~船上~
「フハハハハハハ!どうだ、ヘラクレス!」
「■■■■!!!!」
宝物庫より射出される英雄殺しの宝具……ヘラクレスはそれを石斧で叩き落としていく。だが数が多過ぎる為に幾本かはヘラクレスの身体に突き刺さってしまう。
どうやって英雄王が龍牙の身体を乗っ取ったのかは分からないが、今言える事は唯1つ。
現在、この場で行われているのは神話の英雄の戦いだ。
「子守をしていなくてもこの程度か、ヘラクレス?」
「■■■■―――!!!」
ヘラクレスはそう言われると、咆哮を上げ、飛んでくる武器を弾くとギルガメッシュに突撃を始めた。
「そうだ!そうでなくてはな!」
ギルガメッシュは宝物庫から巨大な剣を取り出すと、それを振るいヘラクレスの攻撃を受け止めた。
「ヘラクレスが押されているだと?!ありえない!最強の英雄であるヘラクレスが……何なんだ、あの女は!?」
「いっイアソン様、落ち着いて下さい!」
イアソンは押されているヘラクレスを見て、焦っている。それを落ち着かせようと、彼の隣に居た彼の妻……メディア・リリィが窘める。
「おいおい、あの女、ギルガメッシュって言ってたけど………まさか、あの英雄王が女だったとは驚きだねぇ」
ヘクトールはギルガメッシュとヘラクレスの戦いを見て、そう言った。
「ッ!いい加減に離しなさいよ!」
拘束されているエウリュアレは暴れるが解けそうにない。
「って何よ、アンタは!?」
「「「ん?」」」
エウリュアレの声に気付いたイアソン、メディア・リリィ、ヘクトールは彼女の居た方向を見る。
そこにはエウリュアレを抱えた沖田がいた。
「あっども……貰って行きますねぇ~」
「サーヴァントか、させる訳ないz……メディア!防御!」
ヘクトールは何かに気付くと、メディアに声を掛けた。彼女は直ぐに防御の魔術を使い結界を張った。
次の瞬間、上空から飛来した無数の矢と閃光が結界に直撃する。
「チッ、一瞬遅かったのぅ……決まっておれば、蜂の巣に出来たのに」
「流石はメディア……展開は早いか」
皆が見上げると、そこには空を飛ぶ黄金の舟に上に立つ信長とアタランテがいた。
「まぁ防御されようと……儂等は自分の役割を果たすだけじゃがな!」
「往くぞ!」
信長の周りに無数の火縄銃が展開し銃弾を撃ち始め、アタランテも矢を放ち始めた。
「ヘクトール!何とかなりませんか?!」
「こうも多いとな……おじさんもそう簡単には手を出せないなぁ」
絶えず放たれる攻撃を見て、どう見ても手を出せそうにない。その隙にエウリュアレを抱えた沖田がその場を離脱した。
「ひぃ!」
一方イアソンは絶えない攻撃に小さく悲鳴を上げていた。
~ギルガメッシュside~
「ハハハハハハハ!」
「■■■■!!!」
剣と巨剣がぶつかり、火花を散らせている。どう見ても、ギルガメッシュは楽しんでいる様にしか見えない。
「っ……と」
一瞬だけ、ギルガメッシュがふらつくが直ぐに体勢を立て直した。
「ん?どうやら……龍牙のサーヴァントは目的を達成した様だ。仕舞いか……致し方ない。友よ!」
ギルガメッシュは沖田達がエウリュアレを奪取した事に気付くと、宝物庫から最も信頼する宝具を呼び出した。
宝物庫から飛び出したのは神を縛る、盟友の名を冠した鎖だ。
「■■■■!?」
「神を縛る鎖だ!貴様の様に神性が高い者は逃れられん!以前は逃れたが、今回はそう簡単にはいかんぞ!」
そう言うと、ギルガメッシュはその手に黄金の鍵を呼び出した。
「仮初の身である故に全力では放つ事は出来ぬが………手向けとして受け取れ」
黄金の鍵を捻るとそこから赤い水晶の様な物が広がり、やがて彼女の手に1振りの剣が呼び出された。
それは剣と言うには歪な形だが、放たれる力は確かな物だった。
「起きよ、エア」
かつて天と地を引き裂いた乖離剣は主に応える様に、刀身を回転させ始めた。
「
次元を斬り裂く一撃が放たれ、ヘラクレスを飲み込んだ。
「ふぅ………中々に面白かったぞヘラクレス」
倒れるヘラクレスを見ながら彼女はそう呟いた。
「ギルガメッシュ……」
「流石は英雄王……大した物だ」
「ほぅ……龍牙のサーヴァントか……全く我が居ながらこの様な美女を侍らせるとは……それで1つ聞くが、此奴とはもう寝たのか?」
