比企谷八幡の現実   作:きょうポン酢

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神様にだって間違いはある、そして本は良いものだ

 

 

 

 

あー、俺今寝てるわー

 

これめっちゃ寝てるわ、まじで後三時間は寝れるってくらい寝てるわー

 

あ、小町がいる...

 

小町が一人、小町が二人、小町が三人...

 

何これ天国ですか?

 

これは俺だけの天国だ!誰にも渡さんからな!

 

渡さんと言ったら渡さんぞ!!

 

 

\( 'ω')/ウオオオオオアアアーーーッ!!!

 

 

\( 'ω')/小町ィィィは世界一ィィィィ!!!

 

 

......

 

 

「お兄ちゃん!朝だよ、起きて!起きないと遅刻しちゃうよ!!」

 

何かが俺を揺すっている、まだ寝たいんじゃあ

 

世界は五分前に始まっとるんじゃあ、だから起きなくても大丈夫なんじゃあ

 

何この謎理論

 

 

起きるか

 

「ふあぁぁ〜、おはよう小町」

 

「おはようお兄ちゃん!もう朝ごはん出来てるよ!」

 

「小町は誰にも渡さんからな、渡さんと言ったら渡さん」

 

「な、なにバカな事言ってんのお兄ちゃん!寝ぼけてんじゃないの!?」

 

「あれ?なんでだろう?まぁいいか」

 

俺と小町はリビングへ降りる

 

「親父とお袋は?」

 

「もう家出たよ!今日は小町も日直無いからゆっくりしてられるね!」

 

YATTA!

 

小町と登校出来んじゃねぇか!!

 

「おお、じゃあ俺がチャリで送っていってやるからな」

 

「おお!お兄ちゃんにしては珍しく積極的!小町的にポイント高い!」

 

出たな謎のポイント制

 

このポイント貯めたら何が貰えるのだろうか

 

小町が欲しいって言ったらくれるのかな

 

やっべ!お兄ちゃん頑張って貯めちゃうぞ♪

 

俺と小町は朝食を済ませる

 

「お兄ちゃん!自転車の準備出来たよ!レッツラゴー!」

 

「はいはい、小町、カバン忘れてる」

 

「あ、いっけない!お兄ちゃんは気がきくね!良いお婿さんになると思うよ♪」

 

「そいつは光栄だな、ほら遅刻するから行くぞ」

 

「ほーい!」

 

俺は自転車を漕ぎ、小町の通う中学校へ向かう

 

......

 

「ほれ、着いたぞ」

 

「お兄ちゃん、今日もご苦労であります!」

 

小町は敬礼をする

 

何この可愛い警察官、逮捕されたい

 

俺の妹がこんなに可愛いわけがないなんてことは無い

 

俺の妹はこんなに可愛いのだ

 

「じゃあ、俺はもう行くからな」

 

「あ!ちょっと待って!」

 

小町は俺を呼び止める

 

「お兄ちゃん、最近良いことでもあった?」

 

小町は俺へ訪ねる

 

「さぁな」

 

俺は総武高校へ向かうべく、チャリを漕ぎ始めたのだった

 

......

 

 

俺は教室の前へ立つ

 

さぁ、いつもの現実が始まる

 

気持ちを切り替えろ、甘さを無くせ、隙を作るな

 

一瞬の迷いが命取りになると思え

 

今日の俺は小町のおかげで調子が良い

 

おかげでこのストレスフルな教室でも生き延びていくことが出来そうだ

 

やっぱり小町は最高だ、俺は小町無しじゃ生きてはいけないだろうな

 

なんかドキドキしてきたかも...

 

こ、これが恋!?

 

いかんいかん、千葉の兄妹ルートはいかん

 

俺たちは高坂さん家とは違うのだ

 

ガラガラ

 

俺は静かに教室を開ける

 

「ヒッキー!おはよう!」

 

「!?」

 

俺はびっくりする

 

ヒッキーって...もしかして由比ヶ浜か?

 

おい、お前のせいでクラスがシーンとしちゃっただろ

 

この雰囲気をどうしてくれるんだ、みんな真顔で俺のこと見てんじゃねえか

 

まぁ、昔はよくあったから慣れてるけどさ...

 

お前ら見んな、見ても良いこと無いからな

 

ゾンビだから気になっちゃうのん??

