♀ポケに愛されて 作:愛され隊
✖️月✖️日
負けた。
それは唐突であり災害の後の様にも思えた。目の前で巻き起こる惨状に俺はただ抗う事しか出来ず、それが通り過ぎる事をただ祈る事しか出来なかった。
見直してみたら最近緊張と忙しさにかまけて日記を書くのを忘れていたようだ。この際だし今日1日分に纏めておこう
予選リーグ、緊張したがなんら問題なし。人型のポケモンが出て来たことで会場中を震撼させたが気にしない方針で。対戦方式は3対3だったからリアス、チル、コジョを選出。まあ"秘策"は実際の戦いで使うのは初めてだったが予想以上の効果があって手応え上々。あの時の相手の顔は今思い出しても思わずにやけてしまう。
そんな中、準決勝でアニポケの伝説厨ことタクト、決勝戦でメイと当たったが全く問題外だった。タクトは伝説という肩書きにのみ頼り育成や懐きがまだまだで指示からの行動が遅すぎる。それに伝説の格がうんたらかんたらウザったく舐め腐られた分の怒りもあって気づいたらリアスで全て終わっていた。
メイはタイプバランスが良く、伝説枠のレシラムを出して来たが俺に言わせれば鍛錬が甘すぎる。搦め手が少なくそれに対する対策も薄くリアスは落とされたが後ろに控えたチルで落とした。
結果余裕の優勝。期待の新人、その上人型ポケモンの所有者という事で記者連中に滅茶苦茶迫られたが、大会委員の協力もありなんとか逃亡に成功した。
次に四天王戦、これはかなり苦戦した。あのテレビで見たような砂の腕や拳に乗せて放たれる空掌、過去の俺が聞いたらドン引きしそうな驚愕の宝庫。でも、此方とて負ける気なんてさらさらない。だからこそ俺は"秘策"を使った。その時俺は呼び方に悩んで"秘策"と呼んでいたがカトレアはその事を"権能"と言った。
『権能、それはポケモンの技や技術の境地。その力をフルに使えば通常は出来なかったような強大な効果を付与出来、通常より凄まじい力を持つ』
ゲーム世界ならまさしくチート、ただし使えるのはほんの一握りの才能あるトレーナーとポケモンのコンビとされている。俺達のパーティーは人型軍団で才能溢れるだけあって全ての手持ちが使用出来る。それも相まってギリギリな場面もあったが、なんとか突破する事ができた。そしていざチャンピオン戦。
イッシュリーグチャンピオン"アイリス"。引退したアデクに代わりに襲名した新たなチャンピオン。それでも五体のモンスター達はまだなんとかなった。クリムガン、ガブリアス、フライゴン、カイリュー、そして人型のオノノクス。どの大半が"権能"を操る強者どもだったが、俺のポケモン達も善戦し決着は1対1にも連れ込んだ。しかしそれはある意味間違いだと思い知らされた。
メガシンカ
知識で知っていても、体と思考がその状況に追いつかなかった。イッシュにある筈のないそれを、彼女は見せつけたのだ。そして現れた
俺にはまだチャンピオンは果てしなく遠い事に気付かされた。だから分かった。俺に足りないものが見つかったし伸び代も分かった。確かに俺は負けた、でもだからこそ俺は_________________。
◇
ぼくはククイ、アローラ地方でポケモンの技を研究している者だ。最近は研究も波に乗って来ている。そんなぼくの所にアララギ博士から一通のビデオレターと今年度のイッシュリーグ予選、そして通常は見る事のできない四天王戦の収録された映像ファイルが送られている。どうやって普段非公開の四天王戦を手に入れたのかは分からないが、そこまでするのだから何か意味があるのだろう。そう思いぼくは映像を見始めた。その映像が始まって早々、ぼくは思わず立ち上がってしまった。夜遅くだから助手が起きないか心配すべきだがそんな気遣いは今のぼくから抜け落ちている。
「凄い……凄過ぎる!!」
其処に映り込んだのは衝撃の映像の数々。手持ち一杯6体の人型ポケモン、そして権能と呼ばれるポケモンの新たなる可能性。それをぼくはレポートに纏めた。近い日、きっと答え合わせの時は必ず来る。その時のために………。
*ククイ博士のレポート*
ガブリアスの人型
使用権能名"不明"
見た所、技を磨いたのではなくガブリアスというポケモンの持つ特徴を伸ばした権能らしい。翼を持たないのにも関わらず空を飛び回り、女性の小柄さも相まってカブリアスが砂の中を泳ぐように素早く、その上で攻撃に移動エネルギーを加えて威力を上げていた。あれ程の一撃を俺は見た事がない。一撃の重さとその素早さ、あのポケモンに絡めてなしの真っ向勝負で叶うポケモンは殆ど存在しないだろう。
ミロカロスの人型
使用権能名"クリスタルドレス"
回復技アクアリングを極めた結果の権能のようだ。豪奢な水のドレスを身に纏い、受けていた異常状態を浄化し傷を癒す様だ。その上水のドレスは様々な攻撃のダメージを和らげる様だ。ミロカロスの人型はポケモン時を上回る美しさを有し、ドレスを纏った姿はその世の物とは思えない程美しさだった。恐らくポケモンコンテストもぶっちぎりの優勝を飾れるだろう。
ドレディアの人型
使用権能"不明"
何の権能かは不明。何もなかったフィールドから突然木の蔓で作られたステージを展開する権能のようだ。見た所、舞を踊っている間あらゆるポケモンを一時的なメロメロ状態にする効果があるようだ。その上そのステージに対しての攻撃は伸びて来た蔓が自動防御していた。相手の攻撃を封殺しながら強化技を何度も使って火力や俊敏性を上げ花びらの舞で決める。決まれば一方的なバトルに引き込める恐ろしい権能だ。他の2つの技は出しておらず判らなかった。
コジョンドの人型
使用権能名"不明"
あの動きは武術を極めた者のそれ。攻撃、移動、その全てが無音。その上移動に至っては瞬間移動の様に素早く、これまたポケモンの練度そのものを上げるか、搦め手を効果的に用いらなければ止める事はできない。しかも攻撃に上乗せでダメージを与えている様に見える。これは一度受けて体験出来れば分かるかもしれない。
ムウマージの人型
使用権能名"不明"
残念ながらどの試合でもムウマージの権能は確認できなかった。もしかしたら技威力を上げるものかもしれない。
チルタリスの人型
使用権能名"不明"
声系統の攻撃をあたかも波の様に放つ権能の様だ。ハイパーボイスや歌うなどの攻撃がフィールド全体に伝わっているのが確認出来た。しかも音が眼でしっかりと視認できる辺り威力も桁違いの様だ。