TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第七十一席 勇作、再び化け物を退治させんとするのこと

戻った勇作達は袁術の屋敷にある一室にいた

 

「ったく!なぁにが任せておけ、だ!ワァワァギャーギャーと情けない!」

 

「面目ない……」

 

「のだ……」

 

先程の失態を責められている愛紗と鈴々

 

「主が機転を利かしてくれたからいいようなものの、恐怖のあまり己の得物まで投げ捨ててしまうとは、武人の風上にもおけん!」

 

「「うぅ……」」

 

「しかし、劉備殿は意外と肝が太いようだな。失礼ながら化け物が出たら真っ先に腰を抜かそうと思っていたが」

 

「え~と、なんていうか…ビックリしすぎて腰を抜かすの忘れちゃったみたいで」

 

「はあ~」

 

「うふふ」

 

「はあ…で、どうする?」

 

「そうですね…笑ってばかりもいられませんよね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、一同はもう一度謁見の間で袁術と面会する

 

「な、なんと、そんなに恐ろしい化物であったのか……!?」

 

「はい。顔は猿、胴は狸、虎の手足を持ち、尾は蛇でトラツグミに似た、気味の悪い声で鳴くそれはそれは恐ろしい化物でございました!」

 

両手を使ってその化物の特徴を力説する朱里。化物の姿を思い浮かべて顔を青ざめる袁術

 

「(うわ…これは怖い想像しているな)」

 

「その化物相手に、我ら一丸となり、一歩も引く事なく丁々発止ちょうちょうはっしと打ち合い、バッサバッサと勇猛果敢に切りつけ、死力を尽くして戦いました!」

 

「(実際は、そんなコトなかったけど)」

 

「ですが、後一歩という所で……」

 

「取り逃がしたのか……?」

 

「はい…」

 

「うむ、そこまでに追い詰めながら逃がすとは残念なのじゃ」

 

「それではやはり、あの化物を倒すのは無理」

 

「いえ、まだ無理と決まった訳ではありません」

 

「何か、手があるのかや?」

 

「はい。魔を払う聖なる力の宿る宝剣をもってすれば、不可思議な妖力を持つあの化物にも、必ずや止めをさせる筈」

 

「宝剣……」

 

「袁術様。化物を完全に退治する為に、あの宝剣を我等の手にお戻し頂く訳には参りませんか?」

 

「うぅむ…そか、そういう事なら―――」

 

「だ、駄目ですよ美羽様!」

 

了解しようとする袁術を、慌てて止める張勲

 

「(宝剣を返して、そのまま持っていかれちゃったらどうするんですか!?)」

 

「あっ、そ、そうじゃ!それは駄目なのじゃ!」

 

小声で言うと、袁術もやっと気がつき、宝剣の受け渡しを拒否する

 

「分かりました。では代わりにこれをお預けしていくという事でどうでしょう?」

 

朱里は布に包んだ小さな物を取りだし、布を取る。布の中にあったのは、蓋をしている様に見える湯呑み

 

「見た所、只の湯呑みの様じゃが」

 

「何を仰います!これこそ天下に二つとない名器、はてなの茶碗でございます」

 

「はてなの、茶碗……?」

 

「ご覧下さい!この様に飲み口が塞がっているだけでも驚きなのに、おまけに底が抜けているという、手にした誰もがはてな?と首を傾げ、驚くべき一品!」

 

朱里が強く説明している中、後ろにいる愛紗、鈴々と星の三人は、笑いを堪えていた

 

「おぉ、確かにこれは奇妙な……!」

 

これには袁術の隣に控える張勲も、主の様子に驚いていた

 

「袁術様、これをお預けしますので、一先ず宝剣をお返し願いませんか?」

 

「うむ、良かろう」

 

「(………マジで信じてるよ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勇作達が退室した後、袁術はそのはてなの茶碗という物を、品定めするように眺めている

 

「ふぅむ。蓋が取れぬ……見れば見るほど不思議な品じゃのう…」

 

「あのぅ、本当に良かったんですか?そんなものと引き換えに宝剣を返しちゃって……」

 

「なぁにを言っておるのじゃ。これ程の名器が手元にあれば、例えこのまま宝剣を持ち逃げされたとしても、損はするまい」

 

「はぁ……まあ私は美羽様が良いなら、それでいいんですけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、なんともあっけなく宝剣を取り戻した勇作達はというと

 

「しかしよくもまあ、あんな嘘をまことしやかに捲し立てたものだな」

 

「まったくなのだ」

 

「うん」

 

愛紗と鈴々が笑うと、当の朱里は恥ずかしそうに頭をかく

 

「けど驚きました。我が家に伝わるこの宝剣に、魔を払う聖なる力があったなんて」

 

「あぁ、その宝剣にそんなものはありませんよ」

 

「えっ?じゃあ……」

 

