クロスアンジュ エクストリーマー    作:オービタル

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第34話:決別の皇女達

無事アルゼナルの皆と合流したマサト達。

アルゼナルの旗艦であるアウローラとハデスのインフィニティ、ケルベロス、鬼刃、そして生き残ったローゼンブルム王国の民やアルケミスト学生が乗っている移民艦『ノア』と貴族連合艦隊と共に海底へと進んでいた。

アウローラのブリッジに居るオリビエが提示報告をする。

 

「第一警戒ライン通過」

 

「まさか生きてたとは…」

 

ヒカルが別の部屋で話し合っているマサト達の方を見ながら言い、それにはオリビエも同意しかねる。

 

「アンジュとマサト、てっきりロストしたかと思ってました」

 

「今まで何処に行ってたんだ.....?」

 

「それがシンギュラーの向こう.....だって」

 

パメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。

 

「「うっそ~!?」」

 

そして別の部屋でマサト達がジル達と自分達が行っていた並行世界の事を話していた。

 

「並行宇宙ともう一つの地球.....、ドラゴン、いや....遺伝子改造した人間の世界か....」

 

そうジルは呟きながら煙草を取り出す。

マサトは頷いて言う。

 

「ああ、そして義姉さん達は話し合いができる、腐った豚共とは違ってな」

 

「ええ、手を組むべきじゃないかしら。ドラゴンと.....」

 

アンジュがそう提案して来たのを聞いたヒルダ達は思わず驚く表情をする。

 

「彼女達の目的はアウラの奪還、義姉さん達が上手くアウラを取り戻せば、全てのエネルギーが立たれ、豚共のマナも世界も停止するとう話だ」

 

それにヒルダ達は驚き、マサトの後にアンジュが続けて言う。

 

「そうなればシンギュラーも開けなくなるし、パラメイルも必要なくなる。何よりマナのエネルギーを得るためにノーマがドラゴンを狩る、そんな馬鹿げた戦いを終わらせる事が出来るわ」

 

「だがサラ達の進攻作戦は失敗した、被害は尋常じゃない…互いの目的の為も共同作戦を持つべきだと俺は思っている....」

 

「敵の敵は味方か、成程~....」

 

ジャスミンがマサト達の会話を聞いて納得し、それにロザリーが思わず抗議する。

 

「じょ!冗談だろ!?人間は兎も角!あいつ等は沢山の仲間を殺してきた化け物なんだぞ!! ドラゴンと協力~!?在りあねっつーの!!」

 

「おいおい、ロザリー、それヴィヴィアンの前でそれは言っちゃいけないぞ」

 

マティスがそうロザリーに言う。

そんな中でヴィヴィアンが思わず頬を膨らませてロザリーを睨む。

 

「話して見れば分かるわ、サラ子達と」

 

「無駄だ、奴らは信じるに値しない....アウラなんだか知らないがドラゴン一匹助けただけでリベルタスが終わると思っているのか? 神気取りの支配者ネロスを抹殺し、この世界を壊す.....それ以外にノーマを解放するすべはない」

 

「全く、相変わらずお堅い頭だ.....」

 

「どういう意味だ?」

 

「答えは簡単.......ジル、お前......ビビってるだろ?」

 

「貴様…!この私がビビるとでも!」

 

「俺からはそんな風に見えるぜ....」

 

そう言ってより睨み合いが激しくなる様になるマサトとジル。

 

「辞めるんだ二人共....しかしジル、マサトの言葉の一理あるぞ。現にわたし等の戦力が心持たないのも事実だ」

 

「サリア達が寝返っちまったからね....、おまけにモビルアーマーも」

 

「『プルーマ』の事か?奴等は光学兵器は通用しないぞ........何せ、ナノラミネートで出来た蟻達だからなぁ」

 

「ほぉ、よく知ってるじゃないか......コマンダー・フェニックスよ」

 

ジルの言葉にヒルダ達は驚きを隠せない。

 

「ま、それは置いておいて.....兎に角、ハデスの全艦隊と鬼の民、ドラゴン、貴族連合と共に同盟を結ばなければ、ネロスには勝てないぞ......」

 

アストラの言葉にジャスミンは納得した様子でレオン達に問う。

 

「マサト、アンジュ。ドラゴン達とのコンタクトは取れるかい?」

 

「ああ、俺とアンジュ。レオスのアイオス・フェースとヴィルキスのならシンギュラーを通らずに飛ぶことが出来る」

 

