問題児が聖杯探索するそうですよ?   作:最強系主人公大好き

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これは以前に投降した『【試作】完膚なきまでに救ってみせる!』のリメイクというか連載版です。ひとまずは薄かった内容を補いながら書き直し、前作と大体同じ流れで同じところまでは書くつもりです。それ以降についてはまだなんとも言えないのですが。まあ、ぼちぼちとやっていきたいと思います。






YES!紛うこと無き終末です!
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神代は終わり

 

 

西暦を経て

 

 

人類は地上でもっとも栄えた種となった。

 

 

我らは星の行く末を定め

 

 

星に碑文を刻むもの。

 

 

人類をより長く

 

 

より確かに

 

 

より強く繁栄させる為の理

 

 

人類の航海図。

 

 

これを 魔術世界では人理と呼ぶ。

 

 

 

CONNECTING…

 

 

 

主よ 今一度この旗を救国の……いいえ 救世のために奮います!

 

 

秩序は燃え尽きた。多くの意味が焼失した。私たちの未来はたった一秒で奪われた!

 

 

聞け!この領域に集いし一騎当千 万夫不当の英霊たちよ!

 

 

相容れぬ敵同士であろうと 今は互いに背中を預けよ!

 

 

私は 主の御名の元に貴公等の盾となろう!

 

 

この戦いは人類史を遡る長い旅路。

 

 

ですが 悲観することはありません。

 

 

たとえ この星の全てが聖杯戦争という戦場になったとしても

 

 

この地上の全てがとうに失われた廃墟になっていても

 

 

その行く末に無数の強敵が立ちはだかっても

 

 

結末はまだ 誰の手にも渡っていない!

 

 

 

…………

……

 

 

 

気がつけば、眼前には燃え盛る炎と気味の悪い障気に包まれた崩壊都市が広がっていた。

 

「は……?」

 

青年、逆廻十六夜は突然の事態に一瞬呆気にとられるも、次には冷静に事態を把握するべく頭をはたらかせた。

 

「………………一体全体どうなってやがる?此処に至る前後の記憶がかなり曖昧だ……」

 

 

十六夜は眉間を押さえて記憶の糸を辿ろうとするものの、やはりというか糸は途中で途絶えてしまう。先程まで河原に寝転がって太陽を眺めていたところまでは記憶に新しいが、その後がひどく曖昧にもやがかっている。

 

太陽の陽気にあてられていたところから、この炎上都市で目覚めるまでの間の記憶がぽっかりと欠落してしまっていた。否、感覚的には空白となってしまっていると言った方が正しいか。

 

己の頭脳をもって瞬時にわからないことが、長考したところでわかるはずもない。十六夜は一旦、記憶の空白に関する疑問を棚に上げた。そして、周囲の光景を、廃ビルと瓦礫と炎だけが支配し、まるで世紀末のような景色を瞳孔の開いた瞳で見渡した。

 

十六夜の口角が徐々につり上がっていく。それと同時に十六夜は自身の内側から沸き上がってくる感情を、まるで隠すつもりもないとばかりに高らかに声を上げた。その様は感情の制御が利かない子供そのもの。

 

「オイオイ オイオイオイオイ……ッ!!なんだよこのステキでユカイな状況は……ッ!!」

 

かつて十六夜はなんの恥ずかしげもなく豪語した。己こそが世界で最もファンタジーな存在であると。それは決して過信でも驕りでもなく、たしかな能力と能力をもって築き上げてきた実積という事実にこそ裏打ちされたひとつの真理。己の怪物性を理解していたからこそ宣えた紛れもない真実。

 

だが、これはなんだ。今しがた目の前に広がるこの景色は一体なんなのだ。まるで破滅した世界。核により人類が滅びたのか。人工知能により人類が滅ぼされたのか。空から恐怖の大王でも降ってきたのか。キリスト教における復活したイエス・キリストによってもたらされるとされる最後の審判。ヒンドゥー教における破壊と再生を司るシヴァ神による終末論。滅びた世界は何故に滅びたのかという至極尤もで、本来なら既に解答が出ていなければならない疑問。

