闇影の軌跡 〜黎明〜   作: 黒兎

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シンフォギア面白いよ、シンフォギア!
もう最近はずっとシンフォギアの楽曲ばかりを聴いてる「 黒兎」さんです。おかげで響&翼&クリスの「RADIANT FORCE」は耳コピしちゃったからね。これでもしカラオケに行くことになっても安心!(そもそも行く相手なんて殆どいないけど)。というか前奏長くて、間が持ちそうない気が………






解決までの道筋と立ちはだかる相手

「流石に開いてないか……」

 

 目的地であるルナリア自然公園に到着した特科クラスⅦ組A班御一行はいきなり問題に直面していた。自然公園に入る為の門が錠で閉められていたのだ。

 当然と言われれば当然だ。ゼダスの推理通りならば、この先には盗み出された商品が置かれていて、最悪はその実行犯が居座っている可能性もあるから。

 

「これじゃあ入れないじゃない……どうするの?」

「私が大剣で砕けば──」

「バカか、お前は。そんな派手にやると音で気付かれるだろ。出来るだけ静かに行きたい」

 

 ラウラの提案を即刻却下したゼダスはこの場の対処について思考を走らせる。

 さっき言った通り、ラウラの大剣で処理するのは却下。だからと言って、アリサの弓やエリオットの魔導杖ではそもそも火力不足。ゼダスが素手で叩き割っても問題無いが、それではラウラのと同じ理由で却下されるだろうし、本人が却下する。

 と、なれば───

 

「───リィン。お前の太刀で音無しに両断出来るか?」

 

 随分と無理な要望を提示しているのは重々承知。だが、ゼダスの瞳にはリィンならば出来ると踏めていた。

 それは何の根拠もない“信頼”ではなく、この入学からの少しの間にゼダスの観察眼を用いて導き出した“確信”だ。その程度の芸当ならば多少は難しかろうとも成功出来る。そう………リィンが現在初段止まりとはいえ、あの《剣仙(・・)》と呼ばれる無双の剣士が拓いた『八葉一刀流』の使い手ならば。

 

 《剣仙》───その二つ名は、この世界で剣に精通する者ならば相当の知名度を誇っている達人級の使い手である。噂に聞いた通りならば、ゼムリア大陸各地を転々としている放浪者らしい。

 執行者として同じく各地を転々としていたゼダスだが、《剣仙》と戦ったことはない。

 

「(いつかは戦ってみたいと思っていたりはしているんだけどな……)」

 

 と思うや否や、即座に頭を横に振る。今必要でないことは考えなくていい。

 

「…………出来るか分からないけど、やるだけやってみるよ」

 

 承諾したリィンは太刀を抜き構える。スゥっと息を吸って、太刀を思いっ切り振り下ろす。

 すると、錠は音の一つも立てずに両断されて、地面に落ちた。

 

「ここまで静かに断てるのか……」

「よくそんな細身の剣で……侮れないわね」

「正直、予想以上の出来だ……よし、これなら侵入出来るな」

 

 

 道は開かれた。ならば───後は進むだけだ。

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

「ほら、急げ! まだ何も終わってないんだからな!」

 

 自然公園の中を疾駆するゼダスと、それを死に物狂いで追いつこうと全力疾走を強いられる他のメンバー。だが、正直言って全く追い付きそうにない。

 そもそもゼダス自身の身体能力が秀でているから追い付ける道理は無いし、何より厄介なのが────

 

「ゼダス! これはどういうつもりなのだ⁉︎」

 

 ───先走ったゼダスがわざわざそこら辺を徘徊している魔獣を引きつけて戦わせてくるのだ。疾走しながらの戦闘は普段よりも体力を多く消耗するのだと実感させられる。

 

「どういうつもりって言ってもなぁ………ちょっと色々な理由でサッサと強くなってもらわないとダメなんだわ。こういう荒技で特訓ってのも良いだろ?」

「それでもこんなの求めてないわよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおお!」

 