「袁術さんって、どうも信用できない気がして、だからああ言って取り敢えず宝剣を返してもらっておこうと思って…でも一旦引き受けた限り、ちゃんと化け物退治はやりますよ?舌先三寸で、只の湯呑みと引き換えに宝剣を巻き上げた、なんて言われたら後味悪いですからね」

 

「けど、宝剣の霊力が嘘なら、どうやって化け物を倒すのだ?あいつでっかくて光ってて、すっごい声で鳴いて口から火を吹いたのだ!」

 

「光ってたのは、多分ヒカリゴケを塗ってたから。鳴き声は、大きな甕かめに法螺貝ほらがいの音を反響させたものだと思います。後、口から火は吹いてませんよ?」

 

「それじゃああの化物は……」

 

「作り物です」

 

それを聞いた愛紗と鈴々は、一瞬驚くと、すぐにガックシと肩を下げる。作り物にまんまと引っ掛かってしまったという事で、すっかり落ち込んでしまった

 

「進歩がないなぁ二人共……」

 

「作り…物……?」

 

「だから、退治するのは造作もないと思うんですが、ただ誰が何の為にあんな人騒がせな事をしているのかが、気になって……」

 

「そのことなら心配ないよ」

 

「どういう事ですか?ご主人様?」

 

「実は、撤退する前に覇気を使ったんだ。だから何であんなことをしたのか理由はわかったよ」

 

「そうなのですか」

 

「さすがお兄ちゃんなのだ」

 

「それでは、あれが作り物というか、人の手によるものだと知っていたのですか」

 

「・・・ああ」

 

「じゃあなんで、教えてくれなかったのだ」

 

「………あまり責められなくてね…あの子たちの現状を考えると……な」

 

その言葉に皆、?マークを浮かべていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして空は夜。勇作達は、化け物の御堂の前までたどり着いた。六人が来るのを認知した様に、あの気味の悪い声が聞こえてくる

 

〈カ〜エ〜レ〜……!〉

 

すると劉備は、宝剣を引き抜く

 

「やあやあ我こそは中山靖王の末裔、劉玄徳なるぞ!昨夜は不覚を取ったが、今回はこの値千金、売れば三年は遊んで暮らせる宝剣で一刀両断にしてくれる!」

 

「化け物退治の報酬金、既に前金で受け取った以上、こちらも後には引けんしな!」

 

劉備は宝剣を、愛紗は手に持っている、金の入った小袋を見せつける様に叫ぶ。そしてその言葉に答える様に、扉がカタカタと震えだし、隙間からは金緑色の光が射し込む。

 

「来るぞ!」

 

扉が開き、化け物は吠えながらその姿を見せた

 

グオオォォォォォッ!!

 

「化け物〜!」

 

「なのだ〜!」

 

どこかわざとらしい悲鳴をあげ、勇作達はうつ伏せに倒れた。し…ん、と静まり返る

 

「「「ふははははは」」」

 

すると、どこからか、子供の小さな笑い声が聞こえてくる。少女達が倒れている事に気づくと、草陰から二人、化け物の口の中からも一人の少年が現れた。

 

「なぁんだい、こいつら」

 

「とんだ見かけ倒しでやんの」

 

「今夜は全員のびちまって、笑わせるぜ」

 

少年達は、転げ落ちている武器や持ち物を物色する

 

「おまけに高そうな剣や金まで持ってきてくれるなんて、おめでたいにも程があらぁ」

 

「これもらっちまおうか?」

 

「どうせ役人から貰った金だろ?遠慮するこたぁねぇ」

 

そう言うと、少年達は持ち物を奪おうと手を伸ばす

 

ガシ

 

愛紗に手首を掴まれる少年

 

「人の物に無断で手を伸ばすのはあまり感心せんな」

 

驚いて手を離そうとする。すると仲間の声が聞こえたのか視線を向けると

 

「捕まえたのだ」

 

「動くな、子供相手に手荒な真似をしたくない」

 

「お、重い」

 

「何!!」

 

「金目の物を持っている事を匂わせれば、それを取りに出てくるだろうと思いましたが、案の定そうなりましね」

 

「途中でばれないかドキドキしちゃいましたよ」

劉備達も起き上がる

 

「名軍師が考えたんだ。心配なかっただろう」

 

「ありがとうございます。ご主人様」

 

「ちくしょう!騙したな!」

 

「それはこっちの台詞だ!」

 

「くっくそ!」

 

「何故こんなことをしたのだ?悪戯にしては少し度が過ぎているぞ!?」

 

「悪戯なんかじゃねぇ!」

 

「じゃあ何のためだ!?」

 

「それはあそこに隠れている人に聞いた方が良いぞ」

 

そう勇作が言うと

 

「お待ちください」

 

視線を向けると、御堂の入り口の前に、一人の少女がいた。後ろには少女よりも小さな子供が四人、隠れる様にいる

 

「理由は、私が御説明します」

 

「………」


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