僕と私の未来の覚醒。   作:密告です。

5 / 6
投稿遅れて申し訳ございませんんん!
今回は鬱要素、そして若干の戦闘シーンがあります。苦手な方はご注意下さい。
今回でストックがなくなったので格段に投稿ペースが落ちます...一ヶ月に1話がいい所かな(笑)
気ままに長く待っていてくれるとありがたいです。


人間の闇。

 

 

人間の闇。

 

ラミアが自分の学校に来て早3日。彼女の評判は男女共に最高だった。それもそうだろう、見た目が良いのもあるが性格はもっと良かったのだ。外見はフランス人形のような整った顔でどこか近寄り難い顔立ちだが、彼女はクラスメイト達に積極的に話し掛けて行く。そんな性格が女子には受けが良かったのだ。男子は見た目と性格、それに元『聖薔薇女子学園』の生徒だったことも人気の一つにある。これを聞けば男がどんなに単純かよくわかるだろう。そんな彼女も一番よく話し掛けているのがこの僕だ。どうでもいいことから、言ってはいけないことまで色々僕に話し掛けてくる。しかも人が多い時に限ってだ。まるでここに僕がいる事を皆に知らしめているかのようだ。僕としてはあまり嬉しくないが、彼女がどんなに話しかけても皆は僕を無視するのだ。何か僕の周りに見えないバリアが張ってあるみたいだ。今日もまたラミアは僕に話し掛けてくる。

「おはよ!隼人。昨日の宿題ちゃんとやってる?私5分で終わらせちゃった!今年の行事って何があったっけ?凄く楽しみなんだ~」

とまあ、こんな感じだ。僕は適当に相づちを打っていたが、ラミアは怒った顔をして僕に近付いて来た。しまった!と思い、咄嗟に逃げようとしたが彼女は僕が立ち上がるよりも早く僕の腕を掴んだ。

「ちょっと!!どこ行くのよ!また蓮の所に行くんじゃないでしょうね?隼人ってずっと蓮といるからホモみたいよ。私も隼人の友達なんだから一緒に喋ってよ!」

彼女は僕が蓮の所に行くのをいつも嫌そうにする。何故か聞いてみたがその度に話題を変えられる。多分蓮の性格が嫌いなのかな?おっと、一応言っておくが僕は至ってノーマルだ。これだけは間違えるなよ。

「悪かったよ。でも蓮の所じゃないよ。次の授業体育だろ?着替えなくちゃいけないからさ」

ラミアは思い出したようで、急いで謝ってきたが僕は気にしなくていいと返した。だけど、ラミアはまだしょんぼりしている。今日は彼女の初めての体育だから喜ぶと思っていたのにおかしいなと思いつつ更衣室に行く。最後にチラリとラミアを見たが、彼女は僕と目を合わさず自分の手首を気にしていた。更衣室に入ると先に来ていた男子数名がラミアの事を話していた。

「なあ、ラミアちゃんってさ、すげー美人だよな」「ああ。肌もツルツルで色白だし、性格も明るいし、何よりあのスタイル!まさしくボン・キュッ・ボンじゃねぇか!!」「そんなラミアちゃんの体操服姿...涎もんだぜ」

その二人はまだ話していたが、僕は聞くのを辞めた。これ以上聞けばイライラしそうだからだ。僕が着替えていると、後ろから蓮の声がした。あの日から僕は蓮と喋っていない。何度か仲直りしようとしたが恥ずかしさと、プライドから中々出来ずにいた。

「よっ!お前さっさと着替えろよ?もう始まんぞ」

軽い調子で蓮が僕に話し掛けてくれたお陰で心の中にあった何か重たいものが無くなった。

「分かってるよ。蓮が先に行くからじゃん」

蓮はニヤッと笑って僕の背中をバシバシ叩いた。

「悪かったよ!それにしても、お前って本当に分かりやすいな!」「何がだよ?」

蓮は僕の顔を除きこみ、僕の頬をつねった。

「お前、ラミアのこと好きだろ?」

聞いた瞬間僕の顔が真っ赤になってしまった。蓮はそれを見て爆笑した。

「ぶはははは!!ほんっとに分かり易い!!で?ラミアのどこがいいんだよ?」

僕は思わず蓮を睨んだ。

「す、好きじゃないよ。大体、この前までラミアのことを嫌っていたのになんだよ?蓮はどうして彼女のことが嫌いなの?」

それを聞いた蓮は少し困ったような顔をした。

「それは、教えられねぇんだ。すまないな...いつか時が来れば分かるよ。お前も、彼女もな...」

訳の分からないことを言って、蓮は更衣室を出て行った。

 

