♀ポケに愛されて 作:愛され隊
チルタリス
ハミングポケモン
特性しぜんかいふく
高さ1.1m 重さ20.6kg
チルタリスの美しいハミングを聞けば夢心地。晴れた日綿雲に紛れて大空を優雅に飛び回る。その歌声は美しいソプラノ。
〜ポケモン図鑑より引用〜
Y月α日
遂にポケモンリーグのお膝元、セイガイシティに着いた。サザナミタウンから伸びたマリンチューブ経由でなんら問題もなく行けた。
マリンチューブの中から見る海の景色は最高で、あらかじめ外に出していた皆はミロ以外興味津々でガラス越しの海を眺めていた。ミロだけ興味がないのは当然ミロカロスで海の中は昨日泳いだばかりだから。それにその衣装の問題上、上から人間の衣服(レディとミロ自身のコーディネート)を着ている所為かテンションが低かったのもある。
元々人型のポケモンが着ているものは自前の物だ。毛皮や鱗、もしくはポケモン状態時の肌が人型時の服という形で顕現している。だから人で言うなら服の上に服を着ると言う二重衣服であり違和感が強いだろう。ただミロには悪いがあの
兎も角、そんな感じで何事もなくこの街に着けたわけだ。ただ、俺に何人かが疑いの視線を向けてきていた。恐らく何人かは気づいていただろう。
『人型の姿を持つポケモンを6体も持っている一般トレーナー』
それが今の俺の肩書き。レディ達が普段から対戦の時まで人化して場に出るもんだから、その実態を調べる為という表向けな理由を掲げ奪い取りに来る連中がごく稀に存在する。最も、人型のポケモンが今まで居なかった訳ではない。居るには居る、だがそれを持つトレーナーには手出しができないのだ。
"チャンピオンや四天王の所持ポケモンだから"
地方最強のチャンピオン、そのポケモンを捕まえればそれこそポケモン警察だけでなく地方そのものすら敵に回す羽目になる。だからこそ俺の方にターゲットが向いている印象を受ける。
それでもまあ、そういった機関の連中もぶっ飛ばして証拠と一緒に警察に突き付けておけば其れ相応の処罰がくだる。だからこそ今までなんともなくやって来れている。
それにこれから更に安全な場所へ行く。ポケモンリーグ、祭典会場ともなれば警備も厳重。面倒事は直ぐに検挙される為、面倒に巻き込まれずに済む。
まあ、面倒な事はまた後でいいだろう。まあ取り敢えず、今日も今日とて平和であった。
◇
「どうだチル?気持ちいいか?」
「うぁ〜♬とっても気持ちがいい〜 」
ああ、耳に入るその声が心地よい。透き通る空のように綺麗なソプラノ声が不安や悩みを浄化してくれているような気さえする。
勿論此奴も人型のポケモン。水色の長いアホ毛とロングヘアー、星形の綿飾り。髪と同じ色合いをした膝下丈の縦セーターに首に巻かれた白いふわふわなマフラー。背丈はドレディアより少し大きい印象。
そんな幼子の髪を俺は櫛で梳いてやっている。ロリコンではない、ただこの子の主人として身嗜みを整えてるだけだから。それに今の姿はまだ子供で収まる範囲だから問題ない、それでも同世代に比べて明らか成長は良いんだけども。既に身長も1.7m行ってるし、博士にも最初高校生と間違えられた。
「………はぁ」
「どうしたの奏者?」
「いや、なんでもないよ……」
奏者、いつからこう呼ばれるようになったのだろうか?人型になった頃はまだマスターだったり主人だったり……もしかして、他の奴と被るからオリジナルで考えたのだろうか?
「ほい、これで終わり」
櫛を隣に置いたケースにしまいカバンへと投げ込む。人型のポケモンを相手する様になってから増えた新しい道具だ。どうもアローラ地方という場所の物らしくアララギ博士からの頂き物だ。しかしアローラ、オレンジ諸島の様な島々の集まる地方らしい………いつか行ってみたい。
「へへヘぇ〜!」
「おっと」
それにしてもチルは甘えん坊だ。レディやムウも甘えん坊ではあるが、チルは一段と甘えたがりに思える。いや、そんな事もないのだろうか?2人もよく抱きついてくるし。
「そういえば〜明日から私の出番だよね〜?」
「ん……ああ、そうだな」
チルに言われて明日の事を思い出す。予定としてはセイガイからチャンピオンロード入り口まで、チルの飛行で向かうつもりだ。
ここで少し補足。
『そらをとぶ』という技は飛行タイプの多くが覚える移動技……というのがゲーム世界での印象だ。でも、現実になるとその技はおかしい。鳥ポケモンは空を飛べるのが当たり前でありゲームの様に技として指示しなければいけないなどという事はない。また道を阻む木々を『いあいぎり』でしか切れない事などない。『リーフブレード』でも『アイアンテール』でも、切れる鋭さがあればなんでも良い。『なみのり』や『たきのぼり』、『ロッククライム』も同様だ。
ではこの世界におけるジムバッチが持つ意味、それはポケモンリーグ参加資格であると同時に技の使用制限の解除を意味する。1つ目のジムでは道を阻む木々を常識の範囲内で自由に切り倒す許可、2つ目ならこれまた道を塞ぐ岩をで自由に砕く許可、と言ったようにトレーナーにとってジムバッチとは免許書のような物。秘伝技はこの世界では他の技マシーンと同じ様な扱いでそもそも必須なものではなくなっている。
閑話休題
「私が安全運転で運ぶから〜、奏者は安心しててね♬」
「(この場合安全運転って言うのか?)」
なんだか違和感だが別に気にすることでもないだろう。そもそもポケモンが擬人化している時点で気にする事はない。
「信頼も信用もしてる。明日は頼むぞ」
「頼られましたぁ〜!」
お腹の辺りを嬉しさのあまりのたうち回るチルを可愛がりながらその後に控えているポケモンリーグに意識を向ける。
「(目指すは頂点、その為に"秘策"も用意した)」
何もここまで、ただポケモンのレベルを上げていた訳ではない。この世界独自の事を見つけ色々な試行錯誤を繰り返してきた。そして見つけた、俺なりの答えとそれに見合った力。俺のパーティーだけの特色を生かした物を。それは___________。
今回はチルタリス回でした。イラストの都合上殆どのキャラがロリッぽくなってしまう。まあ、その辺はまた設定集にでも纏めておきます。
竹嶋えくさんのチルットのイラストを参考にしています。
詳しいキャラクターデザインの方はニコニコ静画にどうぞ