TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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大変、遅れてしまい申し訳ありません
今後とも、よろしくおねがいします

では、どうぞ


第五十七席 張三姉妹、太平要術を手に入れるのこと

静かに太陽が沈みかける夕暮れ時。夕陽からの光を浴びているとある街。街の民が通りかかる路上で、旅芸人らしき少女達がいた

 

「さぁて、お立ち会い、お立ち会い!ここにございますは、何の変哲もない只の箱」

 

明るい桃色ロングヘアーの少女は、隣にある大きい箱を見せる。それは人一人が入れる位の大きさだ。少女は、箱の扉を開ける

 

「はい、中には誰もいませんよ〜」

 

「ご覧の通り、中は空っぽで、種も仕掛けもございません」

 

少女の後を追うように、薄紫のショートカットの少女は自分達の前にいる観客に箱の中身は空だと言うことを伝える

 

「所が所が、こうして扉を閉めて…」

 

扉を閉める。観客の一人が後ろの方を見たが、箱の後ろには何の小細工も見当たらない

 

「それっ!イー、アル、サンッ!」

 

箱からは誰も出てこない。

 

「あ、あれ?ちょっとお待ち下さいね…」

 

若干焦りを見せ、箱に近づく

 

「(ちいちゃん、大丈夫…?)」

 

小声でそう囁くと、中からコンコンと叩く音が聞こえる。準備ができた事を知ると、前に出る

 

「それでは今度こそ、イー、アル、サン!」

 

「は〜いっ!大成功!」

 

掛け声と共に、中には誰もいなかった筈の箱から、一人の少女が出てきた。淡い水色で、左側にサイドテールで結んでいる

 

「お気に召しましたら拍手など!」

 

「すご〜い!

 

「不思議!」

 

観客の一人である小さな兄妹が珍しそうに見ている。さっきの芸を見た観客は、拍手をする人もいれば、興味無さそうに見ている者もいるといった結果だ

 

「ありがとうございます。お楽しみ頂けましたなら、お気持ちだけで結構です。こちらの笊へ」

 

「お米、お野菜でも大歓迎」

 

「お金だったら大感激」

 

「皆さんのお心尽くしを」

 

「「よ・ろ・し・く!」」

 

「お気持ちだけで結構です」

 

「お願いしま〜す!」

 

「この笊に…」

 

笊には一銭も入る事はなかった

 

「え、えぇっと、今の手品は前座。次が私達の本業、張三姉妹の歌と音楽をお楽しみ下さい」

 

そう言うと、琵琶、二胡、小太鼓と、それぞれ楽器を手にする

 

「まず一曲目は(YUME☆蝶ひらり)お聞き下さい」

 

三姉妹の音楽が始まった。琵琶と二胡の弦楽器から奏でられる緩やかな音色。リズム良く音を出す小太鼓。その三つの楽器から放たれる、中国特有の音楽と共に、彼女達は歌を歌った

 

 

 

 

 

 

夕陽が完全に沈み、辺りは夜の景色に包まれた。三人の前には誰もいない。さっきまでいた観客は、全員帰ってしまった。三人の目の前を、小さいつむじ風が寂しく通りすぎていった。

 

「「「はぁ~…」」」

三人の口から出るのはため息だけ。すると横の方からパチ、パチと拍手が聞こえる。三人は一斉にその方向を向く

 

「いやぁ、中々良いものを見せて頂きました」

 

穏やかな声と共に、その男は暗闇から姿を現した

 

「はぁ、それはどうも…」

 

「箱から出る時、ちょっと手間取った様ですが、貴女の妖術も見事でしたよ」

 

「あれが手品じゃなく妖術だって気づいたって事は、もしかしてあなたも術が?」

 

「えぇ、まあ少しですがね…」

 

「…あなた何者?私達に何の用なの?」

 

「そう怖い顔しないで下さいよ。私の名は于吉。通りすがりの、只の妖術使いです」

 

「「「えっ」」」

 

「どうです?良いものを見せてもらった御礼に、私も少しばかり術を御披露しましょうか?」

 

 

 

于吉は片手で印らしきものを組んだ。すると、辺りが光に包まれた。突然の事に驚いていると、三人はいつの間にか何処かの野外ステージに立っていた。気が付けば服装も変わっていた

 

「ど、どうなってるの!?」

 

「手触りは本物みたいだけど…」

 

「素敵な服〜!」

 

三人の耳に、聞き慣れた音楽が流れてきた。

 

「えっ?これ私達の曲…」

 

今度は前から大歓声が聞こえる。観客らしき人々が数万人見える

 

「凄い人の数…」

 

「こんなの見たことない…」

 

「ここって野外舞台?……あは…ちいちゃん、人和ちゃん、歌おっ!」

 

「でも、天和姉さん…」

 

「これって何かおかしい」

 

「でも、お客さんが…皆が待ってるよ!」

張宝と張梁の二人は、戸惑いを隠せなかったが、目の前にいる大勢の観客を見て、笑みを浮かべた

 

「うん、歌おう」

 

「うん」

 

「それじゃ、いっくよ〜!それっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の瞬間、景色が元に戻る

 

 

 

「あれっ?ここは…」

 

「姉さん、天和姉さん」

 

「ん?」

 

「正気に戻って!