 

しかし、その解答を持ち合わせていない十六夜はこの理解不能意味不明摩訶不思議極まりない状況下で、尚、その顔に喜色満面の笑みを浮かべていた。

 

味知に充ち満ちた世界で、十六夜は本当に心底から愉しげに、無邪気に笑う。その表情はまるで新しい玩具を与えられた子供のようで。好奇心は猫を殺す。だが、残念ながら今この世界に立った存在は猫のような軟弱な生き物ではない。それは味知に餓えた獅子そのもの。好奇心は果たして獅子をも殺せるか。

 

「あん……?」

 

ふっと、視界の端で何かが動いた。十六夜が視線を飛ばせばそこには剣や槍、弓矢といった前時代的な武装を携えたスケルトンの軍勢が。骸の群れはカタカタと剥き出しの骨を鳴らしながら、フラフラとおぼつかない足取りで生ある者を駆逐し、世界に死こそを撒き散らさんと進軍する。その光景は正しく十六夜の求めていたもの。常識に囚われない非常識の世界。

 

興奮冷めやらず、それでも十六夜は若干の冷静さを取り戻していく中、十六夜はたしかに己の内に未だ絶えることなく燻り続ける炎が灯っていることを感じていた。

 

「ヤハハ いいねぇ。こいつは……」

 

―――完全無欠にファンタジーだぜっ。

 

十六夜は踏み込む足で地面を砕き、第三宇宙速度で大風を巻き起こし、炎を掻き消しながら荒れ果てた世界を駆け抜ける。骸骨の大群のその面前へと肉薄し、欠片の遠慮や慈悲もなくその拳を全力で振り抜いた。

 

地を割り、天を裂く剛拳はスケルトンの頭蓋を木っ端微塵に破砕し、拳の風圧でその後ろの群れもろとも吹き飛ばす。

 

「まあ ストレス解消兼暇潰しくらいにはなりそうだな。太陽の黒点数えてるよりかはよっぽどマシだ」

 

ヤハハ、と十六夜は高笑いを上げながら、倒れ伏したスケルトンたちを足蹴にしつつ、直感に従って、まるでなにかに引き付けられるかのように、より障気が濃い方向へと歩を進めた。

 

 

 

…………

……

 

 

 

「オラァッ!!」

 

 

十六夜の放った蹴りは、地面を抉る強力無比な衝撃波を形成してスケルトンたちを凪ぎ払い、その余波だけで周囲の瓦礫の山を吹き飛ばす。どれだけ立派な武器凶器を携えようとも、それを届かせるだけの力がなければ無意味そのもの。スケルトンたちはただただ、その小さくも強大な嵐に吹かれ続けることしかできない。

 

「ハァ……誰に気兼ねすることなく存分に力を奮えるってのは悪くねぇが。流石に作業ゲーじゃあな…………」

 

涌くように出てくるスケルトンたちをプチプチと潰しながら、回り道などという言葉は自らの辞書にはないとばかりに立ち塞がる瓦礫を蹴散らしながら足を進めていた十六夜は、このあまりにもあんまりな無双状態に対して少なからずげんなりし始めていた。

 

「そろそろ雑魚じゃなくて中ボスくらい出てきて欲しいんだが…………お?」

 

これがゲームだったならクソゲー間違いなしだな。そう内心でぼやいていた十六夜は何かに気づいたようにとある方向を注視する。金属同士がぶつかり合うような微かな音。距離があるためはっきりとは聴きとれないものの、十六夜の耳はたしかにその音を拾っていた。

 

「……交戦音。誰か戦ってんのか?まあ ともあれイベントは回収しねぇとな。焔の奴に怒られちまうぜ」

 

脳裏にゲーム好きの弟分の姿を思い描き、ここに来て始めて柔和な笑みを浮かべる十六夜。しかし、次にはそれを不敵な笑みへと変貌させ、音のする方向へと身体を向けて地を蹴った。

