TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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遅れてしまいすいません

では、どうぞ


第八十席 朱里、鳳統と真名を交換するのこと

鳳統が橋に着くと、後ろから朱里が追いかけてきた

 

「鳳統ちゃん!待ってぇ!」

 

朱里は自分と鳳統の分の籠を持って走っている。しかし鳳統は構わず、橋を渡ろうとする

 

「きゃっ!」

 

「っ!」

 

悲鳴の方を向くと、朱里が地面に倒れていた。走る最中に転んでしまったようだ。鳳統も、足を止めた

 

「待って鳳統ちゃん!私に悪い所があるなら謝るから!」

 

「いや……来ないで……!」

 

鳳統は後ろ歩きで下がる。が折れてしまっている足場に落ちた

 

「っ!?」

 

「鳳統ちゃん!」

 

足場が無くなったものの、鳳統は間一髪の所で、縄で出来た手すりの下部分に掴まっている

 

「うっ、ぅぅ……!」

 

「鳳統ちゃん!動いちゃだめ!すぐに助けに行くから、じっとして!」

 

必死で手すりにしがみつく鳳統。朱里は大声で叫ぶと、助けに向かう

 

「こ、怖くない怖くない……高い所なんて、全然怖くない!」

危険に晒されている鳳統を助ける為に、意を決して渡り始める

 

「待ってて……もうすぐ……はわわっ!」

 

この高さから落ちたらひとたまりもないだろう、という恐怖にも負けず、朱里はゆっくりと、確実に近づいていく。そして、ようやく鳳統の元へと辿り着いた朱里

 

「はぁ……も、もう大丈夫よ…さあ、捕まって」

 

手すりに掴まりながら、鳳統に手を伸ばし、彼女の体を掴む。そして引き上げることに成功した

 

「よかったぁ……鳳統ちゃん、本当によかったぁ!」

 

「孔明ちゃん……」

 

鳳統の安否を確認し、半泣きで安堵する朱里。彼女に抱き締められている鳳統は複雑な表情でいた

 

 

 

 

 

 

 

 

それから安全な場所まで避難し、薬草を摘める為の籠を置いて、腰を下ろす

 

「私、先生の所に来るまで何軒も何軒も親戚の間をたらい回しにされていたの」

鳳統が身の内を語り始めた

 

「けど、自分のこともちゃんと出来ないから、どこでも邪魔者扱いされて……でも、でもそんな私に初めて優しくしてくれたのが水鏡先生だったから何か本当のお母さんみたいで」

 

水鏡先生の事を話している時は明るい表情をした

 

「孔明ちゃんの事は先生から良く聞いていた。とてもいい子でお勉強もよくできるって…だから、本当は仲良くしたかった」

 

自身の本音を語る

 

「書物の事とか薬草の事とか、色々教えてほしいと思ってた。でも、でも、孔明ちゃんと先生が仲良くしてるのを見たら、先生をとられちゃう様な気がして、そしたらここがギュウッて苦しくなって、気持ちがトゲトゲしてきて、あんな……あんな意地悪するつもりはなかったのに……なのに私」

 

「鳳統ちゃん……私全然怒ったりなんかしてないよ?ううん、寧ろ鳳統ちゃんがそんなに先生の事を好きでいてくれて、嬉しいくらい」

優しく微笑みながら、鳳統に心の内を語る朱里

 

「私、先生の事大好き。そして、鳳統ちゃんも先生の事が大好き。だから私達、仲間だね」

 

「孔明ちゃん……うん」

鳳統は微かな嬉し涙と共に、可愛らしく微笑んだ

 

 

 

 

 

 

 

 

空はすっかり茜色に染まり、帰路を歩いていた。その最中、朱里の服の手を掴み、足を止める鳳統

 

「どうしたの?」

 

「鳳統ちゃん?」

 

「雛里……私の真名……」

 

「それじゃあ……」

 

「お友達だから……雛里でいい」

 

「……うん!」

 

二人は真名を預けあった

 

「ねえ、一つ聞いて良い」

 

「何?」

 

「その、ご主人様って呼んでいる人の事について」

 

「ご主人様って高杉さんの事?」

 

「うん」

 

「高杉さんは天の御使いで、私の知っている限りじゃあ、一番強い人だよ」

 

