~炎上する都市~
「起きて下さい、先輩達」
「あぁ……」
「うぅ……」
声を掛けられ目を覚ました龍牙と藤丸は辺りを見回した。何処を見ても火、火、火……炎に包まれている。しかし先程のカルデアスの前ではない、もっと広い空間だ。
「ふぅ……やっぱ此処って…それにしても」
「?……ところでマシュ」
そう言って2人はマシュの方に視線を向ける。マシュは先程までの白衣と眼鏡ではなく、眼鏡を外し(特に腹部)露出の多い恰好になっており、大きな盾まで持っている。
((露出多いな……))
と2人してマシュを見ている。
「あっあの何でしょうか?」
「いや……気にしないで」
《グギャァァァァ!》
2人は異質な叫びに気が付くと、振り返る。そこに居たのは10体程の剣を持った骸骨だ。カタッカタッと音を鳴らしながら骸骨……スケルトン達は此方に近付いている。
「意志疎通は無理そうな生物……敵です!先輩達は下がっていて下さい!」
マシュは盾を構え2人の前に出る。しかし此処で下がる龍牙ではない。
「無皇先輩?」
「あの程度、1人で十分」
そう言うと龍牙は身体を動かしている。
「でっでも相手は」
「うん……大丈夫。マシュ、君は藤丸君に近付いてくる奴等を倒してくれ」
龍牙は自分の魔力を全身に行き渡らせ、身体を活性化させるとスケルトン達の群れに突っ込んだ。
「よっと!」
魔力で強化した拳で群れの一番後方にいたスケルトンの頭部を殴る。スケルトンも魔物ではあるが、はっきり言って強いとは言えない。殴ったスケルトンの頭は簡単に砕けてしまった。
「………もっとカルシウム摂れよ」
龍牙はそう溜息を吐いていると、剣を持った6体のスケルトンが襲い掛かって来た。
「ひぃ……ふぅ…みぃ……6体か、残り3体は藤丸君達の方に行ったか、ほぃ」
一番始めに襲ってきたスケルトンの剣を避けて奪うと、その勢いで襲ってきたスケルトンを斬る。
残り5体。
奪った剣で次に襲ってきた2体を斬り、刀身を確認すると刃が大きく欠けていた。
残り3体。
「本体だけでなく、剣まで脆い……まぁギル、エルキドゥと倒した神代の魔物とか比べるのは間違いか……おらっよっと!」
欠けた剣は投げると1体のスケルトンの頭に突き刺さり、バラバラになって崩れた。
残り2体。
「はぁ……この1年、真面に戦ってないから感覚鈍ってるなぁ」
再び溜息を吐いて、居ると声が聞こえてきた。
『無皇さん!後ろ!後ろ!』
「藤丸くんの声……うしろ?」
龍牙の後ろには残っていた2体のスケルトンが剣を振り上げ立っていた。本人は気付いていないが、何時の間にか近付いてきていた。そしてその剣は振り下ろされた。
立香はマシュに指示を出していた。
「マシュ!前!」
「はい!行きます!」
マシュは立香の指示の元、簡単に3体のスケルトンを倒した。
「戦闘終了です、先輩」
「あぁ……お疲れ様、マシュ。無皇さんは?」
「それがあちらで……危ない!」
「えっ……あっ!?無皇さん!後ろ!後ろ!」
立香は、溜息を吐いている龍牙の後ろで2体のスケルトンが剣を振り上げている事に気付くと直ぐに声を上げた。
龍牙はそれに気付いた様で、此方に顔を向けている。だが次の瞬間に剣は振り下ろされた。マシュは龍牙を助ける為に駆け出そうとしているが間に合う訳はない。
「「えっ?」」
剣が振り下ろされたと言うのに、龍牙は平然と立っており、近くには折れた剣先が突き刺さっている。剣を振り下ろしたスケルトン達に至ってはただ折れた自分達の剣を見ている。
そして、龍牙はスケルトン達の頭を掴むとそのまま握り潰した。
「ふぅ……終わった、終わった」
そう言って平然と此方に歩いてくる龍牙。
「無皇さん!怪我は!?」
「ないよ」
「いやでも、斬られてましたよね?!」
立香の問いにそう答えるが、2人は目の前で剣を振り下ろされているのを見ていたので黙っている訳にはいかない。
「大丈夫、鍛えてますから…………アレくらいなら防げるよ」
「「えっ!?」」
「ハハハ、アレ位で死んでたらアイツ等と付き合ってられないし……君達の方は怪我はない?」
2人はその問いに「問題ない」と答えた。こうしてこの時代での初戦闘を終えた。