 

 

 

…………

……

 

 

 

「この事態の手掛かりくらいあるかもしれないと当たりをつけて来てはみたが……こいつはもしかしなくてもビンゴか?」

 

今にも崩れ落ちそうな廃ビルの屋上から様子を伺っている十六夜の視界に写っていたのは、先程までの十六夜同様にスケルトンの大軍と交戦している少女たちの姿であった。善戦してはいるものの、数の利で段々と押され始めているのは少女たちの方だ。その細腕の一体何処から力が来ているのか、大きな盾を振り回しスケルトンを下していく少々過激な格好の少女と、戦闘の指示を出しているらしい赤銅色の髪の少女。

 

十六夜がこの炎上都市に来て始めて見る生身の、きちんと命のあって、話の通じそうな人間。定石からしてあの少女たちは間違いなく訳知りであろう。たとえそうでなくても、一度視界に収めた以上、少女たちを見捨てるという選択は十六夜にはない。間違いは拳をもって正すという信念を掲げる十六夜は、この歪み切った世界において見られなくなって久しい正義であった。

 

「何はともあれ 俺も交ぜろやコラァッ!!」

 

ヤハハハハ、と高らかに笑いながら廃ビルの屋上から飛び降りる。少女たちとスケルトンとの間へと割り込むような形で、まるで落ちてきた隕石のようにクレーターを形勢し、スケルトンを少女たちごと吹き飛ばしながら着地した十六夜は、体勢を整えるまでもなく瓦礫の欠片を拾ってそのまま投擲した。

 

第三宇宙速度で飛来する瓦礫の欠片など当然避けられる筈もなく、それはスケルトンたちを遍く打ち砕いた。

 

 

 

…………

……

 

 

 

 

「あ あの 助けていただきありがとうございます。わたし マシュ・キリエライトと申します。こちらはわたしのマスターの……」

 

≫助けた?!あれが!?

 

「たしかに吹き飛ばされはしましたが 大したケガはありませんし。それにスケルトンたちを倒してくれましたので おそらくは助けていただいたのかと。確信はありませんが。ありませんが…………」

 

赤銅色の髪の少女の追及に、自信なさ気に瞳を揺らしているマシュと名乗った盾の少女。そんな中で十六夜はマシュの頭から爪先までを舐めるように観察して感嘆の息を吐いた。

 

「ヘソ出しバトルスーツか。しかも肩出しに太股の露出…………アリだな」

 

≫激しく同意する

 

その十六夜の呟きに、吹き飛ばされことに関してはもう忘れたのだとばかりに赤銅色の髪の少女は十六夜と固い握手を交わした。

 

琥珀の瞳の紫水晶の瞳が交差する。互いに互いを同士である認めたのだ。しかし、そんな二人を見て色々とおもしろくないのはマシュである。

 

「ナシです!こんな状況でどこを見ているんですか!マスターもなに同意しちゃってるんですか!」

 

不潔です。ふしだらです。と声を荒げるマシュは自身のマスターが出会って間もない相手と瞬時に打ち解けてしまったことに対する嫉妬と、マシュ自身も気にしていながらも我慢していた、露出の多い戦闘スタイルについて指摘された羞恥とがない交ぜとなった感情を爆発させる。

 

そんなマシュに対して十六夜は何を言っているのかとばかりに鼻を鳴らして威風堂々と宣った。

 

「オイオイ 知らないのか?古来より『前屈みのむっつりスケベより 胸を張ったオープンエロであれ!』と言う格言がだな……」

 

「ありません!ありません!」

 

≫何という至言……っ

 

「だから ありません!信じないでくださいマスター!」

 

≫好きなものを好きだと言えないなんて そんなの世界の方が間違ってるよマシュ!

 

「良い顔で良い台詞を言っても 内容が内容だけに感動が皆無です!」

 

 

 

 


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