俺のFateな話   作:始まりの0

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EP36 泡沫の夢

 ―取り敢えず、なんだかんだでサーヴァントを数体倒してこの特異点の中心、大阪に来た。飛び過ぎ?と言っても特に変わりなかったし―

 

 

「それにしても……皆、ぐだぐだだったな」

 

 これまで倒したサーヴァント達の事を思い出して俺はそう呟いた。ゲーム通りに進んだのだが……残るは大阪、つまり豊臣秀吉ならぬ

 

 

「フハハハハハハハハハ!よく来たな雑種共!」

 

 

「……うわぁ~こんな形で再会かぁ」

 

 そこにいたのは俺が良く知る人物だった。

 

 

「我が名は黄金郷ジパングの主にして人類中世の英雄女帝、豊臣ギル吉である!黄金も、茶器も、この世の財は総て我の物!」

 

 

「相変わらず揺るがないなぁ……本来なら変な発言する筈なんだけど……」

 

 

「まさかこの様な形で再会するとは思わなかったぞ、龍牙(愛しき者)よ。まぁこれは一刻の夢の様な物だ………夢だから、龍牙の隣に誰が居ようと関係ない。夢だから、お前を殺そうと問題ない」

 

 

「あっ滅茶苦茶怒ってる」

 

 ギル吉の眼には光が無くなっている、笑顔なのに眼が笑ってない。どうやらご立腹の様である。彼女にとっての一刻の夢とは言え、龍牙の周りに美少女がいるのを見たのが原因だろう。

 

 

「龍牙さん、あの金ぴかお知り合いで?」

 

 

「主殿……斬っていいですか?」

 

 

「知り合いだよ……取り敢えず皆は下がってね。牛若も落ち着いて………アイツは豊臣要素が混ざってても英雄王だから……っておわ!!もう撃ってきた!?」

 

 沖田と牛若丸と話していた龍牙なのだがギル吉はもう既に我慢の限界の様で、バビッてきた。彼はそれを走りながら回避する。

 

 

「死ね!この浮気者がぁーー!!」

 

 

「待て、待て!彼女達とはそう言う関係じゃないってば!」

 

 

「そう言って女を落とすのが貴様であろうがぁ!ウルクでも一体何人の女を落としたと思っている!?」

 

 

「全く覚えがありませんけど!?」

 

 

「この鈍感がぁ!」

 

 雨の様に降り注ぐ宝具、それを避けてはいる龍牙。相手は混じっているとは言え、英雄女帝ギルガメッシュ。それに加えて、彼女は龍牙の癖も戦い方も熟知しているので次第に龍牙の身体に宝具が掠り始めた。

 

 

「やばっ!」

 

 龍牙は次第に状況が悪くなっている事に気付くと、エンキを呼び出した。

 

 エンキを使い回避しきれない宝具を弾いていく。

 

 

「くっ……『ジャラ』ん?」

 

 龍牙は飛んできた宝具を一通り弾き飛ばすと、次の回避行動を取ろうとするが足に冷たい感触と鉄の音がした。

 

 

「えっ天の鎖(エルキドゥ)

 

 天の鎖(エルキドゥ)……ギルガメッシュの盟友の名を冠する神を縛る鎖。龍牙に神性はないので唯の丈夫な鎖でしかないが、一瞬の隙を作るには十分だった。

 

 

「チィ!ならっ創造龍の翼(クリエィティス・ウィング)!」

 

 龍牙は創造龍の翼(クリエィティス・ウィング)を呼び出した。既に宝具は放たれていたが、龍牙は余裕の表情を見せている。

 

 全方位、死角から放たれた宝具……だが創造龍の翼(クリエィティス・ウィング)には創造龍の意志も宿っている。創造龍は主を護る為に動き始めた。

 

 かつてウルクでギルとエルキドゥの攻撃を真面に受けていた翼が、ギル吉の宝具を弾き飛ばす。

 

 

「ギル!これで夢は終わり、目を覚ます時間だ!」

 

 龍牙は創造龍の翼(クリエィティス・ウィング)が宝具を弾き飛ばしている間に、エンキを弓形態にすると矢を番い構えていた。そして矢は放たれた。矢はギル吉の胸を貫いた。

 

 

「フッ……全く……相変わらずだ」

 

 ギル吉の霊核は龍牙により完全に破壊された。身体も光になって消えて行っている。だが彼女は龍牙に向かい歩き出す。

 

 

「なんで避けなかったんだ?お前なら回避できただろうに」

 

 

「なに……そろそろ、戻ろうと思ってな。この泡沫の夢は心地が良い……しかし目覚めの時間だ。王としてウルクに戻らねばならん」

 

 

「そうか」

 

 

「龍牙よ……ウルクに戻って来るので在れば早く来い」

 

 

「あぁ……そうするつもりだよ。だからもう少し待っててくれ」

 

 龍牙は知っていた、7つ目の特異点がウルクで在る事を……。

 

 

「全く……大事な時にお前は我の傍に居らんとは……従者失格だ。チッ時間がないか……」

 

 

「うっ……あの時はあぁするしかなか……むぐぅ」

 

 消えそうになっているギル吉……もとい英雄女帝ギルガメッシュは龍牙の首に掛かっている宝物庫の鍵……バウ=イルを掴み引っ張る。バウ=イルにはエルキドゥの身体から作った鎖を通しているので、引っ張られようと千切れはしない。

 

 なので、龍牙も引っ張られてる。その結果、龍牙が前のめりになりギルの方へと倒れそうになったが、柔かい何かに当たる。

 

 

「むがっ、うぅぅぅぅぅ(何コレ?!と言うか息できねぇ)!!」

 

 倒れそうになった龍牙を自分の胸で受け止めたギルガメッシュ。かなり役得ではあるが……かなり強い力で抱き締められている為、呼吸ができなくなっている。

 

 

「フム……懐かしい感触だ……ん?……シドゥリが起こしに来たし、目を覚ますとしよう」

 

 ギルガメッシュはそう言うと、この特異点から完全に消滅した。

 

 

「はぁはぁ……死ぬかと思ったけど……まぁ……元気そうで何よりだったな」

 

 龍牙はそう呟くと、息を整え立ち上がった。

 

 改めて彼は決意する、1日でも、1秒でも早くウルクに戻ろうと。先程、ギルガメッシュと接触した際に龍牙には見えた。バウ=イルを通して少しだけギルガメッシュの記憶が流れ込んできた。そして知った……特異点となったウルクの状況を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「王よ、お目覚めですか?」

 

 

「あぁ……随分と愉快な夢を見た」

 

 

「夢ですか?」

 

 

「フフフ……懐かしい奴に出会った」

 

 

「?」

 

 

「さて……シドゥリ!今日も政を始めるぞ!」

 

 

「おっ王!?今日くらいはお休みに……ってもう居ない?!」

 

 

「フハハハハハハハハ!往くぞ、シドゥリ!」

 

 

「全く……貴女と言う方は」

 

 総ては国を、民を護る為に王として彼女は戦い続けている




・今回の設定

ギル吉……賢王のギルガメッシュが見た一刻の夢。最後にバウ=イルを通して現在のウルクの状況を龍牙に伝えた。

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