TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第八十四席 勇作、曹操の要請を受けるのこと

夕食を終えた勇作達は、部屋に戻らずに集まっていた

 

「何?曹操殿から参陣の要請?」

 

そこにいる全員が朱里の説明に耳を傾けていた

 

「はい。この度、朝廷の命で黄巾党の討伐に赴く事になったので、是非我が義勇軍の手を借りたいと」

 

「(まさか本当に起こってしまったのか……黄巾党)」

 

「コーキントーって何なんでしょう?」

 

「きっと翠みたいな人達の集まりなのだ」

 

「それは脳筋党です」

 

「おい!」

 

朱里がサラッと言うと、翠は少し声を荒げる

 

「…黄巾党というのは、張三姉妹の熱心な追っかけの人達の事です。張三姉妹を支持しているのを表すために彼女達の真似をして体に黄色の布を着けている事からそう呼ばれるようになって」

 

「どうして?どうして、そんな人達を討伐するんですか?何か悪い事でもしたんですか?」

 

「はい……元々は騒がしいだけの大して害のない人達の集まりだったんですが、ある日、突然暴徒と化して役人と騒ぎを起こし、それからはまるで蝗いなごの様に近くの役所を襲ってはそこの蔵を拓き、食料を食べ尽くすと、また次の役所を襲うという事の繰り返しで……」

 

「なんでそんな事を?」

 

「はっきりとは分かりませんが、噂では張三姉妹が中心になって先導しているとか……」

 

その言葉に鈴々が反論する

 

「そんなの信じられないのだ!あんな楽しい歌を歌うお姉ちゃん達が悪い事する筈ないのだ!」

 

「私も信じたくはないのですが、現にこうして討伐の命が下ったという事は、恐らく……」

 

しばし沈黙する一同

 

「皆さん、ここで考えてもしょうがないですよ」

 

「劉備殿?」

 

「もし黄巾党が本当に悪い事をしているのなら、やはりそのままにしておけません。けど、本当に悪い事をしてなかったら……」

 

「「「「「「…………」」」」」」

 

「その時はその時で、また考えましょ?」

 

劉備の言葉を聞いて、呆気にとられる一同

 

「ふっ、そうだな。劉備殿の言う通りだ。ここで考えていてもしょうがない」

 

「それじゃあ……」

 

「ああ……出陣だ!」

 

「そうだな!そうと決まれば、皆!準備に取り掛かるぞ!!」

 

「「「「「「御意!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして出陣の日

 

「え~、何でたんぽぽは行っちゃ駄目なの~?」

 

「当たり前だ。お前はまだ修行中の身なんだから、あたしらと村で留守番だ」

 

「ちぇ~……」

 

「それじゃあ翠、紫苑、留守を頼んだよ」

 

「ああ」

 

「はい」

 

「では、行ってくる」

 

「お気をつけて」

 

「(よし!あれ…やるか!)」

 

勇作は馬に乗ると

 

「お前ら準備はいいか!!」

 

「「「「「「「「「いえぇぇぇぇいいいいいい!!!!!!!」」」」」」」

 

兵士たちが鬨の声上げるがごとく声を上げる

 

「久々の戦だ!!目指すは黄巾党がいる戦場!!遅れずについてこい!!」

 

「「「「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!!!」」」」」」」

 

「す、すごいですね」

 

その迫力に劉備は圧倒された

 

「ああ、ご主人様はこうやって士気を上げているのだ」

 

「鈴々もこれやると、すごく元気になるのだ」

 

「出陣!!!!」

 

仲間に見送られながら、村の兵数千人を連れて、勇作達は出陣していった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曹操軍のいる軍地まで辿り着いた一行。曹操の横には愛紗と勇作がいて、後ろには劉備、そして鈴々と朱里がいる

 

「いやぁ……曹操殿自らお出迎えとは、痛み入る」

 

「こちらから頼んで来てもらった以上、相応の礼を尽くすのは当然だわ。それに、私とあなたの仲じゃない。水臭い事は言いっこなしよ」

 

「は、はぁ……」

 

