TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第二十三席 張飛、孔明と張り合うのこと

屋敷に来てから三日目。しかし関羽の足の腫れは、未だに引く様子が見えない

 

「辛抱してから三日。余り腫れがひいていないわ」

 

水鏡の言うように関羽の怪我は一向に治ることがなかった。

 

「こんな時、サロンパ草があればいいんだけど」

 

「(サロンパ草?)」

 

「サロンパ草って何なのだ?」

 

「こうした腫れにとてもよく効く薬草なの。白い小さな花を咲かせ、その葉をすりつぶして使うんのよ」

 

「あっ、先生。サロンパ草なら、わたしが採って行きます」

と、ここでが諸葛亮が申し出てきた。

 

「えっ。でもサロンパ草が生えているのは随分、山の奥の上の方よ」

 

「大丈夫です。何度か先生と行った所だから場所は覚えていますし」

 

「そうね・・・私が一緒に行けるといいのだけど。今日は頼まれていたお薬を麓の村まで届けなくてはいけないし」

 

「・・・・・・」

 

諸葛亮は期待を込めた目で水鏡を見る

 

「それじゃあお願いしようかしら?」

 

「あ、はい!」

 

水鏡の言葉に元気良く返事をして、部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

 

数分後、諸葛亮は出かける準備を整えた。愛用のポシェットを肩にかけ、帽子の位置もちゃんと正して

 

「それじゃあ、行って来ます」

 

「転ばないように気をつけて行くんですよ」

 

「はぁーい」

 

諸葛亮は元気良く返事をしてから、サロンパ草を採りに行くため山の方へ歩いていった。水鏡は心配そうに諸葛亮の後ろ姿を見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

「子曰く、学びて時に之を習う、また説ばしからずや・・・・」

 

諸葛亮は山の奥へと続く道を歩きながら孔子の一説を復唱していた。さて、サロンパ草を取りに向かった諸葛亮の後ろをついていく人がいた。大体察しはついているだろうが先日から諸葛亮のことを快く思っていない鈴々である

 

「あいつにだけ良い格好はさせないのだ」

 

諸葛亮にばれないように木陰に隠れながら尾行している。

 

「こうやって、後を着いていって・・・あいつが摘んだ薬草を横取りぃ・・・じゃなくて!」

 

鈴々の脳内では自分が諸葛亮から薬草を取って逃げるという画が出来上がったがそれを振り飛ばす

 

「薬草の生えている所まで行ったら、鈴々が先に摘んで一足先に持って帰るのだ。それで、愛紗やお兄ちゃんに・・・」

 

『じゃあ~ん! サロンパ草なのだ♪』

 

『ほう! 偉いぞ、鈴々♪ さすが私の妹だ♪』

 

『鈴々が妹で俺達は幸せだ♪』

 

『えへへ♪』

 

『うぅ~~』

 

鈴々の脳内では二人に褒められ頭をなでなでされている自分の横に指をくわえて見ている諸葛亮の姿を想像する。その想像に段々と鈴々の顔がにやけてくる。

 

「うわぁ!?」

 

<ドサッ>

 

「あ!?」

 

前を歩いていた諸葛亮が転んだのを見て、鈴々はばれないように口を隠して笑いを堪える。

 

「何も無いところで転ぶなんて、とんだドジッ娘なのだ。足も遅いし、これならあいつの後で薬草を摘んでも楽勝で先回りできるのだ(にやり)」

 

諸葛亮を見ながら悪役のような笑みをする鈴々。また歩きだした諸葛亮の後を静かに着いていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃の関羽。

 

「・・・っ・・・厠に行きたく」

 

寝ていた関羽に生理現象が襲い、目を覚ました。

 

「孔明殿も水鏡殿もいないし・・・」

 

片足がまだ治っていないので歩くことが出来ないので、誰かの手を借りなければ厠にもいけない。

 

「そうだ。鈴々! 何処にいるんだ! 鈴々!」

 

<・・・・・・>

 

鈴々がいることを思い出し呼ぶが、一向に現れる気配がない。

 

「何処に行ったんだ、鈴々は・・・こんな時に・・・・・そうだ。高杉殿!」

 

と、今度は勇作を呼ぶが

 

<・・・・・・>

 

何の反応もない

 

「何でいないんだ・・・」

 

早く厠に行きたいのに行けないもどかしさが生理現象を速める。

 

「・・・仕方がない、これを使うしかないか」

 

関羽がベットの下から取り出したのは尿瓶だ。

 

「///」

 

使うのが恥ずかしいのか顔を赤らめて尿瓶を凝視する。関羽の闘いが静かに始まった

 

 

 

 

 

 

その頃の鈴々は、諸葛亮の後ろに隠れながら、山の奥へと進んでいた。

 

「はわぁ!?」

 

諸葛亮は古びた橋の前で足をすくませていた。橋の下は濁流になっていて、それなりに高さがある。

 

「何グズグズしているのだ?・・・ははーん あいつきっと高いところが苦手なのだ。だから、怖くてつり橋が渡れないのだ」

 

怖がる諸葛亮をニヤニヤ笑いながら見る鈴々。

 

「先生と来たときは、いつも手を引いて渡ってもらってたんだけど。関羽さんの為だものがんばらなくちゃ!」

 

勇気を振り絞って諸葛亮はつり橋の綱を握り一歩一歩慎重に渡って行く。橋の真ん中に差し掛かると、板が砕けて穴が空いていた。

 

「怖くない・・・怖くない・・・えいぃ!」

 

勇気を出して穴が空いている所を跳ぶ。そしてまたゆっくりと橋を渡り出す。

 

「はぁ・・・つり橋渡るのに何時までかかっているのだ・・・」

 