 悲鳴にも似た声を挙げながら、アリサは次々と矢を番え、魔獣に向けて放つ。単発の火力は若干控え目だとしても、何度も連続で刺されると魔獣は沈んでいく。

 他のメンバーも抗議をしながらも得物で魔獣を討っていくが数が数だ。頭数が減ってる実感は正直言って無く、寧ろ増えている感じしかしない。

 それもそのはず。今も変わらずゼダスが魔獣を引きつけてくるのだから。これでは進行などロクに出来たものではない。しかし、進まねばならぬが故に疾走を強いられるという矛盾。相当に理不尽だ。

 

「(うーむ………俺が招いておいて言うのは御門違いなんだろうが、流石に無茶か? 後のことを考えると体力の擦り減らし過ぎるのは良くないか)」

 

 自分のした行動を顧みるゼダス。だが────

 

 

「(………まぁ、後十分はやらせるか)」

 

 

 

 

 ………………多分、殆ど反省してない。

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 その後、Ⅶ組A班が殲滅活動に専念するものの一向に頭数が減らなかった魔獣たち。

 しかし、心の中で決めていた時刻になったことを確認するとゼダスは行動を開始。目にも止まらぬ速さで自然公園を縦横無尽に駆け、魔獣を数瞬の内に討ち切った。

 

「ふぅ……終わりっと」

 

 眼前で明らか過ぎる格の違いを見せつけられ、唖然とするゼダスを除く全員。武器を何も持たない徒手空拳で四人分の頑張りを凌駕する結果をあっさりと出したのだ。唖然とされても、驚かれても何も可笑しくはない。現に逆の立場なら絶対に驚いている。

 

「ほら、道拓けたぞ。んじゃあ、行くか───って、休憩必要そうだな」

 

 全員の状況を一見で把握し切ったゼダスは休息を提案。その選択に安堵したのか、全員はへなへなと座り込み、盛大に息を切らす。今までサウナに入れられてたかのような量の汗を流してるところ、余裕無く頑張っていたのだと理解させられる。

 しかし、休憩に割く時間があるかと言われると正直微妙なところだ。間に合うとは思う───思いたいが、打てる手は全て打ってしまおう。

 そう思ったゼダスは何も言わずに地を蹴って、自然公園の木々の上を跳んで行く。きっと全員が行動可能なまでに回復するにはある程度時間が掛かる。その間に先の方を偵察する腹だ。

 

「(特に変わった罠とかは仕掛けられてないようだな………しかも、さっき色んなところから魔獣を掻き集めた甲斐あってか、この先に魔獣の反応は殆ど無いっと。進行には時間掛かりそうにないな。───って、アレは………)」

 

 ゼダスが視界に収めたのは、自然公園の奥の方で開けた地形の場所だった。銃器を武装した男が四人くらいいて、木箱が一箇所に纏めて大量に積んである。きっとあれが今回の一件の騒動の引き金になった二人分の商品だろう。

 このまま突っ込んでも商品を取り返すのは余裕だ。というか、そちらの方が楽で簡単なまである。

 だがしかし、この一件を請け負ったのはゼダス個人ではなく、Ⅶ組A班だ。単独で取り返す必要はないし、意味もない。ついでに───

 

「(この気配………………奥に進めば進むほどに濃くなるぞ)」

 

 先ほどから感じていた“気配を感じない”という独特の気配。この気配はもう二度目だ。流石に間違えるはずがない。

 

「(あのローブ野郎────)」

 

 昨日、ゼダスを殺した相手───その気配がこの自然公園の中に在る。

 

 正直、これに関しては誤算だった。

 昨日のあの時間、あの場所にわざわざ赴いてまでゼダスを殺しにきたのだ。そして、現に殺せた訳だ。

 となれば、もうとっくにこの街から離れていると思っていたのだが……どうやらそれは希望的観測だったらしい。

 他に目的があったのか、それともゼダスが一度では殺し切れないことを知っていたのか。今現在、推し量る術は無いが、どちらにせよ面倒なことになっているのに変わりはない。

 

