TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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遅れてしまいすいません


第九十四席 鳳統、隠し事を話すのこと

声を聞き付け、現場に駆けつけた朱里達。最初は驚いたが、すぐに事情を聞くため、客間に場所を移した

 

「一体、どういう事なの?夜中に、こんなに食べ物を持ち出して」

 

雛里が背負っていた風呂敷の中には、多めの食料が積まれていた。

 

「旅に……旅に出ようと思って……」

 

「旅に?旅ってどこへ?」

 

「……南蛮です」

 

驚きを隠せない一同

 

「でも、でも、どうして?」

 

「私の……私の、せいだから……」

 

「え?」

 

「南蛮象之臍之胡麻…私がなくしちゃったの。水鏡先生に言われて作業場の掃除をしていた時、開けっ放しの引き出しに入っていた小物入れが気になって、中に赤い薬の包みが入っていて、マル秘って書いてあるからどんな薬が入っているか見てみたくなって包みを開いたその時」

 

タイミングの悪いことにくしゃみをしてしまい、南蛮象之臍之胡麻が宙に散らばってしまいさらに慌てふためくたせいで足元にあった掃除用の水桶をこぼして地面が水浸しになり薬が台無しにしてしまった

 

「(ということか)」

 

「だから……だから……私が南蛮に行って、南蛮象之臍之胡麻を取りにこよっと」

 

「雛里ちゃんの馬鹿!!」

 

朱里の怒声が、その部屋に響き渡った。

 

「そんな事なら、どうしてちゃんと話してくれなかったの!」

 

「ごめんなさい……せっかく来たのに、南蛮象之臍之胡麻、私が駄目にしちゃったって知ったら、朱里ちゃん怒ると思って……それに……それに……」

 

目元に大粒の雫を溜め込み、両手で顔を包み、嗚咽をあげる

 

「私、確かに怒ってる……でもね?それは雛里ちゃんが隠し事をしてたから。正直に話してくれれば、私、絶対に怒ったりしなかったよ?」

 

「えっ?」

 

「だって私達、お友達でしょ?」

 

「朱里ちゃん……」

 

雛里は朱里に抱きつき、朱里はそれを優しく抱き止めた

 

 

 

「水鏡先生、大変お世話になりました」

 

翌日、勇作達一行は、門前で見送りに来た水鏡に感謝の言葉を贈っていた

 

「それではやはり、南蛮へ行かれるのですね」

 

「はい。昨日、皆で相談して決めたんです」

 

「ですが南蛮は、遥か南の未開の地。そこへ至る道は険しく、狂暴な蛮族が抜扈しているとか」

 

「そうですね、確かに大変な旅になるかもしれません。でも、皆で力を合わせれば、きっと大丈夫ですよ」

 

「朱里ちゃん、気をつけてね」

 

「雛里ちゃんもお勉強頑張ってね」

 

「うん」

 

「朱里」

 

「はい」

 

「餞別になるかは分からないけど、この羽毛扇を」

 

「えっ!でも、これ……」

 

「長い旅になるでしょうから、くれぐれも体に気を付けるのですよ」

 

「はい!ありがとうございます、先生」

 

「それと高杉さん」

 

「はい」

 

「目の方は」

 

「今のところは大丈夫です」

 

「勇作さん」

 

雛里が声を掛ける

 

「どうしたの?」

 

「あの、えっと」

 

「ん?」

 

「一つ約束しても良いですか?」

 

「約束?」

 

「はい…いっぱい勉強して、いつか勇作さん…いえご主人様の軍の軍師になりたいです」

 

「軍師に」

 

「はい」

 

「………」

 

「駄目ですか?」

 

「いや…約束するよ。その時がきたら歓迎する」

 

「ありがとうございます。それと屈んでくれませんか」

 

「ん?こうか?」

 

勇作は屈む

 

「……」

 

雛里は勇作に近づくと

 

 

 

CHU

 

 

勇作のおでこにキスをする雛里

 

「約束の証…です」

 

「………ぇ」

 

「……あう」

 

顔を真っ赤にして水鏡の後ろに隠れた

 

「あらあら、雛里も大胆ね……皆さん、朱里の事を、どうかよろしくお願い致します」

 

「はい!」

 

「お任せなのだ!」

 

 

こうして旅を再開する一行であった

 

 

 

 

 

 

 

 

朱里はスキップしながら、歩いていた

 

「羽毛扇!羽毛扇!」

 

「あ、あの~、朱里……」

 

「ん?何ですか、鈴々ちゃん」

 

「ちょ、ちょっと話があるのだ……」

 

「話?」

 

「えと、あの……朱里の硯、落として壊しちゃったのは…………………………………………鈴々なのだ」

 

「はわああああああああああ!!!?」

 

「も、もちろんわざとじゃないのだ!あれは不幸な事故で、これっぽっちも悪気は……」

 

「そうですか……やっぱり、あれは鈴々ちゃんの仕業だったんですね……あれは、水鏡先生の御古おふるを譲っていただいた、とても大事な物だったんですよ……なのにそれを……」

 

「な、なんでそんな怖い顔をしてるのだ!?友達なら正直に言えば怒らないって……」

 

「それとこれとは話が別です!!鈴々ちゃん!!」

 

鈴々を追いかけ回す朱里

 

「待ちなさい!!」

 

「にゃにゃ~!許してなのだ~~!!」

 

「許しませ~~ん!」

 