「それは凄いな。ジル、ハデス、貴族連合、鬼の民…そしてドラゴン達との共闘。考えてみる価値はあるんじゃないのかい」

 

ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。

しかしジルは黙ったまま返答せず、それにレオン達は厳しい表情で見ていた。

 

「.....ジル」

 

ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。

 

「....よかろう」

 

そう言ってジルは扉の方に向かう。

 

「情報の精査の後、今後の作戦を通達する。以上だ.....」

 

そう言ってジルは出て行き、それにマサト達は勿論の事、オルトも厳しい表情をしていた。

 

「アレクトラの奴.....何かを企んでいる」

 

「同意だ......父さん兄さんも注意して」

 

「言われなくとも......行動するよ」

 

「それはないね、あー言う物の、アンジュが戻って来た事に嬉しがっているのさ。そこはあたしが保障するよ」

 

ジャスミンがそう言う物の、アストラとオルトは何処かしらと警戒するかの様な表情を崩さなかった。

そしてジャスミンはアンジュの元に行く。

 

「アンジュ、今日はゆっくり休みな」

 

そう言ってアンジュはタスクと顔を合わせるのだった。

 

その時にヒルダがその様子に何やら気に喰わない表情をしたが、幼馴染みであるリクトが気を宥めるのであった。

 

そしてアウローラの食堂、マサト達はインフィニティに戻ろうとしたのだが、オルト達がマティス達に新しい機体造ってやろうと言っていた。

一方ヴィヴィアンはのん気にご飯を食べていた。

 

「はむ!もぐもぐ....美味~い! いや~!流石のモモカ飯!不味かったノーマ飯が懐かし~♪」

 

「よく食べるねヴィヴィアンは...」

 

「さっきま焼き魚を食っていたのに......私もこの能天気差が欲しい...」

 

マティスとセリカは食い意地の強いヴィヴィアンの様子に呆れかえるしかなかった。

するとマギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られてしまう。

 

「本当に....キャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」

 

「そう....らしい!」

 

「大した科学力だね~」

 

マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。

 

「あ!そうだ! 向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」

 

「ばれるから切ったよ」

 

「うわっ!!ひでぇ~!!」

 

ヴィヴィアンの様子に向かいに座っているココとミランダ、そして隣の席に座っている若者三人は苦笑いしながら見ていた。

マサト達がそれに顔を合わせる中、タスクがアウローラのを見渡して懐かしさを感じていた。

 

「アウローラ....まだ動いていたなんて…」

 

「タスク、お前この艦の事を知ってるのか?」

 

「ああ、古の民が作ったリベルタスの旗艦。俺達はこの艦でネロスと戦って来たんだ....ユリウスさんとイリスさんも、アウローラに乗って、古の民を導いていたからなぁ....」

 

「そう....ここに本当の父さんと母さんが.....」

 

タスクの説明にアンジュは勿論の事、マティス達も納得する表情をする。

 

「ベットは少し狭いですが、とても快適ですからご安心を」

 

「そう、良かった」

 

《そっちかい!?》

 

マサト達がツッコミを入れると、ヒルダが、

 

「何も良くねぇよ、戦場からロストして、帰ってきたら大勢の人間を連れて来るわ、しかも!スケベな表情をする変態まで現れやがって!」

 

「そんな!?変態じゃないよ!」

 

「嫌、お前.....現にそうだろう、都に到着するまでの間.....」

 

「そんな~!?」

 

「ごめんヒルダ、悪かったわ」

 

そう言うとヒルダは少しばかり頬を赤くし明後日の方を向く。

マサト達は何やらヒルダの様子を見て頭を傾げる。

 

「どうしたんだよヒルダ?」

 

「別に、全く...お前等が居ない間大変だったからな」

 

「その事だが、俺達が居ない間何があった」

 

マサトがその事を問い、ロザリーが少しばかり暗い表情で言う。

 

「マサト達が居ない間、アタシ等はとても苦戦した事ばかりなんだよ。アルゼナルは壊滅するわ、仲間が大勢殺されるわ、クリス達が敵になるわ…」

 

ロザリーの言った言葉にレオン達はそれに反応する。

 

「何故だ? 何故サリア達がネロスの元に......?」

 

マサトはロザリーに寝返ったサリア達の事を問う。

 

「「こっちが知りてぇよ!容赦なくドカドカ撃って来やがって....! あんなのもう友達でも何でもねぇよ!.....」

 