 

「(出来ることならこの一件を終わらせるまでは戦いたくないんだよなぁ………………まぁ、でも)」

 

 

 心に秘めた想いは一つだ。

 それが何時、どんな状況であれ─────

 

 

 

 

 

 

「(次は(・・)次こそは(・・・・)絶対に勝つ─────ただそれだけの話だ)」

 

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 

 ゼダスがⅦ組A班の元に舞い戻る頃には離れた時から約十分近くの時間が経過していた。

 未だ全員が全快とは言い難いが、あと数戦なら本気を出せる程度には回復しているとゼダスは視えた。これならば、上手く立ち回れば支障は無いだろう。

 

「よし、もう大丈夫そうだな」

「こ、これのどこを見て大丈夫そうに見えるのよ……何? 目悪いの? それとも頭?」

「それだけ軽口叩けるんなら大丈夫だろ」

 

 ゼダスはアリサの抗議を切って捨てる。

 

「それよりもサッサと行くぞ。また魔獣が集まってくると厄介だ」

 

 

 ───これは勿論、嘘だ。

 

 

 先程行った偵察した限りでは魔獣の姿一つも無かった。この自然公園内を隈なく探せばまだ出てくる気はするが、進行するのには問題無いはずだ。

 では、何故ここで嘘を吐いたのか───その答えは少し考えれば導き出せるものだった。

 

「(その方が色々と都合が良いからな………あの相手と再戦するにしても、A班の前で本気を出したくない。だが、本気を出さないと勝てない相手だ)」

 

 そんな相手が同じ場所にいる。明確な目的が分からない以上、どういう行動に出るかは予測の域を出ない。仮に目的がゼダスの命としたとしても、何時襲ってくるかは不明。

 となれば、必然的に請け負った事件の早期収束が求められる訳だ。何時でも対応出来るようにしておくのは必要だろう。

 

 だが、そんなゼダスの思考など露知らずリィンは。

 

「ゼダスの言う通りだ。これ以上、戦闘を重ねるのはあんまり良くない」

 

 と、同意を示す。

 ゼダスを除く班としての総意は「せめて事件解決まではこれ以上に無駄な戦闘を増やしたくない」になったのか、他の面々もリィンの同意に異議を申し立てなかった。

 

「全員が納得してるなら早く行くぞ。さっき見てきた感じだともう直ぐ目的地っぽいし」

「いきなりいなくなってると思ったら、偵察に行ってたんだね………ゼダスの体力は凄いや」

「体力なんて普段からある程度運動してたら勝手に付くからな。それよりも意識することは『如何にして体力を使わないようにするか』だ。そこさえ踏まえてたら、誰でも出来る。結局は慣れだ」

 

 偵察に行ってたことについてエリオットに触れられたから、ゼダスなりのコツを教えたが、これが役に立つかは分からない。そもそも、エリオット───というかこのA班の面子が偵察に行かなければならない場面なんてそう来ないだろう。というか来てほしくない。

 だって、今回みたく体力に余裕があった場合以外で偵察しなければならない場面なんて、きっとロクなことが起きてないに違いない。しかも、そういう状況での偵察は一つのミスすると終わりだ。事態を有利にする為の偵察が逆に相手側が有利になってしまう為の足掛かりとなってしまいかねない。

 ならば、偵察をしない───というかリスクの高い行動を取らない場面で在り続けることを祈るのが一番正しいのだ。………まぁ、戦場ではそんな理想的な展開になる可能性など殆ど無いのだが。

 

 

 

 

 

―――*―――*―――

 

 

 

 

 

