それは世界が始まる前の話。
世界には何もない……所謂【無】であった。
その【無】の中で1つの意志が産まれた。意志は永い時の中で何も無い事に詰らなく思い、意志は2つの概念を産み出した。
1つは【創造】……【無】より何かを生み出し、世界を創り出す。
1つは【破壊】……世界を壊し、創造により生み出した物を【無】へと還す。
【無】の意志はこの2つはどの様な状況においても変わらない法則とした。
【無】の意志はこの2つの概念に意志を与えた。そして言った。
-今の世界は何も無い。故にお前達はこれより万物を創り壊せ-
【無】の意志は【創造】と【破壊】にそう言い付けると、【創造】と【破壊】はその言葉通りに世界を創り、時が経てば壊すという事を繰り返す。
何かを創り、壊していく。だがそれは単純な作業に過ぎない。2つはこれを繰り返しながら時を過ごした。【創造】は星と言う存在を産み、それを【破壊】が壊そうとした時、変化に気付いた。星に自らの意志で動き回る者達を見つけた。【創造】と【破壊】はこれを【無】に報告する。
【無】はこの者達に『進化』『繁殖』『心』『光』『闇』と言う概念を与えた。
-産めよ、増えよ……そして汝等の生き方を私に見せておくれ-
【無】はそう言った。そして【創造】に『生』『光』を司る権利を与え、【破壊】に『死』『闇』を司る権利を与えた。
-お前達はその力をもって生命達を育み、増やし、世界を光と闇で満たすのだ-
そう言って【無】は自分から生まれた場所に帰り見守る事にした。
【創造】は生命を守り、命を与えた。【破壊】は生命に死を齎し、命を刈り取った。永い時の中で生命の中に『人間』と言う存在が産まれた。『人間』は他の種族とは違う進化を遂げた、『人間』は生き残る為に『知恵』をつけ、爪と牙を捨て武器を作り出し、子孫を残し人の営みを行っていく。
【無】がこれを見て1つの事を考えた。【無】は【創造】と【破壊】を呼び出し、目の前で1人の人間の子供を産み出した。
-この子は我が子である。お前達はこれよりこの子に仕え、この子の生き様を見守れ-
【創造】と【破滅】はこの言葉に従い、【無】の子の傍に在り続けた。子は成長し【創造】と【破壊】に姿を与え、名を与えた。
子は生きている中で、常に人間の傍にあった。星の意志たる『神』と言う存在……その中でも傲慢で人間を玩具の様に見る者を、闇より産まれた『魔』という存在と戦った。何故そうしたのか本人にも分からない、ただそうしたかったからである。
時が経ち、子はやがて人間としての生を終えようとする。本来生命は死ぬと魂は輪廻の輪と言う場所に行き、次の生が来るまでそこで留まる。
【創造】と【破壊】はこれを見て、自分が仕える者をこのまま死して他の者の様に輪廻の輪に還していいのか?と。自分達を産み出した【無】の子を……自分達が仕えるべき存在を他の者を……自分達に姿を与え、名をくれた大切な者をこのまま送っていい訳がない。
ならばどの様な時も共に在るべきではないか。【創造】と【破壊】は子が死すと、自分達の一部を子の魂に埋め込み。次なる生へと送った。
その子はまた人間として生まれ、再び『神』と戦う事になった、自分以外の何かの為に………。しかし最後は『人間』に裏切られました。
これに【創造】と【破壊】は怒り、『人間』逹に滅ぼそうとしましたが………子が守ろうとした物を消し去る訳にはいかない。
【創造】は直ぐに子の肉体と魂を復活させましたが、この世界には子の居場所のないと考え、【無】の生み出した『可能性の世界』の1つへと連れて行きました。
【破壊】は子が死ぬ原因となった者達を滅ぼし、『人間』に恐怖を植え付けました。しかし【破壊】は怒りによりその本能に飲み込まれたまま、子の元に向かうことになりました。
~ウルク 神殿~
この場にいるアヌ神、シャマシュ神、マルドゥク神、ニンスン神、ルガルバンダ王、ギルガメッシュはそんな話を聞いて唖然としている。
「まぁそんなこんなで俺は現在此処にいます」
「……信じがたい話ではあるが、あの様な存在を見た以上信じない訳にはいかないな」
龍牙の言葉にそう言うアヌ神。
「1つ聞きたい、もうあの龍が暴走する事はないのか?」
そう言ったのはシャマシュ神だ、この世界の神でありウルクを護る身としてはそれが心配なのだろう。
「ないよ。奴は俺の中で眠ってる……俺が此処に居る以上、暴走する事はない」
「つまり逆に言うなら、龍牙が此処に居る限りは暴走しないけど……龍牙の身に何か在ったら暴走しちゃうってことだよね」
「まぁそうなるな………後、この話は此処だけの話にして貰いたい」
世界の根源など理解できぬ者からすれば恐怖でしかない、故に此処にいる者達だけの話とする事にした。そしてアヌ神、シャマシュ神、マルドゥク神は互いに顔を見合い頷くと告げる
「「「では無皇龍牙、荒ぶる龍を止めし汝を認めよう」」」
こうして龍牙はアヌ神、シャマシュ神、マルドゥク神に認められ、ウルクに滞在できるようになった。
「ねぇ龍牙、そう言えばあの龍達ってなんていうの?」
「あぁ………それは」
ギルに聞かれ、龍牙は告げる。自分が与えし創造と破壊の名を……。
-無より万象を、命を産み出す龍を……
-万物を壊し、死により魂を次の段階へと進ませる龍を……