TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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あけましておめでとうございます
遅れてしまいましたが、今年もよろしくお願いします


第七十席 袁術、化け物を退治させんとするのこと

「……という次第につき、先日そちらにお預けした宝剣を、劉備なる者にお返しいただける様、お願い奉り候なり。袁術殿へ…優雅で華麗な袁紹より」

 

袁術の屋敷の謁見の間にて、玉座に座る袁術と、袁紹からの文を読み上げる張勲。袁紹からの文を読み終えると、袁術は前にいる劉備達に目を向ける

 

「劉備とやら、宝剣を返してほしいとの事じゃな?」

 

「はい!お願いします!」

 

「駄目じゃ」

 

「あれは妾が馬鹿には見えない衣と交換で手に入れた物なのじゃ。今更お主に返す謂いわれはない」

 

「(いや、そんな物ないから)」

 

「それは分かっています!でも、あれは代々我が家に伝わる大事な物で」

 

「そんな事、妾の知った事じゃないのじゃ」

 

「お願いします!宝剣を返して下さい!返してもらえるなら、私なんでもしますから!」

 

「駄目と言ったら駄目なのじゃ」

 

袁術が頑なに拒否すると、劉備の言葉に反応した張勲が、袁術に耳打ちする

 

「美羽様、ちょっと……」

 

「なんじゃ、張勲?」

 

袁術にひそひそと何かを呟く張勲

 

「(……えっ!マジで!)」

 

勇作はその内容を覇気で聞き驚く。そして離れると、袁術は少しにやけながら劉備を見る

 

「劉備やら」

 

「は、はい」

 

「宝剣の為なら何でもするというのは、本当じゃろうなぁ?」

 

「えっ?…まあ」

 

「まあ~?」

 

「あ、はい!何でもします!」

 

「うむ、よろしい!」

 

一瞬答えに戸惑う劉備だったが、なんとか返事を返した

 

「では、妾の領内に出る化物を退治するのじゃ!さすれば宝剣を返してやろう!」

 

「えぇっ?」

 

「化物……?」

 

「……」

 

劉備の少し後ろにいる愛紗達も話を聞いており少し驚く。勇作はあまり驚かずにいた。そして張勲が詳しく説明する

 

「実は、ここから少し離れた山の中に古びた御堂があるのですが、最近そこに夜な夜な化物が現れて困っているのです」

 

「あそこは取り壊して、妾の別荘を建てる予定たったのに。そのせいで工事が進まんのじゃ」

 

「何度か討伐隊を差し向けたのですが、皆、化物を見るなり腰を抜かして逃げ帰ってくるという始末で……」

 

「劉備よ!宝剣を返して欲しくば、妾の邪魔をする悪しき化物を退治してくるのじゃ!良いな?」

 

あまりにも突然過ぎて、皆呆気にとられている。

 

「よ・い・な!?」

 

「あ、はい!」

 

劉備は慌てて返事をする。袁術と張勲はお互いを横目で見つめ合い、にやりと、口角を曲げた

 

 

「………」

 

勇作はそう様子をじっと見ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから一行は、部屋を用意されていたのでそのの中いた、部屋の中はよく分からない置物や絵などがあった

 

「化物の退治をするまでの間、屋敷に泊っていけと部屋を用意してくれたのは有難いが……」

 

「こう趣味が悪いと、何か落ち着きませんね……」

 

「しかし、そう簡単に事が運ぶとは思っていなかったが、よりによって化物退治とはな」

 

「うぅ…化物退治なんて絶対無理ですよ……」

 

劉備は震えていた

 

「なぁに、そう案ずる事はない」

 

「鈴々達がついてるのだ!」

 

「随分自信がありげだが、お主等化物の類は苦手ではなかったのか?」

 

星に言われて、ギクッと肩を下ろす愛紗と鈴々

 

「えっ、そうなんですか?」

 

「へぇ~」

 

「確かにあの時は……」

 

「あ、いや、まあ、本物はちょっと……だが、この手の化物騒ぎは大方、人の仕業と相場は決まっている!」

 