 

「ふぇっ…あれっ、お客さんは?」

 

「しっかりしてよ!今のはあの于吉っていう妖術使いが見せた幻よ」

 

「幻…」

 

『どうです?』

 

あの男の声が響く

 

『一時の夢、楽しんで頂けましたか?』

 

「どこ?どこにいるの!?」

 

「ちい姉さん、それ…」

 

「えっ?」

 

少女の手には、一冊の本が握られていた。

 

『その本の名は太平要術』

 

「えっ!?」

 

「何…何なの?」

 

『それを使って、貴女達の夢を掴むのです』

 

「夢を、掴む……」

 

 

 

 

 

 

 

下宿している宿に戻り、二人は眠りにつき、一人は傍らにある蝋燭で小さな明かりをつけ、太平要術を一ページずつ眼を通していく

 

「う〜ん、おしっこ…ちいちゃんまだ起きてたの?」

 

「姉さん、この本凄いよ…!他のどの本にも書いててなかった妖術の使い方が一杯載ってて…これがあれば、きっと私達の夢が叶うわ…!」

 

「う〜ん、何かよく分かんないけど、夜更かしはお肌に悪いからほどほろにねぇ〜……」

 

そのまま布団を被る。

 

 

 

「……………………おしっこ、忘れてた」

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

朝から三人の間に不穏な空気が流れている

 

 

「一体どういうつもりなの?へそくり全部はたいてそんなもの買っちゃうなんて!」

 

「人和ちゃん、落ち着いて……」

 

「落ち着いてなんかいられないわよ!」

いつも静かな人和が、珍しく声を大にしていた。理由としては、今後の生活の為にこつこつと遣り繰りして貯めた金を、張宝がある物を無断で買ってきたからである。

 

 

「黄昏よりも深きもの、血の流れよりも熱きもの、時の流れに祈りしもの、尊大なる汝の名において、我、ここに天に遣わん、我と汝の力とて、我の望みを叶えん事を……」

目の前に買って、置いてある楕円形の丸い石にブツブツと呪文を唱えていた

 

 

「ちい姉さん…?」

 

「急々如実令!!」

 

すると、三つの石に、紫色の小さな氣が吸い込まれていった。その内の一つを手に取り、軽いキスをする。その石は一瞬輝くと同時に、宝石の様な光沢を見せる

 

「わぁ、綺麗!」

 

「けど、これがなんだって言うの?」

 

すぅっと息を吸う。

 

「わぁっ!!」

 

「「っ!?」」

 

大音量の声に、キーンと耳鳴りを起こす。耳鳴りが止むと、へなへなと座り込む

 

「どう?驚いた?」

 

「今の一体…」

 

「どういう事なの?ちゃんと説明して」

 

「この球に術をかけて、これに向かって声を出せば、それが大きくなるようにしたのよ。いい材料を使ったから、効果もバッチリね」

 

「バッチリって…それが何の役に立つのよ?」

 

「分かんない?これがあれば、どんなに広い所で、どんなに沢山のお客さんを相手にしても、私達の歌を聞かせられるじゃない!」

 

「うわ〜すご〜い!ちいちゃん最高!」

 

「けどその肝心のお客さんをどうやって集めるのよ?私達それで苦労してるんでしょ」

 

「大丈夫、それもちゃんと考えてあるから、このちいちゃんにお任せよ!」

可愛く片目を閉じる。

 

 

 

 

 

3人は下着姿になって、全員の服の裾を切っていく二人

 

「あ…あ、ちょっと、それって、切りすぎじゃない?ねぇ大丈夫?ねぇったら〜…」

 

姉は妹たちのしていることに不安を露わにする

 

「で、袖もこうやって切っちゃって」

 

「それに合わせるなら、もっと短い方がいいかも」

 

「えっ?」

 

「そうね、太股バンバン見せなきゃ」

 

「でも…」

 

「基本よね」

 

「そうなの?」

 

「さぁ頑張ろ!」

 

「ええ!」

 

「うぅ〜、お姉ちゃんも混ぜてよ……ん?」

 

妹二人から仲間外れにされている姉は、机の上にある黄色のリボンを見つけた

 

「出来た〜!」

 

「お姉ちゃんも出来たよ!」

 

姉の方を向くと、彼女はリボンを頭の後ろに可愛く着けていた

 

「どう?」

 

「お〜、それじゃ私も!」

 

「待って…ちい姉さん、私も」

 

二人も、黄色のリボンを手にする。一人は腕に巻いてブレスレットの様に、一人は胸の前に止めている。こうして、三人の衣装が出来上がった。三人はお互いに笑いあい、楽しそうにしていた


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