 

てかお前らなんかに噛みつかないっつうの

 

でもぼっちを増やせる能力とか欲しいかもしれない

 

みんながぼっちになれば争いも揉め事も起きやしない

 

ほら、やっぱりぼっちは素晴らしい

 

これでまたぼっちの素晴らしさが証明されてしまったようだ

 

ぼっちは平和主義者であり、争いを好まないのだ

 

「......うす」

 

俺が由比ヶ浜に挨拶をするとクラスの奴らは騒ぎ始める

 

てか俺に興味無かったんかい

 

まぁ、知ってたけどさ

 

俺は足早に自分の席へ向かい、いつものように過ごす

 

まあ、今日は新作のラノベを読むんですけどね

 

さて、俺がクラスに居ることで、クラスの様子がどうなったか、情報を集めようか

 

「なに、結衣あいつと知り合いなん?」

 

「うん!同じクラスの比企谷君、ヒッキーって呼んでるの」

 

「結衣それセンス無さすぎ...」

 

「え!そ、そうかな...」

 

「あーしだったらヒキオって呼ぶし」

 

人のこと言えねえからな?ブーメランだから

 

「優美子それめっちゃウケるわー!」

 

「彼はヒキタニ君だよ、みんな変なあだ名はつけない方が良い」

 

イケメン野郎、俺の名前を間違えやがったな

 

確かに字だけを見ればそう読めるけどさ...

 

まぁ、こんなもんだろうな

 

ぼっちは一瞬の話題になることは有れど、奴らはそんな事で長々と話をしたりはしない

 

ぼっちの痛いところとして、情報が不足するということがある

 

どうしても情報を発信しているのは教師である事がほとんどだ

 

つまり情報の発生元が人間なら、情報の媒介も人間どうしで行われる

 

インターネットに校内の情報掲示板でもあれば良いのだが、移動教室などは一々載せる事も無いだろう

 

何故なら、学校のホームページとは保護者や第三者も見るものだからだ

 

彼らからすればそんな情報は余計な情報と言えるだろう

 

学校というものは、生徒が入ってなんぼの商売である

 

だから、近所の住民の評判と言うのは学校にとって非常に重要だ

 

何故なら、評判により入学希望者が増えるから

 

そして、倍率が高くなれば入試のレベルも上がり、必要な偏差値も上がる

 

偏差値が上がれば、質の高い生徒達が入学してくるというわけだ

 

総武高校は進学校なので、そう言った評判というものを重視しているように思える

 

よってぼっちが普通に生活していては、情報が不足してしまうわけだ

 

まあ、SNSとかをやっていれば少しは解消されるんだろうが

 

俺はSNSなどやっていないので、周囲の声に聞き耳を立てる必要がある

 

周囲の声に耳を傾けると色々な情報が入ってくるのが分かるだろうか

 

やれ誰と誰が一緒に帰っただの

 

やれ誰が誰の悪口を言っていただの

 

無論、課題や試験のこと、移動教室などの情報も入ってくるのである

 

人の声というのは、存外響いているというのをご存知だろうか

 

隣で話し合っている距離なら、その周りにいれば聞こえるし

 

カースト上位どものように固まって、1mほどの距離で話していればクラス全体には聞こえてくる程なのだ

 

しかしながら、普通の人間は自分の声の大きさなどを考えて話などしない

 

そう普通の人間なら

 

ぼっちはいつもこのような事を意識しているので声のトーンにはとても敏感だ

 

自分の声が誰かに聞かれてないかを気にしながら声を発することになる

 

さっきのように挨拶されても、なるべくトーンを落として話すのだ

 

由比ヶ浜と同じトーンで挨拶をしてしまえば、クラスの空気に歪みが出る

 

それが空気を読むということであり、人の心理を読み取る事である

 

何故俺が人の心理を読み取れる事が出来るのか

 

それは読書をしているからだ

 

普通の人間ならば、会話やそれに伴う相手の反応により、相手がどのような事を考え、感じているかを学習する

 

しかし

 

ぼっちにそのような事を学習できるような相手はいない

 

ならばどうするか

 

本を読むのだ

 

本を読み、筆者の思考のプロセスを理解し、把握し、トレースしてみるのだ

 

今の時代はよく分からんが、本を書いているのは大部分は人であろう

 

人は何かしらを思考する

 

本を書くには思考する事が出来ないと不可能と言っても良い

 

つまり、本を読むことで会話をする事が無くても人の心理を読み取れる事が出来るのだ

 

なんと素晴らしい事だろうか

 

この世には人と会話をせずとも、人の心理を理解できる手段が存在しているのだ

 

人の心理を理解することは、この世の中を生きていく上で大きな武器となる

 

本はぼっちの味方である

 

やっぱり独りでいるときは読書に限る

 

そうして俺は今日も本を読み、人の心理を把握しているのだ

 

 

キーンコーン、カーンコーン

 

チャイムが鳴ってしまったようだ

 

そうして比企谷八幡の一日は始まる

 

......

