サブキャラ転生〜金色は闇で輝く〜   作:Rosen 13

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今回からティナ視点に戻ります


第22話

 気まぐれに織斑一夏が入院している病院を訪れたら篠ノ之博士に見つかって織斑一夏に自己紹介することになりました。

 

 いやなんでこうなった。

 

 ここにきたのは本当に偶然で、たまたま近くを通りかかったからなんとなく寄っていこうかなって思っただけなんだよなあ。織斑一夏が目覚めたことも知らなかったし、まさか篠ノ之博士までいるとは思わなかった。

 結局見つかってしまったので、無駄な抵抗をせずに流れに身を任せたままこうやって会談しているわけだ。

 

 

「いやあ、いい本当にタイミングで来てくれたよ、なーちゃんは」

 

「いいタイミング?」

 

 

 なんだろう。すごい嫌な予感がする。

 

 

「実はさっきまでいっくんの今後について話していたんだけど、いっくんのこと引き取って──「あ~急用思い出したので帰りますね」はいそこ逃げないの~」

 

 

 くっ、逃走失敗した。ワンチャン可能性あると思っていたけど、やっぱり天災から逃げることはできなかった。私の方が出口に近かったはずなのに、気づけば博士は私の背後に回り込んでいた。

 

 

「なーちゃんは本当に勘がいいんだから。束さんかちーちゃんじゃなければ確実に逃げられていたね。大丈夫大丈夫、そんな無理強いするようなことは頼まないからって」

 

「わ、わかりましたから……逃げようとしたことは謝りますし、話も聞きますから首から手を放してくれません?」

 

「あっ、ごめんごめん」

 

 

 ふう、やっと解放された。いや嫌な予感があったといえ、いきなり逃げようとした私に非があるから文句はいわないけどさ。

 しかし改めてこの人が人類から逸脱した存在であると再認識したわ。まさか数メートル離れていた私との距離を一瞬で詰めて私の襟首を掴むなんて人間離れした芸当をされるとは思わなかった。

 

 

「さて本題に移ろうか。突然だけどなーちゃん、いっくんと家族になる気はないかな?」

 

「「はあっ!?」」

 

 

 突拍子のない提案に思わず素っ頓狂な声が織斑一夏とハモってしまった。

 おいおいおい本当に突然過ぎるわ。説明するにしても色々すっ飛ばしてる気がする。

 

 

「ん? どったの、二人とも。鳩がコジマキャノンを食らったような顔をして」

 

「コジマは、不味い……じゃなくてコジマキャノン食らったら鳩死にません? せめてアクアビットマンに出くわした程度にしとかないと」

 

「いやいやあれはEN無制限状態だと洒落にならないから」

 

「じゃあ雷電くらい?」

 

「うーん、なんか微妙じゃね? だったらホワイト───」

 

「あの、お二人ともそろそろツッコんでもいいですか!?」

 

 

 無駄に盛り上がっていたが織斑一夏の声でハッと我に返った。

 

 

「「はっ!? 何の話してたっけ?」」

 

「おいコラ」

 

 

 そろそろ織斑一夏がキレそうだったので真面目に戻るとしよう。まさか博士とは意外なところで話が合うとはね。

 博士も真面目モードに入ったみたいだし、ここからが本番かな。

 

「コホン、話を戻そうか。いきなり家族って言ったのは説明不足だったね。じゃあ、まずなーちゃんにはいっくんの現状を説明しよう」

 

 

 ……なるほど。博士から織斑一夏の状況を説明されたわけだが、これは原作以上に悲惨な状態だ。原作以上に女尊男卑思想と織斑千冬との比較の影響が大きい。正直原作の織斑一夏もよくグレなかったと思っていたけど、それは周囲に恵まれていたということか。実際この世界の織斑一夏は周囲から迫害を受けていた。

 そして特に私が気になったのは織斑一夏の兄の存在。織斑一夏の兄なんて原作ではいなかったはずだが、この世界では間違いなく存在する。たまたまなのか、それとも私のようなイレギュラーかは分からない。それでもその兄の存在が周囲の織斑一夏への迫害を更に煽った。

