~???~
「此処は」
「ジャンヌ殿!目が覚めましたか!」
星々が輝く宇宙の様な場所で目を覚めましたジャンヌ・ダルク。彼女は声を掛けられ、そちらの方を見てみるとそこには牛若丸、邪ルタ、沖田、信長がいた。
「皆さん、御無事でしたか……あれ、マスター?」
周囲を見回すが龍牙の姿がないことに気付いた。
「アイツはいないわよ。此処も何処だか分からないし」
「私達も急に此処で目を覚まして何がなんやら」
「魔力はマスターから来ておるから無事だとは思うが……それにしても落ち着かんのぉ、浮いていると言うのは」
邪ルタ、沖田、信長がそう言う。彼女達は目を覚まして此処にいたらしく、立っているのではなく浮いていた。まるで宇宙にいる様な感じなのだろう。
「本当に此処は何処なんでしょう?」
―此処は世界が始まった場所―
「誰!?何処にいるのよ!」
周囲に声が響く、たがこの場には龍牙のサーヴァントである彼女達以外は居ない。
だが、彼女達の前に巨大な光の渦が現れる。ジャンヌ達はそれに驚く。その渦は段々と小さくなり人の形に変わる。
そこに現れたのは女性……だが人間でないのは言うまでもない。全身から眩い光を放っており、右眼は人間と変わらないが、左眼は白眼が黒く瞳が白くなっている。
ジャンヌ達は突然現れた、この女性を警戒していた。
―私、敵じゃない。貴女達を呼んだのは、私―
「アンタ、誰よ?」
―私は……貴方達が根源と呼ぶ者―
「「「「!?」」」」
「何故、貴女は私達を此処に呼んだのですか?」
ジャンヌ達が驚く中、牛若丸は根源にそう尋ねた。
―私、息子が心配……あの子は裏切られた。
あの子は泣いていた「ただ普通に暮らしていたかっただけ」だと……「俺は人として生きていたかった」と。
でも人間はその力が自分達に向けられるのを畏れて、「化物」「怪物」と言って石を投げた、罵った―
女性はそう言うと、ジャンヌ達の後ろを指差した。
するとそこに、スクリーンの様に何が映し出された。
『化物!』
『本当に恐ろしい』
『やはり怪物は怪物か』
『人の振りした化物め……よくも家の人を!』
そう言って人々は巨大な鎖で拘束されている少年に向かい、石を投げ、鈍器で殴り、罵倒し、銃で蜂の巣にされた。だが少年の傷は少しすると治癒してしまう。
少年はただ黙ってそれを受けていた。その一方的な暴力は七日七晩続き、そして最後には【神を殺した槍】と呼ばれる無数の槍で全身を貫かれ、少年は息絶える。 亡骸となった少年に向かい、人々はまだ暴力の手を止めない。
その光景を見て、ジャンヌや沖田達は涙する。
酷すぎる……例えどんな悪人であっても、死をもってその罪を罰せられる。だと言うのに、死して尚、人々は少年を責め続けられているのだから。
―だから私は我慢出来なかった……愛しい子がこれ以上、侮辱されるのが。だから幾度、あの世界を滅ぼそうと考えたか……でもそれではあの子の願いが叶えられない。だから我慢した。
だけど、私はこれからもあの子が裏切られ続けるのは嫌…………だから貴女達にも知ってもら……―
【グオオォォォォォォ】
【ガアアァァァァァァ】
2つの龍の咆哮が響く。
「母よ……これは一体どう言う事?」
巨大な純白と漆黒の2体の龍と共に現れたのは、自分達のマスターだった。
―久しぶり。会いに来てくれなかったから、お母さん寂しかった―
「その姿を見るのは久しぶり………と言うか、抱き締めないで下さい」
―反抗期?―
「反抗期ではなく、恥ずかしいんだけど」
―むぅ………昔は喜んで胸に飛び込んできたのに―
「小さい頃の話ね。俺はもうそれなりの歳なんだけど」
―お母さんに欲情?……バッチ、来い―
「しません」
―何故?小さい頃は「お母さんをお嫁さんにする」って言ってたのに……お母さん、悲しい―
「いい加減にしないと嫌いになりま……―分かった、おふざけ止める―」
龍牙にそう言われると、大人しくなった
2人のやり取りを見ていたジャンヌ達。
「「「「「………」」」」」
「えぇ~と………」
「あっあのマスター……その……お母さんと言うのは」
「うん……此方、俺の魂の母親かな。肉体はちゃんと人間の母親がいるし」
「フム、成程のぅ……根源が母親とは……これは色々と説明して貰わねばならんな」
と龍牙の後ろにスカサハが現れた。
「……とっ取り敢えず、何が在ったのか状況の説明しよっか」
~状況説明中~
「成程……未知の特異点でネルガル神を倒したマスターは、そのまま
「もぐっもぐっ………ゴクッ………そう言う事。それで、母よ……何故、
食事をしながら龍牙はあった事を説明した、次にジャンヌ達が何故此処にいるのかと聞いた。
―
この子達は貴方のサーヴァント。万が一にも疑いの目で見られる可能性が在る、後ついでに貴方の事を教えておく必要が在った―
「そういう事………俺の事については伝える必要はなかったでしょう?」
―そんな事はない。また貴方が裏切られるの見たくないから―
どうやら、彼女……【無】は我が子が裏切られるのを見たくないと言う親心から彼女達を此処に連れて来たらしい。
「まぁ……そのありがとうございます」
―デレた。可愛い―
「はぁ……これからどうするか」
―我が子、スルースキル身につけた。ぶぅ~―
「母よ………俺は少し休みたい。ジャンヌや牛若達も疲れているだろうし……場所を用意して頂けるとありがたいのだが」
―貴方の空間はそのまま……好きに使えばいい。次の特異点へは私が送る……今回の事に関しては【アラヤ】も【ガイア】も協力的だから簡単―
「じゃあ、皆、取り敢えず行こうか」
「えっ……はい」
龍牙はジャンヌ達を連れ、その場から消えた。皆が居なくなったのを確認すると、【無】が手を振ると机等が消えた。
代わりに、彼女の前に何かの映像が現れる。
少女が深い暗闇の中で寝ていた………この少女は悲しいのか涙を流している。
―同じ母として、貴女には同情する………だけどあの子が救ってくれる。あの子なら……きっと裏切られた気持ちが分かるから………だから今はお休み―
【無】は映像に映る少女に向かいそう言った。そして【無】は映像を消すと何処かに消えた。
~???~
私を呼ばないで……起こさないで……。
もう――たくない。だから眠った……なのに、私は呼ばれた。
いや……もぅ――たくない。
彼女は願う……己が本能により傷付ける事を。
あの子等も、間違いなく己が子なのだから。だから傷付けたくない……だけど彼女の本能がそれを許さない。
だから願う。
―わたしを さないで―