 

 

お昼!お昼!

 

今日のお昼はなんだろな!!

 

そう!

 

愛妹弁当〜〜!!

 

ドンドンパフパフ〜

 

俺は今日も気合を入れて小町の弁当を味わう

 

何故なら

 

小町の作った味...つまり小町の味

 

それ即ち

 

小町を味わうのに気を抜くわけにはいかないのである

 

さーて、今日も小町を食べちゃうぞー!

 

 

「あれ!ヒッキーじゃん!」

 

俺の周りには誰もいない

 

この人物は俺に話しかけているのだ

 

そして俺の事をヒッキーと呼ぶのはただ一人

 

由比ヶ浜である

 

「なんでヒッキー、こんなところで食べてるの?」

 

ぼっちにそれを聞くのか

 

察せよ、空気読むの得意そうだろお前

 

一緒に食べる友達がいないし、教室で独りで飯食ってると目立つだろ

 

ぼっちは目立つ事を嫌うんだよ

 

まさにぼっちはダークヒーローである

 

「俺はここが気に入ってんの、周りに誰も居ないし、ここは風通しも良い、最高の場所だ」

 

「ふーん、そっかー」

 

「お前は何してんの?」

 

「あたしは飲み物頼まれちゃって買ってきてるところ!」

 

まだ続いてんのねそのパシリ

 

友達にパシリに行かせるのはおかしいのでは無いだろうか

 

友達いないから分からんけれども

 

少なくとも、そんな関係が友達であるというのなら

 

やっぱり俺は友達なんていらないな

 

ぼっち最高

 

「あ!さいちゃんだ!やっはろー!」

 

やっはろー?

 

なにそのやっほーとハローをくっつけた様な挨拶

 

リア充は何考えてんのか分かんね

 

俺も周りに何を考えてるのか分からないと思われているだろう

 

ふっ、珍しく共通点を見つけてしまったな

 

思わぬところでぼっちとリア充の共通点を見つけたハチマンであった まる

 

「あ!由比ヶ浜さん!やっはろー」

 

何やらテニスラケットを持ったすごい美少女がこちらへやってくる

 

マジかよ、由比ヶ浜の知り合いかよ

 

困っちゃうなー、ぼっちは知り合いの知り合いは天敵なんだよなー

 

そう、

 

俗に言う友達の友達は友達じゃないみたいな

 

友達の友達とは所詮自分にとってなんら親しい関係では無いのだ

 

ぼっちには友達が居ないので友達の友達も居ない

 

それ即ち

 

ぼっちの周りは全員友達ではない、ぼっちには友達は居ない

 

やはりぼっちという概念には隙は無いようだな

 

どの方向からのアプローチでも同じ概念へとなるのだ

 

ぼっちはパーフェクトなのである

 

「あ、君は比企谷君だよね!」

 

「お、おう...どちら様?」

 

「ヒッキー信じらんない!!同じクラスでしょ!!」

 

「あはは...じゃあ初めましてだね、僕は戸塚彩加、テニス部所属です」

 

「うす...比企谷八幡、奉仕部所属...っす」

 

あれ、俺奉仕部に入部したっけ?

 

入部届書いた記憶無いんだけど

 

でも天災が俺に奉仕活動させるとか言ってたから、入部しているんだろうな

 

「比企谷君はテニスがすっごく上手いんだよね!」

 

「やっぱりそうなんだね、ヒッキー!」

 

「お、おう、女子に言われると恥ずかしいって言うか...」

 

「女子!?さいちゃんは男の子だよ!」

 

「!?」

 

「あはは...よく間違えられるんだけどね...男です」

 

マジかよ、神様は与える性別を間違えてしまったのでは無いだろうか

 

それほどまでに戸塚彩加は女子女子していたのだ

 

「じゃあ、僕はテニスの練習に戻るから!またね!」

 

「バイバーイ!」

 

戸塚彩加はテニスコートへと戻っていった

 

なんて練習熱心なのだろうか、他の部員はテニスコートにすら来ていないようだ

 

「じゃあヒッキー、またね!」

 

由比ヶ浜は戻って行く

 

思わぬ邪魔が入ってしまったが、小町の弁当を頂くとしよう

 

 

うまうま

 

かゆうま

 

 

 

やっぱり俺はゾンビだったんや......

 

 

 

......

 

放課後になり、奉仕部へ訪れる

 

ガラッ

 

「こんにちは比企谷君、きちんと部室に来て偉いわね?」

 

「来いって言われたから来ただけだ、どうせ待ってるんだろ」

 

「ええ、比企谷君は物分かりが良くなって来ているわ、早速効果が出てきたようね」

 

本当に効果が出ているのだろうか...

