MH:E’s   作:taktstock

3 / 7
3

先程の女性ハンターから離れたリオンは、そのままカウンターへ向かう。

 

「あっ、リオンさん。こんにちは!装備、新調されたんですね!」

 

「あ、はい。あの、このクエスト受注しに来たんですけど……」

 

そういって採取ツアーの依頼書を下位受付嬢に渡すと、手慣れた手つきで判子を押し、依頼書を差し出してくる。

 

「ありがとうござ……ん?」

 

リオンが依頼書を受け取ろうとするが、下位受付嬢の手から離れない。下位受付嬢をみると顔を俯かせている。

 

え、もしかしてこの依頼はダメなのか?

 

しかし、予想していた言葉とは違う言葉がとんできた。

 

「あの、先程の人は……えと、彼女さん、ですか?」

 

「先程の人?」

 

下位受付嬢は気まずそうに上目遣いでリオンに訪ねる。

 

先程の人って、あの女性ハンターの事だろうか。

 

「……いえ、さっきの人とはたまたま話しただけで、初対面です」

 

すると下位受付嬢が何故か安心した様に息を漏らす。

というか、依頼書……。

 

「あの、依頼書が……」

 

「へ?……あっ⁉す、すみません‼」

 

そう言って、依頼書から手を離す。

あぁ、破れてる……。

 

「でっでは!依頼、頑張って下さい‼」

 

「え、あ、はい」

 

何故か顔を真っ赤にしながら言ってくるので、追求はしなかった。

 

出口に歩く中、少し破れた依頼書を眺め、呟く。

 

 

「……この依頼書、使えるかなぁ……」

 

☆☆☆

 

金色の草が風で靡く。心地よい風が頬を撫でる。

リオンは遺跡平原に到着した。

 

「ありがとう。ガーグァタクシーさん」

 

「はいニャ!依頼、頑張って下さいニャ‼」

 

ここまで連れて来てくれたガーグァタクシーのアイルーにお礼を済ませ、気を引き締める。

今日の目的は採取、そしてあわよくば野良大型モンスターの討伐。

 

「……いるな」

 

リオンは昔から何故か察知能力が異常に高く、幼少時は100m程までなら親の位置がすぐにわかったくらいだ。

 

取り敢えず、モンスターの細かい位置はまだわからないが、この遺跡平原に大型モンスターがいる事は分かった。

 

 

ガーグァタクシーで縮こまっていた身体を伸ばし、ほぐす。

 

程よく筋肉を伸ばした後、アイテムBOXから取り出す。

 

「さてと……じゃあ、行くか」

 

 

☆☆☆

 

 

「……いた」

 

リオンが慎重にエリアを進み、エリア2に来たとき、そいつは姿を表した。

 

エリア4から前脚の飛膜を広げて滑空し、エリア2のツタへ着地した。枝渡りに適した特徴的な構造の手足を使い、勢いを殺す。

 

ケチャワチャ。『奇猿狐』とも呼ばれる牙獣種のモンスター。

 

図鑑では見た事があるが、生で見るのは始めてだ。

 

 

幸い、まだこちらに気付いてはいない。

 

気配を殺し、一歩一歩慎重に歩を進める。

 

 

だが、ケチャワチャはツタの上にいる。

 

ケチャワチャを警戒するには、当然上を見るから、下の警戒が疎かな訳で____

 

 

パキン

 

「あ」

 

リオンの脚が、落ちていた木の枝を踏み抜いた。

 

ケチャワチャがリオンを見る。

 

視線がぶつかり、動きが止まる。

 

見つかったことに気付くのに、一瞬反応が遅れた。

 

急いで耳を塞ごうとしたが時既に遅し。

 

空気を震わすケチャワチャの咆哮が開戦の合図となった。

 

 

☆☆☆

 

「ぐえっ」

 

リオンはネコタクから勢いよく地面へ落とされ、うめき声が漏れる。

 

人生初のネコタク。

これは辛い。痛い。もっとソフトに降ろして欲しい。

 

あのあと、なんとか体制を立て直し、良いところまで言ったのだ。

だが攻め急ぎ過ぎ、体力の事をあまり考えていなかった。

 

ケチャワチャが滑空している時に、どこから来たのかメラルーがリオンに攻撃したのだ。

 

一瞬だけ動きが止まる。

 

 

たかが一瞬。されど一瞬。

 

その隙が命取りとなった。

 

 

滑空して来たケチャワチャを避けきれず、直撃。

体力も持たず、ネコタクされたのだ。

 

「……盗られたのは石ころか」

 

不幸中の幸いは、盗られたのが研ぎ石や回復薬ではなく、石ころだったということ。

採取しておいて良かった。

 

「……ん?」

 

リオンはケチャワチャの他に何かの気配を捉えた。

 

それも、ケチャワチャより遥かに強い。

まだ遺跡平原にはいないようだが、確実に近づいて来ている。

 

「……早めに倒さないとな」

 

ジャギットショテルを研ぎ直し、こんがり肉を頬張り、目的地まで一気に駆け出した。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。