鈴々は木陰から諸葛亮が橋を渡るのを静かに見て、呆れ気味になるのだった。そして諸葛亮が橋を渡りきって地べたにへたり込んだ。そして更に先へ進んでいく。やがてサロンパ草が生えているという場所へたどり着いたようだ。

 

「ふぅ、着いた」

 

諸葛亮が着いた場所は崖の下の辺りだった。この近くにサロンパ草が生えているのか、辺りを見回している。

 

「確かこの辺に生えてる筈なんだけど・・・あっ! あった!・・・でも」

 

サロンパ草を見つけたが、それが生えているの場所が崖の真ん中に生えていた。登って採るのには危険である。

 

「高いところが苦手なあいつが、あんな所まで登れっこ無いのだ」

 

諸葛亮に追いついた鈴々は、木の陰からサロンパ草を見ている彼女を見る

 

鈴々は木にもたれかかりながら、腕を組み彼女が諦めて帰るのを待つが、

 

「あっ」

 

「んしょ」

 

しかし予想を超えて・・・突然、諸葛亮が崖を登り始めた。危なっかしい足取りでゆっくり登っていく

 

「ふん、どうせ怖くなって途中で諦めるに決まっているのだ」

 

しかし、諸葛亮は降りる事なく登り続ける。

 

「あっ!危ないのだ!」

 

途中でバランスを崩し落ちそうになるが岩にしがみついて難を逃れる。思わず鈴々も声をあげるが、それでも上へ上へと登っていくまた登っていく

 

「な、何でなのだ?何であいつあんなに頑張るのだ?高いとこ怖いくせに、どうしてあんなに必死になって・・・」

 

鈴々はまったく分からなくなり複雑な気持ちになってきた。

 

「もう少し・・・あと、少しで・・・」

 

鈴々が考え込んでいる内に気づいたら、諸葛亮は手を伸ばせばサロンパ草が届きそうな所まで来ていた。必死に手を伸ばす諸葛亮。それを固唾を飲んで見る鈴々。そして、

 

「あっ」

 

草に少し触れる事が出来た諸葛亮だが、その瞬間、

 

<ガシャアァァァン>

 

「はわぁ!?」

 

「あっ!?」

 

「ああぁぁぁぁぁ!?」

 

諸葛亮の足元の崖の一部が崩れて、彼女は悲鳴を上げて落ちて行った。このまま地面にたたきつけられたと思ったが地面に落ちたのは崩れた石と諸葛亮が持っていたポーチだけだった

 

「ひゃぁぁぁぁ・・・・はわぁ?」

 

泣き続ける諸葛亮はいつまで経っても地面に激突しない事に疑問に思い泣き止み、誰かに支えられているのに気づき下を見ると、

 

「うぐぅ・・・」

 

「張飛さんっ!?」

 

尾行されていたことに気づかなかった諸葛亮は鈴々がいることに驚き、鈴々は安全な所に諸葛亮を降ろし、彼女が落としたポーチを拾い渡す。その表情は不貞腐れているように見える。

 

「んっ」

 

「どうしてここに?」

 

「ど、どうしてって・・・た、たまたま通りかかったのだ、たまたま!」

 

諸葛亮の質問に顔を背けて鈴々は答えた

 

「こんな山の中を?あっ!もしかして私の後を「そ、そんな事より、サロンパ草を摘むのだ!」えっ? は、はい」

 

諸葛亮の言葉を遮って、鈴々はサロンパ草が生えている所までに登っていく。

 

「はっ・・・よっと」

 

鈴々はテンポ良く軽やかに登っていく。諸葛亮は心配そうに見つめる。そして

 

「うりゃ」

 

「やったぁ」

 

見事サロンパ草を摘んだ鈴々。諸葛亮は喜び声を上げる

 

「ほらなのだ」

 

降りてきた鈴々は、摘んだサロンパ草を渡そうとする。

 

「えっ?でも、これは張飛さんが・・・」

 

「見つけたのはお前なのだ。鈴々は手伝っただけなのだから、お前が愛紗に渡すのだ」

 

鈴々の行動の驚く諸葛亮に照れくさいのか顔を背けながら喋る。そんな鈴々を見て微笑んで諸葛亮はサロンパ草を受け取った。

 

「ほら。早く帰るのだ」

 

「はい」

 

 

 

 

 

 

 

時刻は既に夕方。諸葛亮は帰り道を歩いていた。鈴々は諸葛亮の少し前を歩いている。すると、例のつり橋に着いて諸葛亮が足を止めてしまった。既につり橋を渡っている鈴々は気づいて戻ってくる。そんな鈴々に嬉しそうに笑みをする諸葛亮

 

「ほら。一緒に渡ってやるから、さっさと来るのだ」

そう言って、鈴々は諸葛亮の腕を掴んで引っ張って行く。そんな不器用な優しさに微笑む諸葛亮とムスッと膨れる鈴々がいた。穴が開いている所を飛び越えようとした時

 

バキ

 

「にゃ!」

 

「はわ!」

 

突然足元が崩れ、落ちて行きそうだったが

 

ガシッ!

 

鈴々の手が何かに捕まれた。

 

「何が起きたのだ!?」

 

落ちたはずなのに落ちないことに疑問を感じた鈴々が手の先を見てみると

 

「間に合った!」

 

勇作が居た

 

「今引き上げるから・・・」

 

ずるずるっ

 

そして勇作は鈴々と諸葛亮を引き上げると

 

「何でお兄ちゃんがここにいるのだ? 」

 

鈴々の質問に勇作は

 

「鈴々の姿が無かったから、探しに来たんだよ」

 

「そうなのだ」

 

「ありがとうございます。高杉さん」

 

「良いですよ」

 

そして無事に橋を渡りきった


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