 

俺にはよく分からない

 

だが、こいつがそうだと言えばそうなのだろう

 

こいつは虚言を吐かないからな

 

「でも相変わらず目が腐っているから第一印象は最悪ね」

 

こいつは暴言を吐くことを忘れてたわ

 

ハチマンうっかり

 

「そうかい、整形でもしろってか?」

 

「いいえ、第一印象が最悪な分、中身が良かった時は、相手の評価が大きいと思うわ」

 

なるほどな

 

普段サボり癖のある不良が、学校へ通ってみたり

 

怖そうな不良と話してみたら、結構話しやすい奴だったとか

 

教師たちはそれらの不良を見て、正しくなったと感じるのだろう

 

俺にはそうは思えない

 

一見正しいような気がするだけだ

 

確かに天災の言う通り第一印象が悪くて実は良い奴となれば評価は上がるだろう

 

しかし実際に、不良がやっていることは正しい事でも偉い事でも無い

 

話しやすい奴と感じるのだって、自分と問題なくコミュニケーションを取れているから思うことだ

 

コミュニケーションが取れる人間なんて珍しくもなんとも無い

 

もしこれが逆だったなら、この世界はもっと酷い事になっていたであろう

 

 

学校に通うことだって誰でもやっていることだ

 

誰もがやっていることは偉い事では無い

 

誰とも取り替えられない存在となるためには普通とは違っていなければならないのだ

 

つまり、普通の人がやらないような事や、普通の人には出来ないような事をする人間こそがかけがえのない存在であると言える

 

まぁ、雪ノ下が言うのは俺の中身が良い前提なので

 

俺の中身は目と同様に腐っているので

 

雪ノ下が言っていることは前提がおかしい事になるな

 

第一印象が悪くて、中身が悪い人なんてただの最低な奴やんけ

 

良いところがどこにもねぇ!残念!

 

「ところで今日は依頼は無いのか?」

 

「ええ、今のところはね」

 

ガラッ

 

奉仕部の部室が開く

 

「やっはろー!ゆきのん!ヒッキー!」

 

「ゆきのん...ぶふっ!」

 

「比企谷君、笑わないで貰えるかしら」

 

俺は笑ってしまった

 

感情を表に出すのを耐えられなかったようだな

 

やはりぼっちといえど人間である

 

「由比ヶ浜さん、ノックを」

 

「えー、いいじゃん!私も部員なんだし!」

 

「そうなのか?」

 

「いえ、あなたは部員では無いわ、入部届をもらっていないもの」

 

なにこの悲しい事実確認

 

由比ヶ浜がここまで残念な奴だとは思わなかった

 

「書くよ!?入部届なんていくらでも書くからぁ!」

 

にゅうぶとどけ

 

由比ヶ浜は平仮名で書いてある紙を雪ノ下へ渡す

 

それくらい漢字で書けよ...

 

こいつもしや裏口入学じゃないだろうな

 

それならば納得するのだが

 

「ええ、確かに受け取ったわ、平塚先生には私から話を通しておくから」

 

「あ!ゆきのん!今度ご飯一緒に食べようよ!」

 

おお、雪ノ下にご飯のお誘いが来たぞ

 

「ま、まぁ誘われるというのならやぶさかでは無いわね、私も一人で食べているから歓迎するわ」

 

「ありがとう、ゆきのん!」

 

ダキッ

 

由比ヶ浜は雪ノ下を抱きしめる

 

「由比ヶ浜さん苦しいのだけれど...」

 

何このゆるるり空間

 

オープニングで名前呼ばれちゃうの?

 

\ユッキノーン!/

 

それにしても、やはり雪ノ下は一人で飯を食っていたのか

 

やっぱりぼっちの行動パターンは共通するものがあるな

 

ぼっちの指南書なんかを本に出したら売れるだろうか...

 

売れないか、売れないね

 

 

コンコン

 

何やらノックが鳴る

 

ガラガラ

 

「頼もーー!!」

 

なんか変な奴が来たぞ

 

通報しないと...

 

「ふ、不審者!?」

 

「ヒッキー助けて!」

 

どうやら俺はこの不審者と対峙しなければならないようだ

 

 

「けぷこんけぷこん!見損なったぞ八幡!」

 

 

なぜこいつは俺の名前を知っているのか

 

 

この時の俺には分からなかった

 

 

 

てかこいつただの厨二病じゃね...?

 

 

 

 

 

 


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