 

 

体育の時間になり、皆グランドに集まった。だけど、僕は直ぐに異変に気付いた。女子のラミアに対する態度がおかしいのだ。いつもならラミアの周りは女子でいっぱいなのに、今は皆がラミアを避けているみたいだ。ラミア自身、少し俯いて元気が無さそうだった。僕が不審に思っていると、女子が大きな声で言った。

「ねぇ~!びっくりよね~!どうしてラミアちゃん教えてくれなかったの~?皆知ってた~?」

この声にクラスの皆が集まって行く。僕もついて行く。女子が数名クスクスと笑い、その他はラミアを睨んでいる。

「おい。一体どうしたんだよ?」男子が聞くと、女子の一人がニヤニヤしながら言った。僕は瞬間的にこれ以上は聴きたくないと思ったが、手遅れだった。

 

「あのね~!ラミアちゃんって~実は、魔族なんだって~キャハハハ!」女は言った途端ラミアのお腹を殴った。「本当、な~んで教えてくれなかったの~?私達友達でしょ~?まあ、今はもう違うけどね~!」

そう言って女子数名が彼女を殴りつける。それを見た僕は止めようとするが、何故か体が動かなかった。いくら動かそうとしても、脳が言うことをきかなかった。男達を見ると皆ショックを受けたようだが、誰も止めようとしなかった。数人はラミアの事を軽蔑した目で見下している。ラミアは只ひたすら殴られ続けた。ようやく体育の先生が来た所で皆辞めた。しかし、先生は彼女が殴られているのを見ても見て見ぬ振りだった。皆の行動に僕は激しい憤りを感じていた。いや、もしかしたら絶望していたのかも。今日のこの数十分で、人間の闇を見た気がする。その後の体育は彼女を気にしすぎて僕は集中出来なかった。僕が必死にラミアと目を合わせようとするが、彼女は僕を避けているようだった。

 

 

体育の授業も終わり、更衣室に戻るとまたもや男子が興奮したように話していた。

「マジでびっくりだよな!ラミアが魔族だったなんてさ」「いや、俺は言われても納得できるよ。なんかそんな感じしてたもんな」「まあ、魔族なんて生きてる価値もないゴミだからな。何しても怒られないし、今度ラミア使って色々ストレス発散しようぜ!」

先程までの態度とはガラリと変わっている男達に俺は怒りをぶつけることも無く無言で着替えた。更衣室を出るとそこに蓮がいた。僕は蓮と目を合わせたが、何も言葉が出てこなかった。そんな僕を見た蓮は呆れたように言った。

「なにシケたツラしてるんだよ。お前がそんな顔してたら彼女、もっと元気なくすだろ?」

僕は俯いて拳をギュッと握った

「だって、皆おかしいじゃないか。どうして魔族ってだけであんなに性格が変われるんだ!?同じ生き物なのになんであんなにも残酷になれるんだ!?」

また蓮を怒鳴ってしまったことに気付き、急いで謝った。

「ごめん。お前のせいじゃないのに。八つ当たりしt!」話の途中で蓮にデコピンされ、あまりの痛さによろめいた。

「バーカ。別に謝ることねえだろ?俺だって魔族と人間の差別とか意味わかんねえし嫌いだよ。だから気にすんなって!」

蓮の言葉に何だかとても救われた気がした。僕は照れ隠しに蓮にエルボを食らわせた。蓮は痛いと言っていたが勿論嘘だ。なにせ僕はほとんど力を入れていなかったのだから...。

 

教室に入るとラミアが一人ポツンと机に座っていた。でも僕はそれを見てホッと胸を撫で下ろした。まだ暴力や暴言を吐かれていないだけマシだと思ったのだ。僕はわざと無視している彼女達を睨んだ後、ラミアの所へそっと近づいていった。

「ねぇ。大丈夫?」ラミアは僕の声に気付き、慌て僕から離れようとしたが、僕がラミアの腕を咄嗟に掴んだ。これじゃあ、今朝の逆だな。などと思いながらラミアの肩を掴み向かい合わせにした。

