TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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アニメ版黄巾の乱、前編です

では、どうぞ


第八十五席 群雄、黄巾の乱を鎮めんとするのこと(前篇)

「「「悲しみに躓き~瞳を伏せるけれど~流したこの涙~は、こ~お~か~いにしな~い」」」

袁術・張勲・郭嘉の三人組は、歌を歌っていた。そばに曹操、荀彧、朱里がいた

 

「「……」」

 

劉備と于禁の二人は三人の衣装合わせや振り付け指導、歌のレッスンをしていた

 

「……」

華陀は馬に乗ってある場所を目指していた

 

「「「……」」」

鈴々が木材を運んでいた。勇作はその木材を切り、李典自作の設計図を見ながら、指示していた

 

「……」

休憩の際、典韋がおにぎりを差し入れとして持ってきてくれた

 

「……」

楽進も差し入れを出したのだが、持ってきたのは真っ赤な色をした激辛スープ。口にした瞬間、李典と鈴々の口から炎を出す羽目になった。勇作は覇気でこの光景が見えたので口にしなかった

 

「……」

 

天幕では、軍師達も己の頭脳を駆使して、黄巾の乱を鎮める策を練っていた

 

「良い歌だな」

 

愛紗は夏侯姉妹と共に、黄巾党の動きを偵察しに赴いていた

 

「ああ。何でも南陽地方に古くから伝わる歌とか」

 

「ほう」

 

「はぁ~」

 

ため息を吐く姉を見て、笑う夏侯淵

 

「(そう言えば、華琳様も歌を作るとおしゃっていたが、はてさて)」

 

曹操は、作詞作曲を手掛けており、琴を使ってリズムを奏でながら、楽譜を書いていた

 

 

 

「あれが張三姉妹の舞台か……」

馬に誇り、少し高い崖の上から眺める愛紗

 

「黄巾党の連中、あまり警戒している様子はないな」

上から見ても黄色で埋め尽くされており、数えてもきりがない程の規模であった

 

「上手く入り込めればいいのだが……」

 

 

 

 

なぜ、皆がこんな事をしているかと言うと

 

 

 

 

「そうだ!!もしかしたら」

 

「何か、策があるの?」

 

「黄巾党の周囲を探っていて気付いたんだが、どうやら張三姉妹が、人々を操っている術は、彼女たちの歌に心を奪われた者にしか効かないらしい。ならばその者達の心を他の歌い手で虜にすれば」

 

「なるほど、そうすれば黄巾党は張三姉妹の言うままにならないという訳ですね。張三姉妹だけが相手なら捕まえるのは容易いはず」

 

劉備の表情が明るくなる

 

「(あれ?でもそれって、そうじゃない人達もいるってことじゃ?)」

 

「でもそれは、張三姉妹に匹敵する程の歌い手がいて、初めて成り立つ策でしょ?そんな歌い手がどこにいると」

 

「歌なら妾にお任せなのじゃ!」

 

「はい」

袁術が名乗り出て、皆が驚く

 

 

「♪♪♪」

 

歌を披露した袁術と張勲

 

「ふふん!」

 

「嘘!!」」

 

「すっご~い!お二人とも本当に歌がうまいんですね!」

 

「驚いたわ……蜜を舐めるしか能のない生き物だと思っていたのに、こんな才があったなんて」

 

「蜜を舐めては綺麗な声で歌う。まるでコオロギの様な事」

 

「わっはっは!苦しゅうな~い、遠慮せずもっと褒めてたも!」

 

「さっすが美羽様!どんな皮肉も通じない所は正に王者の風格!」

 

皆が苦笑いをする

 

「すごいのだ!」

 

「曹操さん、これなら何とかなるでしょうか?」

 

「そうね、やってみる価値は有りそうだわ。ただ、張三姉妹は三人組。出来ればこちらも、もう一人歌い手が欲しい所だけど……」

 

「んっ!んっ!」

夏侯惇は咳をした

 

「どうした姉者?風邪か?」

 

「我が軍で歌が上手い者と言えば……」

 

「あ~ごほん!ごほん!」

 

「誰かいたかしら?」

 

「げはっ!?」

 

「姉者静かに。煩くしては華琳様の邪魔になる」

 

「……」

 

「曹操様。他に宛がないようでしたら、稟ちゃんがよろしいかと」

 

「こ、こら風ふう!何を!?」

 

