~王宮 玉座の間~
この王宮の主、ギルガメッシュは今日も政務に励んでいた。
それをサポートするシドゥリ、そしてこの場を守る兵士達は心配そうに玉座の方を見ていた。その視線はギルガメッシュに向けられたものではなく、その横に倒れている龍牙に向けられていた。
「……」
すっかり枯れ果てており、真っ白になっていた。それに対しギルガメッシュの肌は艶々しており、生気が満ちていた。どうやら龍牙は色々と搾り取られた様だ。
シドゥリも、兵士達も理由を察していた為、何も言わなかったが真っ白になっている龍牙を心配していた。
「しっ……死ぬ……マジ無理」
「なんだ、アレくらいで情けない」
「ふざけんな……途中から薬盛りやがって……腰が……」
「お前とて途中からその気になっていただろ。それに何十年もお預けを食らったのだ、アレくらいは我慢せよ」
「それに関しては悪いと思ってるけど……この状態で仕事やらせるの?」
「問題あるか?」
ギルガメッシュが笑みを浮かべてそう言うと、龍牙に圧をかける。
「あるに決まってる! こんなモチベーションじゃ遅れるばかりだ!」
「ならっやる気を出せばよかろう?」
「出来たら苦労してねぇ!」
口喧嘩している様子を安堵するシドゥリや兵士達。これも昔からの光景の為に、やっと何時もの風景が戻ったことを喜んだ。
少しすると1人兵士が入ってきてシドゥリに何かを耳打ちする。
「ギルガメッシュ王、龍牙様」
シドゥリは直ぐに2人に声をかけた。
「カルデアの方々がお越しになられました」
どうやら立香達がやって来た様だ。
「おっ、そうか」
「フム……」
ギルガメッシュは立香達を通す様に指示した。
シドゥリは一度席を外す。少しすると、彼女は立香とマシュ、アナ、マーリンを連れ戻ってきた。
「やぁ、藤丸君にマシュ……よく休めたかい?」
「はっはい」
「はい」
挨拶もそこそこに龍牙はシドゥリに向ける。
「魔術師マーリン、よく帰還されました。王はお喜びです」
ギルガメッシュはそれを聞き、別に喜んでないぞと顔を出すがシドゥリは続けた。
「それで成果は? 天命の粘土板は見つかりましたか?」
「いや、そちらは空振りだよ。西の杉の森にはなかったよ。全く一体何処に置いたのやら……王様が覚えておいてくれれば話は早かったんだけどね」
「不敬ですよ、おだまりなさい。粘土板を記した時、王はたまたま疲れていたのです。極度の疲労で記憶が飛ぶ……というのは私も聞いた事がありませんが……王がそう仰るならそうなのでしょう」
「ぁ~昔、たまにあったな……誰かさんが全く政務に手をつけず2ヶ月完徹した時は記憶が飛び飛びだったよ」
「「「え゛? 2ヶ月?」」」
2ヶ月完徹と言う言葉に驚き龍牙を見る全員。
「なぁ……ギル」
「……」
視線に耐えかねたのか顔を横に向けるギルガメッシュ。
「王……流石にそれは」
「えぇい! 昔の話だ! そんな目で我を見るな! そこの者共は天文台の魔術師だな! 我は忙しい! お前達と話す時間も惜しいほどにな! よって戦いによって真偽を見定める! 構えるがいい! マーリンは手を出すな! 下がっていろ!」
無理矢理に話題を反らすギルガメッシュ。だがこれでやっと話が進む。
「ぁ~……取り敢えず訳すると、ギルはまずは実力を示せって言ってるんだ。悪いけど付き合ってやってくれ」
龍牙がそう言うと立香達は構え出す。
「俺は観戦しておくよ」
龍牙はそう言うと玉座の横に用意された椅子に腰掛け、政務の続きを行う事にした。
ギルガメッシュVSカルデア陣営の戦いが始まった。
ものの数分で戦闘は終了。
「……」
ギルガメッシュは戦闘を終え不機嫌になっていた。
「ギル、満足した?」
「……龍牙」
「彼等には彼等の戦い方があるんだよ。それと実力は比例しない、状況に応じて彼等はその力を発揮する。それは俺が保証する」
ギルガメッシュはそれを聞くと何も言わず玉座に座る。
「…………よく、これで6つの時代を超えてきたものだ。
龍牙が言うにしても、今のお前達に用は『失礼します!』」
突然兵士が大声で入ってきた、何やら慌てている様だ。
「王よ! 大変です! ティグリス河観測所より伝令! 上空に天舟の移動跡を確認! 猛スピードでウルクに向かっているかと!」
その兵士の言葉に立香とマシュ、アナ以外の全員がざわめき出す。
「イシュタルめか……あやつは1日前の事すら覚えておられん阿呆か? いや半日前の事も忘れる阿呆であったな」
「……王よ、王と女神イシュタルとの確執は理解しておりますが、イシュタル様への罵倒はお控え下さい。
イシュタル様はこのウルクの都市神であらせられます。王とて軽々しく非難できる方ではありません。それにこの様な場での非難されますと……巫女所としても立場がないと申しますか」
「立場など始めからあるか! あの女がウルクを守護したことなど一度でもあるか!
滅ぼさずともよいものを滅ぼし! 創造しなくてとよいものを創造する!」
ギルガメッシュは宝物庫から取り出した布を龍牙に被せ、玉座の後ろに押し込めながらそう言う。
「イナゴの群、砂嵐、子供の癇癪、それら全てを混ぜたのがあの女だ!
此度もうっかり寝所を滅ぼし、アヌ神に泣き付くのが関の山だ。まぁ、そのアヌ神もとうに消えておる。父親にすら愛想を尽かされるとは自業自得だ!
ただ1人残され無様に泣きじゃくり、死ぬのが奴の結末に違いない! フハハハハハ!」
日頃貯まっている鬱憤、不満を吐き出すギルガメッシュ。
【なぁんですって──!】
天井を突き破り襲来したのは
しかし何処かで見た少女にそっくりだ。
「また来たか……さっさと去れ」
シッシッと虫を払う様に手を震るギルガメッシュ。
「よくと言ったわね! この私に向かって!」
「うるさい、目障りだ、我の気が変わらぬ内に消えろ」
「無礼にも程があるんですけど!」
「シドゥリ、次の仕事だ」
「無視するんじゃないわよ!」
「……そこの天文台の魔術師よ、我を手伝う事を許す! アレをどうにかするぞ!」
「ぇえ……どうしましょう、マスター」
「えっと……やるしかないかな?」
取り敢えずイシュタルに向く事にした立香とマシュ。
「何よ、アンタ達……私に歯向かうって言うの?」
「そう言う訳ではないんですけど……」
「いいわ、昨日も地面に墜ちて鬱憤も貯まってるし……少し発散させてもらうわ!」
こうしてギルガメッシュ、カルデアVSイシュタルの戦いが始まるのだった。