俺のFateな話   作:始まりの0

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特別編
バレンタイン【ウルク】


 ~ウルク~

 

「……チョコレートが食べたい」

 

 

「「ちょこ?」」

 

 ウルクの城の自室で仕事をしていた龍牙が突然そう言い出した。ギルガメッシュとエルキドゥは龍牙のベットの上で横になっており、龍牙の言った「チョコレート」が何なのか分からず首を傾げている。

 

「俺がいた時代に在った菓子だ。甘くて美味いんだ、これが。時々、無性に食べたくなる」

 

 

「いずれ人類が産み出す物なら我が庫に入っているだろう……まぁ日頃それなりに頑張っている貴様の為に開いてやらんこともない」

 

 

「チョコレートと言えば、バレンタインか」

 

 

「「ばれんたん?」」

 

 

「起源は確かローマにいた司祭の人だったか。

 

 好きな人や世話になった人に女性がチョコレートレートを渡すんだ。渡すチョコレートにも義理と本命があったな、懐かしいなぁ」

 

 

「ほぉ、面白そうな行事だな……それで貴様は貰えたのか?」

 

 ギルガメッシュの言葉に固まる龍牙。

 

「龍牙なら女性にモテると思うよ、優しいし……」

 

 

「まぁ……それは認めるがな。で、どうなのだ?」

 

 ギルガメッシュは面白い答えを期待しているのか笑みを浮かべている。

 

「もっ貰ってたよ……(母親と妹から)本命を」

 

 龍牙もやはり男なので多少は見栄を張りたい様だ。

 

 ギルガメッシュは望んでいた答えではなかった為に黙ってしまった。

 

(誰からも貰えなかったのかと思い笑い飛ばしてやろうと思っていたが………(色んな女に)貰っていたとは)

 

 言葉と言うのは言い方によってはどうとも取れるのである。ギルガメッシュはチョコレートとやら女性から貰った龍牙を想像する。

 

「まぁ、言ってもしk「エルキドゥ、龍牙を縛れ」えっ?」

 

 

「うん、分かった」

 

 エルキドゥは戸惑う事もなく、直ぐに龍牙を自分から出した鎖で拘束する。

 

「なんで?!エルキドゥももう少し戸惑うとかはないのか?」

 

 

「ギルが意味もなくそんな事は言わないからね」

 

 

「エルキドゥ」

 

 

「連れて行くんだね、分かるとも!」

 

 エルキドゥはギルガメッシュが何を言いたかったのか直ぐに理解すると、龍牙を抱き上げた。

 

「ちょっと待て!これはダメ!恥ずかし過ぎる!」

 

 それは俗に言うお姫様抱っこである。

 

「さぁ、逝こうか?」

 

 

「字が違うー!」

 

 

 ーいやぁぁぁぁ!ー

 

 その日、エルキドゥにお姫様抱っこされた龍牙の姿牙王。城内で見られ、一時期噂になったのは言うまでもない。

 

 

 

 ~ギルガメッシュside~

 

 (わらわ)は英雄王ギルガメッシュ。神と人との間に産まれた存在。

 

 別世界の未来より来た、我が従者である龍牙。我の中では龍牙は無くてはならない存在である。しかし勘違いするでないぞ、あくまで従者としてだ……唯、龍牙が他の女と居るのを見ると無性に腹が立つ。

 

 主である我をこんなにも腹立たせるとは、不敬なので毎回、難題を言って困惑させてやる。疲れ、困っている奴の顔を見ると我が満たされる。今も、奴の慌てる姿が……ウム、愉悦。

 

 まぁ、それなりに感謝はしておるのだぞ。奴のお蔭でエルキドゥとも出会い友となり、奴の気遣いで民への配慮が行き届き、民もそれなりの暮らしをしている。

 

 そして今回、チョコレートとやらの事を聞いた。後、バレンタインと言う行事の事も。何でも有象無象の女共から、チョコレートを貰ったとか……その姿を想像する。殺意が湧いてきたが、女共を取り払い、そこに我を置いてみる。ウム、悪くない……寧ろ、良い。

 

 臣下に褒美を与えるのも王の役目。エルキドゥに龍牙を拘束させ、我は厨房にやって来た。

 

 

 ~side out~

 

 

 

 

 ~厨房~

 

 この場にいるのは、龍牙(拘束)、ギルガメッシュ、エルキドゥ、シャムハトだけである。その他の者は全て退出させた。

 

「と言う訳でチョコレートとやらを作るぞ」

 

 

「おっー」

 

 やる気を出すギルガメッシュとエルキドゥ。シャムハトはそれを暖かい目で見守っていた。

 

「作り方、知ってるのか?」

 

 

「我を誰だと思っている?英雄王ギルガメッシュなるぞ、菓子と1つや2つ簡単に作ってみせよう!」

 

 そう言ってエルキドゥと共に調理を開始したギルガメッシュ。

 

「はぁ……」

 

 

「大丈夫ですか、龍牙様?」

 

 

