俺のFateな話   作:始まりの0

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EP95 賢王と緑の対決

 ~王宮~

 

 イシュタルの件から数日、龍牙は忙しい日々を過ごしていた。ギルガメッシュの政務の手伝い、魔獣の駆逐などを行っていた。

 

 その空いた、立香とマシュ、アナは街の手伝いなどを行っていた。

 

「ふあぁぁ……おはよう」

 

 

「おはようございます、龍牙様……」

 

 目が覚めた龍牙は今日も政務の為に王宮の玉座の間にやってきた。そこにはシドゥリがいた。

 

「どっどうかしたか? 何を怒っているんだ?」

 

 龍牙はシドゥリを見て固まった。明らかに彼女は怒っていたからだ。

 

「いぇ何も……」

 

 笑っているものの、目が笑っていない。

 

「アレ? ギルは?」

 

 玉座の方に視線を向けるが、この椅子の主はいない。

 

 

「朝からいらっしゃいません」

 

 

「ぁあ……それで」

 

 シドゥリが怒っている理由はギルガメッシュがサボっている事らしい。

 

「それでは龍牙様、本日の政務ですが……此方をお願いします」

 

 

「えっ、ちょっと待って! この量を1人で?!」

 

 龍牙の前に積まれたのは山と見間違える程の量の粘土板だった。

 

「はい、王が居られませんので」

 

 

「……ちょっとでも減ったりは?」

 

 

「しません」

 

 

「そっか……でもさぁ、これって王の判断がないとダメな奴じゃ」

 

 

「これを……朝一で玉座に置かれておりました」

 

 そう言ってシドゥリが差し出した粘土板にはギルガメッシュからの伝言が書かれていた。

 

『今日の政務は全て龍牙に任せる』

 

 それを見た龍牙の脳裏には彼女の笑う姿が浮かんだ。

 

「あんにゃろ…………」

 

 

「この政務の山が終わるまでは寝れませんので」

 

 シドゥリの言葉を聞き絶望する龍牙。なんせ目の前の政務は1日で終わる量ではないからだ。

 

 

 

 

 

 

 ~その頃、ギルガメッシュは~

 

「フハハハハハ! それは実に愉快だ!」

 

 ギルガメッシュは立香とマシュと共に天文台へと向かっていた。その道中で立香とマシュからこれまでの旅路について色々と聞いていた。

 

「お前達はこの旅で様々な事を得たのだな……そうか……」

 

 

「龍牙さんには沢山助けられました」

 

 

「はい、龍牙先輩が居なければ私達は此処までこれたか」

 

 

「さて……それはどうかな」

 

 

「「えっ?」」

 

 

「あやつが居なくてもお前達はお前達なりに特異点を超えて来ただろう」

 

 そう笑うギルガメッシュ。

 

「それで気になって居たのだが……貴様等は恋仲なのか?」

 

 

「「ふぇ!?」」

 

 ギルガメッシュの言葉に顔を真っ赤にする。

 

「まままままマシュとはそういう関係では……えっと」

 

 

「そそそそそうです! 先輩は先輩で…………えっと」

 

 立香とマシュは慌てふためき、互いに視線を交わすと更に顔を赤くして俯いてしまった。

 

 その様子を目の前にしていたギルガメッシュ、モニターしていたダ・ヴィンチちゃん、職員達は思った。

 

『君達早く付き合えよ』と。

 

「まぁ、貴様等はまだ若い……多少時間をかけてもよかろう」

 

 そういうギルガメッシュは優しい顔でそう言った。それはかつて暴君と呼ばれた王とは思えなかった。

 

「そう言えばギルガメッシュ王はその龍牙さんとはその……恋人なんですか?」

 

 立香はギルガメッシュにそう聞いた。マシュはそれに反応し顔を上げる。どうやら彼女も興味があるらしい。

 

「そうさな……奴は我の理解者であり、友であり、心を許せる男か」

 

 

「それは……恋人とは違うのですか?」

 

 

「まっ……まぁ……恋人とも言うか」

 

 珍しく顔を赤くするギルガメッシュ。そんな話をしていると海の近くにある天文台に着いた。

 

「我は天文台に行く、貴様らは周囲を見回っておけ」

 

 ギルガメッシュはそれだけ言うと、天文台に入っていった。どうやら彼女は2人に気を使ったらしい。

 

 先程の馬車での会話もあって、互いに目を合わせると顔を真っ赤にしている立香とマシュ。

 

 それを見ていたカルデアは

 

『誰かコーヒー持ってきて! ブラックの濃いやつ!』

 

 

『ぁあもう! なんでアレで付き合ってないんだよ!』

 

 

『焦れったい! ちょっと行ってくる!』

 

 

『レオナルド! その怪しげな薬を持って何処に行くつもりだい!?』

 

 

『レイシフトして2人の仲を進展させてくる!』

 

 等という騒ぎが起きていた。

 

 

 

 場所は戻って特異点では、立香とマシュは周囲を散策していた。

 

「はぁ……」

 

 

「どうしました先輩?」

 

