TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者 作:ヒーロー好き
(ゴスッ!!)
と、鈍い音が響く。
檻から出してもらった馬超が、先ほどの夏侯惇の独り言を聞いて「信じられない」と言わんばかりに、檻に拳をぶつけたのだ。
「そんな?!父上が・・・アタシの父ちゃんが酔って馬から落ちて死んだなんて」
関羽はそんな馬超の肩に手を置いた。
「馬超、曹操殿は馬騰殿、そして、お主の事を想ってこの事を黙っておられたのだ。武人としての体面を重んじる馬騰殿の気持ち、それを尊重して自ら悪評を引き受けた曹操殿の振る舞い、いずれも立派なものだと思う・・・だが、そのためにお主が曹操殿に恨みを抱き、その命を狙うのであってはお主のためにも良くないと・・・」
「嘘だっ!曹操の手下の言うことなんて信じられるかっ!」
しかしは馬超受け入れようとせず、逆に夏侯惇が嘘をついていると叫ぶ。
「ほう、それでは私が偽りを言っていると?」
「夏候惇殿!馬超は今、取り乱していて、馬超、お主の気持ちは分かるが少し落ち着い「さわるなっ!」・・っ?!」
馬超は関羽の手を払いのける。
「大方、お前達も丸め込まれたんだろ!上手く事が運んだら、召し抱えてもらう約束でもされたか!」
関羽がフォローしようとするも、更にありもしない言動を繰り返す馬超・・・・・・・・・・・と。
「いい加減に・・・・・・」
「えっ!?」
「いい加減にしろっ!」
と勇作は思いっきり檻に拳をぶつけたのだ。
(バキ!!)
と音と共に檻の扉が砕けた
「「なっ!?」」
と関羽と夏候惇は勇作のやったことに驚いていた。そして勇作は胸ぐらを掴み
「いつまで復讐の事を考えてるんだっ!こんなことをいきなり聞かされても、信じられない気持ちは分かるっ!けどな、いい加減、受け入れろっ!復讐しても、何も良いこともないんだぞっ!」
「うるさいっ!お前に何が分かるっ!この話をどう信じればいいんだっ!」
「馬超、立って武器を取れ!!」
「夏侯惇殿!?」
それまで黙っていた夏侯惇が、突然馬超に勝負を挑んできたのだ。関羽が驚くのも構わずに、夏侯惇は話を続ける。
「私も武人!嘘つき呼ばわりされて、黙って引き下がれるか!!」
「望むところだ!!仇討ちの景気づけに、貴様の首を飛ばしてやる!!」
そのまま馬超と夏侯惇は、己の武器を手に拠点近くの草原へと移動した
「二人共よせっ!こんな無益な争いをして何になる!」
関羽は二人が止めるように問い掛けるが。
「止めるな関羽殿!!死なねば治らぬバカも居るのだ!」
「ほざけっ!!」
止める気がない二人。関羽は隣に居る勇作に話し掛ける。
「高杉殿からも二人を止めるように言って下さいっ!」
「それは無理だ、こうでもしないとわかってくれないことだってある!」
「しかし!」
「今は、見守りましょう」
関羽はただ、見守るしかない。互いに構えたまま動かない夏候惇と馬超・・・が
「(なんだ、こいつ・・・全然隙がない・・・深い林の木立のように静かな構え・・・それに・・・澄んだ水のような“気”が伝わってくる・・・あっ!!)」
『武術というのは正直なものだ。心にやましい所があれば、それが気の濁りとなって現れる』
馬超の脳裏によぎったのは、幼き日に教わった父の教え。そして父の教えの通り、夏侯惇からは決して気の濁りが見られなかった。そのことは、夏侯惇が嘘をついていないという確かな証拠だった。
「っ・・・・・・!!それじゃあ・・・・・・こいつの言ってることは、本当で・・・!!父ちゃんは・・・」
真実を悟った馬超が構えを解き、その場に座り込む。夏侯惇もそれに気付き構えを解くと、関羽が馬超の元へ近寄る。
「夏侯惇殿の心気に濁りがないのを感じて、貴女がたが嘘をついていないと分かったのでしょう・・・そうだな、馬超?」
と馬超は頷いた。そして勇作も近づいて来て、
「よく頑張ったよ一人で。もう、大丈夫だから!」
「う、うわぁ~~ん」
馬超は勇作に抱き着き、泣いた。悲しいけれど、それは真実を受け入れたから出来たことだった。馬超の涙を照らすように、夜空に星が光っていた。
次の日の朝。勇作達は町を出て次の町へと向かう道中の別れ道に差し掛かり、馬超と別れる事となった。
「ここで、お別れだな」
「せっかく、友達になれたのに残念なのだ」
「やはり一度、西涼に戻るのか?」
「ああ、故郷の連中に本当の事を教えてやんなきゃなんないから」
「そうだな、それがいい」
真実を話しておかなければ、再び今回のような騒動が起きてしまうかもしれない。それを防ぐためにも西涼に戻るという馬超の決断は、正しいものだろう。
「関羽と高杉には色々と世話になっちまって」
「いや、それほどでも」
「別に構わないよ」
「それから、その」
馬超は勇作と関羽の腕を掴み、鈴々と星から距離を取り二人の耳元で言った。
「アタシが泣いちゃったことは、秘密にしといてくれよ、特に張飛には絶対っ!」
「ああ」
「分かったよ」
「そ、それと高杉!」
「ん?」
「手は大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ!」
「そ、そうか・・・」
「ん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
顔を赤くしながら俺のことを見ている、馬超
「どうしたの?」
「そ、その・・・私の事は翠って呼んでくれっ!///」
「えっ!良いのか?」
「い、良いから呼べよっ!///」
「分かったよ、翠、俺の事は勇作って呼んでくれ」
「・・・・・・・・」
「あの?翠?」
「じゃ、じゃあなっ!///あばよっ!またな~」
翠は顔を赤くしながら走り去って行った。
「じゃあな!翠~!」
「バイバイなのだ~♪」
勇作と鈴々は笑顔で翠に手を振る。
「(顔真っ赤にしていたけど・・・・・・・・・まさかね?)」
ふと星が問いかける。
「友との別れだと言うのに、随分ニコニコしているな?」
「人は別れ際の顔を覚えてるもんなのだ!鈴々は馬超に、鈴々の一番いい顔を覚えていてもらいたいのだ!」
「ほう・・・それにしても高杉殿も罪なお方ですね・・・」
「へっ!?それはどういう・・・」
「さあ・・・」
「ふんっ///」
勇作達は翠が見えなくなるまで見送りました。きっと、またどこかで会える・・・・・・そう信じて