真・恋姫†無双~外史の運命を破壊する者~   作:ヒーロー好き

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張三姉妹の様子

「れんほーちゃーん。おーなーかーすーいーたー」

 

ここは黄巾党本隊の天幕。そこで張角【真名を天和】という少女が張粱【真名を人和】という末妹に文句を言っている。考えなしな姉の言動に人和は頭痛を抑えている。

 

「はいはい・・・。そんなに言わなくても、分かっているわよ」

 

「人和。わたし、もうこんな所いたくないわよ。ご飯も少ないし。お風呂だってちょくちょく入れないし・・・何より、ずーっと天幕の中で息が詰まりそう!」

 

次女の張宝【真名を地和】の言葉に人和は答える。

 

「それも分かっているわよ。でも仕方ないでしょ・・・。曹操ってヤツに食糧が焼かれちゃたんだから」

 

「仕方なくないわよ。別の所に行けばいいでしょ。今までだって、うるさくなったら他の所に移動していたじゃない」

 

それが出来ないから人和は苦労しているのだが。

 

「・・・・私たちの行動が朝廷に目を付けられたらしくてね。大陸中に黄巾党の討伐命令が回っているのよ」

 

「・・・・はぁ?私たち、何もしていないわよ!」

 

「まわりの連中がね・・・」

 

きっかけは天和・地和の言葉だった。

〔大陸のみんなに愛されたいのー!〕という天和の言葉に、

〔大陸獲るわよっ!〕と地和が煽った。

その結果としてこの事態を招いた。二人とも深い考えがあったわけではないが、周りは真面目に考えてしまったのだ。人和はため息をつく。

 

「え?じゃあ、今までみたいにいろんな国は回れないの?」

 

「連中が付いてくると、どうしても大きな動きになってしまうわ。彼らを連れて県境は越えられない」

 

「なら、置いていけばいいじゃない」

 

出来れば楽のだが、出来ないことを人和は承知している。

 

「できるならとっくにやってるわよ。何度か試してみたけど・・・その度に、誰かが寄ってきて・・・一人来たら、百人来るんだから」

 

その後、姉二人が言い争う中、増えすぎた取り巻きに人和は頭を悩ますのだった。

 

 

「秋蘭様、本隊、到着いたしました。」

 

「そうか、各隊の報告は纏まったか?」

 

「ちょうど終わったところやで。連中、かなりグダグダみたいやな。」

 

「やはりな・・・華琳様の予想通りか。・・それで、まずは報告を聞かせてもらおうか。」

 

「はいはい。まず、連中の総数やけど約20万。」

 

「ものすごい大軍隊なの~。」

 

「それって、ボク達だけで勝てるんですか?」

 

「まぁ落ち着け。その全てを相手にするわけではないさ。真桜、そのうち戦えそうなのはどのくらいなんだ?」

 

「さすが隊長や。そのうち戦えそうなんは3万くらいやないかな。」

 

「?・・どういうこと?」

 

「補給線を潰しまくったから食糧も装備も足りてるはずかないからな。」

 

「そのとおりや、さっきもどっかの敗残兵みたいなのが合流してたみたいや。」

 

「さっきの大兵力は非戦力を合わせた上での数ということか。」

 

「ああ。あちこちで内輪同士の小競り合いも見えたから、一枚岩ですらないみたいや。指揮系統もバラバラなんちゃうかな?」

 

「フッ。戦闘力を奪った連中を本拠地にまとめさせ、ワザと敵の頭数を大きくする。・・・・・・華琳の作戦は上手く行ったな」

 

「ああ。受け入れる本拠地が無い以上、陣内に取り込むしかないからな。ここまで組織が肥大化すれば、おのずと動きも鈍くなるし、指揮系統も作らねばならん。そうなればこの程度の相手、そこいらの野盗と変わらんさ」

 

「神出鬼没の大熊も、太り過ぎればただの的、という事ですね」

 

「・・・・・・太り過ぎたら・・・・・・」

 

「・・・・・・嫌な例えなの」

 

「・・・・・・同感です」

 

「すまん」

 

「それで、作戦は当初の予定通りで大丈夫でしょうか?」

 

「問題はなかろう。華琳様の本隊に伝令を出せ。皆は予定通りの配置で各個錯乱を開始しろ。」

 

「攻撃の機は各々の判断に任せるが張三姉妹にだけは手を出すなよ。以上、解散!」

秋蘭が言い放った

 

 

 

 

「張角様! 張宝様! 張梁様!」

 

「何? 慌ててるわね」

 

「すみません! しかし急用だったもので・・・・・・!」

 

「なんなのー?」

 

「敵の奇襲です! 各所から火の手が!」

 

「何ですって! すぐに消火活動を!」

 

「各々でやってるようですが、火の手が多いのと誰に指示すればよいか分からず・・・・・・!」

 

「く・・・・・・っ。無駄に増えているから・・・・・・!」

 

「どうしましょう!」

 

「ともかく、敵の攻撃があるだろうから、皆に警戒するように伝えなさい! 火事も手の回る者が消せばいいでしょう!」

 

「はいっ!」

 

「・・・・・・・・・・・・まったくもう」

 

 

人和は周りの慌てふためく様子を見て頭を抱える。もはや黄巾党は軍隊としての機能は失ったも同然だろう。

 

 

「れんほーちゃぁん・・・・・・」

 

「人和・・・・・・」

 

「・・・・・・もう潮時ね。応援がどうこう言っている場合じゃないわ。・・・・・・・よっと」

 

 

人和がその場に隠していた大荷物を背負うので、天和が荷物を指差しながら訊く。

 

 

「何? その荷物」

 

「逃げる支度よ。三人分あるから・・・・・・みんなでもう一度、一からやり直しましょう」

 

「・・・・・・仕方ないわね。でも、二人が居るなら」

 

「そだねー。ちーちゃんとれんほーちゃんが居れば、何度だってやり直せるよね♪」

 

「そういう事。そうだ、これも・・・・・・」

 

 

人和がそう言いながら荷物の中から一冊の古書を取り出す。それは・・・・・・

 

 

「太平何とか、だっけ・・・・・・?」

 

「そうよ。コレを使って、またみんなで・・・・・・」

 

「もうそんなのいいよ。二人が居れば何もいらないから、早く逃げようよー!」

 

 

張三姉妹は本陣の騒ぎのどさくさに紛れながら、数名の護衛を引き連れ、コソコソとその場から逃げ去った


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