「もしかして、この艦を護っているのはあなた達だけ?」

 

「ん?そうだけど…」

 

ロザリーはアンジュの問いに頷き、アンジュは意外そうな表情をしていた。

 

「よく無事だったわね?この艦」

 

「喧嘩売ってんのか!てめぇは! こいつ等が頑張ってくれたからな」

 

そうロザリーは指を指して、三人の若い少女たちの方を向かせる。

 

「ノンナ、マリカ、メアリー。戦力不足でライダーに格上げされた新米達さ!」

 

「私達の後輩です!」

 

「先輩の意地が燃えます!」

 

ココとミランダが思わず立ち上がってマサト達に言い、それにはマサト達は苦笑いをしていた。

 

「まあともあれ、このアタシがみっちり扱いたお蔭で何とか一著前に......って、あれ?」

 

するとメアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。

 

「あの!お会いできて光栄です!」

 

「えっ?アタシ???」

 

ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。

 

「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」

 

「ずっと憧れていました!」

 

「大ファンです!」

 

「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」

 

ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。

 

「ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」

 

「ハハハ!、残念だなロザリー、あの娘達は尊敬する人物を分かってらっしゃるなぁ♪」

 

「マティスてめぇーーー!」

 

マティスが言った言葉にロザリーは涙目で悔しがって、マティスに何やら文句を言うのだった。

っとアンジュが何やら考えているタスクの方を見る。

 

「どうしたの?」

 

「いや、アレクトラ....じゃなかった。ジルの様子が気になってね」

 

「やっぱりタスクも気になるか、あいつの事が…」

 

それにタスクは頷くと同時にヒルダがその事を言う。

 

「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ...だっけ」

 

「!?」

 

「皆知ってるよ、司令が全部ぶちまけたからね。自分の正体も.....リベルタスの大義の事も」

 

ヒルダはジルが自ら正体を証し、リベルタスの全て、そして自分達の最大の敵であるネロスや率いているディーラを倒す事を宣言した事を話して、それにマサト達は納得しながら頷く。

 

「なるほどね.....、あの野郎が」

 

「アレクトラが....そんな事を」

 

「意気込みは分かるけど。ガチ過ぎてちょっと引くわ…」

 

「貴方にあの人の何が分かるの~!」

 

別に人物の声が聞こえた事にマサト達はその声がした方を見る。

すると厨房から完全に酔っ払いたエマが出て来る。しかもワインをラッパ飲みしながら。

 

「か!監察官?!」

 

「ぷはっ! えまさんで良いわよ~?エマさんで~♪」

 

《さ!酒臭?!!》

 

マサト達はエマからとんでもない酒の臭さに思わず鼻を閉じる。

その事をモモカが言う。

 

「この艦に乗られてからずっとこうなのですよ」

 

「嘘!?ずっとって.....!?マジ!?」

 

モモカの言った事にマティスは驚きを隠せない。

 

「しょうがないでしょう!殺されかけたのよ!!人間に.....同じ人間に!!」

 

エマはアルゼナルで保護を求めようとしたのに殺されかけたのをマギーが助けてくれて、それ以来エマは酒浸りになってしまっていたのだ。

それを司令であるジルが保護し、エマが信じられる人はジルただ一人だけらしい。

 

「あの人だけよ~!この世界で信じられるのは! そうよね~!ペロリーナ~!!」

 

っとエマはペロリーナのぬいぐるみを抱きながら泣き崩れ、それにマギーが止める。

 

「はいはい、もうその辺にしときな....」

 

マギーはエマを食堂から連れ出して、その様子にマサト達はもの凄く呆れていた。

 

「でも、監察官の言う通りだ」

 

っとロザリーの言葉にマサト達は振り向く。

 

「アタシ等にとっちゃ、信じられるのは司令だけだからな、この世界で…」

 

「……」

 

その事にアンジュは何も言えずにいた。

 

「どうだろうか.....」

 

「?」

 

「だって、ドラゴンの正体を隠していたんだぞ......そんな奴をどう信じればいいのか.....ま、俺達はアンジュやタスクを信じるけど、」

 

マサトの言葉にマティス達は頷く。

 

 

 

 

そして司令室では、ジルは昔の光景が思い出す。

 

 

───そう....可笑しくなっても良いんだよ。アレクトラ.....。

 

 

