~ロンドン~
「
「
「グッ!…………なんなのだ!貴様等は!」
「「駄肉はそぎ落とす!」」
黒い槍を携えた女神に向かい、剣を向けてそう言う2人のサーヴァント。
事の始まりは数十分前に遡る。
~数十分前~
魔霧を発生させていた元凶マキリ・ヴィルゾン、ニコラ・テスラを倒した立香やマシュ達の前に現れた黒き聖槍を携えた王。
「あれは……いいえ、彼女は間違いなくアーサー王です」
『残った魔霧の殆どを吸収しながら現界している!まずいぞ、この魔力量は!』
通信でDr.ロマンがそう解析を行うが、言うまでもない目の前に居る彼等がその力を肌で感じていた。
「オレを「セイバ――――!」
黒き槍を持つ騎士王に向かって何かを言おうとしたモードレッドの言葉を遮る様に斬り掛かった存在がいた。セイバーと叫びながら斬り掛かるサーヴァントなど1人しかいない、ヒロインXである。
黒き槍を持つ騎士王は槍でXの剣を受け止め、弾き返した。
「へぇ……もう此処まで来たのか、早いね、藤丸君」
立香達が振り返るとそこには龍牙とそのサーヴァント達が立っていた。
「マスター!アレですか?!聖槍を持って駄肉を手に入れたアルトリアは?!」
「「駄肉?」」
言葉の意味が分からない、騎士王アルトリア・ペンドラゴン(セイバー)とアルトリア・リリィは首を傾げる。
「そうです!良く聞きなさい!そっちのアルトリア!アレはアルトリアの裏切り者です!」
「どう言う意味だ!?」
「こういう意味です!」
―ビシッ―
何かにヒビが入る音がした、すると黒き槍を持つアルトリアの鎧にヒビが入り砕け散った。
そして現れたのは大きなお山が2つである。
「「はっ?」」
それを見たヒロインXとアルトリアは唖然とした。リリィはキラッキラッした目で黒い槍のアルトリアの胸を凝視している。
「「はあぁぁぁぁぁぁ!?」」
ヒロインXとアルトリアの声が重なった。
「ちょっと待ちなさい!何ですか、それは?!」
「あっあそこまで大きい………だと」
驚愕している2人を見ている槍のアルトリアだが、まるで意志がないかの様に微動だにしない。
それもその筈、この黒い槍のアルトリアはマキリの詠唱により呼び出された存在であり、彼女は現在暴走状態にあり真面な会話ができる状態ではないからだ。
「こっちは聖剣2本持ってもちっとも大きくならないのに、聖槍で大きくなるとか」
「ふっ………フフフ………フフフフフフフ……なんですか、それ?」
おっと、ヒロインXとアルトリア(騎士王)の様子が可笑しい様だ。異変を感じ取った龍牙と立香はそれぞれのサーヴァントに近付いた。
「「削………す……落と……削ぎ落とす!」」
彼女達はどうやらずっと同じ言葉を繰り返している。
「うわぁ………」
「怖っ!」
龍牙と立香はそんな彼女達を見て、そう呟いた。
「マスター………魔力回して下さい、あの駄肉を削ぎ落とします!宝具を使います良いですね?分かりました!全力でマスター(と私)の敵は倒します!」
マスターである龍牙は何も返事を返していないのに、1人で話を終えたXは何時もの聖剣と黒い聖剣を装備して構えを取る。
アルトリア(騎士王)も同じ様にマスターを説得したのか、聖剣を構え、何時でも真名解放できる様に剣へと魔力を流す。
「アルトリアとの共闘とは考えていませんでした」
「私も貴女に背を預けるとは思いもしませんでした」
「言いたい事はありますが……」
「えぇ、考えている事は分かります……」
「「先ずはあの駄肉を削ぎ落とす!」」
ヒロインXと騎士王の心が1つになった。
全ては
~現在~
「こうして、現在に至ると………もしもの為に結界張ったけど…………ハハハ、ギル達が喧嘩した時みたいな惨状だ」
