♀ポケに愛されて   作:愛され隊

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アローラリーグ『物足りない』

声が枯れる程叫ぶ。目が干からびる程に酷使して、戦いの動き一つ一つを見切る。

 

 

レディが舞い踊ればそれだけですべての視線を独り占めする。権能『華美なる舞台』によって生まれた木の蔓と花々の舞台はリーグ側が展開したフィールドを塗り替え誰も、彼女に触れることはできない。影響の出ない遠距離から攻撃しようともその場所はフィールドのギリギリ端、そこは既に花びらの舞の射程となる。何もさせない封殺の戦いを繰り広げた

 

 

コジョが大地に足をつけている限り、近接で適う者などまずいない。権能『武術姫(ぶじゅつき)』による縮地や受け流しでいかなる攻撃も最低ダメージ量で抑えていき、はっけいやグロウパンチで淡々と布石を打ち、技名のない八極拳でとどめを刺す。袖を伸ばし鞭のように雁字搦めにするなどトリッキーな戦いも繰り広げた。

 

 

ムウは中継ぎ役で抜擢。後出しで出し、権能『タイプ適応』でどんな技もタイプ一致のダメージをたたき出す。それを倒すために悪やゴーストを出したところをコジョやリアスに入れ替えて叩き潰す。居なければならない、大切な仲間。橋渡しを上手くこなし素晴らしい活躍を見せた。

 

 

ミロはその耐久能力で同じ耐久系のポケモンとぶつかった。権能『クリスタルドレス』によって防御能力をあげ、持続回復を付与し、そして敵が疲弊したところを派生技『ミストルテインの槍』でとどめを刺す。試合参加数は少なかった、それでも立派に戦い抜いてくれた。

 

 

リアスはその鋭利な爪で敵の攻撃すら引き裂き、権能『スカイ&グラウンド』で空中にいるポケモンすら近接で殴り掛かる。正面からのガチンコをどんな攻撃も耐え凌ぎ、強力な一撃で敵を吹き飛ばす。ただテンションが上がるとどんな傷だらけでも続行しようとするもんだから困った。

 

 

残念ながら、チルは活躍無し。そもそも戦闘には向いていないのが彼女だから仕方ない。でも、試合後のアフターケアに率先と参加してくれて助かった。

 

 

予選リーグは参加したトレーナー達の中でサバイバルマッチ。出会った者から一対一で勝負を行い、倒した者は相手の札をゲット出来て、16人になるまで行うという物。ここで落ちる様なら、魔境のイッシュリーグ四天王などマトモに相手になれない。

 

 

一回戦、トップコーディネーターの女性トレーナー。はっきり言って手ごたえはなかった。リアスで蹂躙し、ムウで抑え込み、ミロで仕上げるという流れを取った。追い詰められた彼女のせめてのあがきに放ったZ技はミロの守りを破ること適わず、返しの『ミストルテインの槍』で試合を決めた。

 

 

二回戦、ここでちょっと問題発生。対戦相手だが……なんとコジョを捨てた格闘バカだった。曰くスポンサーを得たのだとかで羽振りは良さそうだった。コジョを捨てた癖に運のいい奴だと思った。あまりに自信満々で、勝った気満々の奴を興味本位で理由を尋ねてみた。すると奴はコジョや手持ちの皆の事を愚弄した。聞いた瞬間、俺の中の何かが吹っ切れた。だから、蹂躙した。奴の得意とするフィールドで、得意とする戦法をねじ伏せる。コジョ、大ハッスルで6タテである。疲労や負荷を心配したが、ストレス解消になった様で最高の笑顔を浮かべていた。まあ、良かったのだろう。

 

 

準決勝、名前は忘れたけどガチ勢みたいな奴だった。確かリングマ、ドラピオン、エレキブルとかの強靭なポケモンを扱ってて、精神面ではなく能力面を重要視している奴だった。間違いではない、それはある意味正しい事だと思う。でも、それだけで勝てると思われるのは心外だった。だから、蹂躙した(2回目)。ウチのメンバーは基本速攻アタッカーが多い。鈍重な動きな奴等に速さで負ける訳がない。

 

 

そして決勝、なんと幼馴染のメイでした。うせやろと軽く絶望しかけた。というか自分のトーナメントにしか興味なくて他の所見てなかったし、見てても幼馴染のメイと=になったかはさておきである。目からハイライト消えてる状態のメイが控え室に待機してた時は生命の危機を感じて大急ぎで逃げた。しかしまわりこまれて締め上げられた。物理攻撃マジで反対。

 

まあ何だ。色々あったけど決勝戦。メンバーは大きく変わっていた。レシラムは残っていたが後はこの地方のポケモン、初期ポケモンはアシマリだった様でアシレーヌが出て来た。ぶっちゃけ言うと………あまり強くなかった。まあ、メンバーをこの地方に来て1から育ててるんだから仕方ない。あれ、それに負ける他の奴らは一体………?

 

 

というか今大会で俺が行った交代はポケモンが疲弊したからではなく、負担を分散させる目的を念頭に置いていた物で引っ込めた奴らはまだまだ余裕を持っていた。イッシュリーグの時より余裕になっていた。なんか、不完全燃焼な感じだった。

 

 

今回の大会で、バトルに楽しさがなかった。余裕があり過ぎたんだ、皆が実力を存分に発揮し相手を倒した。それは喜ばしい事なのに、危うさが無いとこうも物足りないのかと思い知らされる。ハラハラしない、ドキドキしない。砂のフィールドでは時に舞い上がった砂塵、水のフィールドでは飛び散る水の飛沫が視界を奪っても、焦ることなどない。俺が慌てる必要などない。何故なら皆、それでも切り抜けられる力がある。

 

「はぁ………」

 

リーグの熱冷め止まぬスタジアムを抜け出し、夜空を見ながら考える。

 

「マスター………」

 

隣でレディが不安そうな顔をする。そんな顔をさせてしまって、申し訳ない。俺は、そのまま表彰の呼び出しがあるまで空を見上げ続けた。

 

 


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