っと吸っていた煙草を握りしめて潰し、恐ろしい表情をする。

 

「ネロス.....!」

 

そしてその後ジルは思いついた作戦を考え付く。

 

 

 

 

 

マサトはインフィニティの艦内にある自室で待機しており、そこで大門寺邸にあった古文書を見ていた。

 

「大門寺 諒......ユリウスの元となった俺の本当の父さん........どんな人だったんだろう」

 

古文書の次々にページを開くと、ページの何かが凸っていた。

 

「ん?」

 

マサトはナイフでページを切り、紙と紙で挟まれている何かを取り出した。

 

「何だこれ?」

 

中身の正体は、何かのUSB式のメモリアルキーであった。よく見ると、横に小さなスイッチがあり、マサトはそのスイッチを押した。するとメモリアルキーからホログラム映像が映し出された。

 

「.......1100年前の......記憶?」

 

その直後、眩い光がマサトを包み込み、マサトがその場から消えた。

一方、マサトは謎の異空間におり、そこで赤い球体が現れた。

 

「お前は......!?」

 

───私は........イクス......貴方の母よ.......

 

「っ!母さん!?」

 

赤い球体からあの写真に写っていた女性.....イクスが現れた。

 

「久し振りだね.....マサト....」

 

「........」

 

「まぁ、無理もないわ......あの当時のあなたはまだ2才だったから.....」

 

「.......本当の母さん」

 

「何?」

 

「俺の元の体.......『大門寺 真人』って、どんな人だったの?」

 

「そうねぇ.....外形があなたにそっくりで、しかもやんちゃでわんぱくな性格だったわ♪」

 

「.....それじゃ、『大門寺 諒』は?」

 

「ユリウス......違ったわね、諒君はそうねぇ........真面目で、穏やかで、思いやりを持っていたわ........けど、そんな彼にも良きパートナーがいたわね」

 

「パートナー?」

 

「『桐山 次郎』って言う科学者。優秀だったわ......あの人は.....でも.....」

 

「でも?」

 

「.......いいえ、それとマサト......貴方にお願いがあるのです.....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日、マサト達はアンジュとタスクと共にアウローラでジル達と作戦会議を開いていた。

 

「よく眠れたか?」

 

「ええ....」

 

ジルがアンジュに眠った感想を聞き。

アンジュはそう答え、ジルが笑みを浮かばせる。

 

「それは結構.....、ではお前たちに任務を与える。ドラゴンと接触、交渉し....ハデスと貴族連合との共同戦線の構築を要請しろ」

 

それにアンジュとタスクは驚きの表示を隠せず、レオン達は無表情のまま聴き続けた。

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言っているんだ」

 

「.....本気?」

 

「リベルタスに終止符を打つには、ドラゴンとの共闘....それがもっとも合理的で効率的だと判断した....」

 

それには流石のジャスミン達も驚きを隠せずだった。

ジルの話しを聞いたタスクは笑みを浮かばせながらアンジュの方を向く。

 

「アンジュ....!」

 

「うん!」

 

しかしその中でもマサトは黙ったまま聞いて、そう、異空間で会った実母イリスからアレクトラの企みを知ったからである。

 

そしてジルの作戦はこうだ、ラグナメイルとディーラ幹部、そしてディーラ艦隊が居る場所、アケノミハシラにネロスが居ることが判明し、そこにドラゴン達と共にミスルギ皇国に進行すると言う作戦。

ケルベロスとインフィニティ、鬼刃、そしてアウローラはドラゴン達の後方で浮上し、共に向かうという事だ

最もアンジュ達の目的はアウラを開放する目的が一緒な為、これが効率の良い作戦だと感じたアンジュとタスク。

 

「作戦はそれだけ?」

 

「どうした?私の作戦に何か不満か....」

 

「サリア達はどうする?」

 

「どうするだと....?」

 

「あぁ、前に言っていたな......我々は人間達の道具とされていると......」

 

「それが何だ?」

 

するとマサトが怒鳴った。

 

「惚けるな!俺は夜に聞いたからなぁ......母さん.....イリスからなぁ!!」

 

「マサト!?」

 

「......フフ、アハハハ!」

 

突然、アレクトラが笑い出す。

 

「流石、あの二人の子だ!まさか私の野望がイリスにバレていたとは.....その通りだよ!ドラゴンと協力?ふはははははは!! アウローラの本当の浮上ポイントはここだ!」

 