「好きなの」

 

「えっ!!な、何を言って」

 

「やっぱり好きなんだね」

 

「はわわ……けど何でご主人様のことを」

 

「私、好きになっちゃたの」

 

「好きになったって、それって」

 

「うん、一目ぼれしちゃった」

 

「はわわ!!!!」

 

衝撃発言に驚く朱里であった

 

 

 

 

 

翌日、勇作の怪我も治り、別れの時となった

 

「本当にお世話になりました」

 

「いえいえ、また来てくださいね」

 

「はい」

 

「水鏡先生、ありがとうございました」

勇作は御礼を言う

 

「御礼なら雛里に言ってください。ほとんど雛里が世話をしたのですから」

 

「そうですね」

 

勇作は鳳統の目線に合わせるように片膝を付けて姿勢を下げる

 

「ありがとう、鳳統殿」

 

「雛里」

 

「はい?」

 

「雛里っと呼んでください」

 

「いや、それ…真名じゃあ」

 

「呼んでください」

 

「…わかった。ありがとう雛里」

 

「……」

 

ダキ

 

「ちょっ!!」

 

「「「なっ!!」」」

 

雛里は勇作に抱きついた。勇作の首に腕を回して

 

「……」

 

「あの…雛里さん」

 

ギュー

 

「……」

 

「雛里さん」

 

「!!あわわ!!」

 

我に返ったのか、雛里は顔を真っ赤にして水鏡先生の後ろに隠れた

 

「あらあら、大胆ね」

 

「……」

 

「「ご主人様!!」」

 

「はい!」

 

愛紗と朱里に拘束される勇作

 

「ちょっとこちらに来てください」

 

「いや、でも」

 

「言い訳無用!!」

 

そして朱里は別れの言葉を告げた

 

「さようなら朱里ちゃん、気を付けてね!」

 

「雛里ちゃ〜ん!またね!さようなら」

 

「きっとまた会いに来てね!絶対絶対来てね!」

 

「きっときっと来るよ!雛里ちゃん!」

 

こうして一行は、桃花村へと歩を進めていった。勇作を引っ張り歩きながら

 

「(俺は悪くないよね!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わり、張三姉妹の舞台ドーム。そこは重い空気が流れていた。歌を披露している三人を囲む数人の兵達。二又の長柄を持っており、役所の者も来ていた

 

「途中で舞台を中止しろって、どういう事なんですか!?」

 

「どうもこうも中止は中止だ。こうした大きな催しをする時は、役所に届け出て許可をもらわんとな」

 

「で、でも、公共主はちゃんと許可は取ったって……」

 

「さぁて、儂はそんな話、聞いておらんがなぁ?」

 

「な、そんな……!」

 

「お願いします!せめて今回だけでも、舞台やらせて下さい!」

 

「皆は、私達の舞台を楽しみにしてくれてるんです!」

 

三人に続く様に、観客席のファンも、猛抗議を行っている

 

「ふぅむ……そういう事ならなんとかしてやりたいが……分かるだろう?魚心あれば水心もし、手元に金がないというのなら」

 

男は厭らしく告げると、張梁の肩を抱き、胸を触り始めた

 

「儂は他の物でもいいけどなぁ……」

 

「っ!」

 

「あっ、こらぁ!!」

 

「レンたんに汚い手で触るなぁ!」

 

舞台に乗り込んでくる観客達を、兵士達がすかさず二又で取り押さえる

 

「ちょっと、乱暴はやめてっ!」

 

張角の声は届かず、会場内は混乱していた。この光景を見ていた張宝は、歯を軋ませ、怒りで肩を震わせる

 

「許せない……!」

 

大切な舞台を滅茶苦茶にされ、張宝は怒りに燃えた。マイクに妖気を注ぎ込み、思いの丈を叫んだ

 

 

 

「みんなお願い!薄汚い役人をやっつけてぇぇぇぇぇ!!」

 

その叫びは会場内に響き渡り、観客全員の耳に入った

 

「な、なんだこれは…いったい何が」

 

突然の変わり様に戸惑いを見せる役人とその兵士達。何かにとり憑かれたかの様に殺気を感じさせる観客達。その会場から、役人達の悲鳴が止まなかった


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