「(仲…ねぇ)」

 

「けど驚いたわ。私が新しく召し抱えた楽進達が、あなた達と知り合いだったなんて」

 

「楽進殿達とは、旅の途中に立ち寄った村で知り合って。そういえば、程昱殿と郭嘉殿は?」

 

「程昱は軍師。郭嘉は親衛隊員として、よく仕えてくれているわ」

 

「(目に涙を浮かべている郭嘉殿の姿が想像できる)」

 

「所で、義勇軍は大将旗…あれは」

 

「ああ、俺の旗だよ」

 

「やっぱりね」

 

曹操は勇作の旗を見てすこし驚いていた。愛紗達の旗は緑地で漢字で自分の名前の一文字が黒地で書かれているが、勇作の旗は黒地で白地で文字の代わりに髑髏と交差した六本の刀が書かれてある、いわば海賊旗である

 

「それは良いわ。けど劉の旗も大将旗に掲げていた様だけど?」

 

「いや、前に話したと思うが、劉備は劉備でも、あの男は偽物で本物は」

 

「ええ、その事は承知しているけど、今の義勇軍は天の御使いである高杉が率いているのでしょう?なら…」

 

「う~ん、まあ、話せば長くなるのだが……」

 

「私は劉備殿と姉妹の契りを結び、義理の妹となったのだ」

 

「ああ、なるほど……。それで義理の姉を立ててやむ無く、という訳ね」

 

「別にやむ無くという訳では……」

 

「後、そうしとくと、前に作った旗がそのまま使えてお得なのだ」

 

「こ、こら!余計な事は言わんでいい!」

 

愛紗は慌てて鈴々の口を塞ぐ

 

「曹操殿…そう言う訳なので」

 

「華琳と呼びなさい」

 

「いや…でも」

 

「私がそう呼びなさいと言っているのよ。貴方は私の命を2回も救っているのだから」

 

「そうですけど」

 

「だから私の事は華琳を呼びない。それとも呼ばない理由でもあるのかしら」

 

「(呼んだら呼んだで、ややこしくなる未来が見えるだけなんだけど……あれ?この気配は?)」

 

天幕に着いた一行。そこには夏侯姉妹の他、大きい欠伸をする袁術と、その側に付き添うの張勲がいた

 

「遅いぞ。いつまで待たせる気じゃ?」

 

「え、袁術殿……?」

 

「ん?おお、お主はいつぞやの」

 

「え、袁術殿も此度の討伐に?」

 

「うむ、朝廷の命でやむ無く出陣してきたが、賊退治等は妾の性に合わぬ故。お主ら、妾の分まで頑張ってたも」

 

「どう?私があなた達に援軍を頼む気になったのが分かるでしょ?」

 

「(た、たしかに)」

 

勇作と愛紗はただ苦笑するしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

天幕に全員が集まり、軍議が開始された

 

「桂花、まずは現状の説明を」

 

「はっ……現在黄巾党はこの広い平地に集結しています。首謀者と思われる張三姉妹の天幕を中心にして、それを取り巻く様に陣を張っており…その数はおよそ数万」

 

「およそ?もっとはっきりした数は分からないの?」

 

「申し訳ありません。張三姉妹は野外に立派な舞台を設置し、士気を高める為か、時折そこで歌を歌っているのですが、それを聞き付けた者達が、続々と黄巾党に身を投じ、そのため正確な数が掴めないのです」

 

「(道理で、続々と集まっているわけか…今いる人数だけでも5万…か)」

 

「……例え烏合の衆とはいえ、それだけの数の相手をするとなると、ちょっと厄介ね」

 

「はい」

 

曹操が考えていると

 

「失礼します!」

 

天幕に一人の少女が入ってきた

 

「典韋殿?」

 

「あっ!高杉さん、関羽さん!」

 

喜びの声を上げるが、すぐに気持ちを切り替え、曹操に耳打ちをした

 

「曹操様……」

 

「………なに?華陀が会いたいと訪ねて来た?」

 

「(……華陀殿が?………えっ!!これは)」

 

その時、勇作は見聞色の覇気である光景が見えた

 