 その後、自然公園の中を道なりに、そして最短に駆け抜けていったⅦ組A班。道中に目立った妨害などは無かった為、十分も掛からない間に最奥部手前に到着した。

 何故直ぐに突撃しなかったかなのだが、作戦会議をする為だ。

 ゼダス単独ならまだしも、今回は班行動だ。そして、偵察通りなら相手は全員が銃器持ちときた。となれば、無策に突っ込むのは愚策中の愚策なのである。

 

「───と、まぁ、説明した通り連中は全員が飛び道具持ちだ。『銃は剣より強し』という言葉がある通り、順当に考えれば近距離戦闘が得意なリィンとラウラは相当不利になる」

「ゼダスはどうなのだ? そなたも基本は近距離戦闘ばかり行うではないか」

「俺はどの距離でも戦えるっての。少なくとも、あの程度の連中には絶対に負けない。────で、一見凄い不利に見えそうな現状だが、攻略法なら正直幾らでも思い付くんだ」

 

 ゼダスは攻略法を説明し始める。

 

「まず前提として、相手側はまだコッチの存在には気づいていない───これが俺らが持ってる最高のアドバンテージだ。こうやって作戦会議を出来るのもそのお陰だしな。もっと言えば、今の内に導力魔法でも立ち上げておくことで、出て行った瞬間に遠距離から奇襲を掛けることも可能だ」

「確かに言う通りだけど………そこまで制圧力の高い魔法を使えるのなんて誰もいないでしょ」

 

 手にしてまだ一ヶ月も経っていない戦術オーブメントであるARCUS。それで広範囲に影響を及ぼす魔法を使えるものはまだ誰もいなかった。………………厳密に言えば、ゼダスは使えなくはないが残り魔力は未だに殆ど残ってないし、裏でコッソリとARCUSを魔改造し始めている最中だ。そんな状態で魔法の式を立ち上げようものなら多分不発な上に爆発する。

 

「別に制圧力が高くある必要は無いさ………まぁ、高いに越したことはないが、今は度外視して良い要素で────一瞬だけだ。一瞬だけ隙を作れれば問題無い」

 

 そう、勝負は一瞬で決まるのだ。

 

「ほんの一瞬だけでも気を反らせることが出来たなら、その間にリィンとラウラが近付いて、無力化して勝ち。何処も難しいところはないだろ」

「こうやって説明されれば、簡単そうに聞こえるが………成功率としてはどれ位だ?」

「説明通りなら確実だ………………と、言い切れれば良いんだが、ここは仮にも戦場だ。“絶対”なんて存在しないことは肝に銘じとけ」

 

 丁寧に説明し切ったゼダスは最後に。

 

 

 

「────それで、だ。この先はお前らに任せて良いか?」

 

 

 

「いきなりどういう訳だッ⁉︎」

 

 一応隠れて作戦会議している最中なのだから、叫ぶのはどうかと思ったゼダスだが、そこは注意しない。正直、そこに割く余裕なんて一瞬で吹き飛んだ。

 

「どういう訳だって言われてもなぁ………」

 

 ゼダスが明後日の方向に向けている視線の先を全員が見ると、そこには白いローブを身に纏った人影が立っていた。

 

「“アレ”を無視して作戦成功させるとか不可能だろうからな。俺が何とかしてる間にサッサと終わらせてきてくれ」

 

 あの相手に勝てるのは間違いなくゼダスだけ。他の面子では足元にも及ばないのは自明の理。

 ならば、対処に当たるのはゼダスというのも何ら不自然な話ではない。

 

 

 

 

「それじゃあ────頼んだ(・・・)

 

 

 

 

 そう言い残し、学生ゼダス・アインフェイト────否。執行者No.Ⅱ《天帝》ゼダス・アインフェイトは駆けて行った。

 

 

 







いやったぁぁぁぁぁぁあああああああ! ゼダスが初めて「頼んだ」って言ったぁぁぁぁぁぁ!(多分初めてのはず。多分きっと)

次回は全編戦闘パートになる予定。久々に自分の語彙力の限界に挑むことになりそう………←毎回挑んでるわ

一章は残り二話で片付けたいね!



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