「あぁ……ちょっと疲れてるけど、まだ徹夜3日目だ。まだいける」

 

 

「そっそれは大丈夫ではないかと……」

 

 

「大丈夫さ、最高で1ヶ月半は徹夜したし」

 

 

「……もしかして、王とエルキドゥ様の時の」

 

 

「あの時は……ヤバかったな」

 

 

「大変でしたね」

 

 それはギルガメッシュとエルキドゥが初めて会った時、宝具が飛び交い、天地開闢の名を冠する力の衝突、それ等により起きた衝撃波、飛来したする宝具や瓦礫。

 

 市民達は龍牙の張った結界により、負傷者はでなかったものの、建物などへの被害が大きく、加えて戦いによる騒音で市民達は悩まされていた。戦いが終わってからは、後始末で龍牙が眠れなかったのは言うまでもなかった。

 

「はぁ……眠い」

 

 普段から徹夜とは言え、流石に睡魔が襲ってきた様だ。

 

「出来たぞ」

 

 

「嘘っ!?」

 

 龍牙がシャムハトと話していたのが1時間くらいだ、普通は豆から作るのであれば数時間~数十時間は掛かる筈なのだが。

 

「そんな訳が……出来てるし」

 

 龍牙は立ち上がり、ギルガメッシュとエルキドゥが作ったチョコレートを見てみると、しっかりと出来ていた。

 

「すげぇ……高級店みたいだ。と言うかどうやってこんな短時間……」

 

 龍牙が周囲を見てみると、至る所に宝具が散らばっていた。

 

「フフン!」

 

 

「何かを作るって言うのは面白いね」

 

 どや顔をしているギルガメッシュと、楽しそうな表情のエルキドゥ。

 

「では食うがよい!味は保証しよう、何故なら我手ずから作ったのだからな!」

 

 拘束から解放された龍牙がチョコレートに手を伸ばそうとすると、シャムハトがギルガメッシュとエルキドゥに何かを耳打ちする。

 

「なに……しかし、それは」

 

 

「ふぅん、それで龍牙が喜ぶならボクはいいよ」

 

 顔を赤くするギルガメッシュ。エルキドゥは別にいいんじゃないと言う顔をしている。

 

「良く分かんないけど、頂きm『ジャラ』えっ、また!?」

 

 再びエルキドゥの鎖で拘束された龍牙、再びエルキドゥに抱えられて、この場を後にした。

 

 

 ~龍牙の自室~

 

「……へ?」

 

 彼の自室のベッドこの上に座っているギルガメッシュ。彼女の膝の上に頭を乗せている龍牙。つまりは膝枕状態だ。そしてエルキドゥは龍牙の上に覆い被さっている。

 

「こっこれは一体……なにごと?」

 

 

「シャムハトがこうすると良いと言うからな、美の結晶である我の膝で寝れるなど、貴様くらいしか居らんのだ。感謝するといい」

 

 

「こんな事で龍牙の疲れが取れるなら何時でも言ってね」

 

 

「では食え……あっ……あ~ん」

 

 

「あ~ん」

 

 先程作ったチョコレートレートをギルガメッシュとエルキドゥが摘まみ、龍牙の口へと運んだ。

 

 ー旨かったが誰にチョコを貰ったのかと聞かれて、正直に話してしまい、殴られたのは言うまでもないー

 

 

 

 

 ~翌日 早朝~

 

「ふぁ~良く寝た」

 

 ギルガメッシュ達にチョコを食べさせて貰い休んだ龍牙は、寝起きが良かった。

 

「ん~……ん?」

 

 ふっと横を見てみると、幾つかの箱があった。

 

「何だ?」

 

 龍牙は良く分からなかったが、一先ず木箱を開けてみた。

 

「これは焼き菓子か……もぐっもぐっ……これはシャムハトの味だ。後でお礼を言おう、残り2つ」

 

 残り2つの箱は木箱ではなく、宝石や金等を散りばめた装飾箱だった。

 

 赤い箱には、金で形作られた弓の様な装飾と宝石のネックレス。黒い箱には、金で作られた槍の様な装飾と水晶のブレスレットだった。

 

「誰からだ?……この槍は何処かで見たような……はて?」

 

 誰からか分からなかったが、懐に仕舞い、仕事へと向かった。

 

 

 

 

 ~???~

 

「あの方は……よっ喜んでくれたかしら?喜んでくれたわよね?だって私自ら、マアンナを型どって作った物だもの……ギルガメッシュと泥人形が作った菓子より喜んでくれるわよね」

 

 好きな男の事を神具を使い盗み見していた女神は、喜んでいる好きな男の事を想像し顔を赤くした。

 

「アイツなんかに負けてられないのだわ。かっ彼の死後は私の傍にいて貰って………家で疲れた私を出迎えて貰う。いい……いいわ。その為にもアイツの魔の手から彼を守らないと」

 

 半身である女神から男を守る為に、強いては自分の未来の為に孤独な女神は明日も頑張るだろう。


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