っと机の画面にアウローラだけが浮上ポイントが違う場所であり、それにアンジュとタスクはそれに目を奪われる。

アンジュ達が驚いてる中で、ジルがアンジュに言う。

 

「ハデス達とドラゴン共がラグナメイルとモビルアーマーと交戦している間に、アンジュ...お前はパラメイル隊と共にアケノミハシラに突入....ネロスを抹殺しろ!」

 

「はぁ~!!?」

 

「やっぱりな!!」

 

マサトとアンジュはジルのとんでもない作戦に驚きが隠せず、オルトとマナミア、アストラは少しばかりジルを見る。

ジルの捨て駒作戦には流石のタスクも反対する。

 

「ドラゴンとハデス、貴族連合の皆は捨て駒か!?」

 

「切り札であるヴィルキスを危険にさらす様な真似はできんからな...」

 

アンジュは拳を握り締めながらジルを睨む。

 

「冗談じゃないわ…!こんな最低な作戦!協力出来るわけないでしょ!? それにマサト達やサラ子達を殺させる様な真似!出来ないわ!!」

 

「ならば、協力する気にさせてやろう」

 

っとジルはコンソールを操作して、壁のモニターにある映像を映す。

それは手足ロープで縛られ、口をテープで縛られたモモカとリナの映像だった。

 

「モモカ!?」

 

「リナ?!」

 

「減圧室のハッチを開けば侍女と妹は一瞬で水圧に押しつぶされる」

 

マサトとアンジュとタスクはモモカが捕らえられている映像を見て驚き、ジャスミン達はジルの行動に驚く。

 

「ジル!あんたの仕業かい?!」

 

「聞いてないよ!こんなの!!」

 

ジャスミン達が口論している中でオルトはジルを睨む。

 

「アレクトラ....お前は!!」

 

「アンジュは命令違反の常習犯、予防策をとっておいたのさ」

 

「アレクトラ....!」

 

タスクは以前とは全く違うジルの行動にただ戸惑いを隠せない。

 

「救いたければ作戦を全て受け入れ!行動しろ!」

 

「てめぇ…自分が何をしているか分かっているのか?」

 

マサトはジルを睨みながら問い、それに笑いながらジルは言い続ける。

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。あの侍女はアンジュを動かす為の道具、アンジュはヴィルキスを動かす道具、そしてヴィルキスはネロスを殺す究極の武器! 」

 

ジルはそう言うと、アンジュが銃を取り出してジルに向ける。

 

「ふざけるな!!モモカを解放しなさい!!今すぐ!!!」

 

っと次の瞬間、ジルに銃を奪われて、アンジュはジルに腕を捕まれ引き寄せられて、ジルに盾にされて銃口を頭に付き付けられる。

 

「ジル!!」

 

ジャスミン達はジルの行動に驚き。

それにマサトとタスクは義手のブレードと銃を取り出して構える。

 

「ジル!てめぇ!!」

 

「動くでないマサト!タスク!特にマサト、お前は一番厄介な奴であった。何せ、トリスタン連邦の王家の血筋を持つ王子だからな!そしてタスク、お前はヴィルキスの騎士。お前はヴィルキスを護れば良いのだ!」

 

「アレクトラ....!!」

 

もう完全に昔のジルではないと感じたタスクはジルを睨むしかなかった。

 

アストラとオルト、マナミアは目と目で通じ合い、アストラは小型のリモコンを取り出してボタンを押す。

そしてジルは苦しむアンジュに問う。

 

「さあ、お前の答えを聞こうかアンジュ」

 

「く....くたばれ!」

 

アンジュはジルに向かって唾をかけ、唾を掛けられたジルはアンジュを睨む。

 

「どうやら、痛い目を見ないと分からないようだな....」

 

ジルがアンジュに拳を上げた直後、マサトがジルの拳を掴む。

 

「っ!?」

 

マサトの片方の目が金色に光っており、イノベイターに覚醒していた。そしてマサトは高貴な言葉でジルに言う。

 

「『いい加減にしろ.....愚か者が!』」

 

その時、マサトのもう片方の瞳が十字架のような形へとなり、ジルはその瞳を見た直後、頭の中に甲冑を着た武士達が武装している平民、そして子供を皆殺しにし、断末魔の悲鳴がアレクトラの耳を襲った。

 

「グアアァァァッ!!!??」

 

ジルはアンジュを離して、耳を押さえつける。

 

