♀ポケに愛されて 作:愛され隊
ムウマージ
マジカルポケモン
特性 ふゆう
高さ0.9m 重さ4.4kg
呪文を唱えるポケモン。相手を苦しめるものだけでなく、幸せにするものもある。神出鬼没のポケモン。
〜ポケモン図鑑より引用〜
*月W日
この世界に置いて、なつき度はどうなっているのだろうか?そう疑問に思うのは俺がゲームだった当時のこの世界をシステムとして見ていたからだ。それが愚かなのはこの世界に来てしっかりと理解した。
体温、心音、鳴き声、全てが俺の中にあった世界にヒビを入れた。痛みを感じれば弱々しく鳴き、嬉しい時は弾んだ声で鳴き、怒った時には全身から威圧感を放つ。攻撃もエフェクトと異なり心を揺らすものがあったが、何より卵を握った時は心が大きく揺すられた。生き物が持つ独特な温もり、確かに感じる鼓動。自分の愚かさを見せつけられた様な感覚が走り、俺の中にあった世界は粉々に砕け散った。全てが生まれ変わった様な感覚だった。
閑話休題、なつき度の話に戻ろう。結果から言えば限度などない。寧ろその境地が今の俺のパーティーと言って間違いはない。大半の者はポケモンと友好な関係を築いており、日常を共に過ごしたりバトルをしたり、多くのポケモンはトレーナーに懐く。でもそれを数値化できない、というより出来るはずがない。そんな物視認できたら病気一歩手前かもしれない。現になつき度に詳しい専門家もトレーナーとポケモンの行動を見て、そこから判断しているに過ぎない。
だが、前記のなつきは飽くまでパートナー、引いては友人の様な関係であり、メガシンカは俺の予測だとこれより少し進んだなつき。友人といった感じだろうか?。だが俺が考える真の懐きとは違う。俺の言う懐きは友人より進んだ仲。人間風に言ってしまえば伴侶の様なもの。ポケモンに当てはめるならゲーム時代でいう"嫁ポケ"みたいなものだ。
目が合えば互いに何を考えているか理解し、何を求めているかを察し、労わり支え合える。それが俺の至ったパーティーのメンバー、6体の♀ポケモン。勿論意図してではなく、偶然だ。前世では意図的に揃えた事もあったが、この世界に来てからそう言った事には拘らなくなりゲームの様に無駄に捕まえたり、逃がしたりすることは無くなった。
その結果が擬人化である。最初ははっ!?となった。当然だ、元の雰囲気こそあれど元の身体の形状を留めていないのだから。でも今では驚愕もなくなり言語によるコミュニケーションが取れる様になったお陰でより互いの事を理解できる様になった。
それに表情で感情の起伏を読み取りやすくなったし、コジョのような暗い過去を持っていた子らと会話しその闇を取り除く事が出来た。そのお陰で、今迄は分からなかった事というものも見えてくる時がある。
◇
「ふう…………」
日記帳を閉じて鞄にしまう。場所はテントの中で、場所はヒウンシティ北側のサバナ地帯にある海沿いに設営している。その中に響いていた背後で聞こえる少女の寝息に耳を傾ける。
「スゥ………ごしゅ…じん」
どうやら俺の出てくる夢を見ているらしい。俺のパーティーのポケモンはどいつもこいつも美しい、もしくは愛らしい容姿をしておりそれに釣り合う性格をしている。その中でもムウは子供っぽくて愛おしい。パーティーのみんなからも愛されるアイドル的存在だ。俺はそんな彼女の頭をそっと撫でる。
「ん………」
心地よいのだろうか?気持ち良さげな声を漏らしてまぁ、本当に愛おしい奴め。思わず激しく撫でてしまう。
「んん………ごしゅじん?」
「あっ悪いな、起こしちゃったか?」
ムウは目をグシグシ擦って布団から這い出る。どうやら本格的に起こしてしまったらしい。まだまだ夜も長いというのに……いやムウは元々ムウマージはゴーストだから夜も平気なのか?
「ムウ、せっかくだから少し外に出ないか?」
「えっ?………うん、行こ」
ムウはそばに置いてあった帽子を被り俺の背中に飛びつく。連れて行け、という事だろう。俺はやれやれと思いながらも文句を言わずにテントを出て少しした所にある海岸に座る。ムウも俺の背中から降りて横に座った。月明かりが俺たちを照らし同時にムウの姿を映し出す。
先に行く程薄くなる濃い紫のショートヘアー、赤みがかった瞳。服装はムウマージの姿をモチーフにした裾にフリルのあしらわれたノースリーブワンピースに肘までを隠す長めの手袋。その腰のあたりに赤色のクリスタルが3つ、間隔を開けて付いている。当然帽子はムウマージの時から変わらずそのままな印象。
ムウ、ムウマージの擬人化した姿。幼子の様だが普段は俺のパーティーのオールラウンダーを担う重要なキーパーソンだ。
「懐かしいな………。お前と会ったのも今日みたいな夜だっけ?」
「うん。群れからはぐれたムウをご主人が拾ってくれた。仲間を失ったムウを、ご主人が救ってくれた」
そう懐かしむムウの横顔を見ながらなんとも言えない俺。いや、実は俺そんなつもりはなかったのだ。オールラウンダーを欲していた時に偶然目の前に現れたゴーストタイプのムウマに運命を感じ捕まえただけだ。これと言って救ったという自覚はあまりない。まあ彼女がそれで納得してるし当時のメンバーは彼女、そして俺の為に本当の事は黙ってくれている様だ。それでも、その話を聞いて偶然とはいえ良かったと思っている。
「本当にありがとう。ムウがご主人の事が好き!大大大好き!」
「……そっか」
流石に美少女に言われるとどうもこそばゆい。それに裏表のない純粋な意味だとしても勘違いしそうになる。いけないいけないと思い首をブンブン振って雑念を払う。そして話の方向性を変える。
「寂しくは、ないか?」
「…………少し」
「そうか……」
俺はムウをそっと抱き寄せる。彼女はビクリと体をビクつかせるが直ぐに俺の衣服をその小さな手で握り締めてくる。
「今日は、一緒に寝るか?」
俺は♀ポケの擬人体とは普段一緒に寝ない様にしている。ただでさえ麗しい女性陣に囲まれて眠ったら俺の精神状態が保たないからボールの外で寝泊まりが出来るのは1人だけ……というわけではなく、単に俺のテントは距離を開けて2人で寝るのが限界なのだ。一部からは大きなテントを替えるべきという意見もあるが、これ以上荷物を多くはしたくない。
「うん!!」
無邪気な笑顔。俺はその表情だけで後数日は生きていける、そんな気がしてきた。再びムウを背中に背負ってテントに戻る。その途中でムウは眠ってしまったが、2人で一緒の布団を被り俺も眠りについた。今日はなんだか、いい夢が見られそうな気がする。
後日、俺のパーティー内で俺にロリコン疑惑が掛けられていたという。なんでや!!
はい今回はムウマージでした。ロリッ子可愛いじゃろ?(ニヤニヤ)
タイプバランス的に後何入れるかは考え中。
竹嶋えくさんのイラストを参考にしています。
詳しいキャラクターデザインの方はニコニコ静画にどうぞ