俺のFateな話   作:始まりの0

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EP93 登場!イシュタル!

 ~王宮 玉座の間~

 

 この王宮の主、ギルガメッシュは今日も政務に励んでいた。

 

 それをサポートするシドゥリ、そしてこの場を守る兵士達は心配そうに玉座の方を見ていた。その視線はギルガメッシュに向けられたものではなく、その横に倒れている龍牙に向けられていた。

 

「……」

 

 すっかり枯れ果てており、真っ白になっていた。それに対しギルガメッシュの肌は艶々しており、生気が満ちていた。どうやら龍牙は色々と搾り取られた様だ。

 

 シドゥリも、兵士達も理由を察していた為、何も言わなかったが真っ白になっている龍牙を心配していた。

 

「しっ……死ぬ……マジ無理」

 

 

「なんだ、アレくらいで情けない」

 

 

「ふざけんな……途中から薬盛りやがって……腰が……」

 

 

「お前とて途中からその気になっていただろ。それに何十年もお預けを食らったのだ、アレくらいは我慢せよ」

 

 

「それに関しては悪いと思ってるけど……この状態で仕事やらせるの?」

 

 

「問題あるか?」

 

 ギルガメッシュが笑みを浮かべてそう言うと、龍牙に圧をかける。

 

「あるに決まってる! こんなモチベーションじゃ遅れるばかりだ!」

 

 

「ならっやる気を出せばよかろう?」

 

 

「出来たら苦労してねぇ!」

 

 口喧嘩している様子を安堵するシドゥリや兵士達。これも昔からの光景の為に、やっと何時もの風景が戻ったことを喜んだ。

 

 少しすると1人兵士が入ってきてシドゥリに何かを耳打ちする。

 

「ギルガメッシュ王、龍牙様」

 

 シドゥリは直ぐに2人に声をかけた。

 

「カルデアの方々がお越しになられました」

 

 どうやら立香達がやって来た様だ。

 

「おっ、そうか」

 

 

「フム……」

 

 ギルガメッシュは立香達を通す様に指示した。

 

 シドゥリは一度席を外す。少しすると、彼女は立香とマシュ、アナ、マーリンを連れ戻ってきた。

 

「やぁ、藤丸君にマシュ……よく休めたかい?」

 

 

「はっはい」

 

 

「はい」

 

 挨拶もそこそこに龍牙はシドゥリに向ける。

 

「魔術師マーリン、よく帰還されました。王はお喜びです」

 

 ギルガメッシュはそれを聞き、別に喜んでないぞと顔を出すがシドゥリは続けた。

 

「それで成果は? 天命の粘土板は見つかりましたか?」

 

 

「いや、そちらは空振りだよ。西の杉の森にはなかったよ。全く一体何処に置いたのやら……王様が覚えておいてくれれば話は早かったんだけどね」

 

 

「不敬ですよ、おだまりなさい。粘土板を記した時、王はたまたま疲れていたのです。極度の疲労で記憶が飛ぶ……というのは私も聞いた事がありませんが……王がそう仰るならそうなのでしょう」

 

 

「ぁ~昔、たまにあったな……誰かさんが全く政務に手をつけず2ヶ月完徹した時は記憶が飛び飛びだったよ」

 

 

「「「え゛? 2ヶ月?」」」

 

 2ヶ月完徹と言う言葉に驚き龍牙を見る全員。

 

「なぁ……ギル」

 

 

「……」

 

 視線に耐えかねたのか顔を横に向けるギルガメッシュ。

 

「王……流石にそれは」

 

 

「えぇい! 昔の話だ! そんな目で我を見るな! そこの者共は天文台の魔術師だな! 我は忙しい! お前達と話す時間も惜しいほどにな! よって戦いによって真偽を見定める! 構えるがいい! マーリンは手を出すな! 下がっていろ!」

 

 無理矢理に話題を反らすギルガメッシュ。だがこれでやっと話が進む。

 