「(……まだ根に持ってたのね。まあ同然だけど…危なくなったら助けよ)」

 

心の中でそう誓う勇作であった

 

 

 

 

「……」

 

そして天幕に連れて来られた途端、夏侯淵に腕を後ろ向きに取り押さえられ、首の後ろには夏候惇の剣が添えられていた。

 

「華~陀?自分から首を捧げに来るとは良い度胸ね?私に浴びせた恥辱の言葉、忘れてないわよ?」

 

華陀は苦痛に顔を歪ませ、そんな彼を、冷たい笑みを浮かべながら見下す曹操

 

「そ、それは誤解だ!俺はただお前の」

 

「無礼者!」

 

「曹操様と呼べ!」

 

「そ、曹操様のべ、いっ!?」

 

「それ以上言ったら本当に首を落とすわよ……!?」

 

曹操に睨まれ、華陀の顔から血の気がなくなっていく

 

「わ、分かった!だから話を聞いてくれ!」

 

「どうだろう?話だけでも聞いてみては……?」

 

「華陀のおじちゃんは良い人なのだ!」

 

「おじちゃ…」

 

「……そうね。関羽がそう言うのなら」

 

その言葉を聞き、安堵する華陀

 

「但し、話が下らないものだった時は」

 

「いっ!?」

 

「分かってるわね……?」

 

曹猛徳に睨まれ、華陀は顔を青ざめていた

 

「……!!な、何だと!!この乱が太平要術の仕業だと!!」

 

勇作は見聞色の覇気で華陀がこれからいう事を読んだ

 

「!!」

 

これから言おうとしたことを先に言われ、驚く華陀

 

「っ!?それは本当なの!!黄巾の乱は太平要術の仕業って?」

 

驚く曹操

 

「あ、ああ……。俺の探った所では、黄巾党の者達は皆、太平要術を使う張三姉妹に妖術で操られているらしい」

 

「張三姉妹は、何故そんな事を?」

 

「前に話したと思うが、太平要術はそれを持つ者の胸の内にある、悪しき心を育み、妖術で世を混乱させる様、仕向ける力がある。今回の事も、恐らくは……」

 

「舞台を盛り上げるのに太平要術を使っているつもりが、いつの間にか自分達の方が使われていた……というですか」

 

「たかが本一冊と甘く見ていたけれど、それがこうまで大きな力を持つなんて……」

 

「ああ。これ以上、被害を広げない為に何としても太平要術を封印する必要がある」

 

「そうね……その通りだわ」

 

「ではその為にも、まずは黄巾党を討伐し、張三姉妹を」

 

「っ!ちょっと待ってください!!」

劉備は声を上げる

 

「黄巾党の人達は、張三姉妹に操られてて、その張三姉妹も悪い事をしているのは太平要術のせいなんですよね!?だったら、太平要術さえ封印すれば良いわけで、何も黄巾党の人達を討伐しなくても」

 

「あなた、事態がよく分かってない様だからもう一度言ってあげるけど、張三姉妹は数万の黄巾党に囲まれた中にいるのよ?」

 

「そ、それは分かってます!」

 

「なら、黄巾党を討たずして、太平要術の封印もないこと位分かるでしょ?まさか『封印させて下さい』と言えば『はいそうですか』と張三姉妹が太平要術を差し出すとでも思ってるんじゃないでしょうねぇ?」

 

「で、でも、黄巾党の人達は操られてるだけなんですよ!?なんとか傷つけない様に」

 

「馬鹿言わないで!誰の血も流さずにこの事態を収める様なうまい手がある訳ないでしょう!?」

 

「け、けど……」

完全に論破され、何も言い返せない劉備。俯く彼女の側に寄る愛紗

 

「(甘いな………俺も人の事言えないけど、今回はその甘い考えが出来るかもな)」

 

「そうだ!!もしかしたら」

 

「何か、策があるの?」

 

全員が華陀に視線を向ける

 

「(……けど万一の時は)」

 

勇作は何かを決意したのか、手にぐっと力を入れ、手のひらを閉じるのであった


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