俺と一色の御近所付き合い   作:時雨日和

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久しぶりにこのssを書いたため、かなり今までとは違う書き方になってしまった事をまず謝ります。すいませんでした。
そして、今まで書いてなかった分今回は今までよりも長めとなっています。
いつも通りキャラ崩壊等にご注意下さい。


第12話 何十分の一のクリスマス

12月

昨日イブが終わり、世間ではクリスマスとなっており騒がしく、とても活気のある1年の終盤のイベントである。だが俺にそんな余裕はない、昨日も今日も普通に仕事だ。

ただ、いろはの方はもう大学は休みのようだがな、なんて羨ましい…だが、今日は珍しく…というより初めていろはが弁当を渡して来なかった。

まあ、あいつもこの前就職試験受けたばっかで疲れてるだろうし正直俺なんかに構ってないでしっかり休んで欲しいものだ、と常常思っていたのでわりとちょうどいい。

…やっぱ俺あいつに甘いか?いやこれはあれだ、いつもの労いというかそうあれだ。

 

というわけで昼は何か買って食おう。仕事場から出ようとした時声をかけられた。

 

「おーい、比企谷!」

 

「なんすか?後藤先輩」

 

今話しかけてきたのは今俺がいる部署の上司、後藤 淳也(ごとう じゅんや)さんだ。

かなり気の回る人で、入社した時から結構話しかけてきていたが、俺の誕生日を過ぎた頃から増えた気がする。

そんな人が俺の隣に並んで歩く。

 

「今日はいつもの愛妻弁当じゃないのか?」

 

「愛妻って…別に結婚してませんし、そんなんじゃないっすよ」

 

「でも彼女からのなんだろ?」

 

「…何で先輩が知ってるんすか?」

 

「何でって、お前が前に風邪引いて休むって時に連絡受けたの俺だからな。あれ、彼女だろ?」

 

「…そうっすけど」

 

「いいな、彼女いて、ってか今日クリスマスか、いいのか?」

 

「何がですか?」

 

「何って、クリスマスは彼女と過ごすもんじゃないのか?」

 

「そんな1日中一緒にいる必要はないと思いますけどね、俺は。なんだかんだ毎日会ってますし、お互い部屋も上下違いなだけで会おうと思えばすぐ会えますし」

 

なんて言っている俺だが、朝は毎日弁当を作ってそのついでに朝食まで用意しているいろはが何の連絡もないのには少し不安がある。

 

「ふーん、彼女持ちってそんな感じなんだな」

 

「いや、俺を参考にしないでくださいよ。俺なんて今回が初めて何ですから絶対普通とはズレてますから」

 

今の発言に嘘はない。いろはじゃなかったら確実にここまで長く続いていない自信がある。

というより彼女なんてできなかったと思う。

 

「まあいいや、とりあえずどっか食いに行こうぜ」

 

「いいですよ」

 

会社を出た後、適当に近くの飲食店に入って2人で昼食を取った。

その時にいろはから弁当を作らなかった事の謝罪とお仕事頑張ってくださいというメールが届いた。それに対し、気にするな休みくらいはゆっくり休めと返信しておいた。

 

昼食を摂り終わり、また会社に戻って仕事を再開した。別段特別な事も事件もなく、ゆっくりと作業をしていた。

そして気づくと5時を、過ぎようとしていた。1度3時前に休憩を入れただけで、それからほとんどぶっ通しでやっていたお陰か、もう今日の分の仕事も佳境に入っているほどだった。

やばっ!?めちゃくちゃ仕事出来てるじゃん俺!段々成長していく自分が怖いぜ…

 

なんて思っている間にも時間と仕事は進んでいき、6時頃には、次の日の作業の確認まで終わらせるほどだった。

冗談抜きでここまで出来るようになっていたのは驚いた、今までなら今日の仕事量なら少なくとも7時半は超えていたであろうものだった。

 

そして、そこで俺は帰ることにした。流石はクリスマス、会社を出た途端ちらほらとカップルが目に付く。1つ我慢すれば電車まで少し時間がある…よし、ケーキを買おう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

無事に買い物を終了し、電車に揺られる。

 

(いろはの好きなケーキを忘れたからな…言ったら怒られるな)

 

割と早い時間での電車はラッシュとまではいかなくとも、席は満員の状態だった。

最近この光景も見てなかった事で悲しみに暮れていたのは内緒だ。

 

そんな電車からおさらばして、帰路につく。イルミネーションとかで彩られていた駅前とは違い、アパートの方は明かりも少なく肌寒さが増すような気分があった。

 

