サブキャラ転生〜金色は闇で輝く〜   作:Rosen 13

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第7話

 バズーカから放たれた一撃が束が籠っていた部屋の障壁を突き破った。障壁はひしゃげて部屋からは黒煙が上がっているが、誰も油断せず改めてそれぞれの武器を構える。

 張りつめた緊張の中どれだけ時間が経ったのだろうか。しばらく様子見したが、部屋からは何の動きもみられなかった。これ以上の観察は不要と判断した隊長の『Go!』のかけ声で半壊した入口から部屋へと突入したが、襲撃犯達は目の前の光景に言葉を失ってしまう。

 

 

「これは、思った以上に酷いことになってしまったな……」

 

 

 皆が呆然としてる中、頭を抱えた隊長の独り言がぽつりと溢れた。

 彼女達が見たものは砲撃とその爆風によってボロボロと化した部屋だったものだ。

 なんとか部屋の体裁は保っているものの、壁はところどころ崩れ落ち、地面には粉々に砕け散った巨大なモニターらしきものにもはや原型を留めていないバラバラとなった椅子、木っ端微塵になった火花を散らしている何かしらの機械などが散乱している。弾道の直撃ルートだった部屋の奥中央部は完全に瓦礫の山と化していた。

 そんな惨状を目の当たりにした隊長以下襲撃犯のメンバー全員(特にバズーカをぶっ放したベリル)は冷や汗が止まらなかった。上からの命令は篠ノ之束の拘束。しかも彼女の知識と技術を利用する目的のため五体満足の状態で連れてこなくてはならなかった。しかし目の前にあるのはバズーカによって地獄絵図と化した部屋。彼女達の誤算は障壁の耐久性が彼女達の予想より低かったことだ。その影響で砲撃は障壁を吹き飛ばすだけでなく、部屋にまで甚大なダメージを与えてしまっていた。もし部屋に人間がいたならば爆風によって物言わぬ肉塊になるのは簡単に推測できる。たとえ“天災”篠ノ之束だとしても無事で済むとは到底思えなかった。

 

 

「もしかして、私やらかしましたか……?」

 

 

 ベリルの声が震えている。

 

 

「「「……うん!!」」」

 

 

 そしてオニキスとトリフェーンはオリジナル笑顔を浮かべながら軽く半泣き状態のベリルを取り囲んで更に追い討つ。

 

 

「てめぇふざけんな。障壁どころか部屋までぶっ飛ばしてどーすんだ! もし篠ノ之博士も木っ端微塵になってたらハラキリってレベルじゃねぇぞ!(ガシガシ」

 

「ベリルのせいでクビになってご飯食べられなくなったら、一生どころか来世まで恨む。えいえい(ゲシゲシ」

 

「ちょっ、痛っ!殴らないで蹴らないで暴力反対〜!ってトリフェーン、メガネは踏まないで!メガネだけは!……嗚呼ぁフレームが、フレームがァァァァ!! 」

 

 

 その後しばらくオニキスとトリフェーンによってベリルは袋叩きに遭ったが、隊長の仲裁によってなんとか救出された。隊長がしばらく放置したのはベリルの失態に何かしら思うところがあったからだろう。

 

 

「……やってしまったことは仕方ない。とりあえずこの辺を捜索しよう。せめて何かしらの手がかりは見つけなければならん」

 

「ああ、博士が怪我してるのなら探すなら早いうちがいいな」

 

「私もそれに賛成。 時間をかけるのは色々問題が出てくる」

 

 

 コホンッと咳払いしてさっきまでの茶番劇をなかったことにしようとする隊長とその流れに乗って急に真面目になるオニキスとトリフェーン。ベリルはフレームが曲がったメガネを胸に抱えながらまだ泣いていたが無視した。

 

 

「とにかく目下の目標は篠ノ之博士の捜索だ。もし博士が見つからなかったとしても、部屋の様子からしてここには篠ノ之束の研究成果があったと考えられる。最低でも何かしらのデータは持ち帰るぞ」

 

 

 もし篠ノ之束が死亡してしまっていたとしても束の研究データさえ手に入れれば自分達の首はつながる可能性がある。運が良ければ博士の発見、悪くても博士の死体とデータを持ち帰るという隊長の指示に従ってメンバーはそれぞれISで瓦礫を取り除く作業を始めるのだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 

 

 

 隠れ家から爆発音が聞こえて数分が経過した頃、私たちはようやく隠れ家の入口にたどり着くことができた。

 

「これはひどいわね。 入口どころか隠れ家自体滅茶苦茶じゃない……」

 

 扉は鈍器のようなもので破壊され、壁は無数の銃弾が撃ち込まれていた隠れ家の惨状に息を呑む。入口の向こうから何か焦げた臭いが漂ってきた。先程の爆発音も含めてどうやら状況はかなり緊迫しているらしい。時間はあまり残されていないようだ。

 

 

「どうする?ここは手分けしてドクターを探すか?」

 

