「ここにもいないのか・・・」
現在俺は、仕上がった仕事を華琳に見せるべく、城の中を探し回っている。
「もうすぐ、休暇だから早く見せないと・・・」
探すが見つからない。そんな時、荀彧と会うが・・・・・・。
「・・・・・げ」
荀彧は人の顔を見るなり嫌そうな顔を見せてきた。
「・・・・・・」
無視して行こうとしたが
「無視するんじゃないわよ!」
「何でだよ!別にいいじゃん!お前にとっては・・・」
「確かにそうだけど、なんか嫌なの・・・」
「そうかい・・・・・・それより華琳を知らないか?」
「ふんっ。たとえ知っててもあんたなんかに教えるもんですか! 地の底を這いずり回ってお探しなさい」
「(ひで・・・知っているようだけど、教える気はないな・・・)」
なんて思った
「どうした、翼」
と秋蘭が来た
「ああ、秋蘭。華琳を知らないか?随分探しているのだが・・・荀彧も知らないようでな」
「だ、誰が知らないなんて言ったのよ!知っているけど教えてやらないって言っただけでしょ!」
「(はあー・・・)」
「華琳様なら、今日は一日お休みだぞ?」
「そうなのか」
「聞いていなかったのか?」
「いや・・・昨日の夜に頼まれた仕事を今日持ってくるように言われたのだが?」
「・・・やれやれ。また悪い癖か」
「悪い癖?」
「翼は華琳さまが一日仕事を休んでいるところ・・・見たことがあるか?」
「・・・ないな」
「ご自身の体と公務を比べれば、かならず公務を優先させるお方だからな・・・。今日の休みも、私と姉者で無理矢理に休ませたのだ」
「じゃあ、春蘭は?」
「華琳さまの代理で、季衣と一緒に視察に出掛けている」
「よく、華琳があの二人で納得したものだな・・」
「・・・軍関係の視察だったからな。まぁ、色々あったのだよ、こちらも」
「(秋蘭の苦労が目に浮かぶ)・・・お疲れ様・・・今日は見せない方が良いな」
「何だったら預かってあげましょうか?」
「秋蘭がいるから、荀彧に渡した証明が出来るし。良いよ」
「やっぱりやめるわ」
「急ぎでないものなら、明日の朝にしてくれると嬉しいのだが。華琳さまに何か言われたら、私の名を出して構わんぞ」
「別にいいよ。怒られるなら俺一人でいい」
「そうか。気を使わせて悪いな」
「いいさ。それじゃあ、警備の仕事にでも行くか・・・・・・」
「ああ。・・・・・・そうだ。城を出るなら、向こうの庭を通った方が近道だぞ」
「ちょっと、秋蘭!?」
秋蘭の言葉に荀彧が慌てて言う。
「(何かあるな…。まあここはお言葉に甘えるとして・・・・・・)分かった」
そして翼は秋蘭に教えられた道を歩いていると・・・・・・。
「あ」
茂みの中にハンモックのようなものの上で寝ている華琳の姿を見た。
「(そういうことか、秋蘭の言った意味は・・・)」
と翼は理解した
「(少し声をかけてみるか・・・・・・)華琳さーん」
「・・・・・・・・・・」
返事が返ってこない。
「寝てるな。起こすのは野暮だな」
「・・・・・・んぅぅ・・・・・・」
「本当によく寝て・・・・・・」
翼は華琳のいる場所などを見て考える。
「もう少し気を休めてもいいと思うけどな・・・・・・。こんなに可愛いのに・・・・・・」
華琳の顔がわずかに赤くなったことに翼は気づく。
「仕方ない・・・」
翼はその場を走り去る。
そしてその走り去った場では・・・・・・。
「・・・・・・ぷはぁっ!」
華琳が起きた。いや、正確には起きていたのだ。
「・・・・・・まったく、人が寝ていると思って好き勝手に言ってくれるじゃない。翼のやつ・・・・・・どうしてくれようかしら・・・ん?」
華琳はそうこうしていると翼が戻ってくる足音が聞こえたので、思わず狸寝入りをした。
(な、なんでまた・・・・・・私・・・・・・どうして、狸寝入りなんか・・・・・・)
翼はシーツのようなものを華琳の上にある枝と枝に括りつけて影を作り、扇子を取り出して華琳を仰ぐ。
(あら、扇を取りに行ってくれていたのね。なかなか気が利くところもあるじゃない)
「涼しいですかー」
「(ええ、なかなかよ。悪くないわ。・・・・・・そうか、翼が私のことを影でどう評価しているか、知りたかったのね。私は)」
「涼しそうだな。良かった」
「(まあ、私の眠っている間でも気が利くところを見せてくれたことだし、私のことを嫌っている・・・・・というわけでは無さそうね)」
「・・・・・・・」
翼は華琳を見て
「それにしても、似ているなー」
「(似ている?)」
「俺をこの世界に送った人に・・・」
「(え?)」
「あの時はビックリしたなー。いきなりこの世界に送られて、ある運命を破壊してくださいって言われて・・・」
「(どういう事?)」
「それにしてもこの世界に来てから、いろんなことがあったなー」
「(翼)」
「驚きもあったけど、華琳達と出会ってよかった思う」
「(・・・・・・)」
「いろいろあったけど、俺のことを心配して怒ってくれたりしたの華琳達が初めてだったなー」
「(え?)」
「本当に俺の居た所と全く違うよ・・・・・・」
「(・・・・・)」
「・・・何で親のことを思い出しているんでろう。俺をあんな理由で捨てた親なんて・・・」
「それどういうことなの翼?」
「!?起きていたの?」
「近くで声を上げていれば、普通に起きるわよ!」
「ごめん」
「それより、聞かせて」
「何を?」
「貴方のことについてよ」
「・・・・・・」
「貴方、両親に捨てられたのは本当なの?」
「ああ、本当だよ・・・」
「何で捨てられたの・・・」
「そ、それは・・・」
「・・・・・・・良いわ。言いたくなければ」
「うん」
「・・・・・・」
「・・・どうしたの?」
「いや、なんでもないわ」
「そうか」
「それより、貴方を此処に送った人私に似ていたのは本当なの?」
「まあ、似ていたし、本当だよ」
「そう、それよりある運命を破壊してくれって、どういう事なの?」
「俺にも、分からないんだ」
「え?」
「詳しくは聞いていないんだ。何を破壊するのか・・・」
「そう」
「まあ、今は華琳の覇道の前に立ち塞がるものを破壊するけど・・・」
「分かっているんじゃない」
「それはどうも」
「それで、貴方の親は・・・」
「もう、死んだよ・・・」
「そう、ごめんなさいね」
「別にいいよ」
「ならいいわ」
「さて、俺はもう行くね」
「そう」
「資料明日見せてもいいか?」
「そうね。良いわ」
「ありがとう。では良い休日を・・・」
と言い華琳から離れた
「ふう」
と華琳は横になり
「なんか、少しだけわかった気がするわね。翼のこと・・・」
と見上げながら、さっきの会話を思い出していた
「運命を破壊か・・・・・何なのかしら?運命って・・・」
華琳はそう言って眼を閉じ、眠りに落ちた。