寒さに軽く震えながらアパートについて部屋の前まで行く。

ガン、と扉を回してみたが開いていなかった。

いつもならいろはが来る時間を超えているはずだ、と思いながら鞄から鍵を取り出し家に入る。

当然電気も何もついていない、久しぶりに一人暮らしをしているという感覚が戻ってきて少し悲しくなった。

とりあえず着替えを済ませ、買い物したものを冷蔵庫に入れていろはの方の部屋に行くことにした。

 

俺の方の部屋を出て、1階降りていろはの部屋に行った。部屋の前に行って扉を回した、すると、ガチャとスッと扉が開いた。が、中は電気も何もついていない。

 

「…っ!?」

 

この時何か不安な気持ちが頭に広がった。急いで家の中に上がり、電気をつけて居間に入った。たまにいろはの部屋にも行くことがあったが、中は電気がついていないだけで変わりがなかった。

そして、寝室の方に行った。一応ノックをしたが、返事が無く恐る恐る入った。

 

寝室も別に変わったところはない、ただいろはが寝ていただけだった。…鍵かけておけよ…

ベッドの横に座り寝ているいろはの額に触れてみた。案の定熱があった。…余計に鍵かけておけよ…危ねぇな…

 

「ん…せ….ぱぃ…」

 

額に触れた時、息を漏らす音と寝言を漏らしていた。でも起きる気配はない。正直びびった…

ベッドから離れて洗面所に行きタオルを濡らし、いろはの額に乗せた。そして、台所に行きお粥を作ることにした。

 

「…頑張ってるな、俺も…」

 

適当にあと温めるだけで完成という所で止め、いろはの所に戻る。タオルで顔の汗を拭いていた時

 

「ん…あれ?…先輩?」

 

「おう、起きたか?」

 

「はい…どうして?」

 

「家に帰ったらお前がいなかったからな、そんでこっちに来たらお前が寝てて熱出してからな」

 

「そう、だったんですか…ごめんなさい先輩。お弁当作れなかったばかりか、晩御飯まで作れなくて」

 

「気にすんなよ、つか、病人は気にしないで寝てるのが一番だろうが。逆に無理される方が迷惑だ」

 

「むぅ、言い方が酷いです。もうちょっと優しい言い方できないんですかねぇ」

 

「むぅとかあざとい。お粥あるけど、食べれるか?」

 

「え?先輩が作ったんですか?」

 

「他に誰がいるんだよ。待ってろ、持ってきてやる」

 

「何から何までありがとうございます」

 

「気にすんなって、前に俺が風邪引いた時に世話になった時の借りだ」

 

「ふふ、さすが、先輩は捻デレてますね」

 

その言葉をスルーしてお粥の準備をする。

そして、それを終わらせて寝室まで持っていく。

 

「電気付けるぞ」

 

「はい」

 

「ほれ、熱いから気をつけろよ」

 

「あーん」

 

「うるせえ、自分で食え」

 

「えぇ、わたしが看病した時は先輩にたべさせてあげたじゃないですかぁ」

 

「却下、そしてあざとい」

 

「むぅ、いいです。先輩からの手料理を存分に味わうので、ありがとうございます」

 

「拗ねるか、感謝するかどっちかにしろよ。天邪鬼か」

 

フーフー、とゆっくりお粥を美味しそうに食べるいろは、ただのお粥なのにな。俺はそれを眺めながらぼーっとしていた。

 

「ごちそうさまでした、先輩。美味しかったですよ」

 

「お粗末様」

 

「それと…ごめんなさい折角のクリスマスだったのに」

 

「気にすんなっての」

 

「でも…折角の先輩と二人っきりのクリスマスなのに」

 

「いいだろそんなの」

 

「どうせ、これからもクリスマスなんて過ごすじゃねぇか…」ボソッ

 

「ふぇ?…///」

 

「…///」

 

「先輩…それって…///」

 

「うるせぇ、病人は寝てろ///」

 

と言って無理矢理いろはを横にさせて布団を被せた。そして、俺は立ち上がる。

 

「どこ行くんですか?」

 

「…タオル濡らし直しに行くんだよ」

 

そう言って寝室を出た。

 

(…勢いとはいえ、何で俺はあそこで言ってしまったんだー!!!)

 

と心で叫びながらタオルを濡らし直した。

 

最終的に朝までいろはの看病に終わった、これから続く、何十回分の中の一のクリスマスの日




はい、クリスマスは家族と過ごす私が通りました。

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