「悪いけどオータムの意見には賛成できないわね。 私達はここの構造も敵の数も把握してない。下手に戦力を分散させたら敵の数次第で逆に私達が撃破されてしまうわ」

 

 

 オータムの意見はスコールによって却下されてしまった。オータムの戦力分散は篠ノ之博士の捜索に関しては悪くない考えだが、スコールの言う通り敵の戦力が不明かつこちらが少人数である状況では逆効果だ。いくらオータムとスコールが百戦錬磨の猛者だとしても一対多に持ち込まれれば戦況がどう転ぶか分からない。ましてや三人しかいない中で一人でも脱落したら救出活動を行うのは困難を極める。 そう考えるとスコールの主張は正しい。だけど私の意見は違った。

 

 

「スコールの指摘も尤もだけど、私はオータムの意見に賛成かな。 狭い空間だとISが密集したらかえって逆効果だと思うよ」

 

「それもそうね。 だけどティナはまだ経験が浅いからオータムと一緒に行きなさい。 私は別のルートで探ってみるわ。 もし篠ノ之博士を見つける前に敵とかち合ったらすぐに連絡するのよ」

 

 

 そう言ってスコール、私とオータムの二手に分かれて私達は銃痕がある通路へと向かった。

 私のゲイレールより重装甲のゲイレール・シャルフリヒターを纏ったオータムを先頭に通路を駆け抜ける。

 

 

「オイオイ、随分とヒデェ有り様じゃねぇか……」

 

 

 先頭を駆けるオータムが驚きながらボソッと呟いた。通路は至る所に銃痕や鈍器のようなもので破壊された障壁の残骸が転がっていて、ここで激しい戦闘が行われたのが一目瞭然だった。特に障壁があったらしき場所にはまるで鈍器で殴られたような凹みがたくさん見られた。警戒しつつさらに先へ進むと、やがて奥からひしゃげた扉と部屋らしきものが見えてきた。ハイパーセンサーを介して奥の部屋の様子を見てみると、

 

 

「オータム」

 

「ああ、地面がさっきまでのと比にならねぇくらいボコボコになってやがる。 多分相当な死闘になったんだろうな。 こっからは気ぃ引き締めて行くぞ! 」

 

「言われなくても! 」

 

 

 ここから先は一切の油断や気の緩みは命取りになりそうだ。部屋までの距離が二十メートルを切ったと同時に右手にドラムマガジン式ライフルを展開させる。いつでも撃てるようライフルを構えながら部屋の数メートル手前で動きを止め、中の様子を伺う。部屋は天井が高いドーム状となっていて、壁には無数の銃痕が確認できた。人の気配は感じず、ジリジリと部屋へ近づきオータムと目で合図するとライフルの引金に指を掛けながら一気に中へ突入した––––––その時だった。

 

 

 ガシャンッガシャンッガシャンッッッッ

 

 

 私達がドーム状の部屋に入った瞬間、さっき入ってきたところとその反対側にあった出入口の扉がひとりでに閉まってしまった。

 

 

「な、なんだァ!? 」

 

「扉が、閉められた。 なんで、扉は壊されていたはず……」

 

 

 いや違う。閉じられた扉はひしゃげたものでなく真新しいものだった。つまり破壊されてた扉とはまた別物……

 

 

「畜生、トラップか! 」

 

「嘆くのは後よ。 何か、嫌な予感がするわ」

 

 

 頭の中で自身の危機を知らせるアラームが鳴り響いた。身体はゾクゾクと何かを感じ取り、背中から冷や汗が流れ落ちるのが分かる。

 これは自慢ではないが、こういう時の勘はよく当たるのだ。そして今回のはかなりやばい。

 

 

 ガシャッガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャガシャンッッッ

 

 

 不安は的中した。先程とは比にならないほど金属音が密室のドームに響き渡り、そして

 

 

 ––––天井から無数の機銃が私達の前に姿を現した。

 

 

「おいおいマジかよ……随分と過剰防衛すぎじゃねぇの?」

 

「流石は篠ノ之束と言ったところかしら、って軽口も叩けなさそうね」

 

 

 思わず乾いた笑い声が出そうになるがなんとか堪える。数えるのも億劫になりそうなほどの機銃を前に私達は身動きひとつとることができず、まさに蛇に睨まれた蛙といった状態となっていた。互いにライフルこそ構えているが、あれ(無数の機銃)を防ぐことができそうな盾など持ち合わせていなかった。まさか助けにきた側が侵入者用の凶悪な罠に引っかかるなんてとんだお笑い草だわ。まあとりあえず、

 

 

「まずは生き残ることが最優先事項ね」

 

 

 その瞬間、まるで雷鳴のような轟音を鳴らしながら機銃の火が吹き、雨霰の如く弾丸が私達に降り注いだ。




ティナ・ハミルトン&オータムVS篠ノ之束謹製防衛システム『三千世界』

開始

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