♀ポケに愛されて   作:愛され隊

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カロス地方編
いきなり波乱


 

 

 

 

晴れ渡る青空、今日は晴天。昼からも曇る事なくこの天気は続くらしい。その空で世界は繋がっているのだと思うとなんだか感慨深い。

 

 

 

prrrrrr!prrrrrr!

 

 

 

そして何よりポケモンとトレーナーの笑い声が聞こえてくる。それが何より素晴らしい。とても好ましい光景だ。

 

 

 

prrrrrr!prrrrrr!

 

 

 

心がほっこり暖かくなる。最近は記者の取材で忙しく、こういう普通の事をすっかり忘れてしまっていたのかもしれない。

 

 

 

prrrrrr!prrrrrr!

 

 

 

………嗚呼、この着信音さえ聞こえて来なければ、どれだけ心穏やかな事か。ひっきりなしに震え続けるライブキャスターを見て息を吐き、覚悟を決めて画面に出た承諾をタップ。

 

『…………………マスター』

 

取ってすぐに後悔した。そこに映し出されたのは目のハイライトさんを無い無いさせたレディだった。額から汗が流れる。気候は正常、寧ろ風は少し涼しいくらいだ。

 

 

なら俺の体がおかしくなったのだろうか?いや、頑丈なこの体が壊れる事など早々ない。生まれてこのかた病気に掛かった事がないし怪我もすぐに治る。絶対的自信がある、それが数少ない取り柄だから。

 

 

これは生物としての本能。怖い物や体験をした時に流れる、冷や汗というものだ。

 

『いったいっ、何処にいるんですかぁぁぁぁぁ!!!』

 

ライブキャスターが壊れるのではないか?というレベルの大音量で叫ばれ周囲の視線が此方に向く。ヤメテ!そんな痛い奴みたいな目で見ないでください。

 

「何処って……空港だけど?」

 

『空港!?』

 

俺がいるのは空港、しかもその場所は既にアローラではない。俺は新たな戦いの舞台を求めてアローラを飛び出し、新たな地方に辿り着いたのだ。

 

『なんで私に言ってくれなかったんですか!?』

 

「いや、折角だし1人で初心を思い出して旅しようかと……」

 

『それでも説明くらいして言ってくださいよ!?』

 

「全くその通りだが、それ伝えたらお前ら絶対付いてくるだろ?」

 

『…………なっ、なんの事でしょうかー?』

 

顔を逸らし、誤魔化すような口ぶりのレディ。だが、演技が下手くそ過ぎてバレバレである。まあ、新たに加入したルアやクライのどちらかは連れてきても良かったかも知れない、トレーナーとポケモンの交友も兼ねて。

 

 

だがレディ達6体はダメだ。みんな連れてきたら初心に帰る旅ではなくなってしまう。

 

『そんな事よりまだ言わなきゃいけない事があるんです!!』

 

「はいはい………」

 

今度は何だろうか。これでもチャンピオンとしての責務(雑誌の取材やイベントのゲスト参加)は片付けてきたし、裏でこっそり手持ちの皆をエーテルパラダイスで預かって貰える様に取計らって貰ったし、島キングと島クイーンにも連絡は送っておいた。あと他に言われる事なんて有っただろうか?

 

『マスター、また野生の子手篭めにしましたね!?』

 

「はい?」

 

手篭めにした?いやいやいや、何の事を言っているのかさっぱり分からない。

 

『アマージョとアブソル、それからここに居ませんがユキメノコ』

 

「あれ、それって……」

 

確か、アマージョはジャングルに送り届けたしアブソルは怪我を治したしユキメノコはユキワラシの時に進化石を渡したから覚えている。えっ、もしかしてあれで懐いたの?マジかよ……。何とアニポケチックな展開なんでしょ、とか思ってる場合か!

 

 

ていうか、チャンピオンロードで手助けしてくれたのが恩返し的なアレじゃなかったのか?ちょっと待て、只でさえ8体全員人型なのに其処に更に3体加入かよ!更に悪目立ち確定じゃねぇか!

 

 

てかマジで人化の要因て何だよ。ポケモンの思いが関係してるのは何となく察したが、どんな風に思ったらあんな風になるんだよ。というかマジでどうすんだよ。

 

「ああ……頭痛い」

 

『それだけじゃありませんよ!』

 

「まだ何かあるのか?」

 

正直頭パンクしそうだ。頼むからこれ以上俺の心労が増える様な事がありませんように。

 

 

 

ご主人様(ますたぁー)

 

 

 

「……………………」

 

あまりの驚きで心臓が口から飛び出るかと思いました(本気)。

 

 

 

 

 

 

 

『何であなたが其処にいるんだよ!?今すぐ変われください!!』

 

「おい、完全に口調崩壊してんぞ」

 

流石にあのまま人目の付くところで口論していても拉致があかないと思った俺は空港に設備されたテレビ電話で口論を再開する運びとなった。尚イヤホンをしている為、外に音漏れする事はない。但しレディの叫びの所為で耳は痛い。

 

「うふふっ」

 

それに貴女は何故にそんなニコニコしてるんでしょうか?貴女が問題の一因なんだから笑ってないで何とか言ってください。というかどうやって付いてきたし。

 

「ゴーストタイプですから、影に隠れてヒッソリと」

 

「ワー、ゴーストタイプってスゴイネー」

 

何そのやたらハイスペック。しかも此奴チャンピオンロードの時、空気で編んだ羽織くれなかったか?やだ……この子のスペック、高すぎ……?

 

「勿論です、良妻志望ですから」

 

『りょっ、良妻志望って!!』

 

そしてレディもレディで煽り耐性低いな、おい。こういう奴はからかい半分なんだからそんな噛み付いていかんでも……と言っても無駄か。

 

『もう我慢なりません!私もそっち行きます!!』

 

「いや、お前にこっち来られると色々厄介なんだが……」

 

『マスター!?』

 

だってレディみんなのまとめ役だし、レディが来たら他の奴まで来たがって収集つかなくなるだろ。折角の初心旅がゲームの二周目状態になるのは勘弁だ。

 

『うぅっ、酷いです……』

 

「悪かったって……」

 

すっかり落ち込んでしまったレディ。さてはてどうしたらいいだろうか、そう困っているとユキメノコが画面に映り込む。

 

「レディさん」

 

『………何ですか?』

 

「一時の油断が命になる、それを教えてあげます」

 

そう言ってユキメノコは電話を切った。いや、まだ解決してなかったんだが……。

 

「さて、行きましょうご主人様(ますたぁー)

 

「はぁ………もうどうにでもなーれ」

 

もう暫くは何も考えたくないです。

 

 

 

 

カロス編、スタート


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