TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者   作:ヒーロー好き

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TV版恋姫†無双・・・覇気と六爪流を使う転生者の今年最後の投稿です

来年もよろしくお願いします

では、どうぞ


第百一席 魏延、禁を破ぶるのこと

河原沿いの土手道を外れた、雑草生い茂る坂。そこで仰向けに寝転がり、青空を見上げる魏延

 

「へっ、探したぜ」

 

そこへ、数人の男達がやって来た

 

「……何の用だ?」

 

「てめぇに今までの借りを返そうと思ってなぁ?」

 

「これまで散々ぶちのめされてきた癖に、懲りない奴だ」

 

魏延は立ち上がり、剣に手を添える

 

「おっと、いいのかぃ?そいつを抜いちまっても」

 

相手は余裕の表情を浮かべたままだ

 

「!!」

 

厳顔に禁止令を言い渡され、刀剣に紙縒が鎖の様に結びつけられていたことを思い出す

 

「へへっ、厳顔の許し無しに剣を抜いたら破門なんだろ?えぇ?」

 

「貴様!」

魏延に詰め寄る男達。リーダーらしき人物に足払いを食らい、石垣に転げ落ちる魏延

 

「「「「えへへへへへ」」」」

 

男達は、下卑た笑いを浮かべている。何も出来ず、魏延は歯を噛み締めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう~、孔明ちゃんも、馬岱ちゃんも、ご主人様も、私を置いてっちゃうなんてひどいんだから」

 

桃香は一人、皆の行方を探していた。橋を渡りながら、キョロキョロと辺りを見渡していると下の方から声が聞こえた

 

「ちょっと!!何してるんですか!!あなたたち!!」

 

橋の上から見てたのは、無抵抗の魏延を、男達が囲い込み、殴る、蹴る等の暴行を与えている所だった。衣服だけでなく、顔にも泥がつき、所々に傷が見える

 

「劉備殿」

 

「なんだぁ、あいつ?おめぇの知り合いか?」

 

桃香は急いで駆け付ける。坂を下り、魏延を庇う様にして、前に出る

 

「魏延さん一人にそんな大勢で、卑怯じゃないですか!」

 

「卑怯だと?こちとらいつもこの人数でかかってもコテンパンにされてんだ。だから卑怯者呼ばわりされる覚えはねぇんだよ」

 

「あなた、何言って」

 

「おいおい、そんな怖い顔すんなよ。可愛がってやるからよぉ?」

汚い笑みを浮かべ、桃香に手を出そうとする

 

「この人に手を出すな!」

それを阻止しようと、今度は魏延が前に出る。またも剣に手を添えるが

 

「何だ、抜くのか?えぇ?抜いちゃうのか?」

 

「……私の事は好きにして構わん。だから、この人には手を出すな!」

 

「魏延さん……」

 

「そう言われちゃ、却って手を出さねぇ訳にはいかなくなったな!どけっ!!」

 

そう言うと、リーダーは魏延を突き飛ばし、桃香をこちらに引き寄せる

 

「捕まえたんだな」

 

後方にいたデブに両肩を掴まれ、拘束される桃香

 

「ちょっ、離して……!」

 

「劉備殿!」

 

「これまでの腹いせに、てめぇの見てる前でこいつに手ぇ出しまくってやるぜ!」

 

「や、やめろ!」

歯軋りし、俯きながら、拳を握り締める

 

「やめてくれ!」

 

「キヒヒ!!」

 

その様子を待て、更に笑みを深めその両手を、桃香の胸へと近づけてようとした

 

 

 

 

 

その時

 

 

 

 

 

 

 

 

ガツン!!

 

 

「痛!!」

 

 

頭に衝撃が走った

 

 

「何だ!!」

 

視線を向けると

 

「此処に居たんだ!」

 

「ご主人様!!」

 

勇作がおり、リーダーに向けて石を投げたのであった

 

「貴様はっ!」

 

勇作は、坂を下りる

 

「やっと見つけたよ!やっぱ覇気が使えないと不便だな」

 

「お前はいったい!!」

 

「名乗るほどの人物じゃないよ。しいて言うなら主だ」

 

「主だと!」

 

「ああ」

 

「アニキ!てことは魏延はもう破門されているってことじゃ」

 

「な、何だと」

 

「え、いや…私はまだ」

 

「くそ!!こうなったらこいつからやっちまえ!!」

 

アニキの指示で男たちは勇作に襲いかかる

 

「だから違うのにな」

 

勇作はジャンプをする

 

「「「「なに!!」」」」

 

そして勇作は一回転しながら刀を振る

 

ブオン!!

 

「「「「「「「わああああああ!!!」」」」」」」

 

風が起こり、兄貴とデブ以外は吹っ飛ぶ

 

 

「ふぅ、こんなもんかな」

 

「な、何だと」

 

「で、まだやる」

 

「くそ!デク行け」

 

「わかったんだな」

 

桃香を離し、斧で攻撃してくる

 

「武装硬化」

 

そういうと右手が黒く変色し

 

ガチン

 

振り下された斧をつまむ

 

「な、何だと」

 

信じられない光景に言葉を失う

 

「止めとけ!お前達じゃ勝てない」

 

そしてデブの顔面にパンチをし、倒れるデブ

 

「貴様!!こいつを見ろ」

 

するとリーダーが桃香の首に剣を当てていた

 

「それ以上やってみろ!!こいつの命はないぞ!!」

 

「劉備殿!!」

 

「……」

 

「ご主人様」

 

