ボクは孤独で在った。神と人との間に生まれた故に、他者とは異なり、視えているものも、考え方も違う。神が人に対する楔として創られたのがボクだ。
他者がボクを畏れ敬う、ボクは神の子であり、王になることを約束された身だから当然の事なのだ。しかし、中には怪物を…異質な物を見るような目で見てくる輩もいる。
ギルガメッシュは完成された完全な存在だ。その容姿も、思考も、性格も、力も何もかもが完全な存在。
それを嫉妬する者もいる、畏れる者もいる、敬う者もいる。ギルガメッシュを特異な目で見る者達が殆どだ。
そんな人間達を「自分達と異なる存在を恐れるのは当然だ」と考え、そんな人間達に呆れながら過ごしていた彼女に変化がおきる。
偶々散歩していた時に見つけた1人の少年だった。ウルクでは見た事のない服を着て、荒野の真ん中で眠っている。そして、自分の見通す眼をもってしても見透せないその少年に興味をもった。
目を覚ました少年はボクの方を見ると、ボクがギルガメッシュであるか尋ねてきた。ボクは此処でこの少年がどんな反応をするか試したくなった。
少年に自分がギルガメッシュであり、未来の王である自分に、神の血を持つ自分に不敬な態度をとって命乞いはしないのかと?聞いた。
普通であれば命乞いをしてくる場面だ。
『知らん、例え神の血が流れていようと、なかろうと子供は子供だ。第一!俺は神が嫌いだ!』
とギルガメッシュの予想に反する答えが返って来た。それによりギルガメッシュは少年を気に入り城へと連れ帰って従者にした。
しかし、少年……龍牙は従者であっても態度は変わらず
『王子?知らん。神の血?神は嫌いだ、俺にとって意味はない。お前は俺と同じ子供だ、何故同じ子供を敬わないといけない』という感じだ。
試しに敬語で話させてみたが……正直気持ち悪かった…何処がと言われれば分からないが生理的に受け付けない様に嫌だった。
つい先日、このウルクに神々さえも消し去る破壊龍が迫って来た。
驚いた事にその龍は元々、龍牙に宿っていた存在。龍牙自身も異世界の未来から来た者で、
産まれながらにして強大な力を持ち、人間の傍にあって人間とは異なる存在。
それはボクと似た境遇の身でありながら、自分の意志を貫き、その力をもって驕った異世界の神々を倒し、最後には護った筈の人間に裏切られた。
その話を聞いた時、ボクはなんて馬鹿で、お人好しなんだろうと思った。でも……だからこそ、龍牙は龍牙たりえるのだとも思った。
アレから2年……ボクは
奴は1年前に突然、旅に出た。世界を知りたい等と抜かしてこの国から出ていきおった。
奴が居なくなってと言うもの、毎日が詰まらん。退屈だ………政を行い、法を作りながらもつい奴がいた筈の隣を見てしまう。本来で在れば奴の頭脳と知識を使いウルクを整えるつもりで在ったが……居ないならば仕方がない。
「もう直ぐ1年経つな……そろそろ戻ってくる頃合いか……もしも女など侍らせ帰って来ようものなら……どうしてくれよう?」
そんな事を考えながら原初の女王は従者の帰りを待つ。
果実を食べつつ、フッと戻って来た龍牙の隣に自分以外の存在が居ると考えて見る。
考えて見ると何故か無性に腹が立ち、持っていた果実を握り潰していた。女王はこんなにも腹が立つのか分からなかったが……もしそんな事があろうものなら……。
ー
と考える女王。しかしその考えを下らないと思った。
「そう言えば母上が奴が帰ってくるのだからと香油やらを持ってきたな………何故その様な物を持ってきたのだ?」
母である女神リマト・ニンスンが近頃持ってくるのは、我が身を飾る装飾品やら香油。その様なもの、我が庫に腐る程ある。母はそれを知っているのに何故に持ってくるのか女王は分からなかった。
母と言えば、我が父であるルガルバンダ先王はある事に夢中になっている。それは「教育」だ。
父は龍牙の未来の話に出てくる【学校】という者を、龍牙が旅に出る半年程前に設立した。何でも身分に関係なく子供達が学べる場所だとか。
ルガルバンダはそれを聞くと、直ぐ様【学校】を建てた。貴族や王族だけが教育を受け、平民は受けれない。
ー平民と言うだけで学に差が尽くのは間違いだ、貴族であろうと平民であろうと人間には未知なる才能は眠っているー
と龍牙が言った事が始まりだ。
故にルガルバンダは【学校】を作った。読み書き、武術、計算などを小さい内から出来る様になれば、その中で才能を開花させる者もいるだろう。そうなればこの国の未来も明るくなるからだ。
しかし貴族の中にはそれを良く思わぬ者もいる故に、ルガルバンダ直々に貴族、平民を差別せずに勉強を教える者達を選び自分自身もそれに加わっている。以前に【学校】とやらを見に行ったが素晴らしいの一言であった。
貴族も平民も関係なく子供達が切磋琢磨に勉強に、武術に励み競い合う。醜い貴族の争いを日々見てる
子供達には此処に入る段階で、【学校】の中では身分は関係ない説明している。頭の固い大人では簡単にはいかないが、純粋な子供達であれば直ぐに打ち解けたのだろう。
一番驚いたのは、父ルガルバンダである。我の記憶の中では父が笑っている事はあまりなかった。何時も王たらんとする父はそう簡単には笑わなかったが、此処では笑っていた。
最近は頻繁に宮殿に顔を出し、龍牙が帰って来たか?孫の顔が見たい!としきりに言ってくる。
確かに少しの事で死ぬ人間にとって世継ぎは大事であるが、この身には神の血が流れる故にそう簡単には死なないので、未だ世継ぎを作る気などないし、
父と母にそれを言うと大きなため息を吐かれ、2人揃ってやれやれと肩を竦められた。
そんな事を思い出していると、シャムハトがやって来た。
「ギルガメッシュ王!」
シャムハトにしては珍しく慌てている。どんな事があっても大概は落ち着いているのに。
「どうしたシャムハト。お前がその様に慌てるなど、余程の事があったのか…また魔獣でも攻めてきたか?それとも巨人か?」
「龍牙様がお帰りになられました!」
ギルガメッシュはそれを聞くと、先程考えていた事を思いだし覇気が溢れだす。
「そうか、やっと戻ったか……何一つ連絡も寄越さずに……よし、疾くと此処につれてまいれ」
そして原初の女王は従者と再会するのであった。
11/29日、少し修正しました。