TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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第十四席 勇作、馬超と別れるのこと

(ゴスッ!!)

と、鈍い音が響く。

 

檻から出してもらった馬超が、先ほどの夏侯惇の独り言を聞いて「信じられない」と言わんばかりに、檻に拳をぶつけたのだ。

 

「そんな?!父上が・・・アタシの父ちゃんが酔って馬から落ちて死んだなんて」

 

関羽はそんな馬超の肩に手を置いた。

 

「馬超、曹操殿は馬騰殿、そして、お主の事を想ってこの事を黙っておられたのだ。武人としての体面を重んじる馬騰殿の気持ち、それを尊重して自ら悪評を引き受けた曹操殿の振る舞い、いずれも立派なものだと思う・・・だが、そのためにお主が曹操殿に恨みを抱き、その命を狙うのであってはお主のためにも良くないと・・・」

 

「嘘だっ!曹操の手下の言うことなんて信じられるかっ!」

 

しかしは馬超受け入れようとせず、逆に夏侯惇が嘘をついていると叫ぶ。

 

「ほう、それでは私が偽りを言っていると?」

 

「夏候惇殿!馬超は今、取り乱していて、馬超、お主の気持ちは分かるが少し落ち着い「さわるなっ!」・・っ?!」

 

馬超は関羽の手を払いのける。

 

「大方、お前達も丸め込まれたんだろ!上手く事が運んだら、召し抱えてもらう約束でもされたか!」

 

関羽がフォローしようとするも、更にありもしない言動を繰り返す馬超・・・・・・・・・・・と。

 

「いい加減に・・・・・・」

 

「えっ!?」

 

「いい加減にしろっ!」

と勇作は思いっきり檻に拳をぶつけたのだ。

 

(バキ!!)

と音と共に檻の扉が砕けた

 

「「なっ!?」」

と関羽と夏候惇は勇作のやったことに驚いていた。そして勇作は胸ぐらを掴み

 

「いつまで復讐の事を考えてるんだっ!こんなことをいきなり聞かされても、信じられない気持ちは分かるっ!けどな、いい加減、受け入れろっ!復讐しても、何も良いこともないんだぞっ!」

 

「うるさいっ!お前に何が分かるっ!この話をどう信じればいいんだっ!」

 

「馬超、立って武器を取れ!!」

 

「夏侯惇殿!?」

 

それまで黙っていた夏侯惇が、突然馬超に勝負を挑んできたのだ。関羽が驚くのも構わずに、夏侯惇は話を続ける。

 

「私も武人!嘘つき呼ばわりされて、黙って引き下がれるか!!」

 

「望むところだ!!仇討ちの景気づけに、貴様の首を飛ばしてやる!!」

 

そのまま馬超と夏侯惇は、己の武器を手に拠点近くの草原へと移動した

 

「二人共よせっ!こんな無益な争いをして何になる!」

 

関羽は二人が止めるように問い掛けるが。

 

「止めるな関羽殿!!死なねば治らぬバカも居るのだ!」

 

「ほざけっ!!」

 

止める気がない二人。関羽は隣に居る勇作に話し掛ける。

 

「高杉殿からも二人を止めるように言って下さいっ!」

 

「それは無理だ、こうでもしないとわかってくれないことだってある!」

 

「しかし!」

 

「今は、見守りましょう」

 

関羽はただ、見守るしかない。互いに構えたまま動かない夏候惇と馬超・・・が

 

「(なんだ、こいつ・・・全然隙がない・・・深い林の木立のように静かな構え・・・それに・・・澄んだ水のような“気”が伝わってくる・・・あっ!!)」

 

『武術というのは正直なものだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる』

 

馬超の脳裏によぎったのは、幼き日に教わった父の教え。そして父の教えの通り、夏侯惇からは決して気の濁りが見られなかった。そのことは、夏侯惇が嘘をついていないという確かな証拠だった。

 

「っ・・・・・・!!それじゃあ・・・・・・こいつの言ってることは、本当で・・・!!父ちゃんは・・・」

 

真実を悟った馬超が構えを解き、その場に座り込む。夏侯惇もそれに気付き構えを解くと、関羽が馬超の元へ近寄る。

 

「夏侯惇殿の心気に濁りがないのを感じて、貴女がたが嘘をついていないと分かったのでしょう・・・そうだな、馬超?」

と馬超は頷いた。そして勇作も近づいて来て、

 

「よく頑張ったよ一人で。もう、大丈夫だから!」

 

「う、うわぁ~~ん」

 

馬超は勇作に抱き着き、泣いた。悲しいけれど、それは真実を受け入れたから出来たことだった。馬超の涙を照らすように、夜空に星が光っていた。

 

 

 

 

次の日の朝。勇作達は町を出て次の町へと向かう道中の別れ道に差し掛かり、馬超と別れる事となった。

 

「ここで、お別れだな」

 

「せっかく、友達になれたのに残念なのだ」

 

「やはり一度、西涼に戻るのか?」

 

「ああ、故郷の連中に本当の事を教えてやんなきゃなんないから」

 

「そうだな、それがいい」

 

真実を話しておかなければ、再び今回のような騒動が起きてしまうかもしれない。それを防ぐためにも西涼に戻るという馬超の決断は、正しいものだろう。

 

「関羽と高杉には色々と世話になっちまって」

 

「いや、それほどでも」

 

「別に構わないよ」

 

「それから、その」

 

馬超は勇作と関羽の腕を掴み、鈴々と星から距離を取り二人の耳元で言った。

 

「アタシが泣いちゃったことは、秘密にしといてくれよ、特に張飛には絶対っ!」

 

「ああ」

 

「分かったよ」

 

「そ、それと高杉!」

 

「ん?」

 

「手は大丈夫なのか?」

 

「大丈夫だよ!」

 

「そ、そうか・・・」

 

「ん?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

顔を赤くしながら俺のことを見ている、馬超

 

「どうしたの?」

 

「そ、その・・・私の事は翠って呼んでくれっ!///」

 

「えっ!良いのか?」

 

「い、良いから呼べよっ!///」

 

「分かったよ、翠、俺の事は勇作って呼んでくれ」

 

「・・・・・・・・」

 

「あの?翠?」

 

「じゃ、じゃあなっ!///あばよっ!またな~」

 

翠は顔を赤くしながら走り去って行った。

 

「じゃあな!翠~!」

 

「バイバイなのだ~♪」

 

勇作と鈴々は笑顔で翠に手を振る。

 

「(顔真っ赤にしていたけど・・・・・・・・・まさかね?)」

 

ふと星が問いかける。

 

「友との別れだと言うのに、随分ニコニコしているな?」

 

「人は別れ際の顔を覚えてるもんなのだ!鈴々は馬超に、鈴々の一番いい顔を覚えていてもらいたいのだ!」

 

「ほう・・・それにしても高杉殿も罪なお方ですね・・・」

 

「へっ!?それはどういう・・・」

 

「さあ・・・」

 

「ふんっ///」

 

勇作達は翠が見えなくなるまで見送りました。きっと、またどこかで会える・・・・・・そう信じて


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