俺と一色の御近所付き合い   作:時雨日和

9 / 17
第8話 初めて

九月の下旬

夏も終わりを迎える頃、そろそろ秋に差し掛かり気温も過ごしやすいものに変わってきた。最近は残業する日も増えこの前なんかは何日か連続終電二本前くらいまで残業だったまである。そんな時の休日はとても心地よい、仕事も終わりほんとにゆっくり出来る。よし今日はゆっくり寝るぞー。

いろは「せんぱ〜い!朝ですよ〜!」

………今日日曜だ。

いろは「せ〜んぱ〜い、朝ですよ」

………ゆっくり寝ていたい。

いろは「先輩、起きてください」

………だんだん近づいてきてる。

いろは「……」スッ

八幡「!?」スッバッ

いろは「あ、起きましたね。おはようございます。先輩」

八幡「うんおはよう。…じゃない、お前何しようとした?」

いろは「そんなの決まってるじゃないすか〜、起きない彼氏の顔を近づけてする事なんてひとつしかないじゃないですか〜♪」

人差し指で自分の唇に当てながらニヤニヤしながらこっちを見てくる。うんあざとい、これはからかってるな。

八幡「……あざとい」

いろは「やだなぁ、素に決まってるじゃないですかぁ」

八幡「…何か懐かしいな、聞き覚えがあるわ」

いろは「それで先輩、朝ごはん出来てるので食べましょう」

スルーか

八幡「あ〜、はいはいわかったよ」

いろは「それでその後勉強見て欲しいんですよ。良いですか?」

八幡「あ?何でまた」

いろは「そろそろ大学の試験なんですよ。それに就職試験とかの勉強もしとかないとですし」

八幡「あ〜もうそんな時期か、ってかお前ちゃんと就職するんだな」

いろは「そうですよ〜、流石に先輩の収入だけじゃこの先不安ですからね。わたしもしっかり稼がないと……今後のために」///

おい何故赤くなる。せっかく意識しないようにしてたのに、だんだん顔が熱くなってきたわ。

八幡「っ///よ、よくそんな恥ずかしい事言えるな……飯食う」

そう言って部屋を出ようとしたら、一色はクスッと笑ってから後について部屋を出る。

その後は朝飯食べて勉強とか洗濯とか色々して、昼飯も食べ終わったころ。

八幡「それで?午後からはどうするんだ?」

いろは「もちろん午後も勉強しますよ、先輩も手伝って下さいね」

八幡「いや、でもお前俺必要ないじゃん。何だかんだ言って自分でほとんど解くし」

いろは「いいんです!先輩はわたしの隣に居てくれるだけでいいのです!」

八幡「お、おう…」

何でこいつはこうも恥ずかしい事を言えるのかね。そしてしばらくしてから一色は勉強に取り掛かった。俺はその隣で頬杖をつきながら一色の勉強を見てた。案の定俺に質問も何もすること無くどんどん問題を解いていく。

八幡「(…こいつ結構頭良いんだな。それにめっちゃ頑張り屋だし、世話焼きだし。何か最初に持った印象と全然違うな)」

…………

八幡「(俺もいつもこいつに甘えてるな、何か恩返しとかしたいな)」ナデナデ

いろは「ひゃ!?」ビクッ

八幡「おっと…悪い邪魔しちまったな。すまん」

いろは「い、いえ…びっくりしただけなので……」

八幡「お、おう…わるい」

いろは「あ、あの!」

八幡「ん?」

いろは「も、もっと撫でてください!先輩から何かやってくれるなんて珍しいですから!」

八幡「お、おう…」ナデナデ

いろは「ふぁ〜♪」

八幡「…気持ち良さそうだな」

いろは「はい〜、気持ちいいですよ〜」

何かゆったりしてる…

八幡「………そろそろ終わりな、勉強に戻れ」パッ

いろは「あ……う〜、わかりました。なら勉強が終わったらまた撫でてくださいね」

八幡「ああ、わかったよ」

またさっきと同じように一色は勉強に戻り俺は見てる。そうしてるうちにだんだんと眠気が来てしまう。

八幡「(やば…ちょっとまだ疲れ残ってたか。めっちゃ…眠い………)」

そのまま頬杖をついたまま寝てしまった。

しばらくして意識が戻ってきた。すると疑問が湧いた。

八幡「あれ?俺座った寝たはずだよな?今横になってるっぽいな、あと俺下向いてたはずなのに上向いてるし、何か柔らかい……まさか)」

目を開けると、一色の顔がすぐ近くにあった。

八幡「っ!?」

俺はすぐに動こうとしたが一色は左腕で俺の上半身を押さえるようにして、右手で俺の頭を撫でていた。

いろは「あ、先輩起きましたね」

八幡「い、一色…な、な、何をしてるんだ?」

いろは「何って、膝枕ですよ♪膝枕。先輩寝ちゃうんですもん」

八幡「……今何時だ?」

いろは「5時くらいです。ちなみに勉強も終わりました」

やべぇ、3時間近く寝てた。しかも勉強終わってるとか、マジで俺要らなかったじゃん。

八幡「すまん…勉強見てやるって言ったのに」

いろは「良いですよ。先輩最近お仕事で忙しかったですし、せっかくの休みですからね」

八幡「でもなあ、約束だったしな」

いろは「うーんそれなら〜……」///チラチラ

何で顔赤くなってんだよ、何かチラチラ見てくるし。

いろは「き…キス……して下さい」

八幡「はぁ!?」///

馬鹿野郎、難易度が高ぇ!!

いろは「だ、だって先輩…もう付き合って一ヶ月過ぎるのにキスもまだ何ですもん……」

八幡「い、いや…それはあ、あれだ…うんあれだ」

いろは「先輩……いや、ですか?」ウルウル

その聞き方はずるい…

八幡「嫌…という訳ではない……」///

いろは「それなら……」///パッ

一色は左腕を離して俺は起き上がり一色に向かい合う。心臓が高鳴ってるのがわかる、顔が赤くなってるのがわかる多分今までで1番。

いろは「先輩……」/////

一色は上目遣いで俺を見てから目を瞑ってきた。この表情もずるい。

八幡「っ/////………」

………………………

八幡「//////」チュ

いろは「ん…」/////

ほんの少し、たった2、3秒のキスだったと思う。だが何故か俺には物凄く長いものに感じた。

いろは「ん…先輩……えへへ、わたしのファーストキスですよ」///

八幡「ぅ…お、俺だって初めてだよ」///

いろは「これからは躊躇なくしてくれますよね?」

八幡「う……どうだろうな…」

いろは「えへへ、して下さいね」

最近一色の表情にあざとさが少なくなってきたのは、気のせいじゃない気がする。

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。