TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第五十八席 張三姉妹、舞台を成功させるのこと

街中にある河川敷。その上に橋が架かっており、街の住民が歩いている。その下に三人の姉妹がいた

 

「この服やっぱり短すぎない?」

 

「今更何いってんの」

 

張角は短いスカートの裾を掴み、恥ずかしそうにしている

 

「天和姉さん、振り付け覚えた?」

 

「うん、一通りは…」

 

「あれだけ練習したんだもん。大丈夫だって」

 

緊張と不安を抱く姉を励ます張宝

 

「でも…」

 

「とにかくここまで来たらもう後がないんだから、背水の陣で行こう!」

 

「う、うん…」

 

三人は、目の前にある丁度いい土台になる岩に向かい、その上に立つ。岩の前には呪符が貼られた三つの楽器(琵琶、二胡、小太鼓)が置いてある。三人はマイク(掌サイズの竹筒に張宝が買った玉を付けた物)を手に声をあてる

 

「皆さ〜ん!これから、私達張三姉妹の歌と踊りを始めま〜す!お暇な方は是非ご覧になって下さ〜い!」

 

マイクを通しているおかげで、張角の呼び掛けは遠くまで届いた。その声を聞いて、数十人の歩行者が河川敷に集まってくる

 

「み、皆集まって来ちゃったよ〜…」

 

「って、集める為に呼んだんでしょ〜?」

 

「天和姉さんしっかりしてよ」

 

「そんなの無理だよ〜、お姉ちゃん生まれてこのかたしっかりしたことないも〜ん」

 

「天和姉さん、いつもみたいにやればいいから」

 

「でもでも〜…」

 

「それじゃいくよ!」

 

「え、あ、ちょっと!」

 

「音楽開始!」

 

張宝の掛け声と共に、紫色の小さな氣が楽器に流れ込む。すると、楽器がひとりでに動き始めた。音楽が鳴ると同時に、三人は振り付けを踊る。手に持っているマイクも働き、三人の歌声は観客に届いた。道行く人も、三人の歌を聞き付け、その足を止めた

 

そして、歌が終わった

 

「……」

 

三人に緊張が走り、ゴクンと息を呑む。その三人に待っていたのは

 

「おおおおおおおおっ!!」

 

大声援と拍手だった。観客全員が笑顔を浮かべていた。三人の心は安心、そして達成感に溢れていた。彼女達の挑戦は、大成功を収めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。宿屋に戻り、張梁は今日得た路銀の集計をしていた。三姉妹のお金の管理も、いつも張梁が行っている

 

「今日一日でこれまでの一月分以上の稼ぎになったわ」

 

「「わぁ〜い♪」」

 

張角と張宝は喜びのあまり、ハイタッチをする

 

「ついに、ついに私達の時代が来たのね…」

 

「いや、まだそこまでは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

三人は寝間着に着替え、寝台に寝転ぶ

 

「けど、ちいちゃんがあんな凄い妖術使えるなんて、お姉ちゃんびっくりだよ…」

 

「本当だわ。ろくに修行していないちい姉さんにあれだけの妖術を使える妖力を持ってたなんて」

 

「ろくに修行していないは余計よ…でも正直、あたしもそこが不思議なのよね〜」

 

机の上にある太平要術を手に取る

 

「この本、太平要術があると、なんかいくらでも妖力が湧いてくるみたいで…」

 

 

 

 

 

それからというもの、三人の名はどんどん広まっていった。旅をしながら歌を歌い、客も増え、時には宮廷に呼ばれる事もあった。そうして小さな事からこつこつとやり通して、自分達専用の会場を設けられる程に大きくなっていった。握手会、グッズ等も販売されている。そして三人は于吉が見せた幻を現実のものとしたのだ。幻で着ていた衣装を身に付け、数万人の観客の前で歌を披露する

 

 

 

 

 

張三姉妹の歌は、大陸全土に響き渡った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や~ま~があ~るか~ら山な~のだ~♪か~わがあって~も気にし~ない~♪ぬ~まがあったらくびまでつかる~く~ま~がで~てき~てく~まったな~」

 

「こら鈴々、大声で変な歌を歌うな。恥ずかしいだろう!」

 

「何を言ってるのだ。熊避けに歌を歌うのは常識なのだ。じっちゃんがそう言っていたのだ!」

 

「(この会話、前にもあったぞ)」

 

「こんな街中で熊が出るわけないだろ」

 

「ああ~っ!!」

隣にいた劉備が大声を上げる

 

「どうした?熊が出たのか?」

 

「えっ!!」

 

「あっいえ、これ…」

 

劉備は街の塀に貼ってある張り紙を指差す

 

「只今人気絶頂の張三姉妹、本日当地にて公演開催」

 

「(張?まさかこれって)」

 

「なんだ…この張三姉妹というのは?」

 

「さあ?」

 

「聞いた事ないのだ」

 

愛紗と鈴々は同時に首を傾げる

 

「えぇ〜っ!?皆さん知らないんですかぁ!?」

 

劉備はまたまた大声を上げる

 

「今話題の歌って踊れる三人組の歌手ですよ!」

 

「(アイドルみたいものか)」

 

「能天気な笑顔が魅力の天和こと張角、ノリノリな盛り上げ役の地和こと張宝、キラリと光る眼鏡が知的な人和こと張梁の三姉妹で、青州中心に活動してて、すっっっごく人気なんですから!!」

三姉妹の凄さを伝える劉備

 

「ほう、そんなに有名なのか…」

 

「そういえば、街に書物を買いに行った時、そんな噂を耳にしたような…」

 

「ああ、あの本を買いに行った…あだ!!」

勇作があの時の事を言おうとした時、朱里は勇作の左足を思いっきり踏みつけた

 

「いきなり踏むことないでしょう」

左足を抑えながら朱里に言う勇作

 

「ふん」

怒った表情し目をそらす朱里

 

「何でお兄ちゃんの足を踏んだのだ?」

 

「鈴々ちゃんは知らなくていいです」

 

「にぁ?」

 

「(これは今後言わないでおこう)」

そう心に誓った勇作であった

 

「姉妹だけに息の合った歌と踊りもさることながら、張宝の妖術でやってるっていう舞台効果もすっごくて、一度でいいから見たいと思ってたんですよね〜」

はぁ、と尊敬の息を漏らし、キラキラと瞳を輝かせる劉備

 

「それがこんな旅の空で拝めるなんて〜」

 

「あの〜劉備殿?盛り上がってる所を申し訳ないが、そんな事をしていては袁術殿の所へは行け」

 

「ええぇっ!?」

 

愛紗の遠慮気味の声をかき消す劉備

 

「見に行かないんですかぁ〜…?」

 

「い、いや…うっ!」

 

両手を拝むように合わせ、捨てられたチワワの様にうるうると瞳は潤んでいる

 

「うるうるうるうる」

 

「愛紗…あきらめよう」

 

「わ、分かりました…皆で見に行きましょう…」

 

「わぁ〜い!やったぁ〜〜!」

劉備は子供の様に跳び跳ねて喜ぶ

 

「(張角、張宝、張梁か、まさか黄巾の乱を起こした3人に会いにいくとは…それにしてもなんでこんな時代にアイドルみたいことが出来るんだよ……まさかあの乱がまた起きたりして)」

勇作は心の中にそう思った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさか、あんなことが起きるとは思いもよらなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(何だ!!俺!何かへんなフラグ立てちゃった!!立ててないよね!!)」


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