♀ポケに愛されて 作:愛され隊
R月卍日
ククイ博士の所に居候する事一週間が経過し、自分のやるべき事が日常に揉み消され掠れかけている今日この頃。俺は完全にバカンス気分、アローラに染まりつつある。
ククイ博士の研究所を中心拠点として世話になってまだ数日だが居心地が良すぎて全く遠出する気にならない。だって博士ノリ良くて楽しいしイワンコ可愛いし子供達との交流も嬉しい。スクールの生徒達とのバトルも流石にマイメンバーを使うと勝負にならなくなるから借りたポケモンを使って相手したが、子供らしい単純な技の打ち合いが発生し久々に童心に戻る事が出来た。
だがこのままいけない。俺がこの地方に来たのはバカンスの為ではない。ポケモンリーグの初代チャンピオンになる為だ。だから今日は手持ちの皆でペアを作ってバトルして貰った。
レディVSミロ
リアスVSチル
コジョVSムウ
タイプや技の相性で互いに緊張感の持てる相手同士で戦わせ、かいふくのくすりやオレン、オボンなどの回復道具を使って傷を癒しつつ休憩を取って疲労を取り除きながら一日中鍛錬を続けた結果、いくつかの課題が見えてきた。
まず1つは権能に関して。美しさと耐久力を兼ね備えるミロの"クリスタルドレス"に空中すらも支配下に置くリアスの"スカイ&グラウンド"、フィールドを塗り替えるレディの"ナチュルステージ"、あらゆるタイプに適応するムウの"マルチタイプ"、格闘技を強化するコジョの"チョウテン"、音系の技を強化するチルの"ウェーブボイス"。今はそれぞれが1つずつ持っている。
本来あり得ない事象を弛まない努力と切削、それをどの様に成立させるかを考える想像力、そして何より俺と皆の心の繋がりが可能にしていると考えている。
だがそれは飽くまで俺の考察であるに過ぎず、チャンピオンや四天王方も言及していない。そして何よりこの世界の広がりは俺たち人間には想像も出来ない。個体差やトレーナーの手腕によって生み出される途方も無いバリエーション、そして可能性とリスク。それをこれから見定める事になりそうだ。
そしてその上を行く技術の存在、"権能"では収まらない人とポケモンの至れる限界地点……その存在が薄っすらと見えつつある気がしている。
そして2つ目、これが一番重要な事。ポケモンの人型化____俺はこれを人化現象と呼んでいる____についてだ。俺はだいぶ前に懐き云々という考察をしていたが、訂正しておく。
確かに懐きも影響している事は確実だがレディに確認した所、彼女達からすればその事柄に対する優先度は低く他の事柄が優先されるという。じゃあそれはなんだと聞いたら顔を真っ赤にして言い逃れられてしまい聞く事はできなかった。何か俺には言えない様な特別な事情があるのだろうか?今回で振り出しに戻ってしまったが、改めて考える物事が出来て少し楽しみが増えたという事にして置こう。
知的探求は個人的にこの世界での娯楽の一部になりつつある。考察や理論を考えて頭の中で組み立てていきそれが答えに至った時の達成感。パズルのピースがピッタリ嵌った時の快感と言えば理解しやすいだろう。
他にも改良点はある。ミロがクリスタルドレス発動時にその効果に頼りがちな所やリアスのスカイ&グラウンドの軌道に難がある所。まだまだ見えていない改善点も多い分、その辺はしまキング達との戦いで修正していくべきだろう。
◇
その奴等との出会いは俺を本気にさせた。良い意味などでは無い、悪い意味で。
イッシュのプラズマ団はBW2時系列の所為か既に分裂して温厚派と過激派に別れていてその組織自体を悪く言うことはなかった。出逢って、人柄を見て悪事をしていたら正す、それだけだった。グループを壊滅させようとか思った事もない。それに俺は主人公達とは違って厄介ごとに善意で突っ込むつもりはない。プラズマ団は俺の目の前で俺の気に食わない事をしていたからぶっ飛ばした、ただそれだけだ。
だが、スカル団。彼奴らは俺の中の怒りに触れる存在だ。組織の構成員はヤンキーの様な下らないチャランポラン共、しかも組織としての統率がなっておらず個々が各地に散らばって悪事をする始末。ポケモンを虐めるのは勿論、ある場所では街1つを占拠して根城にしているという話も聞いた。
ロケット団やマグマ団やアクア団、ギンガ団、プラズマ団、そしてカロスのフレア団。それぞれトップの理念や思想に共感して団入りして構成員として活動をしていた。見た事があるのはプラズマ団だけだから他の組織がゲーム時代の様な目標を掲げているかは不明だが、少なくともスカル団の様に世の中のはみ出し者が好き勝手に振る舞う様な事はしていない筈。
「いつかは……必ず」
奴らの様な組織を放置してはいけない。俺1人が如何にか出来るかと聞かれても分からない。まだ組織の纏め役を知らないし幹部クラスも見ていない。でも、彼奴らはこの世に残してはならない。
「その為にも……」
誰かが歯止めを掛けなければならない。その為にも俺は頂点に立ちたい。きっとチャンピオンになればそれなりの名声も付いてくる。しまキング達の協力も仰げるかもしれない。
「マスター」
「!?……レディ?」
レディが背後から俺を抱き締めてくる。痛いと思うほどにキツく、苦しい程に。何事だと焦っていると………。
「私達はマスターの事が大切。だから______」
小さな声が、俺の耳を打つ。
「1人で苦しまないで」
俺の大切な仲間の声が内側で響き、全身の力みを解きほぐしていく様な感覚と脱力感を連れてくる。眠気が急に押し寄せてきた所からレディがねむりごなを使っていると気づく。
「〜〜〜♪」
次に聞こえてきたのは美しいソプラノ声の子守唄。きっとチルがうたうを使ってくれているのだろうとアタリがつく。
「全く、ご主人は仕方ないな〜………」
仰向けの俺の腹の上に何処からともなく浮遊してきたムウが乗り掛かる。程よい温もりと柔らかさが更に眠気を強める。3人の気持ちを受け取りつつ、落ちてくる目蓋をそのまま閉じた。柔らかな感覚が眠りにつく直後まで、俺の体を支えてくれていたのを感じながら________
今回は色々と詰め込んで見ましたの回、どうでしたかね?