言いながら、何とか起き上がると外が慌ただしくなってきた。
「龍牙様!大変で……ギルガメッシュ様も此方に居られたのですね」
「シャムハト、どうかしたの……外も慌ただしい様だけど」
「そっそれが……このウルクに魔獣が迫っています!」
ギルはその言葉に驚きを隠せなかった。たかが魔獣如きがウルクに来る事自体ありえないのだ、このウルクの国にはアヌやシュマシュなど多くの神々に護られている。故に魔物如きが近付くことはできない。
「ただの魔獣じゃない……」
「龍牙様?」
「【破壊】【破滅】【死】……奴はそれ等を具現した様な存在だよ、奴は」
今はギルもシャムハトも誰も龍牙の言葉の意味が理解できなかったが、直ぐに龍牙の言葉の意味を身をもって知ることになった。