「……フ」

 

勇作は笑う

 

「…すぐ助ける」

 

「な、何を言いている。一歩でも動いてみろ!こいつを」

 

「汚い手で桃香に触るな…失せろ!」

 

リーダー限定に覇王色の覇気を発動し

 

「……」

 

バタ

 

泡を吹きながら倒れるのであった

 

「大丈夫?」

 

「…はい。ご主人様」

 

「魏延、大丈夫?」

 

「あ、ああ」

 

「ご主人様!」

 

桃香は勇作に抱き着く

 

「ちょっ!桃香さん」

 

「怖かったよ…ご主人様」

 

「分かったから」

 

「……」

 

そして魏延は勇作をじっと見ていた

 

「このやろう!」

 

すると、一人の男が剣を手に突進する

 

「!!」

 

勇作は少し遅れてそれに気づき、覇気を纏う

 

「死ねぇぇぇぇええええ!!」

 

男が迫る

 

「!!」

 

すると二人と敵の間に、魏延は割り込んだ。剣に手を添えて

 

「バカ!抜くな!!破門になるんだぞ!!」

 

勇作が叫ぶが

 

「うぉおおおおおおおおおお!!」

 

魏延は剣を抜いた

 

 

 

「はあ…はあ…はあ」

 

生き残りを倒した魏延。が剣は折れ、紙縒も破けてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方、謁見の間にて、玉座に腰かける厳顔の前で、魏延は跪く

 

 

「劉備殿から事情は聞いた。だが禁を破った事に違いない。焔耶、貴様は破門だ。これより儂とお前は弟子でもなければ師匠でもない……分かったな?」

 

「…………」

 

前には折れた剣と刃先が置かれている。厳顔の決定事項に、何も言わず、ただ俯くだけ

 

「しかし、不思議なものだな。これまでは喧嘩などなんだと騒ぎを起こす度に、お仕置き怖さに逃げ回っていた貴様が、今回ばかりは神妙に儂の前に控えておる。一体これはどうした訳だ?」

 

「そ、それは、その」

 

「これまでと違い、今回は己おのが成した事に、何ら恥ずべき事はないと、儂の前で胸を張って言えるからではないのか?」

 

「あっ」

 

厳顔に言われ、魏延は面を上げる

 

「例え、どれ程強くても、ただ闇雲に振るわれる力は虚しい。守るべき者の為に、高き志の為に使われて、初めてそれは意味を持つ。此度の事でそれが分かった筈。焔耶よ、儂はもうお前の師匠ではない。これまでの様に面倒は見てやらん。これからは、己の心は己で律するのだ。良いな?」

 

師匠の優しい愛情が、身に染みながら、視界が微かに潤むのであった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜。魏延は一人、庭で月を眺めていた。何を思っているのか、ただただ見つめているだけだ。そして厳顔はその様子を、屋敷の廊下から月見酒をしながら眺めていた

 

 

「厳顔殿」

 

そこへ、勇作が来た

 

「おお、これは高杉殿」

 

「寂しくないんですか?」

 

「寂しいか…そうでないと言えば嘘になるが」

 

「だったら」

 

「だが、一度決めたことだ。後はあ奴の心しだいだ」

 

そう言い、微笑みながら、酒の入った瓶を飲み干したのであった

 

「(それにあ奴が剣を抜いたのは守る者のためもあるが、もう一つあるがな)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

「それじゃあ、お世話になりました」

 

身支度を終え、旅に出る勇作達を、門前にて送り届ける厳顔と魏延

 

「ここから蜀へと入るには、崖沿いの険しい道を行かねばならん。道中、気を付けてな?」

 

「厳顔も飲み過ぎには気を付けるのだ」

 

「張飛、お主は食べすぎに気を付けろ」

 

軽口を言い、笑い合う一同が魏延一人だけが、どこか浮かない顔をしている

 

「それじゃあ、失礼します」

 

「またなのだ」

 

「おう」

 

そうこうしている内に、勇作達は、出発してしまった

 

「どうした焔耶?」

 

「…………」

 

「昨日、儂が何と言ったのか忘れたのか?己の心は己で律せよ。着いていきたいのなら、着いていけ!」

 

文字通り、背中を押してやった厳顔

 

「桔梗様、私は……」

 

「焔耶よ…儂が何も知らぬと思ったのか」

 

「え?」

 

「お主は、あの高杉の元に行きたいのであろう。あの者に仕えたいから」

 

「そ、そんな!そんな訳は」

 

「ははは!そう言うことにしておておこう」

 

「桔梗様」

 

「ほら、早く行かんと置いてかれるぞ?」

 

「は、はい!!」

 

「ああ、ちょっと待て」

 

厳顔は、あるものを魏延に託す

 

「旅立ちの餞だ。持っていけ」

 

鬼の金棒を彷彿とさせる武器…鈍砕骨をそれをしかと譲り受けた、魏延

 

「ありがとうございます、桔梗様!!」

 

それを担ぎ、魏延は勇作達の後を追っていった

 

 

「(高杉殿、手がかかるが、焔耶をよろしくたのむ)」

 

厳顔は心の中でそう思いながら勇作達を見ていた

 

「……」

 

事情を話し、仲間に加わった魏延

 

 

「(わかりました!厳顔殿!)」

 

聞こえたのかは分からないが、心の中で返事をする勇作

 

「「ふん」」

 

たんぽぽと魏延はいまだ犬猿ではあったが、新たな仲間が加わり、旅はまだまだ続くであった


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