 ため息を吐く立香に声をかけるマシュ。

 

「いや……のどかで此処が特異点だなんて忘れちゃいそうで」

 

 

「そうですね」

 

 そんな話をしていると

 

「これは舐められたものだね……人類最後のマスターの護衛が1人だなんて」

 

 

「「!」」

 

 振り返るとそこには緑髪の人物がいた。

 

「確か……デミ・サーヴァントだったか。半端者なんかでこの僕に対抗できると思ってるのかい?」

 

 それはエルキドゥを名乗る者、自分達の敵だ。

 

 マシュはすぐに盾を呼び出し、立香を庇う様に立つ。

 

 エルキドゥ?は黙ったまま彼らを見て、動かない。

 

「マスター! 彼からは魔術王の気配がします!」

 

 エルキドゥ?から発せられるのは魔術王ソロモンの気配、それが意味するのはエルキドゥ?は敵だと言う事だ。

 

(どういう事だ?)

 

 

(敵意を感じない……戦う気がない?)

 

 エルキドゥ?は興味なさそうに立香とマシュを見ていた。

 

「まぁいい……今日の目的は君達じゃない」

 

 

「……どういう事だ?」

 

 

「僕は最近おかしくてね……この間……アイツ……そうだ、龍牙に会ってからだ。ずっと……ずっとノイズが走っている。この原因、龍牙は何処だ? アイツを消せば……」

 

 エルキドゥ?は頭を押さえながらそう言う。

 

「ほぅ……お前にしてはらしくないではないか」

 

 そう声が聞こえた、立香とマシュが振り返るとそこにはギルガメッシュが立っていた。

 

「ギル……ガメッシュ!」

 

 

「「ギルガメッシュ王!」」

 

 ギルガメッシュは戦斧を装備しており、どうやら戦う気らしい。

 

「ギルガメッシュ王! 彼はエルキドゥの偽物です!」

 

 

「ほぉ……」

 

 

「ギルガメッシュ!」

 

 エルキドゥ?が腕を振り上げると、炎が出現しギルガメッシュを飲み込もうとする。ギルガメッシュは魔術を行使しこれを防いだ。

 

「偽物にしては良く出来ているではないか!」

 

 ギルガメッシュは宝物庫から魔杖を呼び出し魔術を放つ。

 

「このぉ!」

 

 エルキドゥ?の背後、地面から無数の鎖が出現しギルガメッシュに放たれる。

 

「随分な戦い方だな、何時ぞやは財の無駄使いだと言っていたではないか」

 

 

「アレはお前が……っ!」

 

 何かを言おうとしたエルキドゥ?は突然頭を押さえる。

 

「成程……やはりそういう事か」

 

 ギルガメッシュはエルキドゥ?の様子を見て何かに気付いたらしい。

 

 エルキドゥ?は直ぐに立ち直ると腕に魔力を纏わせながら、同時に鎖を放った。ギルガメッシュは直ぐに反応し、鎖を魔杖の力で薙ぎ払い、戦斧を構える。

 

「随分質のいい魔力を得た様だな、三女神同盟とやらの差金か!」

 

 

「黙れぇ!」

 

 ギルガメッシュとエルキドゥ?が衝突し、地面が陥没、周囲は吹き飛んだ。

 

 立香とマシュは土埃で何も見えなくなる。少しして視界がハッキリとしてきた。ギルガメッシュもエルキドゥ?は互いに距離をおき、立っていた。

 

「ギルガメッシュ…………お前は此処で終わらせる」

 

 エルキドゥ?が地面に手をつくと、再び無数の鎖が出現する。

 

「人類の歴史をお前の死と共に終わらせてやる!」

 

 エルキドゥ?の周辺の地面から光柱が発生した。

 

 ギルガメッシュは黙ったまま、反撃するべく戦斧を消し、両手を広げる。彼女の遥か上空に宝物庫のゲートが出現し、そこから魔杖が現れ、凄まじい魔力の衝撃波がエルキドゥ?に向かい放たれた。

 

 エルキドゥ?はそれを鎖で防ぎつつ、残りの鎖をギルガメッシュに向けて放った。

 

「「ギルガメッシュ王──!」」

 

 ギルガメッシュはそれを視界で捉えているものの、避ける様子も防ぐ様子もない。それを見た立香とマシュは彼女の名を叫ぶ。

 

 爆音と共にギルガメッシュが土煙に飲み込まれた。数十秒が経ち、土煙が晴れるとそこには無傷のギルガメッシュの姿があった。

 

 エルキドゥ?の鎖は彼女の数メートル横に落ちてクレーターを作っていた。どうやら彼女には当たらなかった様だ。

 

 ギルガメッシュはエルキドゥ?の方を見る。エルキドゥ? は無表情のまま立っており、自分の胸を手で押さえていた。そしてそのまま空の彼方へと飛び去った。

 

 最後の一撃、ギルガメッシュが防いだのか、それともエルキドゥ?が外したのか、それは当人達にしか分からない。

 

 ギルガメッシュとエルキドゥ?の邂逅により一気に状況が動き始めた。

 


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