「うーん・・・・・・・・」
翼は一人自室に籠もり、休日をどう過ごすか考えていた
「2週間も休暇を貰ったからなー、どう過ごそうかな・・・」
といろいろ考えていた
「俺がいない間、あいつらしっかりやってくれるかな・・・」
あいつらのこととは、凪、真桜、沙和のことだった
「凪は大丈夫だとして、真桜、沙和は・・・心配だ」
と不安が膨らんでいた時、腹の虫が鳴った
「・・・・・・ん、そろそろ昼時か。昼食にするかな」
翼は一人そう言って部屋から出て行く。
「さーて、今日はどうするかなぁ?」
翼は一人廊下を歩きながら今日の昼食をどうするかブツブツと呟く。
「おっ、隊長。丁度ええところに」
「ん?」
「あっ、隊長。お疲れ様です」
廊下の反対側から、凪、真桜、沙和の三人がやって来て、凪一人だけ姿勢を正して翼に挨拶をする。
「おお、お疲れ。三人揃ってどうした?」
「えっとー、これからお昼に行こうと思うんだけど、隊長も誘おうと思って」
「ん、そうなのか?」
「私は止めたのですが・・・・・・」
凪が伏し目がちに言う。
「いや、全然気にする必要はないぞ」
「そうですか。よかった」
翼の言葉に凪は安堵の笑みを浮かべる。
「で、お前らはなんか食いたい物とかあるのか?」
「では麻婆で」
「即答かよ!」
「え!」
「いや、一緒に行くのを遠慮してた割には食べたい物を即答したから、ついな・・・・・・。しかし、麻婆とは意外だな」
「隊長、あんな! 凪の奴、激辛料理が大好きやねんっ!」
真桜が凪に背後から抱きつき、ほっぺをプニプニと突付きながら言う。
「なっ! やめろ真桜! 隊長の前だぞ! それに私は別に・・・・・・」
凪が顔を真っ赤にして反論するが。
「はーい。凪ちゃんに質問その一。麻婆茄子と茄子田楽、どっちが好きー?」
「麻婆」
「質問その二。麻婆春雨と老麺(ラーメン)は?」
「麻婆」
「最後ー。唐辛子と茘枝(ライチ)はー?」
「・・・・・・・・・唐辛子」
「なっ?」
「ああ。今のでよーく分かった」
「隊長には誤解してほしくないのですが、私は決して辛い料理だけが好きとか、辛い料理ばかり食べているとか、そういう訳ではなく・・・・・・」
「ああ、それは分かってるから、そこまで反論しなくてもいい」
「はい・・・・・・」
「ほんなら昼食べに行こかー」
「おーなの!」
「よし、行くか」
と俺たちは移動した
「此処にするか・・・」
「はい!」
と店に入り、席に座った
「さーて、お前らは何が食うの?」
「ウチは、麻婆豆腐と炒飯」
「沙和は麻婆茄子と炒飯と・・・・・・後、餃子も食べるのー」
「麻婆豆腐、麻婆茄子、辣子鶏(ラーズージー)、回鍋肉、全部大盛り、唐辛子ビタビタでお願いします」
「ぶっ!」
内容が内容なだけに翼は驚きの表情で吹き出す。何しろ頼んだ料理が全部、唐辛子を使った物のオンパレードなのだから。
「あははは♪ 沙和も始めて見たときは、そんなに食べて平気? って聞いちゃったもん」
「まあ、隊長の気持ちもよう分かるけど、凪やったら大丈夫やで。行きつけの店じゃいつもやっとる事やき」
「そうなんだ!・・・あっ!俺は麻婆豆腐、餃子、白いご飯で」
と注文した
料理が来るまで、三人と会話をした
「そういえば、隊長は休日はどうするのですか?」
と凪が聞いてきた
「まだ、決まっていないんだ」
「そうなんですか」
「うーん?」
「どうしたん?隊長?」
「いや、俺が居ない間、3人だけで大丈夫なのかと思って」
