TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第七十七席 勇作、水鏡の屋敷に向かうのこと

丸い形をした天井の巨大なドーム。そこでは張三姉妹が歌を披露していた。歌い終わり、大歓声の嵐が起きる

 

「ふふ」

 

張宝がマイクに軽くキスをし、マイクが紫の色に染まった

 

「ねぇ、知ってる?今、洛陽の都で流行ってるっていう、新しい化粧品」

 

「知ってる知ってる!お肌がしっとり艶々になるってやつでしょう?」

 

「あれ欲しいよね~?」

 

その言葉が何度も木霊し、観客全員に伝わった

 

「お届けものです」

 

「お届けものでーす」

 

「お届けもので〜す」

 

「ど~も~」

 

三姉妹が泊まっている屋敷にそれが届いた

 

 

別の日のライブ

 

 

「ねぇねぇ知ってる?こないだ新発売したお菓子」

 

「お餅の中に餡子と果物が入ってるっていう……」

 

「そうそう、それそれ!」

 

「あれ、一度食べてみたいよね〜〜!」

 

 

その日の夜

 

「お届けものです」

 

「お届けものでーす」

 

「お届けもので〜す」

 

「ごくろうさま」

 

また三姉妹が泊まっている屋敷にそれが届いた

 

 

「そう言えば」

 

「お届けものです」

 

「あと…」

 

「お届けものでーす」

 

三人は毎回のように妖術を使っていた

 

 

「知っている?今噂の青い木の実」

 

「ああ、知ってる」

 

 

そしてその様子を、ドームの吊り天井から見下ろしている一人の男がいる

 

「ふぅむ、成功に貪欲な割に、考えの浅い彼女達に太平要術を預ければ、大きな騒ぎを起こして世を乱し、妖力をたっぷり溜め込んでくれるかと思ったのですが、これは人選を誤りましたかね……まっ、もう少し見てみますか…葛玄の手を煩わせるのも癪ですしね………」

 

そう言い、張三姉妹を見る于吉であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

別の場所。勇作一行は、着いた村で夕食をとっていた

 

「はい、あ~ん」

 

「ちょ、劉備殿…」

 

「もう、駄目ですよぉ。私達姉妹になったんですから、劉備殿じゃなくて、ちゃんとお姉ちゃんって呼んで下さい」

 

「い、いや、だからあれは鈴々が勝手に……」

 

鈴々の方を向くと

 

「む~」

 

膨れっ面でいた

 

「どうした?鈴々。そんな膨れっ面して」

 

プイッとそっぽを向いてしまった。皆が首を傾げている

 

「鈴々」

 

「愛紗ばっかり、あ~んしてもらってずるいのだ」

 

「何だ。それならそうと早く言え。ささ、劉備殿。あ~んしてやるなら、鈴々に」

 

「そ~じゃないのだ!!」

 

「ん?」

 

「鈴々は劉備じゃなくて、愛紗にあ~んしてほしいのだ」

 

「はぁ!?なんであたしが鈴々にそんなことを?」

 

「愛紗はお姉ちゃんの劉備からあ~んしてもらっているから、鈴々はお姉ちゃんの愛紗からあ~んしてもらって良いはずなのだ!!でないと不公平なのだ」

 

「(何だよ?その理屈)」

 

「ってどういう理屈だ!?」

 

「あ~ん」

 

口を開ける鈴々

 

「鈴々」

 

「夫婦ケンカは犬も食わぬというが、こっちのケンカは猫も跨いで通うだな。なっ?朱里」

 

朱里に同意を求めるも、反応がない。星が見ると、朱里はどこか上の空だった

 

「朱里……?」

 

「えっ?はっ、はい……」

 

「…………」

 

ぎこちない返事に、少し首を傾げる星であった

 

 

 

 

 

 

 

そして夜になり、全員宿屋で睡眠をとる。寝台で寝ている星と同室の朱里は、まだ眠りについていなかった

 

「姉妹かぁ……」

 

夕食時の愛紗達のやり取りを見て、朱里は昔の事を思い出していた

 

「私にだって、家族が離れ離れになる前は、お姉ちゃんと…妹が…………」

 

眠りに落ちた朱里。その瞳からは、一筋の温かい雫が頬に流れていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