現在の状況を説明する龍牙。
ロンドンの街が段々と廃墟と化していく。
「さてと………流石、ロンドン全域を覆っていた魔霧を取り込んだ事はある。
聖槍の加護があるとは言え、こうも均衡するとは………仕方ない、他のサーヴァントが参戦すると怒るだろうから………ヒロインX、全霊を持って敵サーヴァントを倒し、勝利を手にせよ………令呪を2画を持って命じる」
このままじゃ、埒があかないと考えたのか龍牙は自分の右手の龍の形をした令呪がに意識を向け、ヒロインXへ命令を出した、使用した令呪は役目を終え消えた。
「分かりました!マスターに勝利を奉げましょう!」
令呪の力により強化されたヒロインX。その手に持つ2振りの聖剣が今まで以上に輝きを放つ。
「ならっ、俺も」
戦闘が激しかった為に、下がっていた立香が自分も令呪を使おうとする。
「止めときなよ、藤丸君。これから黒幕が出て来るんだ、令呪は残しておいた方がいい」
龍牙はそう言うが、立香はどうしてそんな事を知っているのかと考えるが、今は戦闘が先だ。出そうになった言葉を飲み込み手を降ろした。
「青いセイバー!かましなさい!」
「いいだろう!『束ねるは星の息吹!輝ける命の奔流!受けるがいい!』」
騎士王、アルトリア・ペンドラゴンの持つ星の聖剣が刀身に黄金の光を収束させていく。
それを見た、黒い聖愴を携えた王は自らの槍の力を解放させた。
「『聖槍、抜錨………突き立て、喰らえ、十三の牙!』」
黒い王の持つ槍が凄まじい魔力を放ち、槍が回転を始めた。そして魔力の奔流がまるで槍が巨大化した様な状態となる。
「【
「【
聖剣より放たれし金色の魔力の奔流と黒い聖槍より放たれた黒い魔力の奔流がぶつかった。
―結界を維持するのも………あっやべっ、凄い魔力消費―
2つの魔力の衝突により、龍牙の張っている結界が破損しそれを修復する為に彼の魔力が物凄い勢いで持って行かれている。
拮抗している金色と漆黒の魔力が巨大な爆発を起こした。
「ぐっ!」
黒い王は直ぐに体勢を立て直そうとする。しかし、彼女は忘れていた………もう1人の
「『星光の剣よ………赤とか白とか黒とか………
ヒロインXはその手に持つ2振りの聖剣から発した魔力をブースター変わりにして、黒い王へと凄まじい速度で接近した。そして懐に入り込むと2振りの聖剣で黒い王を滅多斬りにした。
「『ミンナニハナイショダヨ!【
最後に大きく聖剣を振りかぶり、掛け声と共にX字に斬り裂いた。その一撃が黒い王の霊核を完全に破壊した。
「…………そうか………終わりか………フフフ」
黒い王はそれだけ言うと、完全に消えてしまった。
「フフフ!見ましたか!マスター!私の勝利です!」
「あっ……うん」
嬉しそうにそう言うヒロインX。だが龍牙は後ろに居るモードレッドが気になっていた。
「父上に出番、取られた………でも父上、かっけぇ……ぅう」
アルトリアとヒロインXに出番を取られて落ち込み、暗い雰囲気を出しながら地面に「父上」と書き続けているモードレッド。
真後ろでそんな事をされては気にならない訳がない。
「まぁ、なんにせよ、悪は滅びました!」
「帽子の私の言う通りです!悪は去りました!」
ヒロインXとアルトリアに関しては、スッキリとした様で、満面の笑みを浮かべ互いに笑い合っていた。
「………取り敢えず、それでいいか。さて……君等は少し休むといい」
龍牙は立香にそう伝える。彼等は未だ龍牙の事を警戒している様だが、疲労も在ったのでそれに従った。
元凶である王の降臨まで、後少し………彼の王と邂逅した龍牙は一体どうするつもりだろうか?
と言う訳で、今回はアルトリアとヒロインXがメインでした。