「『神よ....この者の邪念を浄化したまえ......』」

 

するとジルの目から血が流れてきた。

 

「グッ!!?何だ!?この力は!?.....っ!?」

 

ジルたちの身体が急に動かなくなり、ジャスミン達は徐々に意識が失っていった。

何とか意識を保っているジルは換気口を見て、換気口から何かガスが出ているのに気が付く。

 

「ガスか......!」

 

「あぁ、念のためと思って付けておいて良かった......それと、お前はマサトの存在を侮っている......それだけは覚えておけ......」

 

ジルはアストラの方を向いて、マサト達はアストラとオルト、マナミアから受け取ったガスマスクを着けていた。

タスクはアンジュにガスマスクを渡し、アンジュはそれをすぐに着ける。

 

マサトは意識を取り戻し、今、起こっている現状に驚く。

 

「何だこれ!?」

 

「マサト、とっととサラの所へ向かうぞ!」

 

「え!?...あ、あぁ!......???」

 

マサトは首を傾げながら、格納庫へ向かう。

 

ジルはアンジュを抱え出ようとするタスクを睨む。

 

「タスク!貴様もか.....!!」

 

「アレクトラ、もうあんたは俺の知っているアレクトラじゃない!」

 

「貴様!ヴィルキスの騎士が! リベルタスの邪魔をするのか!!!」

 

その事にタスクは真っ直ぐな目線でジルを見ながら言う。

 

「俺はヴィルキスの騎士じゃない.....アンジュの騎士だ!!」

 

それにアンジュは思わずタスクを見て、マサトは振り向きながら笑みを浮かばせて出て行き。タスクもアンジュを抱えて出て行く。

ジルはふらつきながらも立ち上がり、怒り満ちた顔になって行く。

 

「惚れ付いたか....ガキが!」

 

ジルはそう言うと同時に、ナイフを取り出す。

 

 

 

 

モモカが捕らえられている減圧室、モモカは自分ではどうにも出来ないと分かった所にアンジュが減圧室の扉を開く。

 

「モモカ!!」

 

「(アンジュリーゼ様!)」

 

アンジュがモモカを助け出した同時にマサト達はアストラの作戦に賛同していたヴィヴィアンとナオミと合流した。

しかしヴィヴィアンとナオミの他にココやミランダも居た事に驚いた。

 

「ココ!?ミランダ!?.....どうして二人が!?」

 

「だって....マサトお兄ちゃんが心配で」

 

「私達も裏切ってしまいますが....行きます!」

 

その事にマサトは渋々と考え、そして頷く。

 

「分かった!なら付いて来い!」

 

ココとミランダはそう頷いて、マサト達の後を追いかけるインフィニティへと行く。

そしてインフィニティはアウローラとの連絡通路を外し、浮上して海面へと向かう。

 

格納庫でマサト達はパイロットスーツへと着替え、マサト達はレオス達へと向かう。

 

「海面に出たら、すぐに義姉さん達の世界へと向かう!」

 

マサトはそう言い、レオスへ向かっていると、

 

「また逃亡するのか!アンジュ!」

 

皆が前を見ると、脚にナイフを刺して引きずりながらやって来るジルの姿がいた。

 

「ジル!」

 

「あいつ....自分の足にナイフを刺して眠気を覚ますとはな!」

 

「何て奴だ....!」

 

皆達はジルの行動に信じられない表情をしながら見て、ジルはアンジュを睨む。

 

「逃がさんぞ.....アンジュ! リベルタスを成功するまではな!」

 

ジルは刺しているナイフを抜いて構える。

 

「いい加減にしろ!お前!! アンジュの意思関係なくもて遊ぶのはやめろ!!」

 

「道具に意思など要らん!!」

 

「何だと....!」

 

完全にアンジュをボロ雑巾に使い続けるジルにマサトの怒りがますます上がって行く。

アンジュはジルの完全な復讐心に囚われている事に嫌気が出る。

 

「私の意思を無視して戦いを強要するって.....人間達がノーマにさせている事と一緒じゃない!!」

 

「命令に従え…司令官は私だ!!」

 

「お前はもう司令官じゃない.....ただの愚者だ!!皆.......ジルの相手は.....俺がやる!」

 

マサトは義手のブレードとナイフを構える。

 

「この馬鹿王子が!司令官に刃向かうとは!」

 

「アンタに言われたくないな!!この勝負.....勝ったら好きにしろ!....お前が勝ったらな!!」

 