 

「今日も楽しく山歩き~」

 

一行は山道を歩いていた

 

「お弁当ないけど山歩き~クマが出たって山歩き~」

 

楽しく歌を歌う鈴々

 

「…………」

 

「ん?どうした、朱里?久し振りの里帰りだと言うのに、あまり元気がないようだが?」

 

「そ、そんな事ないですよ?」

 

「もしや、桃花村に帰る途中で寄り道させた事を気にしているのか?」

 

「あ、いえ……」

 

「それなら気にする事ない。帰りは急ぐ旅でなし、私も久々に水鏡殿に会いたいしな」

 

申し訳なさそうに苦笑する朱里であった

 

「(いったいどうしたんだろう?うっ…足が)」

 

以前の賊退治で足を痛めた勇作。痛みにより集中が出来ないのだ

 

「(包帯でテーピングもどきをして、痛みは引いているけど、いつまた痛みが来るか)」

 

 

 

そんなコト考えながら歩いていると、辺りがうっすらと霧に包まれてきた

 

「……すっかり、霧に巻かれちゃいましたね」

 

「どんどん、濃くなってくのだ」

 

「うむ、まったくきりがないな」

 

「ぷっ、やだ!面白~い!」

 

「ウケでよかったのだ……」

 

「うむ」

 

愛紗は喜んでいいのかどうか分からず、複雑な心境だった

 

「そういえば、星。前に来た時は霧の中でお主とはぐれてしまったのであったな」

 

「そんな事もあったな」

 

「もうああいうのは、勘弁してくれよ?」

 

「当たり前だ。こっちだって好きではぐれた訳でもない…だいたいあの時は」

 

「(大丈夫かな?)」

 

 

 

 

 

 

 

 

森を抜けるが

 

「あれ?趙雲さんが……」

 

「え?」

 

星がいなくなっていた

 

「まったく!はぐれるなと言った側から何でまた……」

 

ここで、劉備以外はあることに警戒する

 

「あの、もしかしてこれって……」

 

「どうせ変態仮面になって出てくる前振りなのだ」

 

「うむ、だな」

 

「そうだね」

 

「「「「うんうん」」」」

 

納得する四人

 

「うん?」

 

首をかしげる劉備

 

 

 

「今日もたのしく山歩き、お弁当やいけど山歩き」

 

一行は歩き始めた

 

「あの、本当にいいんですか?趙雲さんを探さなくて……」

 

「どうせ、その内ひょっこり出てくるから、気にすることないのだ」

 

「そういうことだ」

 

「はぁ……」

そうこうしている内に

 

「そんなことよりほら…見えてきたぞ!」

 

朱里の恩師である、水鏡こと司馬徽の屋敷が見えた

 

「……」

 

表情が明るくなる朱里

 

「(嬉しそうだな)」

 

そう勇作が思っていると

 

「…うお!!」

 

足元が崩れ崖に落ちた

 

「「ご、ご主人様!!」」

 

「お兄ちゃん」

 

「痛って~」

 

「大丈夫ですか」

 

「ああ、崖になっているから気を付けて」

 

「はい」

 

四人は下に降りる

 

「大丈夫ですか」

 

「大丈…夫…ぐっ」

 

痛みで顔が苦痛に歪む

 

「どうしました!!」

 

「右足が」

 

「え?」

 

朱里が勇作の右足の裾をめくる

 

「こ、これは」

 

右足首に白い包帯がきつく巻かれていた

 

「これはいったい?」

 

「こ、これは」

 

「そんなことより水鏡殿の屋敷に行こう」

 

「はい」

 

「鈴々がおぶるのだ」

 

「武器は私と劉備殿が」

 

「はい」

 

「わかりました。それと…ゴシュジンサマ」

 

ゾク

 

「は、はい」

 

「コノケガニツイテジックリハナシテクダサイネ」

 

「(え!何…朱里ってこんな怖かったっけ。目に光がないような)」

 

「…ヘンジ」

 

「は、はい!」

 

「愛紗……な、なんだか朱里が怖いのだ」

 

「そ、そうだな」

 

「は、はい」

 

一同は急いで水鏡殿の屋敷に向かうのであった


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