「隊長・・・」
「それは無いやろ」
「そーなの。沙和達を信じてほしいのー」
「いや、初めて警備の仕事した時のことを思い出すと、不安だよ」
「そ、それは・・・」
「あはは・・・」
「確かに・・・」
初日の警備は散々だった。開始早々、遅刻するわ。沙和は阿蘇阿蘇という雑誌を見つけては、はしゃぐは、真桜は発売中止になった超絶からくり夏侯惇を見つけて、仕事そっちのけにするわ。凪は二人よりましだったが、盗人を捕まえるのに氣弾攻撃をして、街をメチャクチャにしてしまったりと散々だった
「は~」
ため息しか出ない翼
「隊長!心配するなて。大丈夫だから~」
「そうなの」
真桜、沙和が言ったが
「お前ら二人は特に心配だよ!」
と話している内に注文した料理が来た
「おー美味しそうなの」
「せやな」
「ああ」
「それじゃ!」
「「「「いただきます」」」」
「悪い、凪。酢醤油取ってくれんか?」
「もぐもぐ・・・・・・んぐっ、ん・・・・・・はい」
「へへっ。おーきに。沙和、酢醤油要るやろ?」
「ありがとう。真桜ちゃんにしては気が利くのー」
「いやー、その餃子、酢醤油つけて食ったら旨いやろなと思うてなぁ」
「もー。素直に頂戴って言えばいいのに。じゃあ、一個あげるの」
「おーきにな」
「凪ちゃんも要るー?」
「あむ・・・・・・ん、食べる・・・・・・」
「はい、どうぞ」
「ありがと」
と食べていると
「・・・隊長、それは?」
「ん?麻婆丼だけど・・・」
「麻婆丼? なんやのそれ?」
「名前通りさ。丼に盛り付けた白飯に麻婆豆腐をぶっかけた物だ」
「はぁ!? 麻婆豆腐を白ご飯にかけてるらて・・・・・・気持ち悪っ!」
「邪道だよ、邪道~! 変なのー」
「もぐもぐ・・・・・・もぐ・・・・・・」
凪は何も言いはしないが、嫌そうに眉をしかめてる。
「そうか。こっちには麻婆丼は無いんだな。オレの世界じゃ至って普通なんだがな。食うの楽だし」
「そーなん? ウチらからしたら、なんや抵抗あるなあ・・・・・・」
「旨いぞ、麻婆丼。・・・・・・食うか?」
「うーん・・・・・・じゃ、一口だけ」
「・・・・・・・・・・・・私も」
「ん~~~・・・・・・ッッ、せやったらウチも!」
三人は翼が差し出した麻婆丼をレンゲで掬って、恐る恐る口に運ぶ。
「・・・・・・どうだ?」
「おわわっ!? 旨いで、コレ!」
「うん、おいしー。何これビックリー!」
「・・・・・・意外」
「だろ。もともと挽肉入りの餡と米の相性が良いから、不味いわけがないんだよ」
「今度、沙和もやってみるのー」
「やー、こんな事やったら炒飯やのーて、ウチも白ご飯にしときゃ良かったなー」
「・・・・・・・・・・やってみよ」
凪は翼に習い、自分の白飯に麻婆豆腐をかけて同じように麻婆丼を作り、真桜と沙和はもう一口と零治の麻婆丼をレンゲで掬い取る。
「気に入ってもらえて何よりだ」
翼は黙々と食事を始める。と、その時。
パリン
と皿の割れる音がした
「どうしました?」
とこの店の主人が居た
「・・・・・・・・・・・」
俺の方を黙ってみている
「あの~~~」
「君!?」
「はい!」
「その考え、貰っていい?」
「は、はい」
「ありがとう!!」
とすごい勢いで厨房に戻った
「何だったんだ!?」
「あ~美味しかったでー」
「そうなの」
「そうか」
「さて、警備の仕事をやるか!?」
「はい」
その後、あの店で、麻婆丼が大人気になったとか・・・