「そうなのだ!ちょちょいのぷーでぶっ飛ばしてやるのだ!」

 

「関羽さん、張飛さん、頼りにしてます!」

 

「任せておけ!」

 

「どーんと、大ブナに乗った気でいるのだ!」

 

劉備から頼られると、愛紗と鈴々は胸を張って答えた。朱里は苦く笑いながら二人を見ていた

 

「(さて、どうなることやら)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

化物退治の為に屋敷を出発した一行。松明を持った愛紗を先頭に、森の中を進む。辺りは暗闇に染まっており、手元にある松明がなければ移動も困難になる位だ

 

「ふむ、いかにも何か出そうだな」

 

「や、やめて下さいよぅ……」

 

星が呟くと、勇作の後ろに隠れている劉備はビクッと肩を揺らす

 

「ん?あそこか……」

 

愛紗の声を合図に、一行は前を見る。目の前にそびえ立つ山。この山の頂に、目的地である御堂がある

 

「この上に別荘を建てればさぞ見晴らしが良いことだろうな」

 

 

愛紗はそう言う。そして一行は長い階段を登っていく。距離が長い分、山の高さも相当な物だ

 

「ふぅ……」

 

「やれやれ、やっと着いたか」

 

階段を登り終え、しばらく歩いていると、目的地に辿り着きた

 

「これはまた、化物の住処に相応しい場所だな」

 

星がまた呟くと、劉備は顔ごと勇作の後ろに隠れる

 

「劉備さんは宿で待ってた方が良かったんじゃあ……」

 

「だ、駄目ですよそんなの!これは私の宝剣を取り返す為なんですから、私だけ安全な場所でのうのうとはしてられません!」

 

少しだけ胸を張りながら言う劉備。すると、どこからか、呻き声が聞こえてきた

 

カ〜エ〜レ〜……!

 

「どこだ!出てこい!」

 

カ〜エ〜レ〜……!

 

「姿を見せるのだ!」

 

音が反響していて、場所を特定できない。得体の知れない声の主は尚も叫んでいる。声が止み重低音が鳴り響く。そして、御堂の扉の隙間から光が見えてきた

 

「鈴々、抜かるなよ!」

 

「おうなのだ!」

 

警戒体制に入る一同。隙間からの光は強まり、扉がカタカタと震え始める。段々と強くなっていき、ようやく開かれた。飛び出してきたのは、金緑色に輝く体毛を持ち、三本の爪を生やした、獅子舞の様な怪物。大きく裂けた口を開き、雄叫びをあげる

 

「(えっ!!)」

 

「ば、化物!?」

 

「なのだ!!」

さっきまでの威勢はどこにいったのやら……愛紗と鈴々は武器を捨ててしまい、近くにいた星に抱きつく

 

「うわっ!へ、変な所に膝を当てるな!そ、そんなに揉みしだかれては、あっ、だ、駄目ぇ、そこは、やっ、うっあぁっ……」

二人は完全に取り乱しており、手や膝が、星の胸や腰、そして下

 

「ふ、二人とも落ち着いて!!」

 

勇作はなんとか二人を剥がそうとするが、まったく離れない

 

「あ、主!何処触ってるんですか!!」

 

「俺じゃないよ!!」

 

そんなコトしている内に、愛紗と鈴々はとうとう気絶してしまった

 

「って、気絶してる場合かぁっ!!」

 

化物の咆哮によって、すぐに切り替える。が、明かりが消えかかっていた

 

「不味いな……ここは一旦退くぞっ!星は愛紗を鈴々は俺が」

 

「承知した!」

 

「ひゃい!」

 

「わかりました!劉備さんは愛紗さんの青竜偃月刀を」

 

「ひゃ、ひゃい!」

 

勇作の指示で星は愛紗を、勇作は鈴々と、器用に脇に抱える。偃月刀は劉備が陀矛を朱里持つ。化物の姿を見て、朱里は何かに気づく

 

「ん?」

 

化物に背を向けて、一同は走り去っていく。去った後も、化物は暫くその雄叫びを空に響かせていた

 

 

「………」


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