「どうして僕を避けるの?僕はラミアが魔族だって知っているんだよ?それでも友達でいたいのに...あんな奴らと同じじゃないって分かってるんだろ?なのになんで僕を避けるの?」

ラミアは少し抵抗したが、諦め、小さな声で答えた。

 

「だって、私と友達になったら隼人までとばっちりにあっちゃう」

それを聞いて僕は不謹慎にも笑った。

「ラミア。僕はみんなに見えてないんだよ?大丈夫だって。僕は透明人間なんだ。だから誰も僕を虐めたりしないよ」

それでもラミアは頭を横に振り、尚も引かないようだったので最後の手段を放った。

「別に僕は虐められてもいいよ。ラミアと一緒に居れればそれで満足だよ」

言った瞬間後悔した。なにせこれはダメージがでかい。相手に羞恥心をプラスする代わりに自分の羞恥心もプラスされるという、僕の最終奥義だ。両者共に顔を真っ赤にさせながらしばらく見つめ合った。結局ラミアが折れた。僕は内心冷や汗が止まらなかった。

「私ね。前の学校でも虐められていたの...」

突然ラミアが話し出したので慌てて、耳を傾ける。

 

「入学して半年ぐらい経った時に担任にバラされたの。それまで仲良くしてくれてた友達も、皆態度が変わって私を虐めるようになった。でもそれが仕方ないことだって思ってたの。自分が魔族になったのが悪いんだって」

 

僕は思わずそんなことない!と言いたかったが出来なかった。ラミアの表情はどんよりと沈んでいて、胸が締め付けられたのだ。ラミアは淡々と喋っている。

 

「魔族である私を信じてくれたのはあの協会の神父さんだけ。とても楽しくて、週に一度の癒しの時間だったの。だけど隼人と出会ってからもっと楽しくなった!隼人ともっと話したい、一緒に居たいって思ったの」

僕は恥ずかしいと思ったが、ラミアは普通の顔をしていた。そこで自分も言わなければと思いつい口に出してしまった。

「ぼ、僕も!君と出会ってからとっても人生が明るくなったよ!その前まで世界は灰色だったのに君の声を聞いて、君の顔を見たら全てが色付いたんだ!だからさ、笑ってよ。ラミアのそんな姿見たくないよ」

ラミアは優しく微笑んで僕にお礼を言った。心臓が口から出そうだったが彼女の反応を見てホッとした。しばらく二人共黙っていると突然ラミアが明るい声を出して手をパチっと叩いた。

「そうだわ!ねぇ、隼人。私の家に遊びに来ない?隼人ともっとお話したいの」

 

彼女が何を言ったのか理解するまでに僕は5分という時間を要した。

 

 

 

ラミアと別れて僕は溜息をつきながら帰り道を歩いていた。何故僕はラミアの家に呼ばれたんだろうか?その事を蓮に話すと彼はニヤニヤしながら僕の背中を叩き言った。

「そこで決めろよ!怖くて出来なかったって言えばお前は男じゃなくなるぞ!」

その時は何の事か分からないととぼけていたが、本当は意味が分かっている。でも僕達はまだそんな関係じゃないしラミアもそんな事望んでないはずだ......多分。

こんな事ばかり考えていると4人の少年が目に入った。3人が1人の少年を囲み、何やら怒鳴っているようだ。僕は正直どうでも良いと思い通り過ぎようとしたが、ふと今日の体育の授業を思い出した。虐められている彼女を見て僕は何ができた?また僕は逃げるのか?そう思うと怒りが体中から湧いてきた。くるりと向きを変え、少年達に向かっていく。何故か体がとても速く、軽くなった気分だ。一人の男が僕に気付いたらしく仲間に教えている。残りの男達も僕を下卑た目で見た。何故だろう。あんな奴ら3秒でヤれる。何時もの自分だと到底敵わないような相手なのに、今の僕には赤ちゃんのような弱さしか感じない。男は僕に話し掛けてきた。