「ぁ~……取り敢えず訳すると、ギルはまずは実力を示せって言ってるんだ。悪いけど付き合ってやってくれ」

 

 龍牙がそう言うと立香達は構え出す。

 

「俺は観戦しておくよ」

 

 龍牙はそう言うと玉座の横に用意された椅子に腰掛け、政務の続きを行う事にした。

 

 ギルガメッシュVSカルデア陣営の戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 ものの数分で戦闘は終了。

 

「……」

 

 ギルガメッシュは戦闘を終え不機嫌になっていた。

 

「ギル、満足した?」

 

 

「……龍牙」

 

 

「彼等には彼等の戦い方があるんだよ。それと実力は比例しない、状況に応じて彼等はその力を発揮する。それは俺が保証する」

 

 ギルガメッシュはそれを聞くと何も言わず玉座に座る。

 

「…………よく、これで6つの時代を超えてきたものだ。

 

 龍牙が言うにしても、今のお前達に用は『失礼します!』」

 

 突然兵士が大声で入ってきた、何やら慌てている様だ。

 

「王よ! 大変です! ティグリス河観測所より伝令! 上空に天舟の移動跡を確認! 猛スピードでウルクに向かっているかと!」

 

 その兵士の言葉に立香とマシュ、アナ以外の全員がざわめき出す。

 

「イシュタルめか……あやつは1日前の事すら覚えておられん阿呆か? いや半日前の事も忘れる阿呆であったな」

 

 

「……王よ、王と女神イシュタルとの確執は理解しておりますが、イシュタル様への罵倒はお控え下さい。

 

 イシュタル様はこのウルクの都市神であらせられます。王とて軽々しく非難できる方ではありません。それにこの様な場での非難されますと……巫女所としても立場がないと申しますか」

 

 

「立場など始めからあるか! あの女がウルクを守護したことなど一度でもあるか! 

 

 滅ぼさずともよいものを滅ぼし! 創造しなくてとよいものを創造する!」

 

 ギルガメッシュは宝物庫から取り出した布を龍牙に被せ、玉座の後ろに押し込めながらそう言う。

 

「イナゴの群、砂嵐、子供の癇癪、それら全てを混ぜたのがあの女だ! 

 

 此度もうっかり寝所を滅ぼし、アヌ神に泣き付くのが関の山だ。まぁ、そのアヌ神もとうに消えておる。父親にすら愛想を尽かされるとは自業自得だ! 

 

 ただ1人残され無様に泣きじゃくり、死ぬのが奴の結末に違いない! フハハハハハ!」

 

 日頃貯まっている鬱憤、不満を吐き出すギルガメッシュ。

 

【なぁんですって──!】

 

 天井を突き破り襲来したのは天舟(マアンナ)に乗った女神イシュタルだった。

 

 しかし何処かで見た少女にそっくりだ。

 

「また来たか……さっさと去れ」

 

 シッシッと虫を払う様に手を震るギルガメッシュ。

 

「よくと言ったわね! この私に向かって!」

 

 

「うるさい、目障りだ、我の気が変わらぬ内に消えろ」

 

 

「無礼にも程があるんですけど!」

 

 

「シドゥリ、次の仕事だ」

 

 

「無視するんじゃないわよ!」

 

 

「……そこの天文台の魔術師よ、我を手伝う事を許す! アレをどうにかするぞ!」

 

 

「ぇえ……どうしましょう、マスター」

 

 

「えっと……やるしかないかな?」

 

 取り敢えずイシュタルに向く事にした立香とマシュ。

 

「何よ、アンタ達……私に歯向かうって言うの?」

 

 

「そう言う訳ではないんですけど……」

 

 

「いいわ、昨日も地面に墜ちて鬱憤も貯まってるし……少し発散させてもらうわ!」

 

 こうしてギルガメッシュ、カルデアVSイシュタルの戦いが始まるのだった。

 


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