「稟ちゃんは故郷の村では黄河の歌姫と呼ばれていた程の歌自慢で、風呂上がりに姿見すがたみの前で輪唱しては、一人悦に入っている事もしばしば」

顔を真っ赤にしてもじもじとする郭嘉

 

「それは意外ね」

 

「い、いえ、その……」

 

「郭嘉。期待しているわよ?」

 

「はっ!」

 

曹操の期待に答えるべく、気持ちを引き締めて臨むのであった。

 

「そうと決まれば早速練習じゃ!張勲!」

 

「はい!」

 

「そこの眼鏡!着いて参れ~」

 

 

 

 

このようなことがあり、皆、それぞれ動いていたのであった

 

 

 

 

 

 

 

「歌姫の策……か」

 

「敵に気取られぬ様、兵は連れて行けぬ。事が破れた時は、我が黒騎兵が助けに行くが、正に決死隊だな」

 

「袁術殿は気づいておられないがな……ん?」

 

愛紗が後ろを向くと、夏侯惇は馬から下りて一人踞っていた

 

「この頃、夏侯惇殿は元気がないようだが、どうされたのだ?」

 

「構うと面倒なので、そっとしといてやってくれ……」

 

「は、はぁ……?」

 

「うぅ~……私は小鳥ぃ~……歌えぬ小鳥ぃ~……」

負のオーラが出しながら地面の上にのの字を書いていた

 

 

 

 

 

 

 

数日経ったある夜

 

「みんな、待たせたな」

 

「それは?」

 

机の上に置かれた三個の綺麗な宝珠。もう一つは数枚の札

 

「ゴッドヴェイドーの教主…張衡様にお願いして用意してもらった物だ」

 

華陀は今回の作戦に必要な物を仕入れる為、五斗米道の本拠地に行っていて、そして戻ってきた

 

「これは声が大きくなる様に術をかけた珠。こっちは楽器の音を奏でる呪符と、光を操る呪符だ」

 

「それさえあれば、なんとか張三姉妹に対抗できますね」

 

「ただし、どちらも込められた妖力に限りがあるらしい」

 

「つまり、妖力が尽きるまでに勝負がつかなければ、こちらの負けという事ね」

 

「うん」

 

 

 

 

 

 

そして作戦当日

 

黄巾党の陣地に接近する大型トラック程の巨大な車体。天使の羽の様な装飾もあり、明るいカラーリングが施された、移動式舞台車両

 

「(三国の時代なのに、よくこんなのが作れたな)」

 

李典の後方にある席には勇作、愛紗、鈴々、劉備、楽進、于禁、華陀の七人がいた。愛紗と華陀は小型の窓を引いて、外の様子を観察する

 

「いよいよだな……。しかし、やはり劉備殿は本陣で待っていた方がよかったのでは?」

 

「乱を静める為、妹二人が死地に赴く以上、私だけが安全な所でのうのうとしてられません!」

 

「みんなは鈴々が守ってやるのだ」

 

「ぷはぁ!蜂蜜水で喉の具合もバッチリなのじゃ!」

 

「よぉし、そろそろええやろ」

 

「ええ!」

 

「華陀殿!」

 

「おう。音よ……光よ……元気になれええええ!!」

 

その瞬間、舞台は光、音楽が鳴り響く。

 

「すごいな!」

 

勇作は華陀と一緒に歯車を回し、舞台を展開していき、大きな舞台場となった

 

 

「「「「♪♪♪」」」

舞台の中央からゆっくりと出てきた三人。彼女の美声が響き渡り

 

「みんな、妾達の歌を聴くのじゃ~~!」

 

黄巾党の気持ちも段々と高揚していく

 

「どうだ?」

 

「ええ感じや。邪魔する者はおらへん。流石は張三姉妹の舞台が好きで集まっとる奴らだけあって、この手の演出に慣れとるで。凪!沙和!行けるでぇ!」

 

「うむ!」

 

「はいなの!」

 

「気を付けてな」

 

愛紗は扉を開け、外に出る楽進、于禁

 

「劉備殿」

 

「またぁ…ちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さい!大丈夫。歌が好きな人に悪い人はいないよ。じゃあ行ってくるね」

 

笑顔で地上に降りていく劉備を、心配そうに見た後、その扉を閉じた

 

「どうぞなの~!これで応援して欲しいの~!」

 

「舞台前の広場で歌います!みんな集まって下さい」

 

黄巾党の一人一人に蒼い色をした棒付きキャンディを籠から出し、配っていく楽進と于禁

 