「おいおい。坊や!何ジロジロみてんだ!?お前もボコられたいのか?」

ふと男達を見ると手をポキポキと鳴らし威嚇している。虐められていた少年は僕に同情や、安心の意味が込められた目で見つめている。僕は余りにも虐めていた少年達が馬鹿らしくなった。上から睨んでくる少年を見、僕は笑った。それに気付いた男はみるみる顔を歪め、僕に怒鳴り散らしている。そして、一際大きい少年が僕に殴りかかって来た。だけど僕は異変に気付いた。

遅い。遅すぎるのだ。まるでスローモーションでも見ているみたいだ。僕はそのまま最小限の動きで向かって来た拳を避けた。避けられた当の本人は力の行き場を失い、ヨロヨロとバランスを崩した。仲間達は僕を睨み、息も出来ない程殴ってやる。などと言って襲い掛かって来た。一人が僕の顔を狙ってきたので、僕はそのまま避け、逆に彼の顔を地面に打ち付けた。この時僕は殆ど力を入れて無かったのに男は頭から血を流していた。そして向かってくる二人には、腹と足を狙っていたので、先ずは足を狙う少年の横に行き、首元を軽くチョップした。すると面白い程綺麗に失神した。腹を狙っていた少年は怖気づき、顔を真っ青にして後ずさった。それを見て僕は嗤った。

何故自分でもこんなに可笑しいのか分からないけれど人が恐怖している顔が余りにも面白かった。そして、僕は無意識に口を開いた。

「どうしたの?ほら、立ちなよ。さっきまであんなに僕を馬鹿にしてたのにもうおしまい?なんて言ってたっけ。息も出来ない程殴ってやる!!...だったっけ?ねぇ...殺ってみなよ」

僕はどうしてこんな事言ったのか分からないが、疑問に思うより先に体が動いた。体が恐怖で震えている少年に向かって人差し指を向けた。僕はニヤリと口を歪めて一言いった。

「バンッ!」言った瞬間少年に向けた人差し指から炎が上がった。僕が驚くよりも先に彼等が声を上げて飛び上がったので、また僕はニヤリと嗤った。

「ね。僕は君達と違って人間じゃないんだ。分かったらとっとと失せな。今すぐ僕の前に消えてくれたら命は許してあげるから」

それを聞いた彼等は慌てて逃げようとしたが、僕はある事に気付き引き止めた。

「ちょっと待て!」僕が言うと少年達はヒッと声を漏らし、ぎこちなくこちらを振り向いた。

「彼を置いて行かないでくれるかな?じゃまだから」

僕が指さす方向を見ると失神した少年が横たわっている。彼等は仲間を担ぎ、一目散に逃げていった。それを見送った後に僕はくるりと振り返り、虐められていた少年に目を向けた。少年は僕を見て僅かに後ずさった。折角助けてあげたのにこんな態度をとられて僕は多少イラッと来たが顔には出さなかった。僕は優しく彼に話しかけた

「大丈夫かい?どこか怪我はしてない?」少年は小さい声で大丈夫だと言い、僕をチラチラ見ている。僕はそんな彼ににっこりと笑った。

「良かった。あとさ、僕のさっきの魔法?かな。あれ、誰にも言わないでね」

少年は頭を縦に振った。まあ、言っても誰も信じないだろが...。彼は気まずそうに僕に質問してきた

「どうして僕を助けてくれたんですか?」彼は僕の反応を伺っている。僕は考えたが、結局正直に話す事にした。

「いや、これと言って理由は無いよ。ただ今日は凄くイライラしてたから何かに八つ当たりしたかったんだ。そしたらたまたま君達が目に入ってね。彼等でストレス発散したわけ」

僕はこれ以上時間を無駄にするのも嫌なので会話を終わらせる事にした。

「じゃあ、僕は帰るよ。もう虐められんなよ」そう言い、早足で家に向かった。実を言うと少年達が逃げるのを見送った瞬間から冷静になり、頭の中がパニックになっていたのだ。なので取り敢えず落ち着きたかった。しかし、そんな彼を見ていた人物がもう一人いた。

ラミアは隼人が急いで家に帰るのを見送っていた。彼を見る彼女の目は期待と不安で輝いていた。ラミアは震える声で言った。

「やっぱり私の目に狂いは無かった。ようやく始まる...***の覚醒が...」

そう言って彼女は音もなく消えていった。




閲覧ありがとうございました~!
感想、評価、誤字報告受付けております。
次の更新は早くて12月になると思います!
お楽しみに...

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。