 ただ優秀なだけだったら二人とも周囲から煽られた被害者だったかもしれない。しかし博士の話を聞く限り、どうやらこの兄という人物はかなり厄介な存在だそうだ。

 彼はいわゆる天才というもので、織斑千冬には及ばないが周囲からは神童と称されていたらしい。だが彼の人格は最悪らしく、自身を持て囃す周囲を利用して以前から嫌っていた織斑一夏を陥れるよう画策していたようだ。

 また性格も傲慢で、自分は己の才能に驕り努力をしようとしないのに人並み以上に努力する織斑一夏を無能と罵って周囲の笑い者にしたのだという。

 

 

「なんというか、まさに人間の屑を表現したような輩ですね。しかし意外です。話を聞く限り、織斑千冬が嫌いそうな人物のように感じましたが……」

 

「あいつは外面を繕うのが異常に上手いからな。あいつの本性を知ってる奴なんて俺とかほんの一握りだろうさ。大抵の奴は外面に騙されて、あいつが真っ当な人間に思っている。千冬姉もその一人さ」

 

「ちーちゃんは人を見る目はあるって思ってたんだけどね。ちなみに束さんは一目見たときから気づいてたよ。だからあれの名前も覚えてないし、覚える気もないね。温厚な束さんにここまで嫌われるのはあれぐらいじゃないかな」

 

 

 織斑一夏が苦い表情で口を開くと、博士もそれに同意した。

 

 

「大体ちーちゃんの弟だから大人しくしてたのに、あの野郎、束さんの可愛い可愛い箒ちゃんに近づいてきやがって! 下心丸見えなんだよバーカ!」

 

「束さん落ち着いて! 箒は兄貴に関心なんてないから。むしろ認識してないかうるさい羽虫程度にしか思われていないから」

 

 

 なんかヒートアップしてきたなあ。というか織斑兄のアプローチ無意味だったんか。ざまぁ。

 織斑一夏に宥められて妹ラブの博士はようやくクールダウン。あのままギャーギャー騒がれたらあとで私が病院側から怒られるところだったのでホッとした。

 というか、話脱線し過ぎじゃね? 

 

「で、織斑一夏をウチで引き取るって話はどういうことです? 大体私に言われたところで私の独断で許可できる話じゃないんですが」

 

「あっ、それは大丈夫。もうエドからOKもらってるし」

 

 

 えぇ……(困惑)

 

 

「えっとハミルトンさん、なんか束さんがすいません」

 

「いや君は被害者だから謝ることないって。あと私のことはティナでいいよ。私も一夏って呼ぶから」

 

 

 というか何でパパ許可したのさ……

 

 

「あれ? なーちゃんはもしかして反対だった?」

 

「反対というか。いや別に一夏を引き取りたくないってわけじゃないんですよ。ただ、ウチはちょっと、いやかなり特殊なんで何も知らないカタギの子供を巻き込むような真似はしたくないんです」

 

 

 ハミルトンファミリーは他の組織と比べればかなり真っ当な所だけど、それでもいちマフィアということもあって血生臭い生業と無縁というわけじゃない。実際にIS部門でも人を殺めているし、他の部門も少なからず後ろめたいこともやってる所もある。

 そんな場所に少し前まで普通の生活を送っていた子供を引き取るのは褒められることではないと思う。仮に一般人として引き取るにしてもマフィアの抗争に巻き込まれる可能性がないわけではないのだ。

 それに日本で暮らしていた一夏はハミルトンファミリーの存在を知らないはずだ。

 このままなあなあで、引き取り先がマフィアだと知らないまま引き取られたら“騙して悪いが”ということになってしまう。

 一夏もウチが引き取るということは初耳だったような様子だったので、改めて一夏に引き取る先がハミルトンファミリーというマフィアであるということ、私も幹部であるということを話したんだけど────

 

 

「えっ、ハミルトンファミリー? なんだ、ユリアーナさんのところじゃん。俺、あそこと結構関わってたし、マフィアだっていわれても今更なんだよな」

 

 

 えぇ……(困惑その二)

 

 

 

 

 

 

 

 というか、ユリアーナって私のママじゃねえか!!




というわけで最後の最後に名前だけですがティナの母親登場。

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