〜王宮 玉座の間〜
ギルガメッシュが説教をされてから約1週間。
「ギル……仕事が終わらないんだけど」
「此方もだ……」
龍牙とギルガメッシュは山の様な政務に囲まれていた。
「次は……魔獣達に目立った動きがない。何か企んでいるのか?」
「さぁな……問題は三女神同盟だ」
「イシュタル、ティアマト、ケツァル・コアトルか。取り敢えず何処から手をつけたものか……」
「ティアマトに関しては話し合いは無理だ、藤丸達にはイシュタルの方に行って貰う。お前はケツァル・コアトルの方へ行け」
「分かった。出来れば味方に引き込めればいいんだけどな……よっと」
龍牙は立ち上がると粘土板を整理し、出ていこうとする。
「待て」
「ん?」
龍牙はギルガメッシュに呼び止められ、振り返ると、引っ張られる感覚と共に顔に柔らかな感触が襲う。
「……え〜と」
ギルガメッシュの胸に抱き寄せられている龍牙、当の本人は目を点にしている。
彼女は一度龍牙を離すと、彼の首筋に歯を立てた。
「っ……お前は吸血鬼か?」
ギルガメッシュはどうやら彼の血を飲んでいる様だ。
「少しばかり魔力不足でな……後、余計な虫がつかんようにマーキングだ」
それだけ言うとギルガメッシュは彼を離し、そのまま席へと戻っていった。
「マーキングって……そもそも俺を好く奴などそうは居らんだろうに」
「いいから早くいかんか!」
「引き止めたのはお前だろうに……まぁいいや、行ってきます」
龍牙はそのまま出ていった。
「王……偶には素直になりませんと龍牙様に愛想をつかれますよ」
そう言ったのはバターケーキを持ってきたシドゥリであった。
「知らん……それに奴とはずっとあぁだったのだ、今更だ」
そう言ってシドゥリの持つバターケーキに手を伸ばすが、パシッとその手を叩かれた。
「っ……シドゥリ」
「王……龍牙様はかなり良い男性です」
「うっ……ウム、知っておる」
「今は王の大事な方だと分かっているからこそ、誰も手を出す事はありません。しかし王! 龍牙様も男性です! 優しくされればころっと転びますよ!?」
ギルガメッシュはそれはないと考えるが、龍牙が自分以外の女とイチャついてるのを想像し、怒ったらしく、場が怒気に包まれる。
「王、何を想像されたのかは分かりませんが、いい加減にしないとそれが現実になるかもしれませんよ?」
「……そんな事をしている暇はない」
「はぁ…………失礼します」
「なn……あいたっ!」
シドゥリはギルガメッシュの頭に手刀を落とす。そして彼女の顔を両手で掴むと顔を近付ける。
「王……私は……いえ、
今も王のお力なくては此処に居なかったでしょう。故に我々は貴方達に感謝し、信じております。
ですが、それと同時に貴女達には、幸せになって欲しいのです」
シドゥリは母親が子供に諭す様にそう言う。ギルガメッシュはそう言われて照れたのか少し顔を赤くしてる。
「だから少し素直になりましょう。性格は問題ありですが、見た目は美しいのです……もう少し素直に甘えれば龍牙様の心を鷲掴みです!」
「うっ……ウム。ん? シドゥリ、誰の性格が問題だ?」
「王です」
キッパリと言い切るシドゥリ。此処まで言えるのは龍牙やエルキドゥを除けば彼女くらいだろう。
「我の何処が問題なのだ?!」
「あらっ……お分かりではないと?」
ニッコリと笑うシドゥリ、そんな彼女を見てギルガメッシュは思った。藪をつついて蛇を出してしまったと。
ギルガメッシュは衛兵達に目を向けた。
「そろそろ交代の時間だな!」
「ぁあ! 我々は見回りを!」
「異常なし!」
「今日もいい天気だ」
衛兵達は全力でこの場から去ったり、何事もなかったかの様に過ごしている。
(アイツ等ー!)
「何処が問題なのか……じっくりとお話致しましょう」
「まっ待て、待つのだ……」
その日、ギルガメッシュの叫び声が王宮に響き渡った。
龍牙はギルガメッシュの命令を受けてケツァル・コアトルの元に向かってジャングルを進んでいた。
「暑い、蒸す、こういう時はクーラーの効いた部屋に篭もりたい……ああああもぅ! 無理!」
周囲の気温と湿度の高さにより汗を掻きながら進んでいたが、我慢が出来なくなったのか、
「日陰を飛んでいこう、風の力で物が当たらない様にしてと」
【
龍牙の周囲に風が纏わり付き、葉っぱなどが彼に当たらない様になった。
「神殿はこっちの方向だな……じゃあ、さっさと終わらせよう」
龍牙は翼は羽ばたかせると、加速し木々の間に抜けケツァル・コアトルの元に向かった。
「待て! 待てぃ! 此処から先はこのじゃgぶへらっぁ」
「ん? 何か轢いたか? 動物の気配はなかったし、気の所為か……」
主人公、気が付かぬ内に襲撃者を撃退しました。
という訳で次回、ケッアル・コアトル戦です。