周りを走り回る二人を見て、桃香は呆れた様なため息をつく

 

「もう、二人とも子供なんだから……」

 

「ははは……」

 

「(キスされちゃった……おでこにまだ感触が)」

 

そんなコトを考えていると

 

「ご主人様」

 

「ん?どうし…っ!!」

 

目が笑ってないというより光がない眼差しで勇作を見る朱里がいた

 

「さっきの出来事についてすこしお話をしましょう」

 

「あ、あの朱里さん」

 

「フ、フフ、フフフフフフフフフ」

 

その様子に怯える勇作であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所、時刻は夕方

 

「………」

 

「………」

 

星と翠が距離を開けて歩いていた

 

「なぁ、さっきから何怒ってるんだよ」

 

「別に怒ってなどいない」

 

「いやでも」

 

「さっきの入った店でメンマが一切れ多く入っていた方のラーメンをお主が食べたことで気分を害したわけではない!だから気にするな」

 

翠は苦笑いしながら

 

「大人じゃなかったのかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所、時刻は夜

 

「………」

 

愛紗が一人焚火に当たっていた

 

「不思議なものだな。以前はこうやって一人旅の空の下で過ごすのが当り前だったのに、今はなぜか少し寂しく思える」

 

夜空を見上げる

 

「鈴々、姉上、皆、元気でいろよ」

 

焚火に木を入れようとすると

 

「……」

 

バキ!!

 

真っ二つに木を折る愛紗

 

「ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様ご主人様」

 

その表情はあの時の朱里同様、光がない眼差しであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時を戻して

 

 

「……」

 

桜が咲き誇る庭園の渡り廊下。両手に書簡や巻物を手に一人の女の人が立っていた

 

「賈駆殿」

 

「これは、張譲殿……」

 

「お仕事、捗はかどっていますか?」

 

「ええ、まあ……」

 

「匈奴との戦いで、疲弊しきった貴方達に援助の手を差し伸べ、この洛陽で陛下の側近くにお仕えできる様、計らったのは、一重に貴方達を、国を想う誠の忠臣と見込んでの事。多難な時ではありますが、だからこそ務めに励んでいただかないと」

 

「……承知しております」

 

「ふん」

 

そういうと張譲はその場をあとにするのであった

 

 

「………」

 

悔しそうな表情をしながら賈駆は去年の秋のことを思い出す

 

 

 

 

 

 

とある戦場。董卓の軍は戦をしていた

 

「ご報告します!我が軍の前線が、匈奴の先鋒に突破されました!」

 

「っ!!」

 

「分かった。お前は下がって指示を待て」

 

「はっ!」

 

「どうやら、潮時の様だな」

 

「いいえ、まだ……まだ何か策がある筈……!」

 

「流行り病で遠征軍の半数は歩くのがやっとという有り様だ。これでは、策も何もあるまい」

 

「でも、ここで引いたら、きっと匈奴は我が領土まで」

 

「だからこそ、今は一刻も早く兵を引いて、国境の守りを固めろ」

 

「……」

 

「并州には、まだ呂布の軍が無傷で残っている。あ奴がいれば、押し寄せてきた匈奴の軍勢を追い払う位は出来るだろう」

 

「…………そうね。今はそれが最善だわ」

 

「よし。なら貴様はすぐに撤退の準備を始めろ」

 

「華雄将軍、あなたは?」

 

「幸い、私の手勢は病にかかっておらぬ者が多い。今から図に乗っている匈奴の鼻っ柱を叩いてやろうと思ってな」

 

「む、無茶よ!相手は万を越えているのよ?千や二千の兵で何が出来るって言うの!?」

 

「貴様らが逃げるまでの時を稼ぐぐらいはできるさ」

 

「華雄将軍、あなたまさか……!」

 

「おいおい、勘違いするなよ。私は貴様らの為に、捨て石になるつもりは更々ないぞ?やられっぱなしでは気が収まらんから、ちょいと挨拶してくるだけだ」

 

「けど……!」

 

「心配するな。こんな所でむざむざやられたりはせんさ。何しろ私は………長生きする質たちだからな」

 

 

 

 

「(あの負け戦は、去年の秋の事だった。そして今はもう春……僕のせいだ……兵に流行り病が広まり始めた時、すぐに撤退を決断していれば、あんな事にはならなかったのに!そのせいで華雄将軍が)」

 

 

自責する賈駆であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し離れた場所

 

 

「ふふ、無様な様子だな」

 

「悪趣味ですよ」

 

「于吉か…何の用だ」

 

「いえ、私はただ通りかかっただけですよ」

 

「そうか、それで例の件は?」

 

「ええ、順調ですよ」

 

「そうか」

 

「ただ、このままでは足りません。もっと怨嗟の声を上げていただかないと」

 

「あれでは足りないというのか」

 

「はい。厄介な人物がいるので」

 

「高杉という無礼者という奴か。朝廷がありながら天の御使いとかほざく」

 

「ですか、奴の強さは本物です。まともに相手をすれば、こちらもただではすみません」

 

「ならどうすれば」

 

「そのためにもっと怨嗟の声を出さなければなりません」

 

「……なにをするか知らないがアレを手に入れるためだ」

 

「期待させてもらいますよ。もちろん貴方にもね」

 

別の場所から一人の人物が出てくる

 

「…………」

 

「(高杉勇作…今は、妖術の呪いに苦しむがい。うふふふふふ)」


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