ジャンヌとスカサハに声を掛けられたギルガメッシュは彼女達にそう聞いた。
「ねっ……あぅ」
「残念ながら儂は未だだ………もう少しマスターを見定めてからだな」
ギルガメッシュにそう聞かれると、顔を真っ赤にするジャンヌ。スカサハに至っては恥じる様子もなくそう答えた。
「チッ………戻ってきたら思い知らせてやる」
「そっそうではなくて、何故貴女がマスターの身体を!?」
「ヘラクレスと龍牙が戦うのを知った故に介入させて貰った。
今の我は鍵に残る思念…………全力は出せぬが中々に楽しめたぞ」
ヘラクレスと龍牙が戦う事を知り、彼の持つバウ=イルの中に在ったギルガメッシュの思念がヘラクレスと戦う為に出て来た様だ。相変わらず何をしでかすか分からない女帝だ。
「お主とマスターはそう言う関係か?」
「フッ………もし、貴様等が此奴に手を出すので在れば気を付ける事だ。中々に手強いぞ……
ギルガメッシュはスカサハの言葉にそう言うと、彼女の姿が段々と変わっていく。
「フム……時間か。まぁ思念だけではこの辺りが限界か」
ギルガメッシュの姿が龍牙へと戻った。
「いつつ………ギルの奴、ぐぅ……人の身体を乗っ取りやがって……しかも魔力で身体を無茶苦茶に動かしやがったな……」
「マスター、大丈夫ですか?」
「あぁ、心配掛けたな……道理で変な感じだった訳だ……戦況は?」
「フム、どうやら沖田達は上手くやった様だぞ」
「なら、撤退。舟に戻ろう……後、動けそうにないので助けて貰えるとありがたいんだが」
どうやら乗っ取られた影響で身体が動かせそうにない様だ。
「分かりました。では飛びますよ」
「儂が反対側を支えよう」
龍牙は両側から支えられると、飛び上がりそのままヴィマーナへと乗り込んだ。
「おい、師匠!?龍牙の坊主は……」
「セタンタ……お前には教えた筈であろう、どの様な力でも使い方が問題だと。確かにマスターの力は危険な物だろう、しかしマスターがどう言った人間か考えれば分かるだろう?」
「ッ……」
龍牙の力の事を伝えようとしたクーフーリンはスカサハにそう言われて、黙ってしまう。
「まだまだ未熟よな……」
「いたた……じゃあ、行くか」
龍牙が思念を送りヴィマーナが動き始める。
「今だ、ヘクトール!やれ!やってしまえ!」
攻撃が止んだ時、イアソンがそう叫んだ。
「はいはい、恨みはないが………!?」
ヘクトールは宝具を解放しようとするが、何かを感じ振り返った。だが何かはヘクトールやメディア達の間を駆け抜けた。
「聖杯は頂いたぞ!」
「なっ……何時の間に!?」
駆け抜けたのは牛若丸だった。彼女の手には黄金の杯が握られていた、どうやらヘクトールが黒髭から奪った物の様だ。
彼女は直ぐにヴィマーナに飛び乗った。
「くっ!」
「甘いわ!」
「させん!」
ヘクトールが急いで宝具を発動させようとするが、アタランテと信長の攻撃により邪魔された。その間にヴィマーナはかなり離れてしまった為に攻撃不可能となった。
「はぁ……完敗だねぇ」
「敵は私達の隙をついて全て退却、聖杯も、エウリュアレも奪われました……負けですね」
とヘクトールとメディア・リリィはそう呟き、戦闘は終了したのである。
~戦闘終了後~
ヴィマーナの玉座に座る龍牙。どうやらギルガメッシュに身体を乗っ取られた影響が抜けていない様だ。
「主殿!聖杯を取ってきました!」
「流石、牛若…………良くやった!」
「はい!あの……出来れば頭を撫でて頂ければ」
「ご苦労様」
と牛若丸の頭を撫でる龍牙。
「でアンタ、誰よ?」
キッと龍牙を睨めつける女神・エウリュアレ。
「あっどうも、女神エウリュアレ。無皇 龍牙と申します」
「それで私をどうするつもりよ?」
「さぁ……どうした物ですかね?あぁ、アステリオスも他の輩も無事で済んでご安心を」
「そう……」
アステリオスが無事と聞いて安堵するエウリュアレ。
「取り敢えず……合流ポイントに行きますか」
龍牙はある場所に向けて、ヴィマーナを動かし始めたのである。
「はわぁ~……主殿の撫で方は極楽ですぅ」
気が付けば犬を撫でまわす様に、牛若丸を撫でていた龍牙。そして、何故か彼の頭の上に金の延べ棒が落ちてきたのであった。