マサトが叫ぶと、ジルがナイフを構えてマサトに斬りにかかるが、避けて蹴りを放つ。

互いの攻防が続くが、一向に決着が付かない。そして義手同士がぶつかった。

 

「っ!?」

 

マサトの片方の瞳が十字架になろうとしていた。

 

「その手には乗らんぞ!!」

 

ジルが渾身の頭突きをし、マサトがふらつく。

 

「グアッ!」

 

ジルはその隙に、ナイフを持ち、マサトの両目を切った

 

「アアアアアアアアアァァァァァァ!!!!!」

 

斬られた両目から血が噴き出す。

 

《マサト!!!》

 

「さぁ、これで.....「まだだ.....!!」っ!?」

 

マサトは斬られた両目を抑えながら、立ち上がる。

 

「まだ勝負は.......終わってねぇぞぉぉ!!」

 

すると義手が光だし、マナの光が溢れる。

 

「何っ!?」

 

「あれって!?......マナの光!!?」

 

レイヴニウムの義手からマナの光の触手が伸び、斬られた両目を癒し、再生した。

 

「マナの光で再生だと!?」

 

「ハァ......来い!!」

 

マサトはファイティングポーズをとる。

 

「この...化物が!!!」

 

ジルがナイフを振り下ろすと、マサトが義手を身代わりにした。ナイフが義手を突き通し、抜けなくなる。

 

「俺は......お前の道具にはならない!!アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ!!」」

 

「っ!!黙れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

 

鋼の義手で殴りにかかるが、マサトは掴み、頭突きをブチかました。

強烈な一撃で意識が朦朧としかけているジルだが両膝をついて倒れた。マサトは義手に刺さっているナイフを抜き取り、捨てた。

 

「......義姉さんの故郷の皆に危険な真似はさせたくないんでね.......それと、俺等は自分の意思でやる!」

 

だが、ジルは立ち上がろうとするが、

 

「もうやめな!ジル!」

 

突然の声にマサト達は振り向くと、マギーに支えられやって来るジャスミンが居た。

 

「ジャスミン、どうやって此処に?」

 

「あんた等が連絡通路を切り離す前に何とか目が覚めて、切り離す直前に行き此処に来たのさ........解っただろ。アンタのやり方じゃあ.......無理だったんだよ」

 

聞いたジルは歯を噛みしめながら悔しがり、そのまま意識が途切れてしまう。

海面に出たアウローラとインフィニティ、格納庫ハッチとカタパルトが開く。

 

「これからどうするんだい?」

 

「もう決まっている。俺達がリベルタスをやる」

 

「あの人のやり方は間違ってはいたけど、やっぱりノーマの解放は必要だもの…。私達がやるわ、リベルタスを!!!」

 

「ああ、俺達を信じてくれる人たちと……俺達が信じる人たちと一緒にね」

 

タスクがそう言ってジャスミンは笑みを浮かばせる。

ココとミランダはマサトに言う。

 

「あの!私達どうすれば?」

 

「......一緒に来てくれ、お前は、俺のもう一人の妹だからなぁ♪」

 

マサトはそう言うと、ココの頭を撫でる。

 

「.....はい!」

 

マサト達はレオス達を発進させて飛び、タスクは一瞬、ジルを見て発進してアウローラ、ケルベロスから出る。飛び立ったマサトは皆の方を向く。

 

「それじゃ皆!義姉さん達の世界に飛ぶとするか!」

 

「ええ!」

 

《おぉ!》

 

そうマサトの言葉に頷く皆。その時、目の前に突如光が走り、それに気付いたマサト達。

 

無数のビームがマサト達に襲い掛かり、それを回避して前を見る。

 

「ん!?今の!?」

 

その時、蒼く輝くイクスが猛スピードで飛んできて、マサトを横切る。

 

「っ!?」

 

そしてマサト達の前に、スペード、デシルとサリア達のクレオパトラ、レイジア、テオドーラが向かって来た。

 

「ここに居たのね......アンジュ」

 

「マサト......アンタの大事な物を潰してやるわ......」

 

クレオパトラとイクスに乗っているサリアとジョアンヌはアンジュとマサトを見てそう呟くのだった。

 




いやはや、マサトとジョアンヌの幼馴染みの決着......どうなるのであろうか。そしてマサトがさっき、ジルを苦しめたあの力........皆さんも、お分かりだろうか?

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