「中々可愛いじゃねぇか~」

黄巾党の中には、アニキ・チビ・デブもいた

 

「はい、これで応援して下さいね」

 

「こっちもいい乳!するする!何でもする!」

 

「ホントに!?じゃあ、広場に集まった人達に、飴を配ってもらえますか?まだまだ馬車にいっぱいあるんです」

 

「おう!」

 

「任せとけ!」

 

「任せるんだな!」

 

三人は引き受けるが

 

「うっ、うう……!」

 

「ま…ま…ま!」

 

「前が見えない……!」

 

大量の飴が乗せてある籠を一気に運ぶ三人

 

「よろしくね~」

 

全部押し付けた劉備であった

 

 

 

 

 

一方、舞台の向こう側にある、張三姉妹専用の天幕では

 

「ねぇ、ちいちゃん。外が騒がしいけど、何かあったのかな?」

 

そこで張角と張宝の二人は食事をとっていた

 

「黄巾党のみんなが応援の練習とかしてるんじゃないの~?」

 

「姉さん、大変よ!」

 

張梁が慌てた様子でやって来た

 

「どうしたの?そんなに慌てて」

 

「もしかして、漢軍の襲撃!?」

 

「とにかく二人共来て!」

 

「あ~~~~!!」

 

外に出ると、車上ライブが行われ、とてつもない熱気が上がっていた

 

「何なの、あれ?」

 

「分かんないわよ。気がついたらあんな所に入り込んでいて……」

 

「けど、この歌結構良いかも」

 

「なに呑気なこと言ってるの!こんな事して、あいつらきっと何か企んでる筈よ」

 

「よしっ、とにかく追い払っちゃおう!着替えるわよ」

 

そして三人の歌が終わった後、大歓声が鳴り止まなかった

 

「こっちのメガネっ子、良くね」

 

「僕は天和ちゃん、一筋だ」

 

「流石、曹操様のお作りになった歌。大ウケだわ……!」

 

「美羽様の歌い方が良かったんですね!」

 

「わははは!も~っと褒めてたも」

 

「来たぞ!」

 

外に出ていた勇作が声を出す。

 

「っ!!」

 

三人は気づく。舞台衣装に身を包んだ張三姉妹が舞台に上がってきたことに

 

 

「ふぅううう!!」

 

張宝がマイクに妖力を流し込み、大声で叫ぶ

 

「みんな~~!あいつらを追っ払って~~~~!!」

 

勇作達は万一に備え構える

 

「皆、早く!」

 

「って言われても……」

 

「なぁ……?」

 

「お願~~い!!」

 

「仲良くやろぉぜ?」

 

「「さんせ~~」」

 

「どうして……?何でいつもみたいに術が効かないの!?」

予想だにしない状況に動揺を隠せない張宝

 

「おしっ!こっちの思惑通りにいっとるようやで、おっちゃん!」

 

「誰がおっちゃんだ!?」

 

華陀はおっちゃんと言われツッコミを入れるが、策が成功した事に一同は安堵した

 

「っ!!ちい姉さん、きっとみんなの心が私達のよりあいつらの歌に惹かれちゃったのよ!」

 

「そっか!!」

 

「こんな時に漢軍が攻めて来たら……」

 

「それがあいつらの狙い!?」

 

「充分あり得るわね」

 

「今漢軍が来たら、私達はすぐに捕まっちゃって」

 

自分の首を切る様にスライドさせる張角

 

「どうすればいいのよあたし達~~~!?」

 

「そんなの簡単じゃない!あっちに心惹かれてるなら、もう一度私達の歌で、みんなの心を奪い返すのよ!」

 

「ちいちゃん」

 

「さあ行くわよ!」

 

「分かった」

 

「えっ?あ、うん!」

 

張三姉妹の舞台も音楽が響き、光の演出が起きる

 

「おお!!」

 

「そう来なくっちゃ」

 

張三姉妹も歌いだすと、会場が一気に盛り上がる

 

「うわ~、張三姉妹の歌をこんな近くで聞けるなんて」

 

「沙和、感激してる時か!」

 

「うぬぬ、こっちも負けずに歌うのじゃ!」

 

「「はい!」」

 

そして戦が始まった

 

 

 

「(何とも熱く平和な戦だな……けど、さっきの張宝が使った妖術で確信した。万一の時は!!)」




真・恋姫†無双編もあと少しで完結です

最後までよろしくおねがいします

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